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創作恐怖話〜新感覚恐怖へ〜コミュのぼくらの恒久世界

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はじめに……

この話はスプラッタコメディです。
若干グロテスクな表現があるかもしれません。
そのことに同意した上で読んでいただければと思います。

管理人様へ
もし不適切な表現、内容、またはトピズレと判断されましたら遠慮なさらずに削除の程お願い致します。
かしこ。




──ぼくらの恒久世界 一見目──


「あんた、何回目だい?」
「はい?」

ある日の夕暮れ時、ちらほら帰宅者が増え始めた電車の中で奇妙な男に出会った。
出会ったと言っても相手はシートの隅に座る俺の左隣に腰をかけただけだ。
袖擦り合ったというべきかもしれない。
日常茶飯事なことではあるので、まだ出会いとも言えない段階である。
ただ男は不思議な質問で出会いを演出しているらしかった。

「む?その反応からするとやはりまだなんだね?」
「あの…質問の意図がよめないのですが?」
「ああ、すまない。この質問に答えられないということは間違いないな」
「?」

何を言っているのだろう?
男は名門私立高校の制服を着ている。
俺より明らかに年下のくせに、管理職の人のような気難しい顔で、それを支えるように顎に手をやっている。
やけに年を食っているようにみえる。
限りなく確信に近く、年上に感じられるのだ。
いや、理由はやはり判然としないので確信という言葉は適切な表現ではないのかも知れない。

「不思議そうな顔をしているな」
「は…?」
「ちなみに私は28回目だ」
「はぁ…」

一体何がいいたいのだろうか。

「あの…何なんですか?」
「特に深い意味はない」

だったら何故口にしたのだろうか。
なんだか気になる。
だが、突っ込んだら面倒なことになりそうでもあった。
そんな気配を感じてこれ以上の関わり合いは辞退する。

「……そうですか」

変な男だった。
そもそも気難しい顔をして名門の制服を着ているくせに、頭はアフロ、というかやけに上のほうがこんもりしているのだ。
シルエットでいえば電球のそれに近い。
おまけに緑色をしているもんだからピーマンのようにも見える。
正直、悪ふざけ意外の何ものでもない。
罰ゲームだろうか?
しかしそれにしてはあまりに威風堂々としていらっしゃる。
普段からこの格好であることはほぼ間違いなさそうだった。
そんな面妖な男は、こちらに興味を失ったのか反対側の席に座る人物に顔を向け、俺に対してしたようにシンプルで不可解な質問をぶつけていた。

「あんた何回目だい?」
「え…」

それみろ。
唐突にそんな漠然とした質問に答えられるわけが…

「あ……はいはい。あたしは3回目ですよ」
「…ひぇ?」

なぜ答える。
何故答えられる。
驚きのあまり変な声出してしまったではないか。
こんな質問に答えられるとはかなり特殊な人種ではないか、とそう思い、前かがみになってこっそり顔を覗き見る。

「貴方は何回目ですか?」

なんのことはない。
普通のOLだった。
新入社員よりキャリアウーマン寄りな印象。
でもいま一つ抜け切れていない感じの、ともすれば、普通にそこらにいそうな女性だった。

「28回目だ」
「28回目?!通りで……」

女性は男のアフロに釘付けになりながらも、言われてみればと納得する。
若年層で流行っている何かなのだろうか?
大学三年目に突入した俺はおっさんで、ろくにテレビも見ないから流行に乗り遅れていると言えばそうであろうが、どうにも腑に落ちない。
頻りに首を傾げてはみたが、誰か疑問に答えてくれるわけもなく、左の方では相も変わらず会話が続いている。
どころか盛り上がってさえいる。

「ベテランさんなんですね」
「否定はせんよ」
「尊敬しちゃいます」
「私のようになりたければアドバイスの一つもするが、如何かな?」
「それはもう、是非!!」

単純にこのOLも脳みそが真夏の日差しと湿気ですっかりボイルされているのかも知れない。
9月になったとはいえ、ここ、首都桃叫ではまだまだ残暑も厳しい。
仕方ないことかも知れない。
とはいえ、茹だった脳みそもこれから秋が深まるにつれ、緩やかに回復に向かっていくのだろうから、心配し過ぎる必要もないだろう。

「一つ、誰にも負けない武器を作り上げればいい」
「と言いますと?」
「私の場合はこれだな」

そういって男は自分の髪を指差した。
俺にはなんのことかは分からなかった。
だがOLは納得がいったようだった。

「なるほど。やはり分かりやすい個性、インパクトが大事だということですね」

成る程。
確かに奇人たるもの個性は大事であろう。
個性のない奇人などいるはずがない。

「浅いな。それではただの出オチというもの」

どうやら違ったようだ。
変態たるもの外見だけではなく、内面、挙動もあってこそ、とそういうことなのだろうか?

「要は分かりやすく、かつ、如何に有効活用するかということだな」
「有効活用、ですか」
「そうだ。一つ、自分の武器を見つけ、如何に活用するか、ということだ」
「つまり武器をあれこれ揃えるのではなく、一つの武器をどれだけ変幻自在に扱えるか、ということでよろしいのですか?」
「うむ。君はなかなか見所があるな」

言いたいことは分からないでもないが……話の核が相変わらず分かりかねた。
前提条件が分からないのだ。
そもそもアフロ学生とOLの共通の話題というものが想像つかない。
いい加減、傾げ続けた首が痛くなってきた。
疑問の余り、普段は30°ほどまでしか傾けない首も、いまや直角にほど近く、頸椎に思わぬ負担がかかっていたようだ。

『辛熟〜辛熟〜お降りのお客様は……』

電車が止まる。

「あ、私はここで。色々有難う御座いました」

OLはそんな言葉を男に告げる。

「うむ、精進したまえ」
「はい、それでは早速試してみますね」
「ふむ、まぁものは試しだ。やってご覧なさい」

さっぱり分からない。
というより、そんな暢気に話していてよいのだろうか?
発車を告げるベルが鳴り響いている。
女性はもしかしたら降りる気がないのかもしれない。

「それでは」
「では」

いや、やはり降りる気だったらしい。
そんな別れの挨拶を告げると女性は出口に駆け寄る。

「いざ!」

そんな逞しい声が聞こえた。

「ひょ?」

また変な声を出してしまった。
それも致し方ないことではある。
余りにあんまりな光景が、ショッキングな光景が目の前で繰り広げられたのだから。
以下、実況中継を致すこととする。


「いざ!」
───勇ましい掛け声とともに、飛び出しましたは今期一番の有望株!本田耳子(通称)25歳独身!
果たして今回は我々をどのように魅せてくれるのでしょうか?!
「あぅっ!」
───おっと、アクシデント、アクシデントのようです!
これは痛い!捨寝流の罰点印の金具が弾け飛ぶ程の転倒!
どうやらヒールの踵が折れた模様です!
打ち立てられた銀の塔は脆くも崩れ去ってしまった!
ゴールまであと一歩!僅か一歩が足りないッ!!

ぷしゅ〜───。

「ぴぎっ」
───あーーーっとぉ?!!何と、何と、何ということでしょうか!?
無情にも扉が閉まる!!
いや閉まりきらなかった!
本田選手のくびれを挟みこむ!
本田選手、もがく!
もがく!!
スカートが捲れ上がるのも構わずもがくぅッ!!!
しかし、しかし何ということか!!
必死の抵抗を試みるも自動ドアは離さない!!
鉄扉はこのくびれ、死んでも離さんと言外に告げております!
行動で示しております!!
何という、何というセクハラオーーートメーーションッ!!!
人間に恋する寡黙な10代!!
一心に挟み続ける愚直な鉄扉!!
「は、離してー!!」
───本田選手、拒む、拒む、拒み続ける!!
まるで心に決めた人がいるの、と言わんばかりに必死な抵抗!!
しかしそれでも鉄扉は離さない!
どころか溢れるリビドーに任せて徐々に力を増していくーー!!
体温の低い人は心が温かいとは言いますがこれはどう解釈すればいいのか!?
情熱的と言えば聞こえはいいが、相手の心を全く思いやっておりません!
何という関白ぶり!!
否!関白どころか絶対王政も真っ青な自己中ぶり!!
やはりそこは平成生まれ!!
キレる10代!!
何という非情さ!冷酷さ!
不言実行厳格真面目なフリをしていたのは全てこの瞬間への布石だったのか?!
型破り!!型破りであります!
外見だけありふれた型ではありましたが、そんな自己からの脱却を果たしたのでしょうか、啓蒙思想ここにあり!!
リビドーに任せて女性の自由を束縛している!!
何をしている、何をしている国家権力!
黙ってていいのか国家権力!!
弱者を救ってこそのお給金!!
救えないのか救わないのか?!!
それでは給料泥棒も同然!
観客は一心に一心に彼女の安全を願う!
叶えて国家権力!
早く彼女を救って国家権力!
みんなの心はただ一つ!
彼女をあの寡黙な悪漢の手から救い出して欲しい!!
だが、だが来ない!
国家権力は駆けつけない!
女性は最早動けない!
抵抗する力尽きたか!
無力な女性を保護することはもはや叶わぬ夢なのかッ?!
『列車が発車します。白線の……』
───あーーー何という悲劇!!
神は死んだか!!
彼女を救えるものはもういないのか!!
ホームにゲーム終了のカウントダウン!
ゲームセットまであとわずか!!
観客たちに絶望が広がる!
だが時間は待ってくれはしない!!
バッドエンドに向け今列車が緩やかに動き出したぁーーッ!!
「ぎ……!!ぎゃ……ふ……がっ!!」

