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コメント(50)
かなり遅くなってしまってすみません。
今日台湾の3人の文章を朴先生にチェックしてもらってから1つにまとめるので、この文からだいぶ変わると思います。
終りの部分は書いてないので中途半端な感じの文になっています。すみません。
現在、世界のノートPCの約90%は台湾製である。まさにPC王国ともいえる台湾であるが、台湾PC事情については日本ではあまり知られていないのではないだろうか。
1970年代末、台湾政府は電子産業を重点戦略産業と指定し、79年に新竹科学工業園区の設立とその優遇政策を決定した。この設立の際重要となってくるのが、そのモデルとなったシリコンバレーとのつながりである。1960−70年代、台湾からアメリカに留学した多くの人材は、シリコンバレーのIBM、インテルなどのハイテク企業で経験を積んだ。その後、新竹科学工業園区の設立に伴い政府の奨励策により多くの人材はその技術や人脈を持ち帰り、同園区内で次々に企業を設立し、同園区の発展を牽引することになった。この様に台湾のPC産業は同園区を含む台北を中心に成長を遂げた。
台湾PC産業の特徴としては、取引先ブランドの商品の生産を行うOEM、そしてその設計と生産両方を担うODMに特化したことが挙げられる。このOEM・ODMの利点としては、自社ブランド商品を売り込む場合の多額の初期投資が必要性、また既に市場が他社製品でひしめいている場合には新規参入は困難となることである。しかし、OEM・ODMの場合は、自社の設計力・製造力を既存のブランドメーカーに売り込むことですぐに生産につなげることが可能になる。そして現在、様々な台湾ノートPC企業は、HP、DELL、東芝等の世界的メーカーから大量の受託生産を引き受けている。
また、台湾PC産業を語る上で忘れてはいけないのはベンチャー企業の存在である。1983年、政府によりベンチャー企業に資金を供給するベンチャーキャピタル(以下、VC)産業が導入された。絶えず競争が繰り広げられるPC産業の中では多くの企業が倒産・廃業するが、VC産業により新たなベンチャー企業の創設が容易となることで、台湾PC産業が活発化し、産業発展につながっているといえる。台湾を代表する宏基電脳(Acer)もベンチャー企業であり、PC普及の機会を捉え大企業へと成長したのである。
台湾PC産業が発展した要因に、生産規模の拡大とコスト削減を図り、海外への積極的な投資により生産拠点を移転したことが挙げられる。1990年代前半、中国では改革開放政策が進み投資環境が大幅に改善されたこと、また中国の安価で豊富な労働力や土地、そして中国市場の潜在性などから台湾の投資先はASEAN諸国から中国へとシフトする。そして1994年にACERが蘇州新区にデスクトップPC工場を進出させたことをきっかけに台湾PC企業の中国進出が始まるが、その中でも台湾企業は上海市から江蘇省江蘇市にかけての長江デルタに集積している。では、なぜ広大な土地を持つ中国の中で長江デルタを選ぶのであろうか。まず、中国沿海部のほぼ真ん中に位置することから中国大陸の交通・物流の中心地であること。次に、質が高く、幅が広く、層の厚い人材が揃うということ。そして最後に、人口が多く消費市場が大きいことから中国最大のマーケットを有することが挙げられる。また、産業集積のメリットとしては、同一の産業が集積すると、中間投入財を生産する専門分化した企業が集まり、その結果中間投入財を利用する企業の生産性が上昇する。このように中国で確実に規模を拡大させる台湾PC産業だが、2001年、台湾PC企業と中国との生産関係に転機ともいえる政策が台湾政府から発表される。それは台湾企業の中国でのノートPC生産の解禁であり、これを機に台湾ノートPC企業は中国へと生産基地を移転させた。これは民間企業からの要望の高まり、また規制をかいくぐって間接的な手法で中国に投資する企業家が出現したことで政府がやむなくとった政策だが、その結果、台湾PC産業のノートPC生産地の構成は、2000年に中国：台湾での生産比が6：94だったのが2004年には82：16に逆転し、現在では95%が中国で生産されている。
今日台湾の3人の文章を朴先生にチェックしてもらってから1つにまとめるので、この文からだいぶ変わると思います。
終りの部分は書いてないので中途半端な感じの文になっています。すみません。
現在、世界のノートPCの約90%は台湾製である。まさにPC王国ともいえる台湾であるが、台湾PC事情については日本ではあまり知られていないのではないだろうか。
1970年代末、台湾政府は電子産業を重点戦略産業と指定し、79年に新竹科学工業園区の設立とその優遇政策を決定した。この設立の際重要となってくるのが、そのモデルとなったシリコンバレーとのつながりである。1960−70年代、台湾からアメリカに留学した多くの人材は、シリコンバレーのIBM、インテルなどのハイテク企業で経験を積んだ。その後、新竹科学工業園区の設立に伴い政府の奨励策により多くの人材はその技術や人脈を持ち帰り、同園区内で次々に企業を設立し、同園区の発展を牽引することになった。この様に台湾のPC産業は同園区を含む台北を中心に成長を遂げた。
台湾PC産業の特徴としては、取引先ブランドの商品の生産を行うOEM、そしてその設計と生産両方を担うODMに特化したことが挙げられる。このOEM・ODMの利点としては、自社ブランド商品を売り込む場合の多額の初期投資が必要性、また既に市場が他社製品でひしめいている場合には新規参入は困難となることである。しかし、OEM・ODMの場合は、自社の設計力・製造力を既存のブランドメーカーに売り込むことですぐに生産につなげることが可能になる。そして現在、様々な台湾ノートPC企業は、HP、DELL、東芝等の世界的メーカーから大量の受託生産を引き受けている。
また、台湾PC産業を語る上で忘れてはいけないのはベンチャー企業の存在である。1983年、政府によりベンチャー企業に資金を供給するベンチャーキャピタル(以下、VC)産業が導入された。絶えず競争が繰り広げられるPC産業の中では多くの企業が倒産・廃業するが、VC産業により新たなベンチャー企業の創設が容易となることで、台湾PC産業が活発化し、産業発展につながっているといえる。台湾を代表する宏基電脳(Acer)もベンチャー企業であり、PC普及の機会を捉え大企業へと成長したのである。
