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小説家版 アートマンコミュの仏壇ニューヨークへ行く?

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実は僕は飛行機が苦手です。そのおかげで飛行機に乗るのは新婚旅行のハワイ以来、実に13年ぶりです。たぶん人間の基本の感情の中に暗所と高所には恐怖が刷り込まれていると思います。飛行機という空間が高所を忘れさせるだけです。だから離陸と着陸時は掌が汗びっしょりです。単純な性格が幸いして、順応力だけは人並み以上なようで飛び出してしまえばビビる事もなく平穏に空での生活はできるんですけどもね。離陸と着陸時は僕も人並みに神とも仏ともつかない何かに祈っていますからね。今回はニューヨークという事もありキリスト様だったかもしれません。
 しかし、13年ぶりに飛行機にのると色々な事が便利になっていました。まずは枕。ちゃんと座席についていました。手荷物でもって来た空気を入れるタイプの便座型(表現が悪いか?)の枕はお荷物となりました。テレビモニターは一席づつついているし、見たい映画は自分で選べるし、ゲームもついている。
13時間なんてあっという間でした。僕が留学していた頃なんて飛行機に乗っているのが辛かった経験があったので、本を機内に4冊も持ち込んでしまいました。結局行きと帰りの飛行機で1冊読んだだけでした。行きも帰りも気がつけば麻雀ゲームとポーカーをやりつづけていました。

空港に降り立った僕達は直ぐに入国審査へ。今回が初海外の塗師の伊藤君にとって本格的に英語を話さなければならない時がやってきました。通常クールな彼も少しビビり気味。見ていた僕の方が緊張してきました。伊藤君はラッキーな男です。偶然、連れて行かれた入国審査官が日本語が少し理解できる人だったようで、余裕顔で出て来ました。「都築さん、楽勝でしたよ」なんて軽口まで飛び出していました。
 入国審査が済むと目の前に手荷物引き換え所がありました。僕が入国審査の順番待ちをしていた時に見なれた段ボール箱が4つ流れて来ているのが見えました。そしてその箱を投げるように置いている姿も。あれは間違いなく新作の入った箱だ。中部国際空港で預ける時に「割れ物注意」のシールを貼ってもらったが、全く見ていないようだ。国民性なんだろうな。入国審査を終えて急いで作品の所へ行き、こわごわ箱を振ってみる。どこかが壊れていたら変な音がするはずだ。幸い音はしなかった。外見上箱には大きなへこみも傷もなかった。多分大丈夫だ。僕達は山のようになった荷物をカートに入れて関税検査へ向った。ここでは案外というのか驚く程あっさりと通過してしまった。飛行機に乗り込む時の異常な程の検査が嘘の様だった。箱の中身はと聞かれて、自分の作品だと答えると、そうかといって終わってしまった。4つも箱があったのに。ここでもアメリカの国民性を見たような気がする。

今回、一緒にニューヨークに来たのは7名。僕と嫁。宮殿師の平林さんと奥さん、そして2歳の可愛い女の子、響ちゃん。新婚旅行にいつかは行くだろうと10年もののパスポートにした塗師の伊藤君。密着取材をしてくれている番組ディレクターの山ノ内さん。この中でかろうじて英語を使えるのは僕達夫婦と平林さんの奥さんのみ。しかも僕達夫婦は13日の滞在のため、安アパートを借りてしまったため、他のメンバーとは宿が違う。2歳の女の子1人と3人の大きな子供を平林さんの奥さんが背負う事になる。実際、そうなってしまった。今回の旅行のMVPは間違いなく平林さんの奥さん。皆のお母さん化していました。本当にお疲れ様でした。
 ニューヨークに到着して皆の顔を見た。何故だか笑えて来た。海外と縁のない仕事をしている僕達が場違いな所へ来てしまったような気がしておかしかった。またこんな場所に皆で立てている事が嬉しかった。僕達はやっと長い長い準備期間を終えて、スタート地点に降り立った。見上げる看板の文字に日本語は一切ない、少し実感が湧いて来た気がした。

そんな団体だった事と手荷物の多かった事で空港からマンハッタンの移動が大変だと思い、贅沢だったけでもチャーター便を日本から予約しておきました。僕らを迎えに来てくれたのは巨大な黒いバン。僕らと荷物をのせるとギリギリ一杯の状態でした。宿に向う前にある場所へ立ち寄ってもらう事にした。それは僕達が最初のマンハッタンの土地に足を降ろすべき場所SOHO。僕達の個展会場、ギャラリー・シーズンズです。