じ……じゅ……びち……がじゅ……びちち…びちちち……

───あ、ああ、ああ……国家権力は間に合わなかった!
赤、赤、赤、赤い液体が窓に塗られて行く!!
ここからは見えませんが多分ホームの荒いコンクリートによって削られているものと思われます!!
まだ間に合うか!?
彼女の命はいうまでもなく風前の灯火!!
にも関わらずレフェリーストップはありません!!
何という過酷な競技!!
我々は何と無力なのでしょう!
手出しをすることは出来ません!!
思春期の暴走に、押さえきれぬリビドーによって女性はミンチになっていく!
「今夜はハンバーグね」
お母さん、そんなことを言われても食べられない!
もう死んでも食べられない!
死んでしまっては食べられない!
日本のハンバーグはもう食卓に昇ることはないでしょう!!
日の目を見ることもないでしょう!!
永遠は幻か、永遠の国民食はもう永遠ではなくなった!
我々は指をくわえたまま女性がミンチになって行く様をただ見ているしかないのか?!
恐れおののく観客を前に冷酷な鉄扉は己の所業を見せつけるかのようにその身を赤く染める!

ぐぁちんッ!!!

こ、これは……ホーム端の柵を利用した即席ギロチンがついに断頭を果たした音でしょうか?!
間に合わなかった!!
全てが遅かった!!
窓の外を赤いラインがゆるやかに奔る!!
車内に流れ込むも赤!
隙間から吹き荒む風に運ばれる赤い飛沫!!
ついに破れる!!
本田選手、ついに破れるーーーッ!
無念!!
本田選手道半ばにして力尽きるーーーーッ!!
次の犠牲者は誰か?!
赤い身をそのまま鉄扉はなおも悠然と立っている!!
誰か、誰かやつに勝てる者はいないのか!!!


───以上、中継終わり。

「って……死んだ、よな?」

呆然と今更な言葉が口からこぼれてしまった。
事故。
事故だった。
目の前で不幸な事故が起きた。
助けることは出来なかった。

「うむ、天晴れ」

なのに隣で男は満足そうに頷いている。
悪ふざけもいいところだった。

「お、お前……ッ!!」
「いいぞーー!!」

怒りの余り、男に殴りかかろうとした瞬間有り得ないことが起きた。

「感動した!!」
「いやぁ見事だったね」
「これは近年稀にみる出来だよ!」

などと歓声が沸く。
さらには拍手が、割れんばかりの拍手が車内に響き渡る。
赤い飛沫に身を染めながら彼女のことを褒め讃えるサラリーマン。
写メにとる女子高生。
びくっびくんと微弱な痙攣を起こす肉塊と記念撮影のつもりか一緒に映るやつまでいる。

「な……なんだよ、これ」

意味が分からない。
人が一人死んだというのに。
おかしい……おかしい…おかしいって……おかしいおかしいおかしいこんなのはッ!!
こんなのってないッ!!

