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めさのマイミク拡張エリアコミュのwill・4【機体は何も語らない】

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 will【概要&目次】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=40199062&comment_count=1&comm_id=2906103

<そこはもう街ではなく・2>

 玄関先で大地は目を丸くする。
 来訪者は、よく知る人物だった。

「涼、なんだその恰好」

 緑色をしたハーフ丈のアーミーコートと、下も同じような色の丈夫そうなアーミーパンツを履き、毛皮の手袋はバールを握りしめている。
 悪友ともいえる昔馴染みの、涼だった。
 縁取りのしっかりとした赤い眼鏡とはまるで似合っていない恰好だけに、いつもの洒落っ気のある彼とはどこか雰囲気が違って見える。

「お前、戦争にでも行く気?」

 大地がそのような軽口を叩くのも無理はない。
 見方によっては大地を襲撃しに来た風に、見えなくもない。

 ところが涼の表情は真剣そのものだ。
「のん気なこと言ってる場合じゃねえぞ」とブーツを脱ぎ、大地の家に上がり込もうとしている。
 その作動から察するに、やはりこの街は異常事態の真っ只中にあるらしい。

 大地の部屋で、2人は毛布を肩からかけて座り込んだ。
 暖房器具が全く働かず、室内とはいえ冷え込みが著しい。

 マンションの4階が大地の自宅で、窓からは冬空公園の野球場とその奥にある数々の住宅が望める。
 静まり返った景色は生気を感じさせない。

「見ての通り、誰もいなくなっちまった」

 涼は窓から視線を外し、その細目を大地に向ける。

「でも自分が残ってるわけだから、他にも俺と同じような生き残りがいるかも知れないだろ? 色々探し回ってみようと思って、知り合いの家を当たることにしたんだよ。そしたら大地が残ってた」

 涼は「最初に訪ねたのがここで、自分にはツキがある」とも言った。

 大地は「俺はさっき起きたばっかだけど」と断りを入れてから、さきほど目撃した不気味な少女の話を語る。

「トラウマになるぐらい怖かった。俺の印象だと、あの子は街の住民じゃない」

 すると涼は「ちっちゃい女の子? ロボットじゃなくて?」と不思議そうな顔をした。
 大地も似たような表情を浮かべる。

「ロボットって? なにそれ?」
「まだ見てないのか?」

 すると涼は床のバールを持ち上げる。

「俺がこんな武装してるのも、ロボットが襲ってくるからなんだよ」
「そんなロボいるの!? マジかよ。宇宙人でも攻めてきたのかな」
「そうかもな。腰ぐらいの高さでクリーム色のロボットが、そこら辺うろちょろしてたよ。見つかると攻撃してくる」
「攻撃って、どんな?」
「いや、それほど強くなかったよ。俺、お前や和也と違って頭脳派だろ?」
「自分で言うなよ」
「奴ら単純に正面から突進してきて、殴りかかってくるだけだよ。武器があれば俺でも簡単に壊せる。中には刃物持ってる奴もいたけど、そこは逃げといた」
「ロボなのにビーム出さないのか。そいつらって、動きはぎこちない?」
「いや? スムーズだったよ。突進力もあったし、殴る手のスピードも速かったし」
「ロボットの足は? 2足歩行?」
「そういうやつもいたな。下半身がキャタピラの奴もいたけど」
「ふうん」

 大地は不審感を抱く。
 実際に自分の目でロボットを見て、観察する必要がありそうだ。

「取り合えず、ここ出ようか」

 大地は立ち上がり、修学旅行のときに買った木刀を引っ張り出した。
 毛布をベットに返し、涼も腰を上げる。

「そうだな。他の奴らの家にも行ってみよう」

 外の冷気はやはり激しく、大地は先ほどよりもさらに肌着を重ね、涼と肩を並べて歩いている。
 目指すは中学高校からの同級生、小夜子の家だ。
 親密な仲間の1人であることと家の近さから、2人は彼女の家を訪ねることにしていた。

 4車線の車道を走る車は一切なくて、大地だちは堂々と道路の中心を歩く。
 滅多にできない行動だけに、どこか清々しさを覚えた。

 歩道橋をくぐってしばらく行くと、商店街が姿を現す。
 24時間営業のショップは電気を消していて、それ以外の店舗はシャッターを下ろし、閉店を示していた。

「おい、あれ」
「ああ」

 2人がそれに気づいたのはほぼ同時だった。
 止まっている景色の中を動く物は目立つ。
 あれが涼の言っていたロボットなのだろう。
 白い物体が歩道を動いている。
 頭の位置は涼の言う通り、大人の腰ぐらいの高さにあって色はわずかに黄色がかった白だ。
 近づいてみるとロボットは人間のようなデザインだが3頭身ほどで、頭部前面にはレンズが1つ付いている。

 大地は涼に木刀を預けた。

「これ持ってて。でさ、涼のバール貸して。俺の木刀だと折れちゃうかも知んないから」
「え? ああ」

 バールを受け取ると、大地はロボットに向かって歩む。
 ロボットは2本の短い足を持っていて、まるで生き物のような滑らかさで歩いている。
 足の裏にゴムが付いているらしく、足音は聞こえてこない。

「あの、こんちは」

 大地は試しに声をかけ、機械の様子を探った。
 会話が可能かどうか検証したいのだ。

 ロボットのレンズが大地を発見したようで、白い体をこちらに向ける。
 瞬間、ロボットは躊躇する様子もなく、真っ直ぐ大地に突進してきた。
 その両腕が握っているものは、ナタのような刃物だ。

 大地を殺傷することが目的だと、この時点で理解に及ぶ。

 ゴルフのスイングのように、大地はバールを振り上げた。
 金属音が大きく響く。
 ロボットの片腕を上に弾き、その衝撃で体勢を崩させる。
 間髪入れず、大地はバールを今度は横に振った。
 さらに大きな衝撃音と共に、ロボットは吹っ飛び、靴屋のシャッターに体をぶつける。
 変形した中華包丁のような刃物は、1つは大地の足元に落ち、1つはまだロボットによって握り締められている。
 大地は残った刃物を持つ腕を目がけ、さらにバールを振るった。

 背後から涼の声がする。

「さすがだな」

 大地はロボットから目を離さずに「まあね」と返した。

 まだ動こうとしている敵らしきロボットをさらに屠り、その機能を完全に停止させる。

「なあ涼、今朝から不思議なことが多すぎるけど、さらに謎が増えたよ」

 バールを涼に返しながら、大地は続ける。

「動きから見てもこのロボ、絶対に高級品だ」
「ああ、そうだろうな。普通の人には買えなさそう」
「でしょ? でもこいつ、矛盾してね?」
「矛盾?」
「そう。だってさ、こいつ確実に人を攻撃するようにプログラムされてたじゃん。で、高性能。なのになんで、攻撃手段がめちゃめちゃ原始的なわけ?」
「ああ、言われてみればそうだな。なんでだろう」
「しかもさ、このサイズだろ? 元々人間を攻撃するために作られたんじゃない感じしない?」
「うん、それもそうだ」
「こいつらを操ってる奴がどっかにいるわけで、街から人を消したのも同じ奴っていうか、組織なんだろうけどさ」
「うん」
「その組織の規模がまるで解らない。このロボを見る限り、お手伝い用のロボットを利用したって感じじゃん? それを踏まえると、黒幕は凄い科学力を持ちながらも、兵力が少ない」
「あ、そうかそうか。そうすると今度は『その程度の団体がどうやって住人たちを消したんだ?』って話になるわけか」
「うん。しかもね? このロボと、俺が見た不気味な女の子との繋がりもさっぱり解らない。なんかSF映画に幽霊が出るみたいな違和感があるよ」
「う〜ん」

 涼は腕を組み、考え事を始めた。
 大地は自分の木刀を受け取ると、「まあ行こうぜ」と友を促す。

「まだまだ情報が足りないんだろうね。色々じっくり調べて、キーが揃ってから組み立てよう」

 普段から対立している2軒のラーメン屋を通り過ぎてすぐの脇道を行くと、住宅街が展開する。
 小夜子の家まであと少しだ。

 大地は無意識につぶやく。

「探さなきゃなあ」
「ん? 何を?」

 涼が眉を少し吊り上げ、大地の顔を覗き込む。
 一瞬だけ呆然としていた大地は我に返り、「え? なにが?」と聞き返した。

「なにがじゃねえよ」と涼。

「お前が今言ったんじゃん」
「あ、ごめん。俺今、なんて言った?」
「探さなきゃって」
「そんなこと言ったんだ? わりぃ、ボーっとしてた。特に意味はない」
「ああそう」

 歩きながら、大地は他の謎が残っていたと思い直す。

 さっきから俺は一体何を探したがっているんだ?
 俺の中の別人格は、何を知っていて、何を考えているんだ?

<万能の銀は1つだけ・2>に続く。
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=41376108&comment_count=0&comm_id=2906103

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