台湾PC産業が発展した要因に、生産規模の拡大とコスト削減を図り、海外への積極的な投資により生産拠点を移転したことが挙げられる。1990年代前半、中国では改革開放政策が進み投資環境が大幅に改善されたこと、また中国の安価で豊富な労働力や土地、そして中国市場の潜在性などから台湾の投資先はASEAN諸国から中国へとシフトする。そして1994年にACERが蘇州新区にデスクトップPC工場を進出させたことをきっかけに台湾PC企業の中国進出が始まるが、その中でも台湾企業は上海市から江蘇省江蘇市にかけての長江デルタに集積している。では、なぜ広大な土地を持つ中国の中で長江デルタを選ぶのであろうか。まず、中国沿海部のほぼ真ん中に位置することから中国大陸の交通・物流の中心地であること。次に、質が高く、幅が広く、層の厚い人材が揃うということ。そして最後に、人口が多く消費市場が大きいことから中国最大のマーケットを有することが挙げられる。また、産業集積のメリットとしては、同一の産業が集積すると、中間投入財を生産する専門分化した企業が集まり、その結果中間投入財を利用する企業の生産性が上昇する。このように中国で確実に規模を拡大させる台湾PC産業だが、2001年、台湾PC企業と中国との生産関係に転機ともいえる政策が台湾政府から発表される。それは台湾企業の中国でのノートPC生産の解禁であり、これを機に台湾ノートPC企業は中国へと生産基地を移転させた。これは民間企業からの要望の高まり、また規制をかいくぐって間接的な手法で中国に投資する企業家が出現したことで政府がやむなくとった政策だが、その結果、台湾PC産業のノートPC生産地の構成は、2000年に中国：台湾での生産比が6：94だったのが2004年には82：16に逆転し、現在では95%が中国で生産されている。
垂直分裂とレノボ(前半)
３−１、中国パソコン産業における垂直分裂
中国パソコン産業の強みの一つ目として垂直分裂を挙げることができる。パソコン産業における垂直分裂のメリットとして、以下で述べるような初期投資にかかるコストの削減と外部経済（正の外部経済）を挙げることができる。
まず、初期投資にかかるコストの削減についてであるが、垂直分裂が進む以前、ハイテク産業であるパソコンの分野ではＩＣやＯＳといった部門で、開発と生産に要する初期投資が巨大化し、自社向けに生産するだけでは初期投資を回収できなくなった。つまり、最終製品で１社のメーカーが獲得できる需要に比べて、中間財であるＩＣやＯＳの生産に要する初期投資を回収するのに必要な需要量が格段に大きくなったのである。そのため、垂直分業が進むことによりパソコン産業において、基本的なＩＣチップの製造、コンピュータの設計、ＯＳや応用ソフトの開発、製造の販売を別々の企業が担ったり、企業はある部門を他社と統合し独立会社を作ったりすることにより、企業間競争が生まれ、より安く部品を得ることができるようになった。要するに、投資が少なくなれば需要量に比例して利益は増加するということである。このため、中間財などの部品を外部から購入したりすることで初期投資の削減を図った。この事が垂直分裂の利点の一つである、初期投資のコスト削減である。
次に外部経済（正の外部性）とは、ある経済主体の意志決定が市場を介することなく及ぼす影響のことである。 かつての中国パソコン産業ではコンピュータの設計、ＯＳの開発、ＩＣチップの生産をすべて自社でまかなう垂直統合の形態をとっていた。しかし、先に述べたような生産コストの問題によって垂直統合から垂直分裂が盛んに行われ、現在では別々のメーカーがそれぞれ得意な専門分野を担当している。これによってパソコンを完成させるために企業間でのオープンな取引、そして他社のどんな製品にも対応できるような各部品の互換性が必要とされるようになった。この互換性のある製品、すなわち互換品を作ることによって人気のある製品(マイクロソフトのＯＳ、インテルのＣＰＵなど)の恩恵を享受することが可能となり、自社製品の売り上げをのばすことが出来る。この外部経済が中国パソコン産業における強みの一つになっている。
３−１、中国パソコン産業における垂直分裂
中国パソコン産業の強みの一つ目として垂直分裂を挙げることができる。パソコン産業における垂直分裂のメリットとして、以下で述べるような初期投資にかかるコストの削減と外部経済（正の外部経済）を挙げることができる。
まず、初期投資にかかるコストの削減についてであるが、垂直分裂が進む以前、ハイテク産業であるパソコンの分野ではＩＣやＯＳといった部門で、開発と生産に要する初期投資が巨大化し、自社向けに生産するだけでは初期投資を回収できなくなった。つまり、最終製品で１社のメーカーが獲得できる需要に比べて、中間財であるＩＣやＯＳの生産に要する初期投資を回収するのに必要な需要量が格段に大きくなったのである。そのため、垂直分業が進むことによりパソコン産業において、基本的なＩＣチップの製造、コンピュータの設計、ＯＳや応用ソフトの開発、製造の販売を別々の企業が担ったり、企業はある部門を他社と統合し独立会社を作ったりすることにより、企業間競争が生まれ、より安く部品を得ることができるようになった。要するに、投資が少なくなれば需要量に比例して利益は増加するということである。このため、中間財などの部品を外部から購入したりすることで初期投資の削減を図った。この事が垂直分裂の利点の一つである、初期投資のコスト削減である。
次に外部経済（正の外部性）とは、ある経済主体の意志決定が市場を介することなく及ぼす影響のことである。 かつての中国パソコン産業ではコンピュータの設計、ＯＳの開発、ＩＣチップの生産をすべて自社でまかなう垂直統合の形態をとっていた。しかし、先に述べたような生産コストの問題によって垂直統合から垂直分裂が盛んに行われ、現在では別々のメーカーがそれぞれ得意な専門分野を担当している。これによってパソコンを完成させるために企業間でのオープンな取引、そして他社のどんな製品にも対応できるような各部品の互換性が必要とされるようになった。この互換性のある製品、すなわち互換品を作ることによって人気のある製品(マイクロソフトのＯＳ、インテルのＣＰＵなど)の恩恵を享受することが可能となり、自社製品の売り上げをのばすことが出来る。この外部経済が中国パソコン産業における強みの一つになっている。
垂直分裂とレノボ(後半)
以上のようにこれら二つの事柄が垂直分裂のメリットとなっているが、その一方で別の解釈もできる。つまり、垂直分裂が進んでいるということは、パソコンが他社の作った部品の組み合わせによって構成されているということを意味している。また、外部経済を享受するために互換性のある製品を作ることは製品の同質化を招いているとも考えられる。一般に製品が同質化すると市場は価格競争に陥りがちである。日本ではあまり行われていないことだが、一般の人が市販の部品を購入してブランド品とあまり遜色ないパソコンを組み立てることもできる。実際に中国では組み立てを行ってくれる業者が多くおり、彼らによって作られたブランドなしパソコン(中国では兼容機と呼ぶ)が市場において大きな存在感を示している。実際に兼容機の中国市場でのシェアは１９９６年には４４パーセントという高いシェアを誇っていた。兼容機はブランド品ではないが、機能的にはブランド品と遜色ない上に、低価格である。そのためブランドの信頼感よりも価格を重視する消費者が多い中国市場では、低価格な兼容機がかなり力を発揮している。技術力のあるブランドメーカーといえども性能の面で決定的な差別化ができないため、兼容機との激しい価格競争を強いられており、パソコン産業は利幅の薄い産業となっている。中国ブランドメーカーの代表である聯想集団(レノボ)もその例外ではない。
レノボは１９８４年に中国科学院計算技術研究所の研究者たちによって設立された企業である。設立当時は海外メーカーのパソコン代理店事業を行っていたが、１９９０年から自社製のパソコンを製造し始めた。１９９１年に中国政府がパソコンの輸入規制を緩和したことで、９０年代前半は海外メーカーのシェアが高かった。その中でレノボは家庭用コンピュータを中国で初めて売り出すなどして１９９６年に海外メーカーを抜いてトップとなった。その後も中国国内市場を重視した戦略で、市場の拡大とともに売上を伸ばし、２０００年には世界１０大メーカーにランクインするまでになった。しかし、２００１年以後はその成長が鈍化し始めた。実際、２０００年の販売台数は前年比９３パーセント増であったが、０１年には同１７パーセントとなり０２年、０３年も１５パーセント前後の増加にとどまった。その要因はアメリカにおけるＩＴバブル崩壊や海外メーカーによる進出など様々であるが、兼容機による攻勢もレノボに大きな影響を与えていた。先ほども述べたように、製品が同質化している中では兼容機の最大の武器である価格が力を発揮する。レノボは兼容機に対して更なる低価格で挑戦したがその結果、レノボパソコンの販売利益率は１パーセントにまで落ち込んでしまった。このような状況を打開するために２００４年以降、レノボがとった戦略は海外展開することだった。レノボは以前にも海外展開しようとしたことがあったが、知名度やブランド力がないため海外メーカーとの競争に勝てないという判断から断念していた。しかし今回はその点を補うために、ＩＢＭのパソコン事業部門を買収するという驚くべき戦略に打って出た。２００４年当時、レノボは中国市場ではトップのシェアを誇っていたが、世界的に見れば第９位のパソコンメーカーに過ぎなかった。そのレノボがＩＢＭを買収したことで一気に世界第３位のパソコンメーカーとなったのである。ＩＢＭは国際市場でトップレベルの販売ネットワークを持っていたため、中国市場のみに特化していたレノボにとっては強力な武器となる。また、ＩＢＭの商標を5年間使用できることになったので海外でのブランド力がないというレノボの問題も解決できた。特に買収前はデスクトップ型に比べ、ノート型の生産量が少なかったレノボにとってＩＢＭノートパソコンの商標である「ＴｈｉｎｋＰａｄ」を手に入れることができたのでとてもメリットがあったと考えられる。ただ、ＩＢＭのパソコン部門はもともと赤字体質であったためその点が心配された。しかし、右図のようにレノボとＩＢＭパソコン部門の会計上の統合がなされた２００６年３月期には純利益が5分の1になったものの、なんとか黒字を保つことができたのでひとまず成功したと言える。
このように中国パソコン市場では垂直分裂が進みすぎた結果、製品同質化による際限ない価格競争というデメリットももたらされている。製品同質化の中で生まれた兼容機などのブランドなしパソコンはブランドメーカーにとってたしかに厄介な存在である。しかし、他社の作った製品の組み合わせによって構成されているというパソコンの構造や、ブランドの信頼感よりも価格を重視するという中国の消費者の考え方が変化しない限り、今後も存在し続けるだろう。
以上のようにこれら二つの事柄が垂直分裂のメリットとなっているが、その一方で別の解釈もできる。つまり、垂直分裂が進んでいるということは、パソコンが他社の作った部品の組み合わせによって構成されているということを意味している。また、外部経済を享受するために互換性のある製品を作ることは製品の同質化を招いているとも考えられる。一般に製品が同質化すると市場は価格競争に陥りがちである。日本ではあまり行われていないことだが、一般の人が市販の部品を購入してブランド品とあまり遜色ないパソコンを組み立てることもできる。実際に中国では組み立てを行ってくれる業者が多くおり、彼らによって作られたブランドなしパソコン(中国では兼容機と呼ぶ)が市場において大きな存在感を示している。実際に兼容機の中国市場でのシェアは１９９６年には４４パーセントという高いシェアを誇っていた。兼容機はブランド品ではないが、機能的にはブランド品と遜色ない上に、低価格である。そのためブランドの信頼感よりも価格を重視する消費者が多い中国市場では、低価格な兼容機がかなり力を発揮している。技術力のあるブランドメーカーといえども性能の面で決定的な差別化ができないため、兼容機との激しい価格競争を強いられており、パソコン産業は利幅の薄い産業となっている。中国ブランドメーカーの代表である聯想集団(レノボ)もその例外ではない。
レノボは１９８４年に中国科学院計算技術研究所の研究者たちによって設立された企業である。設立当時は海外メーカーのパソコン代理店事業を行っていたが、１９９０年から自社製のパソコンを製造し始めた。１９９１年に中国政府がパソコンの輸入規制を緩和したことで、９０年代前半は海外メーカーのシェアが高かった。その中でレノボは家庭用コンピュータを中国で初めて売り出すなどして１９９６年に海外メーカーを抜いてトップとなった。その後も中国国内市場を重視した戦略で、市場の拡大とともに売上を伸ばし、２０００年には世界１０大メーカーにランクインするまでになった。しかし、２００１年以後はその成長が鈍化し始めた。実際、２０００年の販売台数は前年比９３パーセント増であったが、０１年には同１７パーセントとなり０２年、０３年も１５パーセント前後の増加にとどまった。その要因はアメリカにおけるＩＴバブル崩壊や海外メーカーによる進出など様々であるが、兼容機による攻勢もレノボに大きな影響を与えていた。先ほども述べたように、製品が同質化している中では兼容機の最大の武器である価格が力を発揮する。レノボは兼容機に対して更なる低価格で挑戦したがその結果、レノボパソコンの販売利益率は１パーセントにまで落ち込んでしまった。このような状況を打開するために２００４年以降、レノボがとった戦略は海外展開することだった。レノボは以前にも海外展開しようとしたことがあったが、知名度やブランド力がないため海外メーカーとの競争に勝てないという判断から断念していた。