SOHOは僕が想像していたよりも素晴らしい街でした。日本の銀座や新宿を想像するような雑踏をイメージしていたのです。しかし、そこは歴史的な建造物に囲まれた上質な街。人の往来は多いが雑踏という表現は似つかないお洒落な空間だった。そしてギャラリー・シーズンズはSOHOのメインストリートでもあるブロードウエーの1本奥の道にひっそりと存在していた。クロスビー・ストリート。車にとっては嫌がらせのようなガタガタな石畳の道、しかしそのおかげで車は決して猛スピードでは走らない。その道を僕達を乗せた黒いバンは個展会場を少し通り過ぎた路肩にゆっくりと停車した。車のドアをあけると日本とは違う匂いを含んだ空気が車内に流れ込んで来た。これが巨大な大陸の匂いなんだろう。僕は吸い込んだ空気をゆっくりとはきだすとSOHOの地に降り立った。見上げた空は気持ち良いくらい青かった。僕達をSOHOが歓迎してくれているようで嬉しかった。バタバタしている皆をおいて僕は駆け足になった。嬉しいと人は自然と早足になってしまうようだ。ギャラリー・シーズンズのドアは開け放たれていた。そこには笑顔で向かえてくれるオーナーの五十川さんがいた。想像していたとおり綺麗な人だった。

ギャラリー・シーズンズのオーナーの五十川さんはニューヨークでの個展の恩人の1人である。本当に親身になって個展開催を現地で支えてくれた。必要なアドバイスは何度もしてくれた。五十川さんがいなければ、今回の個展は決して開催できなかった。
 シーズンズは日本のアンティーク家具や雑貨を取り扱うショップ。その隣に併設されている空間を日本人アーティストに提供してくれています。通常のギャラリーとは一風違います。ショップをやっているので常時お客さんが来店します。またお客さんも日本好きの方が多く、興味を持って見て行ってくれます。
もちろん、SOHOならではのセンスの良さが所々に見られる良い場所でした。運命の悪戯とはいえ、ブルックリンの予定からSOHOへ来られた事は本当に良かったと感じました。奇跡を起こせる予感が沸き上がって来ました。自分は本当にラッキーな男だと喜んでいたのも束の間。数時間後には両肩を落すような事が起きるとはその時は誰も思いもよりませんでした。

作品だけを残して僕達は別々の宿へ向った。ニューヨークに13日間滞在する僕は極力宿泊費を落す為にイーストビレッジにある安いアパートメントを借りた。それなりに覚悟はしていたが、やはり綺麗とは言えるような部屋ではなかった。日当たりも悪く、部屋は何故かガス臭かった。床は傾いていて、ダイニングキッチンの足のがたつきは丸めた紙で調節してあった。
 ニューヨークのホテルは以上に高い。ビジネスホテルクラスが3万円なんて平気なほど。我が社の景気が良ければ、平気で宿泊しちゃう所だが、今回の飛行機代と宿泊費、そして滞在費は全て自腹。当然と言えば当然なんだけどね。ホテルに宿泊してしまうとその費用だけでも数十万円してしまう。とてもじゃないが貧乏な我が家にはそれだけの経費は出せない。何かを削るしかない。それが宿だった。最初のうちは細かな事が気になったが、住めば都、友達の家を貸してもらっているような気になってきた。以外と良かったのはアパートのあるロケーション。回りには多くのレストランがあり、食べるものには何一つ不自由しなかった。その事が僕が最後まで病気をしなくて済んだ結果になったのかもしれない。食べ物の話はまた別の機会に。
 僕はチェックインを済ませて再度個展会場へ向う事にした。明日のオープニング・パーティの打ち合わせなどを五十川さんとしなければいけなかったからだ。メンバーとも落ち合う必要があったので集合場所を会場にしておいた。

個展会場への移動手段は地下鉄にした。ニューヨークの地下鉄が危ないと言われていたのは遠い過去の事だった。実はまだトークンというコインを購入して乗ると思っていた程、最新のニューヨークにはうとかった。トークンのかわりメトロカードというものになっていた。お金がチャージできるのでいちいちコインを買う必要がない。確かに便利だった。
 日本と違い地下鉄のホームの上下線が連絡していない駅が沢山あった。僕が乗り込む「ファースト・アベニュー」という駅もそうだった。上下を間違えて乗ってしまい、乗車一回分を損した事もあった。慣れてしまえばなんて事もないが、最初はホームにおりる前にいちいち確認しなければならないのがうっとおしかった。個展会場は「ユニオン・スクエアー」の駅で乗り換え、ダウンタウン方向へ2駅「プリンス・ストリート」でおりるとそこがSOHO。ニューヨーク初日はたった4つの駅の区間の乗り降りに1時間程かかってしまった。個展会場にたどり着いた時は既に夕方となっていました。

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