「4回目でこれとはな……恐れ入る」

そんな中、アフロ学生は一人感慨に耽っている。

「何なんだ……なんだってんだ!!人が死んだんだぞ?!」

俺はアフロ学生を問い詰めていた。

「そういえば君は未経験者だったね」
「何ふざけたこと言ってるんだ……目の前で……さっきまでお前と話してた……女性がミンチになったんだぞ?……何でそんな……」

───落ち着いていられるのか。
そう言葉を続けることは出来なかった。
だが男は平然と答える。

「ギャグ死だよ」
「はっ?」
「だからギャグ死だ」

聞き慣れない言葉だった。
いや聞いたことはあったかもしれない。
だがこの場にそぐわない言葉だったから脳が受け付けなかったのかもしれない。

「よく漫画であるだろう?女性にビンタされた男が車に跳ねられ20m程飛んだにも関わらず、次の回では何事もなかったかのように復活している。というアレだ」
「…………ドッキリ、なのか?」

あんな生々しい、ショッキングな出来事が実はドッキリ企画だったというのか?
いつの間にか人形といれ代わっていたというのか?
笑えない。
笑えない……そんな冗談なんてあり得ない。
笑えるわけ……ない。

「そうではない。彼女は確実に死んだよ」
「……」
「だが蘇る」
「わけ………分からねぇ」
「ふむ。きっとそのうち分かるだろう。これからはニュースや新聞をよく見なさい。そうしていれば自然と分かって来るだろう」
「何を…言って……」

言葉は続かなかった。
男はやはり頭がおかしいのだ。
この男だけではない。
ここの連中みんな、みんないかれてる。
いかれているのだ。
死んだ人間が蘇るわけがない。
有り得ない。
んなもん信じられるか……。


そんな考えともつかない考えがぐるぐる回っているうちに次の駅にたどり着く。

「私はここで降りる。縁があればまた会うこともあるだろう」
「……」

男は立ち上がり悠々と何の気負いもない足取りで出口に向かう。
血まみれの女性の下半分を跨いで、血まみれのドアをくぐる。
一度女性の死体に、サムズアップをしたかと思うと、男はやはり悠々と去っていった。
ホームに赤い足跡を残して。

コメント(13)

>キート⇔ゼトワールさん


お褒めいただき光栄です。
反応してもらえるとやっぱり嬉しいものですね。

コメントは消さなくて大丈夫ですよ。
続きは別にトピ立てしてまとめる気でいましたので。
管理人さんにまだ許可得てませんが(汁)

続きは忘れた頃に書きますので以後よろしくどうぞ。
これは面白いwww

異常な視点で描かれる異常な話ですね。でもどこか現実感があるようなないような…。このあとの展開がどうなるかは色々想像してますが、接眼さんのセンスに期待してます。

何の脈絡のないところから出てくる古館風の実況が熱いww
>たいげんさん

ありがとうございます。
実況中継は……まぁ悪ふざけが過ぎましたかね。
スプラッタの皮を被ってるくせに、コメディのふりした怪奇小説を目指していましたので、つい書いてしまいました。
陳謝。

まだ続きは悩むところが御座いますので、次回までいましばらくお待ち頂ければと思います。
>イ゛スラさん

有難う御座います。
とても励みになります。
新感覚恐怖というコミュですので、無茶苦茶な展開も許されるかと調子にのってしまいました。
そのせいで怖さが薄れて(というか無くなって)しまいましたので、次回からは自分が恐れているものを上手く出せていけたらと思っております。
気長にお待ち頂けたら幸いです。
シュールだ。

悲劇をプロレスの実況みたいにするとは。

どうやって生き返るのかに興味が湧きました。

続きが読みたい。
>dekaoさん


感想ありがとう御座います。
ある意味、先輩であられるdekaoさんからコメいただけるとは……探偵シリーズ楽しく読ませていただいてます。

僕が続きを書いたら、探偵シリーズの続きも早く書いていただけるのかなと気になるところです(因果関係ありませぬが)。
>HIROさん


やっぱり面白くはなかったですかね?
自分でも怖い話というには違う気はしていましたが……。
如何せん、自分で書いたものは正しく評価出来ないので、そういったご指摘も有り難い限りです。
>HIROさん


いえいえ、特に気を損ねることもなかったですよ。
感想は何であれ欲するところなのです。
一応自分の中では中盤のにも意味はあるのですが、それは後ほど分かっていただけると思います。
ただやはりこの文だけだと分からないと思います。実は不親切な造りですw
続きはこちら

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