しかし今回はその点を補うために、ＩＢＭのパソコン事業部門を買収するという驚くべき戦略に打って出た。２００４年当時、レノボは中国市場ではトップのシェアを誇っていたが、世界的に見れば第９位のパソコンメーカーに過ぎなかった。そのレノボがＩＢＭを買収したことで一気に世界第３位のパソコンメーカーとなったのである。ＩＢＭは国際市場でトップレベルの販売ネットワークを持っていたため、中国市場のみに特化していたレノボにとっては強力な武器となる。また、ＩＢＭの商標を5年間使用できることになったので海外でのブランド力がないというレノボの問題も解決できた。特に買収前はデスクトップ型に比べ、ノート型の生産量が少なかったレノボにとってＩＢＭノートパソコンの商標である「ＴｈｉｎｋＰａｄ」を手に入れることができたのでとてもメリットがあったと考えられる。ただ、ＩＢＭのパソコン部門はもともと赤字体質であったためその点が心配された。しかし、右図のようにレノボとＩＢＭパソコン部門の会計上の統合がなされた２００６年３月期には純利益が5分の1になったものの、なんとか黒字を保つことができたのでひとまず成功したと言える。
このように中国パソコン市場では垂直分裂が進みすぎた結果、製品同質化による際限ない価格競争というデメリットももたらされている。製品同質化の中で生まれた兼容機などのブランドなしパソコンはブランドメーカーにとってたしかに厄介な存在である。しかし、他社の作った製品の組み合わせによって構成されているというパソコンの構造や、ブランドの信頼感よりも価格を重視するという中国の消費者の考え方が変化しない限り、今後も存在し続けるだろう。
中国全体の現状
近年、中国は高い経済成長をしており、GDPは1998年では約1兆195億ドルだったのに対して2007年には約3兆2800億ドルで、10年間で3倍以上もGDPが増えている。GDP成長率を見ると1998年から2002年までは毎年約8〜9%、2003年からは毎年10％以上という経済成長を実現している。
GDPの割合では工業が約４０％を占めており、その金額は1998年では約3兆4000億元であるのに対して、2007年では約10兆7000億元でこちらもGDPと同じように3倍以上に増えている。工業の成長率を見ると1998年、1999年では3〜5%であったが、2000年から大きく成長率を伸ばし、2003年からは10%以上成長をしてほぼ右肩上がりに上がっている。中国の経済成長に工業が大きく関わっているといえる。
近年、中国は高い経済成長をしており、GDPは1998年では約1兆195億ドルだったのに対して2007年には約3兆2800億ドルで、10年間で3倍以上もGDPが増えている。GDP成長率を見ると1998年から2002年までは毎年約8〜9%、2003年からは毎年10％以上という経済成長を実現している。
GDPの割合では工業が約４０％を占めており、その金額は1998年では約3兆4000億元であるのに対して、2007年では約10兆7000億元でこちらもGDPと同じように3倍以上に増えている。工業の成長率を見ると1998年、1999年では3〜5%であったが、2000年から大きく成長率を伸ばし、2003年からは10%以上成長をしてほぼ右肩上がりに上がっている。中国の経済成長に工業が大きく関わっているといえる。
台湾です。
なんだかぐちゃぐちゃになってしまいましたが･･･
一応載せます
（前半）
中国のPC産業を語るにあたって、台湾は欠かすことの出来ない存在であり、現在、世界のノートPCの約90％が台湾製である。PC産業において世界のトップシェアを占める台湾であるが、その事実はあまり知られていないのではないだろうか。
台湾政府は、1970年代末、産業の高度化を図るため電子産業を重点戦略産業と指定し、1980年に台北に新竹科学工業園区を設立した。もともと新竹地区は、台湾有数の理工系大学である清華大学や交通大学がある学園都市であり、工業技術研究院や食品工業研究所など様々な研究機関が存在する。さらに交通の便も良いため、ハイテク企業の立地には好条件であるのだ。そして、新竹科学工業園区は台湾のシリコンバレーとも言われ、米国のシリコンバレーに似せて作られており、この二つの関係は重要である。1965年に米国の移民法改定により、優秀な人材や、米国市民または永住権を持つ人の親近者の米国移住を認めるようになったこと、潤沢な奨学金が給与されたことにより、台湾から米国への留学者が増加した。留学者の多くは、シリコンバレーのIBMやインテルなどハイテク企業で就労経験を積み、新竹科学工業園区の設立とともに政府に帰国を奨励され、ハイテク技術や人脈をもって帰国した。帰国した留学生は持ち帰ってきた技術を使い、企業を設立していった。国は、科学工業園区内に設立された企業に対し、税制面での優遇措置などの支援を行い、生活環境を設備し、帰国する子供の教育問題に取り組むなど、多くの技術者が帰国しやすい環境を整えた。このように、帰国者により次々に企業が設立され産業集積していき、台湾PC産業は飛躍的に成長し発展することとなった。
台湾企業のパソコン関連製品の特徴は、独自ブランドの製品を作るOBMより、取引相手先ブランドで販売する製品を生産するOEMや、取引相手先ブランドで販売する製品の設計と生産を行うODMに特化していることにある。OEM・ODMは、OBMに比べて、長期投資が必要なく、生産に専念できることで生産量の増加が可能になる。生産委託に伴う取引先からの技術指導により、更なる技術のレベルアップが進んで行った。また、台湾企業は、国際市場に照準をおき、OEM・ODMが高品質の製品であることや、生産・在庫管理のうまさ、低価格、開発・生産・納品の早さを売りにして、輸出路線転じ、更なるコスト削減や生産規模拡大のため、海外へ投資し、生産基地を移転していった。数あるPC関連部品のなかでも、CPUとメモリ以外は、すべて台湾のベンチャー企業によって作られている。PCを作るうえで、マザーボードなどの製品は必要不可欠で常に需要があるため、ベンチャー企業はますます成長し、台湾企業が世界トップレベルになったのである。台湾のPCメーカーである、ACERやASUSも、以上のような形態を行い、PC産業発展に伴って中国進出を果たしていった。
台湾企業の投資先は中国であった。中国に投資した理由として、1980年代以降の��小平による改革開放政策により、以前は閉鎖的であった中国が、対外的に開放し、海外の資金と技術を導入するようにしたことが挙げられる。さらに、台湾政府が1980年代後半から動き出し始め、1990年に対中投資を解禁したことで、投資が本格化され、活発に行われるようになった。
なんだかぐちゃぐちゃになってしまいましたが･･･
一応載せます
（前半）
