ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

三文物書へな書庫をコミュの哀れな恋愛小説家

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
『なぁ…明日の全国大会をかけた試合に勝ったら…付き合ってくれないか?』

『先輩…わかりまし《ベキッ》

「やってられるかあぁーッ!」

読みかけの本を置いて怒号に振り向くと、平机をひっくり返そうとしている悠人の姿。上腕二等筋に力が入り、腰を落として体全体で必死になってひっくり返した。

「やるじゃない。中学生とは思えないわ」

「俺には真希のやることが中学生の仕業に思えない!なんだこれは!」

悠人が指差した先は机の脚。それぞれの先には4kgの鉄アレイが縛り付けてある。

「サービス」

「ふざけんな!悪意の塊4つもつけやがって!」

「そうね、次は8つにするわ」

「増えた!」

「そんなに必死になって楽しい?」

「楽しいワケあるか!ついでに言えば俺はもうこんなモン書かないぞ!」

くたびれたホットカーペットの上に散らばる原稿用紙。その数、実に300枚はありそうだ。

「何が悲しくて王道ラブストーリーを日々たしなめなきゃならないんだ!」

「売れてるからよ」

「世の中、金か!」

「当たり前じゃない。意思を持たない物は裏切らないわ」

真希の返答に唖然とした悠人は机を元に戻し、散らばった原稿用紙を拾い始めた。
そう、彼は恋愛小説家である。真希が読んでいた本は彼の処女作で、いきなりミリオンセラーを達成した。
と言っても、彼が本当になりたかったのは官能小説家。さすがに中学生が官能小説家になるのには理解を得られず、家族総出の説得の結果、今に至る。

「もういやだ…なんで書きたいものを書いちゃいけないんだ…」

「15歳だからよ」

「わかってるよ!はっきり言いやがって!」

「取り柄だもの」

「真希に俺の気持ちが」

「わからないわね。…いいわよ、官能小説書いても」

「なに!ほんとか!」

「そんなに勢いつけると首がもげるわよ」

「この際もげてもいい!それより本当に書いていいのか!?」

「いいわよ。おじさんたちは説得しておくわ」

「リビドー全ッ開!だぞ!《ピー》とか《ピー》とか《ピーーーー》」

「ピーピーウルサイわね。さっさと書きなさい。〆切まであと13時間よ」

「任しとけ!余裕で入稿させる!」




この後、出来上がった原稿を真希があっさり改ざんし、
《新時代の幕開け!若き天才恋愛小説家の官能的な純愛小説》
という帯のついた本がダブルミリオンを達成するのだが、それはまた別のお話。

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

三文物書へな書庫を 更新情報

三文物書へな書庫をのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング