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多発性硬化症(MS)コミュのベタフェロンが「MSに有効」という論文は、科学的に正しい根拠を有しているのか。

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例のPさんから早速、「大森」さんの意見(http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=47964719&comment_count=1&comm_id=287530)について感想が入りました。謹んで採録します。

ではPさんの感想、以下が全文です。

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ご無沙汰しております(大森様、はじめまして)。

ジャイアン=芦田さんが作られたPDF(http://dl.dropbox.com/u/1047853/ver3.0%E5%A4%9A%E7%99%BA%E6%80%A7%E7%A1%AC%E5%8C%96%E7%97%87%E3%81%A8%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%81%8B%E3%80%81%E8%A6%96%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E8%84%8A%E9%AB%84%E7%82%8E%E3%81%A8%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%81%8B.pdf)を読み直していたさなかでありました(立派な形にして頂き光栄です)。

しかし、今回の大森様の解釈を拝読するに、小生自身が「本文を読んでもその問題点を評価できない人」に該当しており、お恥ずかしい限りです。

ちなみに、「サンプル数」については大森様の御指摘まで意識していませんでしたが、検索して見ると(http://www.jil.go.jp/column/bn/colum005.html)、サンプル数という統計用語はないとのことにて、勉強になりました。芦田さん、失礼しました。

この論文における統計マジック(とそれを隠すような、恣意的な論文の書き方)についてはある程度認識していたつもりでしたが、さすがに片側検定をしていたとは気づかず、大森様の御指摘に思わず唸ってしまいました。

思うに、この手の研究で本論文でも使用されているPermutation testが使用されるのはしばしば見ますが、片側検定は確かに見ないと思います(理論的に、大半の医学研究では両側検定にせざるを得ない)。

まさか、高容量IFNbetaは低用量IFNbetaよりも悪であるという、特にOSMSが入ってくる日本の研究デザインでは充分にあり得る仮定を敢えて無視して、片側検定を採択したのではないでしょうから、単純にp値が低い片側検定を選択し、強引に結論を誘導しようとしたと邪推されても仕方ないと思います(片側検定と両側検定については、英文ですが分かりやすい総説がここ:http://www.bmj.com/cgi/content/full/309/6949/248にあります)。

年間再発率については、通常は単純に1年間当たりに再発した回数を指します(分子は再発回数、分母は観察年数)。今回の解析では、分子は再発回数ですが、分母は「再発の期間を除く」非再発期間のみの観察年数です。

1年の観察で1回の再発があった人は年間再発率=1となりますが、今回の論文の計算方法では、その再発が例えば1カ月続いたとすれば、分母は1年じゃなく、11カ月となりますから、1.09となります。論文では、再発の期間に次の再発は生じないのだから、この計算式の方が正しいと指摘しています。一見そうだなと思えるのですが、「再発の期間」というのを何を以て定義するのか、論文からははっきりしません。

ともあれ、大森様の御指摘の

>この論文に影響を受けた人の中には、要旨しか読んでいない、要旨を読んでもその問題点を評価できない、本文を読んでもその問題点を評価できない人がいた可能性は否定できないと思います。

については、本疾患の神経内科での位置付けを考えると(要するに患者数が少ない)、「要旨すら読んでいないが、製薬会社社のMRさんがそう言っていたから」とか、「要旨すら読んでいないが、(この論文に関わった)偉い先生がそう言っていたから」いう医師が意外に多かったりするのではないかと感じています。


ついでに、当該論文にあてた、Editorialのコメントを一部抜粋して翻訳してみました。

=====
Western vs optic-spinal MS -Two diseases, one treatment?-
西洋型MS vs OSMS −二つの病型に同一の治療?−
Brian Wenshenker (Mayo Clinic)

(前略)
In the study by Saida et al., 21% of enrolled patients had the optic-spinal form of MS. Patients with western MS and optic-spinal MS were not separately randomized nor was the study powered to assess the efficacy of treatment in this subgroup. Given the differences between these two subgroups, it was quite reasonable to stratify the analysis of efficacy to evaluate for potential differences. However, there were important limitations of such stratification, even beyond the limited statistical power. The MRI data that are so helpful in assessing efficacy of treatment in MS would not apply to optic-spinal MS as the MRI of the brain is and usually remains normal. The study results suggest a nonsignificant trend to reduction of relapse frequency, but no effect on proportion relapse free, a measure consistently positively impacted in other relapsing remitting MS trials. The discrepancy could be due to inadequate power, and the trend regarding the attack frequency outcome may mean that interferon beta is effective in optic-spinal MS. However, neurologists who care for patients with optic-spinal MS/NMO should be reluctant to accept these results as definitive proof of efficacy in this subgroup.

Saidaらの研究では、被験患者の21%がOSMSであった。西洋型MS(CMS)の患者とOSMSの患者は、別個にランダム化されておらず、また研究(のデザイン)はこのサブグループ(OSMS)における治療の有効性を検討する検出力を有していない。

この2グループ(CMSとOSMS)の差異を考えれば、有効性の解析を階層化し、差異がある可能性を評価したことは概ね合理的である。

しかしながら、そのような階層化には、統計学的な検出力が小さいという点以上に、重要な制限事項がある。

MSにおいてはMRIデータが治療効果を評価するために大変役立つが、脳のMRIはOSMSには適応できない、何故なら多く場合正常に留まるからである。

本研究の結果は再発頻度の低下について統計学的有意ではない(ながら一定の)傾向を示したが、他の再発寛解型MS(CMS)の臨床試験で常に明白な影響力を示してきた指標である無再発期間については効果を見出せなかった。

この(再発頻度低下と無再発期間の)開きの原因は、検出力不足に依る可能性があり、一方、再発頻度に関する一定の傾向という結果は、IFNbetaがOSMSに有効であることを意味している可能性がある。

しかしながら、OSMS/NMOの患者を抱える神経内科医が、得られた結果をこのサブグループ(OSMS)における確実な証拠とは受容しかねるのも無理はない。


Given the differences between NMO/optic-spinal MS and western MS clinically and pathologically, future clinical trials should endeavor to distinguish patients with these conditions. Japanese clinicians have traditionally been better able to recognize this condition, as they have not required bilateral optic neuritis and nearly simultaneous optic neuritis and myelitis. Because of the traditional adherence to these criteria, many patients with NMO in North America may be misdiagnosed as having MS. Randomized controlled studies in this subgroup, whose sufferers often experience very aggressive disease, are needed. New, liberalized, but evidence-based diagnostic criteria9 and new serologic tests7 will help distinguish these cases from those with prototypic western MS and will facilitate clinical trials for this disorder.

NMO/OSMSと西洋型MS(CMS)が臨床的に、また病理学的に異なることを鑑みれば、将来的な臨床試験においてはこれらの患者を分ける努力をするべきである。

日本人医師は以前よりこの病型(OSMS/NMO)を区別しやすい状況にあった。何故なら、その診断に両側性の視神経炎があり、視神経炎と脊髄炎がほぼ同時におきるという(診断)基準を課せられていなかったからである。

これまでこれらの診断基準に則るが故に、北米における多くのNMO患者はMSと誤診されてきた。非常に進行性の経過を経験することが多いこのサブグループ(OSMS/NMO)におけるランダム化された比較試験が必要である。

新しく緩和された、しかし証拠に立脚した(evidence-based)診断基準と、新しい血液検査は、元来の西洋型MS(CMS)からこれらの症例を区別するのに役立ち、この病型(OSMS/NMO)の臨床試験を容易にするであろう。
=====

下の段落は、OSMS/NMOはMSと明確に区別される疾患であるとする、Mayoグループの主張ですからともあれ、

However, neurologists who care for patients with optic-spinal MS/NMO should be reluctant to accept these results as definitive proof of efficacy in this subgroup.

の部分(小生は、≪しかしながら、OSMS/NMOの患者を抱える神経内科医が、得られた結果をこのサブグループ(OSMS)における確実な証拠とは受容しかねるのも無理はない。≫と訳しました)は、今となっては皮肉にしか聞こえません。

コメント(4)

あり得べき誤解を避けるために、注釈を付けます。

私もPさんも、ベタフェロンは効かない、意味がないと言っているのではありません。ベタフェロンが(MSには)唯一効果が立証された薬だというのは怪しい、という点を指摘しています。

ここで問題になっている 「インターフェロンベータ1bは日本人の再発寛解型MS患者において有効である:ランダム化された多施設研究」(2005年)という論文がその効能の立証論文なわけですが、「大森さん」「Pさん」含めて、この内容でなぜ立証されたことになるのか、という疑義を立てられています。

たとえば、免疫抑制剤の投与であれば、無理をして投与を続けたりしないのに、なぜベタフェロンでは少々を無理をしてでも「効果が立証されているのだから」と言って体力を殺ぐまでに投与を続けるのか。そんなことをするほどの薬でもない、というのが、この論文は怪しいということの意味です。

効いている(と思える)人、(今のところ)副作用がでない人は、特にわれわれの「怪しい」を無視すればよいと思います。要するにベタフェロンは、免疫抑制剤でも効いている人がいるというのと同じ程度の薬に過ぎない。特に特権化する(無理してまで投与する)薬ではないということです。
その意味で、2005年のこの論文(「インターフェロンベータ1bは日本人の再発寛解型MS患者において有効である:ランダム化された多施設研究」)は、今日の日本におけるMS治療への影響を良くも悪くも決定的に影響付けてきたものです。

ほとんどの研究者はこの論文をまともに読まないまま、「効果が立証されているのだから」と言い続けてきたし、未だにそう言いつづけ、身体に重度の負担を強いられている「MS」患者の人がたくさんいるということです。

「難病」なのですから(ほとんどの薬が効かないのですから)、「効果が立証」なんて言われたら、誰でもが無理をして打ち続けるに決まっています。
うーん。まだまだこの論文の影響とそれを無批判に擁護するキャビンの影響が強いんでしょうねぇ(ボイスふうに)
「ベタか、アボか」という選択肢は、この論文の問題点を棚に上げる議論。どの薬であっても、同じように効きうるし、同じように効かない。ベタ(アボ)だけを特権化するのは誤り。

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