中国のPC産業を語るにあたって、台湾は欠かすことの出来ない存在であり、現在、世界のノートPCの約90％が台湾製である。PC産業において世界のトップシェアを占める台湾であるが、その事実はあまり知られていないのではないだろうか。
台湾政府は、1970年代末、産業の高度化を図るため電子産業を重点戦略産業と指定し、1980年に台北に新竹科学工業園区を設立した。もともと新竹地区は、台湾有数の理工系大学である清華大学や交通大学がある学園都市であり、工業技術研究院や食品工業研究所など様々な研究機関が存在する。さらに交通の便も良いため、ハイテク企業の立地には好条件であるのだ。そして、新竹科学工業園区は台湾のシリコンバレーとも言われ、米国のシリコンバレーに似せて作られており、この二つの関係は重要である。1965年に米国の移民法改定により、優秀な人材や、米国市民または永住権を持つ人の親近者の米国移住を認めるようになったこと、潤沢な奨学金が給与されたことにより、台湾から米国への留学者が増加した。留学者の多くは、シリコンバレーのIBMやインテルなどハイテク企業で就労経験を積み、新竹科学工業園区の設立とともに政府に帰国を奨励され、ハイテク技術や人脈をもって帰国した。帰国した留学生は持ち帰ってきた技術を使い、企業を設立していった。国は、科学工業園区内に設立された企業に対し、税制面での優遇措置などの支援を行い、生活環境を設備し、帰国する子供の教育問題に取り組むなど、多くの技術者が帰国しやすい環境を整えた。このように、帰国者により次々に企業が設立され産業集積していき、台湾PC産業は飛躍的に成長し発展することとなった。
台湾企業のパソコン関連製品の特徴は、独自ブランドの製品を作るOBMより、取引相手先ブランドで販売する製品を生産するOEMや、取引相手先ブランドで販売する製品の設計と生産を行うODMに特化していることにある。OEM・ODMは、OBMに比べて、長期投資が必要なく、生産に専念できることで生産量の増加が可能になる。生産委託に伴う取引先からの技術指導により、更なる技術のレベルアップが進んで行った。また、台湾企業は、国際市場に照準をおき、OEM・ODMが高品質の製品であることや、生産・在庫管理のうまさ、低価格、開発・生産・納品の早さを売りにして、輸出路線転じ、更なるコスト削減や生産規模拡大のため、海外へ投資し、生産基地を移転していった。数あるPC関連部品のなかでも、CPUとメモリ以外は、すべて台湾のベンチャー企業によって作られている。PCを作るうえで、マザーボードなどの製品は必要不可欠で常に需要があるため、ベンチャー企業はますます成長し、台湾企業が世界トップレベルになったのである。台湾のPCメーカーである、ACERやASUSも、以上のような形態を行い、PC産業発展に伴って中国進出を果たしていった。
台湾企業の投資先は中国であった。中国に投資した理由として、1980年代以降の��小平による改革開放政策により、以前は閉鎖的であった中国が、対外的に開放し、海外の資金と技術を導入するようにしたことが挙げられる。さらに、台湾政府が1980年代後半から動き出し始め、1990年に対中投資を解禁したことで、投資が本格化され、活発に行われるようになった。
（後半）
そして、1994年にACERが蘇州新区にデスクトップPCの工場を進出させたことを機に台湾PC産業の中国進出が始まる。土地価格や人件費の安さ、巨大消費地であること、言葉や文化が同じであること、中国の経済発展に伴い投資環境が大幅に改善され、生産基地としての条件が整ったため、投資が増加し、生産拠点を移転し現地生産となったのである。台湾企業の多くは、上海市から江蘇省にかけての長江デルタ地域に集積している。広大な土地がある中国のなかでなぜ長江デルタを選ぶのだろうか。まず、この地域が金融センターであること。巨大な消費地の上海を控えていること。地理的にも交通輸送面でも便利であること。教育環境が整備されており、人材が豊富であること。法制度が他の地域に比べて整備されていること、が挙げられる。以上のような理由のため、長江デルタに企業が集積しており、現在、長江デルタにあるIT関連企業の約８割が台湾企業である。
産業集積とは、「１つの比較的狭い地域に相互の関連の深い多くの企業が集積している状態」と定義される。産業集積のメリットとして、３つ挙げることができる。まずは、技術者や技能者の市場が形成されることである。常に一定量の需要が生じるため、求人・求職が満たされるのだ。２つ目は、中間財などの必要な部品、原材料などの需要ができるため、それを供給するために分業化されることになる。そうすると中間財の単価の下がり、コスト削減となる。３つ目は、産業のノウハウ、技術などを情報として企業間で交換が可能となることにより、新しいアイディアが生み出されやすくなるのだ。
このように、中国でPC生産を順調に行っていた台湾PC企業に2001年に、転機が訪れる。政府により、ノートPCの対中投資の解禁が決定されたのだ。これにより、2000年の台湾企業の中国での生産比率は６％だったが、2004年には82％にまで増加し、台湾と中国の生産量は逆転する。中国のPC生産は急増したのだ。生産拠点は中国に完全に移ったが、開発や管理などを台湾本社に残している台湾企業が多く、生産と管理とを分轄しているのだ。今までは、台湾と中国の直接往来が出来なかったため、香港を経由して資材調達など輸送業務を行っており、台湾企業はコスト高に苦しんでいた。しかし、2008年に直接往来が解禁する協定が結ばれたため、コスト高に苦しむ必要がなくなり、さらに低コストでの大量生産が中国で行われるようになり、台湾・中国のPC産業にとって大きな利益となるだろう。
現在、中国PC産業の強みは、垂直分裂である。PC産業における垂直分裂は、原材料や部品や組み立てメーカーがそれぞれ得意な専門分野を担当する企業間の分業である。ひとつの企業内での垂直分裂ではないため、それぞれの企業は、近くにあることが必要とされる。よって、企業が集積するのである。PC産業の垂直分裂型の集積は、上で述べた産業集積のメリットのほかに、強調やコミュニケーションの場の提供、同一業種間競争による品質向上など、競争力源泉となっている。このような垂直分業型集積がPC産業の発展や成功をもたらしたのであろう。
そして、1994年にACERが蘇州新区にデスクトップPCの工場を進出させたことを機に台湾PC産業の中国進出が始まる。土地価格や人件費の安さ、巨大消費地であること、言葉や文化が同じであること、中国の経済発展に伴い投資環境が大幅に改善され、生産基地としての条件が整ったため、投資が増加し、生産拠点を移転し現地生産となったのである。台湾企業の多くは、上海市から江蘇省にかけての長江デルタ地域に集積している。広大な土地がある中国のなかでなぜ長江デルタを選ぶのだろうか。まず、この地域が金融センターであること。巨大な消費地の上海を控えていること。地理的にも交通輸送面でも便利であること。教育環境が整備されており、人材が豊富であること。法制度が他の地域に比べて整備されていること、が挙げられる。以上のような理由のため、長江デルタに企業が集積しており、現在、長江デルタにあるIT関連企業の約８割が台湾企業である。
