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ヘンリー・ミラー(Henry Miller)コミュのわが青春のともだち

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『ミート・ミー・トゥナイト・イン・ドリームランド』と『シャイン・オン、ハーヴェスト・ムーン、フォ・ミー・アンド・マイ・ゴール』
 今日人々はいかにもなつかしげに五〇年代、六〇年代を引き合いに出す。しかし、この二つの歌が大流行――文字通りの大流行であって、現代でいうヒットとはまるで違う――していた時代、世界は、ぼくらの世界は、花ざかりだった。いちどでもこれらの歌をうたった人は、絶対にそのことを忘れないだろうと思う。
 無蓋電車の時代、トリクシー・フリガンツァとエルシー・ジャニスの時代、ジョージ・M・コーハンとチャールズ・チャップリンの時代、すてきなダンスホール、耐久ダンスばやりの時代、恋人へスミレの花束を送る時代だった。当時のニューヨークには魅惑に満ちた一面があった。大衆が心から親しんだ有名人がたんとした。偉大なレスラーもいた。たとえば、ジミー・ロンドスとか、アール・キャドックで、アールは無類のホールドを見せ、それも現代のようないんちきな技ではなかった。偉大なボクサーもいた。ととえばフィッシモンズ、コルベット、ジム・ジェフリーズ、ジャック・ジョンソン。六日間無休自転車乗りとか、六日連続ポロ競技なんていうのをやるやつもいた。フットボールやバスケットボールはたいした人気がないのが実情だった。ガラスを食い、生きた金魚をのみこむムーン・ドック・メインみたいな野郎と同じく、エルヴィス・プレスリーみたいなやつの存在も想像できなかった。
(略)
 コーラと無蓋電車に隣り合わせに座って、ロッカウェイあるいはシープスヘッド・ベイへ帰る道すがら、お互い声をはりあげて『シャイン・オン、ハーヴェスト・ムーン、フォ・ミー・アンド・マイ・ゴール』をうたうなんて、なんて素晴らしいかったことか。『アイ・ドン・ウォント・トゥ・シー・ザ・ワールド・オン・ファイア』なんかもうたった。当時はじっさいおびただしい数のディティ(小歌曲)があった。みんな、例の歌謡曲作家のティン・バン横丁、ぼくらが「リトル・オール・ブロードウェイ」と読んでいた町でできた歌だった。


>
昔、学芸大学駅にあった古本屋で購入しました。
恋人にスミレの花束を贈ろうとしたけれど
駅前の花屋に売ってなかったのが思い出です(苦笑)。

コメント(4)

>追加

 そろそろぼくは満九歳になり、同時に、地上における第一天国は終わりを告げる。いや、第一じゃない、第二天国だ。ぼくの第一天国は母の子宮にいるときだった。永遠にそこにいようと戦ったのだけれど、けっきょく鉗子にはかなわなかったのだ。子宮時代は素晴らしかった。とても忘れられるものではない。ぼくの欲しいものは、ほとんどすべて備わっていた――ともだちを除いては。どんなに心地よく憂いなしとしても、ともだちのいない人生なんて人生じゃない。ぼくがともだちというのは、文字どおりのともだちなのである。任意のだれかが、あるいはだれでもが、きみのともだちになれるわけではない。きみの皮膚と同じくらい近しいだれか、きみの人生に彩りとドラマと意味を与えてくれるだれかでなければならないのだ。愛とは反対の、しかも愛を包みこんでいるなにか、を与えてくれるだれか、である。
 ぼくがこの本を書くのは、ぼくにとって実に重大な意味を持つ友情について物語りたいからである。友情については、ぼくの別の本で触れはした。しかし、ここでは違った方法で話しているのである――よく人から非難された唯我論者としてではなく、ともだちとして、だ。子宮の天国と友情の天国との相違は、子宮のなかではひとは盲目だということである。ともだちはきみに、インダラ女神のように、千の眼を与えてくれる。ともだちを通じて、無数の人生を経験する。違った次元を見る。さかさまに、また、裏側から、人の世を生きる。きみのともだちの最後の一人がこの地上から消え失せたとしても、きみは現に独りではないし、将来とも決して独りとはならないだろう。
ああ、この本はわたしも古本で手に入れましたよ。生まれ育ったブルックリンでの境涯にはじまって・・。昔読んだ別の本では、過去を振り返って「僕のいつも良い友達はlittle dirty j○wだった、いつだって彼らだったんだ」とかと書いていました。

子宮の天国と友情の天国の違い。ミラーの文もまるで「千の眼」開いているようですものね。いつも愛をめぐって書いているような。「恋人にスミレの花束贈ろうとして」のシチュエーションであふれてきそうな言葉の本。

(それから・・トピックからははずれますけど、古本ついでにお尋ねします。『描くことは愛すること』という邦訳本も探してますが、どなたかお持ちでしょうか。たしか作家の五木寛之氏が訳したものです。ミラーの自作の絵を持っているというかたいらしたら、さらに驚きです。)
>浜千鳥の散歩 さん

ミラーの自作の絵でしたら
長野にあるヘンリー・ミラー美術館はどうでしょう?

僕は行ったことありませんが、
一時閉鎖され、2003年5月から再開されたようです。

一度は行ってみたい思ってます(また閉鎖されたりする前に)
はじめまして。
>パウダーさんの思いで(花屋にスミレが売ってなかった事)にひかれました。その経験を短編にしたらいかがですか?
私はブルックリンに住んでいるアメリカ人なのですが・・・ミラーをこれだけ読まれてる日本人がいる事、感激です。
カリフォルニア州のビッグ・サーにあるミラー図書館を5年前に訪れて手に取れる程ミラーの魂を感じて・・・倒れるかた思ってしまいました。
アメリカでは世界文学があまり訳されないので日本人の方程の多読家はめったにいないのです・・・あぁ、日本文化が羨ましいといつも思います。

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