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創作恐怖話〜新感覚恐怖へ〜コミュの死神の処刑

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終電の満員電車にゆられながら、仕事帰りの岩本は、この日も思う。
(何故、俺はこんなに毎日毎日、遅くまで働かきゃいけないんだ。会社の人間も、ろくな奴がいねえ。自分の仕事の失敗をなすりつける上司、くだらない上司に媚を売ってばっかりの社員。ふざけんじゃねえ!!)

そんな毎日、ストレスをためる岩本を落ち着かせているのは、音楽だった。特に岩本が好んで聞いていたのは、反社会的で過激な歌詞を歌うハードロックなど、アングラと呼ばれる内容のものであった。

そんな岩本が、仕事帰りによく立ち寄る店がある。
自分の住むアパートと駅の中間にある中古CD屋である。外装はさびれて、いつ、つぶれしまってもおかしくないような雰囲気のお店である。

ただ、この中古CD屋は、岩本が帰ってくる深夜も開店しており、最近の流行り曲と言われるようなものは、ほとんど置いていないが、岩本の好む過激な内容のCDの品ぞろえは、他店舗に比べて、劣らなかった。

今日も苛立ちを独り呟きながら岩本は、この日も店に寄った。

暗めの電球、狭い通路、薄汚い壁、妙に暗い雰囲気の店員。
いつもの風景である。

ハードロックコーナーのマニアックな内容のCDが岩本を迎える
【死】
【殺】 
【怒】 
【呪】    
【暗】 
【怨】 

こんな漢字が目立つコーナーである。岩本にとっては宝の山である。

(今日も良いものが、たくさん入ってきてるね…)
岩本はニタニタと笑みを浮かべながら、CDを物色する。

特に苛立ちが激しいこの日の岩本は、いつも購入するCDよりも内容が過激そうな何枚かのCDを手に取り、気味の悪い笑顔をしながら、岩本はレジへ向かった。

そして、いつもの暗い店員がレジを打ち、岩本は宝を受け取る。

それから、家に着いた岩本は、早速、袋に入ったCDを取り出した。

そこで岩本は、気付いた。自分が購入したCDよりも一枚多く入っていることに。

そのCDを見てみる岩本。CDを見て、ニタリと岩本は笑う。
それは、岩本が好む題名のCDだったのだ。

【死神の処刑】

タイトルが血文字のように描かれたパッケージだった。

(こりゃあ、もうけもんだ。死神の処刑なんて、良いタイトルだな。)

そのCDに対し、興味が湧く岩本。そのCDケースを開くと歌詞カードのようなものは無く、真っ黒のCDが1枚、入っているだけであった。

CDを流そうとすると、

「なんだ…このCD…一枚に54曲も入ってやがるぞ…」

トラック数は、通常のCDに比べ、5倍近く入っていた。

そして、1曲目を再生する。







「た…助けてくれ…や…やめろ…」

何かに脅えた男性の声だった。

「ぐ、ぐわああ、あ…ああ!!」
そして男性の声は、苦しみ出す。刃物のようなものが刺さる音、苦しんでいる男性の声、吐息、決して演技とは思えないリアルなものである。

男性の声がなくなったところで1曲目は終了する。つまり男性が死亡したと思われるところである。

2曲目…

今度は女性の声である。首を絞められているのか、苦しみもがく甲高い叫び声が、岩本の耳に突き刺さる。やはりその女性が死亡したと思われるところで2曲目は終了する。







岩本は…







興奮していた…。


非日常的な内容の音楽を聴くことで、ストレス発散をしていた岩本にとって、【死神の処刑】は最高の宝となった。

それから、毎日、岩本は【死神の処刑】を聴いた。

上司に怒鳴られた日は、【死神の処刑】で流れる声を上司に見立てて、徹夜で聴いた…

同僚に苛ついた日は、その声を同僚に見立てた。


毎日毎日、岩本は聴いた。

しかし54種類の声にも、飽きは来る。

(もっと違うのが聴きたい!聴きたい聴きたい聴きたい聴きたい!!!!)

岩本は、あの中古CD屋に向かった。

「こ、この【死神の処刑】っていうCD、違う種類のものってありますか?」

暗い店員は【死神の処刑】を手に取り見て、答える。

「ありませんねえ。うちには、こんなCD置いたことないですからね。」

岩本は愕然とした。

「ふざけんじゃねえ!!!」
岩本は店員に叫ぶ。
岩本の狂気に満ちたストレスは、尋常でないほど溜まっていった。





この次の日。


岩本はあるものを購入した。

それは…








ボイスレコーダー。


岩本に迷いは無かった。岩本は自分で【死神の処刑】をつくることにしたのだ。
岩本の最初の獲物は決まっていた。

「すいません、今日は仕事で教えてほしいところがあるので、仕事が終わったあと少しだけ時間をください。」

「めずらしいな、岩本、しょうがねえな、少しだけだぞ」

岩本の口元がゆるむ。

「そんなに嬉しいか、岩本!お前は良い上司を持ったな!はっはっはっ!」





その日、岩本は自作の【死神の処刑】、記念すべき1曲目の収録を成功させた。
そして岩本の愛用しているパソコンにそれは、しっかり記録された。



それからおよそ1週間後…

岩本は2曲目収録に向け、動いていた。
「仕事で悩みがあるんだ、今日はなんでも奢るから一杯付き合ってくれないか」

「なんだ、めずらしいな…まあなんでも奢ってくれるなら、付き合ってやってもいいぜ」

「ありがとう。さて、どんな方法で…」

「ん?方法?」

「わるい、こっちの話でね」

「やっぱ変な奴だな、岩本は、ちょっと気味がわるいぞ、お前。」

そして、この日、2曲目の収録が成功した。




そして、それから数カ月後…


岩本は…
















この日、10曲目の収録を終えた。

10曲目を楽しみに岩本は家に帰る。

家に帰り部屋を開けた瞬間、岩本は異様な光景に足が震えた。

岩本の暗闇の部屋の中、消したはずの岩本のパソコンだけが明るく部屋を照らしている。
パソコンの前には、黒装束をまとった人間が座っていた。
その黒装束の人間は、岩本に背を向けた状態のため、どんな人間か想像がつかない。

その暗い部屋の中では、岩本が殺めた人間の声が静かに響いていた。


(死神…)

岩本は一瞬、そう思ったが、ふと我に返り、死神など存在しないはずだと自分に言い聞かし、黒装束の人間に叫んだ。

「お前!!だれだ!!勝手に他人の部屋に入りやがって!」

背を向けたまま黒装束の人間は静かに答える。

「あなたの持っているボイスレコーダーで10人目ですか?」

「うるせえ!てめえ、誰だ!!」

「じゃあ、あなたで11人目にしましょうか…」

黒装束の人間はそう言った瞬間、振り返り、手に隠し持った刃物で思い切り、岩本の心臓めがけて刺し込んだ。

岩本の苦しそうな声が暗い部屋に響き渡る。

黒装束の人間は何度も何度も岩本を刺す。


「やはり、あなたを選んで正解でした。」

岩本が見たその黒装束の人間は…

















あの中古CD屋の暗い店員だった。

「わたしのコレクションは最高だったでしょう、あなたならコレクションを増やしてくれると思ってました。」

「良い声ですね、65曲目さん…」

【終】

コメント(5)

本当に死神を呼んでしまうかもしれまへん…
世はひな祭りだっていうのに…
ストカメさんたらもう…
死の間際に話したら声入っちゃうじゃん
も〜

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