産業集積とは、「１つの比較的狭い地域に相互の関連の深い多くの企業が集積している状態」と定義される。産業集積のメリットとして、３つ挙げることができる。まずは、技術者や技能者の市場が形成されることである。常に一定量の需要が生じるため、求人・求職が満たされるのだ。２つ目は、中間財などの必要な部品、原材料などの需要ができるため、それを供給するために分業化されることになる。そうすると中間財の単価の下がり、コスト削減となる。３つ目は、産業のノウハウ、技術などを情報として企業間で交換が可能となることにより、新しいアイディアが生み出されやすくなるのだ。
このように、中国でPC生産を順調に行っていた台湾PC企業に2001年に、転機が訪れる。政府により、ノートPCの対中投資の解禁が決定されたのだ。これにより、2000年の台湾企業の中国での生産比率は６％だったが、2004年には82％にまで増加し、台湾と中国の生産量は逆転する。中国のPC生産は急増したのだ。生産拠点は中国に完全に移ったが、開発や管理などを台湾本社に残している台湾企業が多く、生産と管理とを分轄しているのだ。今までは、台湾と中国の直接往来が出来なかったため、香港を経由して資材調達など輸送業務を行っており、台湾企業はコスト高に苦しんでいた。しかし、2008年に直接往来が解禁する協定が結ばれたため、コスト高に苦しむ必要がなくなり、さらに低コストでの大量生産が中国で行われるようになり、台湾・中国のPC産業にとって大きな利益となるだろう。
現在、中国PC産業の強みは、垂直分裂である。PC産業における垂直分裂は、原材料や部品や組み立てメーカーがそれぞれ得意な専門分野を担当する企業間の分業である。ひとつの企業内での垂直分裂ではないため、それぞれの企業は、近くにあることが必要とされる。よって、企業が集積するのである。PC産業の垂直分裂型の集積は、上で述べた産業集積のメリットのほかに、強調やコミュニケーションの場の提供、同一業種間競争による品質向上など、競争力源泉となっている。このような垂直分業型集積がPC産業の発展や成功をもたらしたのであろう。
台湾です。
まだ途中ですが
あと見直しが雑にしかできてないので間違ってる情報があれば早いうちに訂正します
現在、台湾パソコン関連産業は世界的なシェアを誇るまでに成長しているが、その発展は80年代に始まる。
まず台湾政府は帰国奨励政策を積極的に行い、米国シリコンバレーで高度な教育を受け技術を習得した台湾人留学生や台湾人エンジニアを帰国させた。 それに際して、台湾政府は単純に「帰ってこい」と呼び寄せたわけではない。名称を新竹サイエンスパークとして、台湾北部にそれら留学生・エンジニアが帰国 するに値する魅力的な環境整備を整えた。
その魅力的な環境とはいかなるものか。まず付近に清華大学、交通大学、食品工業研究所、中山科学研究院など大学や研究所が多数存在すること。国 際空港や港が圏内にあり交通の利便性が高いこと。そして注目すべきなのは、サイエンスパーク内に、そこで働く人たちのための住宅、学校、銀行、郵便局、レ ストラン、スーパーなど、様々な施設が完備されていることである。そのため、2004年時点で4万人もの人々が生活している。
台湾政府は産業の高度化を図って、1991年に産業高度化促進条例を定め、租税優遇、非租税優遇、低利率融資、科学工業園区諸優遇を外資に対して奨励し、投資の環境を整えた。
まだ途中ですが
あと見直しが雑にしかできてないので間違ってる情報があれば早いうちに訂正します
現在、台湾パソコン関連産業は世界的なシェアを誇るまでに成長しているが、その発展は80年代に始まる。
まず台湾政府は帰国奨励政策を積極的に行い、米国シリコンバレーで高度な教育を受け技術を習得した台湾人留学生や台湾人エンジニアを帰国させた。 それに際して、台湾政府は単純に「帰ってこい」と呼び寄せたわけではない。名称を新竹サイエンスパークとして、台湾北部にそれら留学生・エンジニアが帰国 するに値する魅力的な環境整備を整えた。
その魅力的な環境とはいかなるものか。まず付近に清華大学、交通大学、食品工業研究所、中山科学研究院など大学や研究所が多数存在すること。国 際空港や港が圏内にあり交通の利便性が高いこと。そして注目すべきなのは、サイエンスパーク内に、そこで働く人たちのための住宅、学校、銀行、郵便局、レ ストラン、スーパーなど、様々な施設が完備されていることである。そのため、2004年時点で4万人もの人々が生活している。
台湾政府は産業の高度化を図って、1991年に産業高度化促進条例を定め、租税優遇、非租税優遇、低利率融資、科学工業園区諸優遇を外資に対して奨励し、投資の環境を整えた。
前半
現在、世界のノートPCの約90%は台湾製である。その台湾製ノートPCの95%は中国で生産されている。PC産業において深い関係にある中国と台湾であるが、その実態、また台湾PC産業について日本ではあまり知られていないのではないだろうか。
1970年代末、台湾政府は電子産業を重点戦略産業と指定し、79年に新竹科学工業園区の設立とその優遇政策を決定した。この設立の際重要となってくるのが、そのモデルとなったシリコンバレーとのつながりである。1960−70年代、台湾からアメリカに留学した多くの人材は、シリコンバレーのIBM、インテルなどのハイテク企業で経験を積んだ。その後、新竹科学工業園区の設立に伴い政府の奨励策により多くの人材はその技術や人脈を持ち帰り、同園区内で次々にベンチャー企業を設立し、同園区の発展を牽引することになった。また、政府が国営研究所の所長、職員をスピンオフさせ社長、従業員としたことも技術導入の一つとして挙げられる。さらに、もともと新竹科学工業園区は清華大学と交通大学がある学園都市である。大学内出では研究プロジェクトが進められており、アメリカから帰国した研究者はそのプロジェクトに加わり、台湾PC生産の技術の高度化を支えている。そして新竹科学工業園区の注目すべき点は、同園区内の公共施設等の充実である。生活環境を整備することにより、留学生や研究者などの多くの頭脳が帰国しやすくすることで台湾PC産業の成長を加速させようという国を挙げての取り組みである。
