ナポリの歴史地区の見どころ そのナポリの歴史地区で私が最も価値ある場所だと思うのが国立カポディモンテ美術館 Museo e Galleria di Capodimonteである。ブルボン家の王宮の一つで、ブルボン家のカルロが1734年にジョヴァンニ・アントニオ・メドラーノとアントニオ・カネヴァーリに建設を依頼し建てた建物であるカポディモンテ王宮Palazzo Reale di Capodimonteで、スペインブルボン家の初代国王カルロが母エリザべッタ・ファルネーゼから相続した絵画のコレクションを収納するために建設した。私はこの美術館を5回訪れているが、いつも新しい発見のあるイタリア有数のコレクションがあり、膨大な作品が展示されているが、ラファエッロ、シモーネ・マルティーニ、マサッチョ、ジョヴァン二・ベッリー二、ティツィアーノ、ブリューゲル、カラヴァッジョ(鞭打ち)などの傑作がある。王宮内の居室には磁器の間があり、そこでは素晴らしい3000個以上の陶磁器が壁一面に飾られているので一見の価値がある。
王宮 Palazzo Realeは、横幅169mもあり、ナポリ湾の港に君臨している。スペインのハプスブルク家が支配していた1600年から1602年にかけて建築家のドメ二コ・フォンターナDomenico Fontanaによって建設された。現在内部には美術館があり、18世紀から19世紀にかけての絵画や美術工芸品、家具などが展示されている。この中にテアトロ・デ・ラ・コルテTeatro de la Corteがある。この劇場は1768年にF・フーガが改装し、パイジェッロが作曲した「セレナータ」で開場した。 1993年に訪れた時は、内部の美術館を鑑賞し、劇場では、パイジェッロ作「中国人の偶像」を見た。 ナポリの作曲家によるオペラ・ブッファなどがよく上演され、現在でもオペラの上演は行われている。
ドゥオーモ Duomoは、ナポリの守護聖人ジェンナーロに献堂された教会で13世紀に建設され、その後度々改築された。この聖堂は何度か訪れたが、2006年5月に訪れた時は、細部まで見て回った。右側廊3番目にナポリの守護聖人サン・ジェンナーロを祭ったサン・ジェンナーロ礼拝堂Capella di San Gennaroがあり、この礼拝堂は1608年から1637年にかけて製作された。内部はバロック様式で、壁画はドメ二キーノ、クーポラはランフランコなど当時の一流芸術家が製作に携わり、主祭壇に聖ジェンナーロの像がある。身廊の大窓の間に描かれた「聖人」は殆どルカ・ジョルダーノが描いた。また右側廊のペルジーノ作「聖母の被昇天」があるミヌトロ礼拝堂は、ボッカチョが「デカメロン」の一話の舞台に選んだ場所である。若きラファエッロの師だったペルジーノの絵は色彩も鮮やかで、描かれた女性も愛らしく素晴らしい作品だった。ドゥオーモには銀製の聖遺物器があり、その中に聖人の頭蓋骨と血液が小瓶に収められていて、この血液は聖人の殉教の時(305年)、盲目を癒された信徒が集めたといわれ、毎年5月と9月盛大な祭があり、その時に凝固された血液が、液体に戻る奇跡が繰り返されている。
カステル・ヌォーヴォ Castel Nuovoは、1441〜1503年にかけてナポリを支配したアンジュー家の王宮で、べヴェレッロというカプリ島やプロチダ島へ行く船が出港する港の近くにある。当時既に存在した王宮と区別する為にカステル・ヌォーヴォと呼ばれた。中庭正面にパラティーナ礼拝堂Capella Palatinaがあり、これはアンジュー家の唯一の遺品。1990年開場した市立美術館があり、15世紀から19世紀にかけてのナポリの絵画がある。私が2004年夏に訪れた時は、イエラーチェの彫刻、ルカ・ジョルダーノの絵画なども素晴らしかったが、一番感動したのは、ナポリ派のオペラの作曲家で傑作「奥様になった女中」を作曲し、26歳で早逝したジョヴァンニ・バッティスタ・ペルゴレージの肖像画が見られた事だった。ドメニコ・アントニオ・バッカロDomenico Antonio Vaccaroの描いた作品で、鬘をかぶった面長のペルゴレージの顔が美しく描かれていた。
サンタ・キアーラ寺院 S.Chiaraは、1310〜28年にかけてロベール・ダンジューの妻サンチャ・ディ・マヨルカによって建設されたが、1943年の爆撃でほぼ全部破壊されたが、14世紀の様式に復元された。主祭壇にはペルティーニ兄弟が製作したロベール・ダンジューの墓の断片がある。聖堂の左手奥の中庭にクラリッセ回廊Chiostro delle Clarisseがある。これは82mx78mもある大きな中庭でベンチや回廊の壁などが美しい色彩のマジョルカ・タイルで装飾されている。ここは1740年ドメ二コ・アントニオ・ヴァッカロがゴシック様式の歩廊の中央に田園風の庭園を設計し、ジュゼッペ・マッサとドナート・マッサが、歩廊を飾る黄色,青、緑のマジョルカ焼きを製作した。天井は緑で覆われ、大理石の柱には美しい花や植物の絵が描かれ、ベンチなどにも牧歌的な絵が描かれている。ここはそこに身を置いているだけで、自分が南の町にいる事を実感し心が踊る不思議な場所だった。
サン・カルロ劇場 Teatro San Carloは、イタリアでも最も美しい劇場の一つ。ナポリで上演された最初のオペラは「ネローネIl Nerone」の名前で上演されたモンテヴェルディMonteverdiのポッペアの戴冠L'incoronazione di Poppea(1651)といわれるが、カヴァッリのディドーネDidone(1650)である可能性も否定できない。1598年フィレンツェで誕生したオペラは、その後マントヴァ、ヴェネツィアを経由して18世紀に入るとナポリにその中心が移った。そのナポリオペラの繁栄を支えたのが、1737年に建設されたサン・カルロ劇場。当時ナポリを支配していたのはブルボン家のナポリ王カルロ3世、彼の命によりジョヴァン二・メドラーノGiovanni Medranoが設計を担当し、サッロSarroの「キロスのアキレスAchille in Sciro」で開場した。私は、この劇場を10回位訪れている。 2006年5月に訪れた時は、ヴェルディの「オテッロ」の初日だった。オペラも素晴らしかったが、妻はサン・カルロ劇場のジュゼッペ・カンマナーロフの描いた天井画、雰囲気の優雅さに改めて感嘆していた。