台湾PC産業の特徴としては、取引先ブランドの商品の生産を行うOEM、そしてその設計と生産両方を担うODMに特化したことが挙げられる。このOEM・ODMの利点としては、自社ブランド商品を売り込む場合の多額の初期投資の必要性、また既に市場が他社製品でひしめいている場合には新規参入は困難となることである。しかし、OEM・ODMの場合は、自社の設計力・製造力を既存のブランドメーカーに売り込むことですぐに生産につなげることが可能になる。そして現在、様々な台湾ノートPC企業は、HP、DELL、東芝等の世界的メーカーから大量の受託生産を引き受けている。
また、台湾PC産業を語る上で忘れてはいけないのはベンチャー企業の存在である。1983年、政府によりベンチャー企業に資金を供給するベンチャーキャピタル(以下、VC)産業が導入された。絶えず競争が繰り広げられるPC産業の中では多くの企業が倒産・廃業するが、VC産業により新たなベンチャー企業の創設が容易となることで、台湾PC産業が活発化し、産業発展につながっているといえる。台湾を代表する宏基電脳(Acer)もベンチャー企業であり、PC普及の機会を捉え大企業へと成長したのである。
現在、世界のノートPCの約90%は台湾製である。その台湾製ノートPCの95%は中国で生産されている。PC産業において深い関係にある中国と台湾であるが、その実態、また台湾PC産業について日本ではあまり知られていないのではないだろうか。
1970年代末、台湾政府は電子産業を重点戦略産業と指定し、79年に新竹科学工業園区の設立とその優遇政策を決定した。この設立の際重要となってくるのが、そのモデルとなったシリコンバレーとのつながりである。1960−70年代、台湾からアメリカに留学した多くの人材は、シリコンバレーのIBM、インテルなどのハイテク企業で経験を積んだ。その後、新竹科学工業園区の設立に伴い政府の奨励策により多くの人材はその技術や人脈を持ち帰り、同園区内で次々にベンチャー企業を設立し、同園区の発展を牽引することになった。また、政府が国営研究所の所長、職員をスピンオフさせ社長、従業員としたことも技術導入の一つとして挙げられる。さらに、もともと新竹科学工業園区は清華大学と交通大学がある学園都市である。大学内出では研究プロジェクトが進められており、アメリカから帰国した研究者はそのプロジェクトに加わり、台湾PC生産の技術の高度化を支えている。そして新竹科学工業園区の注目すべき点は、同園区内の公共施設等の充実である。生活環境を整備することにより、留学生や研究者などの多くの頭脳が帰国しやすくすることで台湾PC産業の成長を加速させようという国を挙げての取り組みである。
台湾PC産業の特徴としては、取引先ブランドの商品の生産を行うOEM、そしてその設計と生産両方を担うODMに特化したことが挙げられる。このOEM・ODMの利点としては、自社ブランド商品を売り込む場合の多額の初期投資の必要性、また既に市場が他社製品でひしめいている場合には新規参入は困難となることである。しかし、OEM・ODMの場合は、自社の設計力・製造力を既存のブランドメーカーに売り込むことですぐに生産につなげることが可能になる。そして現在、様々な台湾ノートPC企業は、HP、DELL、東芝等の世界的メーカーから大量の受託生産を引き受けている。
また、台湾PC産業を語る上で忘れてはいけないのはベンチャー企業の存在である。1983年、政府によりベンチャー企業に資金を供給するベンチャーキャピタル(以下、VC)産業が導入された。絶えず競争が繰り広げられるPC産業の中では多くの企業が倒産・廃業するが、VC産業により新たなベンチャー企業の創設が容易となることで、台湾PC産業が活発化し、産業発展につながっているといえる。台湾を代表する宏基電脳(Acer)もベンチャー企業であり、PC普及の機会を捉え大企業へと成長したのである。
後半
台湾PC産業が発展した要因に、生産規模の拡大とコスト削減を図り、海外への積極的な投資により生産拠点を移転したことが挙げられる。1990年代前半、中国では改革開放政策が進み投資環境が大幅に改善されたこと、また中国の安価で豊富な労働力や土地、そして中国市場の潜在性などから台湾の投資先はASEAN諸国から中国へとシフトする。そして1994年にACERが蘇州新区にデスクトップPC工場を進出させたことをきっかけに台湾PC企業の中国進出が始まるが、その中でも台湾企業は上海市から江蘇省江蘇市にかけての長江デルタに集積している。では、なぜ広大な土地を持つ中国の中で長江デルタを選ぶのであろうか。まず、中国沿海部のほぼ真ん中に位置することから中国大陸の交通・物流の中心地であること。次に、質が高く、幅が広く、層の厚い人材が揃うということ。そして最後に、人口が多く消費市場が大きいことから中国最大のマーケットを有することが挙げられる。
2001年、台湾PC企業と中国との生産関係に転機ともいえる政策が台湾政府から発表される。それは台湾企業の中国でのノートPC生産の解禁であり、これを機に台湾ノートPC企業は中国へと生産基地を移転させた。これは台湾のWTO加盟の際の条件にそぐわなかったこと、民間企業からの要望の高まり、また規制をかいくぐって間接的な手法で中国に投資する企業家が出現したことで政府がやむなくとった政策だが、その結果、台湾PC産業のノートPC生産地の構成は、2000年に中国：台湾での生産比が6：94だったのが2004年には82：16に逆転し、現在では95%が中国で生産されている。しかし台湾・中国間の直接往来に規制がかかっていたことで、資材調達や輸送業務を行う際に第三国を経由しなければならなかったが、今年直接往来の解禁に関する協定が結ばれた。この協定により、台湾PC産業の中国でのさらなる飛躍が期待されるだろう。
このように台湾PC産業がここまで発展したのは、台湾の電子産業集積の成功が非常に重要になってくる。産業集積というのは、「一つの比較的狭い地域に相互の関連の深い多くの企業が集積している状態」を意味するが、そのメリットとしては効率的な生産循環が形成されることによる産性の向上。そしてもう一つは関連の深い企業が集積することによる技術の高度化である。PCを含むハイテク産業に関しては生産性のよりも技術が重要である。台湾はそのPC産業のはじまりから政策により台北で電子産業を集積し、成長してきた。ここで台湾PCの主な生産地である中国におけるPC産業の特徴を考えると、それは垂直分裂という生産方式だ。これは一つの最終生産物を生産する上で中間投入財を複数の企業が担う形式である。上述したように、台湾PC企業は中国の長江デルタに進出し展開した結果、長江デルタには電子産業が集積された。これにより、長江デルタ内の人的ネットワーク等を通じて知識や技術の状況共有が活発化し、全体としてPC生産技術の高度化が行われている。このように、中国PC産業の飛躍的な成長は台湾の存在なしにはなし得なかったことといえよう。今日の中国PC産業の地位の構築には台湾が大きく貢献したのである。
台湾PC産業が発展した要因に、生産規模の拡大とコスト削減を図り、海外への積極的な投資により生産拠点を移転したことが挙げられる。1990年代前半、中国では改革開放政策が進み投資環境が大幅に改善されたこと、また中国の安価で豊富な労働力や土地、そして中国市場の潜在性などから台湾の投資先はASEAN諸国から中国へとシフトする。そして1994年にACERが蘇州新区にデスクトップPC工場を進出させたことをきっかけに台湾PC企業の中国進出が始まるが、その中でも台湾企業は上海市から江蘇省江蘇市にかけての長江デルタに集積している。では、なぜ広大な土地を持つ中国の中で長江デルタを選ぶのであろうか。まず、中国沿海部のほぼ真ん中に位置することから中国大陸の交通・物流の中心地であること。次に、質が高く、幅が広く、層の厚い人材が揃うということ。そして最後に、人口が多く消費市場が大きいことから中国最大のマーケットを有することが挙げられる。
2001年、台湾PC企業と中国との生産関係に転機ともいえる政策が台湾政府から発表される。それは台湾企業の中国でのノートPC生産の解禁であり、これを機に台湾ノートPC企業は中国へと生産基地を移転させた。これは台湾のWTO加盟の際の条件にそぐわなかったこと、民間企業からの要望の高まり、また規制をかいくぐって間接的な手法で中国に投資する企業家が出現したことで政府がやむなくとった政策だが、その結果、台湾PC産業のノートPC生産地の構成は、2000年に中国：台湾での生産比が6：94だったのが2004年には82：16に逆転し、現在では95%が中国で生産されている。しかし台湾・中国間の直接往来に規制がかかっていたことで、資材調達や輸送業務を行う際に第三国を経由しなければならなかったが、今年直接往来の解禁に関する協定が結ばれた。この協定により、台湾PC産業の中国でのさらなる飛躍が期待されるだろう。
このように台湾PC産業がここまで発展したのは、台湾の電子産業集積の成功が非常に重要になってくる。産業集積というのは、「一つの比較的狭い地域に相互の関連の深い多くの企業が集積している状態」を意味するが、そのメリットとしては効率的な生産循環が形成されることによる産性の向上。そしてもう一つは関連の深い企業が集積することによる技術の高度化である。PCを含むハイテク産業に関しては生産性のよりも技術が重要である。台湾はそのPC産業のはじまりから政策により台北で電子産業を集積し、成長してきた。ここで台湾PCの主な生産地である中国におけるPC産業の特徴を考えると、それは垂直分裂という生産方式だ。これは一つの最終生産物を生産する上で中間投入財を複数の企業が担う形式である。上述したように、台湾PC企業は中国の長江デルタに進出し展開した結果、長江デルタには電子産業が集積された。これにより、長江デルタ内の人的ネットワーク等を通じて知識や技術の状況共有が活発化し、全体としてPC生産技術の高度化が行われている。このように、中国PC産業の飛躍的な成長は台湾の存在なしにはなし得なかったことといえよう。今日の中国PC産業の地位の構築には台湾が大きく貢献したのである。
パソコン産業の現状
中国のパソコン産業は近年、急成長を遂げています。２００２年からパソコン生産台数世界第１位を維持しており、２００７年は１億２０７３万台で５０パーセント弱のシェアを占めている。成長率も０６年比２９．３パーセント増という高い伸びを示している。このように、多くのパソコンを生産している中国ですが、その半分以上は輸出している。２００７年の輸出台数は生産台数の約６５パーセントにあたる７９４８万台でした。このことから中国のパソコン産業は主に外需主導で成長してきたことがわかる。
右図でも示した通り、生産台数や輸出台数を順調に伸ばしている中国ですが、特に急激な伸びを見せ始めたのは２００２年ごろからで、２００７年の生産量は２００１年の約１４倍となっています。２００２年以降、生産量の伸びが加速した要因としては２００１年末のＷＴＯ加盟や、後の章で述べる台湾とのつながりなどが挙げられます。
また、世界的な傾向ではあるが、２００４年ごろからはデスクトップ型ではなくノート型パソコンの生産が特に伸びてきており、中国でも２００５年以降はノート型の方が多く生産されています。
中国のパソコン産業は近年、急成長を遂げています。２００２年からパソコン生産台数世界第１位を維持しており、２００７年は１億２０７３万台で５０パーセント弱のシェアを占めている。成長率も０６年比２９．３パーセント増という高い伸びを示している。このように、多くのパソコンを生産している中国ですが、その半分以上は輸出している。２００７年の輸出台数は生産台数の約６５パーセントにあたる７９４８万台でした。このことから中国のパソコン産業は主に外需主導で成長してきたことがわかる。
右図でも示した通り、生産台数や輸出台数を順調に伸ばしている中国ですが、特に急激な伸びを見せ始めたのは２００２年ごろからで、２００７年の生産量は２００１年の約１４倍となっています。２００２年以降、生産量の伸びが加速した要因としては２００１年末のＷＴＯ加盟や、後の章で述べる台湾とのつながりなどが挙げられます。
また、世界的な傾向ではあるが、２００４年ごろからはデスクトップ型ではなくノート型パソコンの生産が特に伸びてきており、中国でも２００５年以降はノート型の方が多く生産されています。
５章 考察んとこです
パソコン産業の課題
前章で述べたように垂直分裂は多くのメリットがあるが、その一方で別の解釈もできる。つまり、垂直分裂が進んでいるということは、それぞれの企業が外部経済を享受するために互換性のある製品を作るので製品の同質化を招いているのである。一般に製品が同質化すると市場は価格競争に陥りがちである。日本ではあまり多くは行われていないことだが、一般の人が市販の部品を購入してブランド品とあまり遜色ないパソコンを組み立てることもできる。実際に中国では組み立てを行ってくれる業者が多くおり、彼らによって作られたブランドなしパソコン(中国では兼容機と呼ぶ)が市場において大きな存在感を示している。実際に兼容機の中国市場でのシェアは１９９６年には４４パーセントという高いシェアを誇っていた。兼容機はブランド品ではないが、機能的にはブランド品と遜色ない上に、低価格である。そのため技術力のあるブランドメーカーといえども性能の面で決定的な差別化ができないため、兼容機との激しい価格競争を強いられており、パソコン産業は利幅の薄い産業となっている。中国ブランドメーカーの代表である聯想集団(レノボ)もその例外ではない。
対策
レノボは１９８４年に中国科学院計算技術研究所の研究者たちによって設立された企業であり、１９９６年に海外メーカーを抜いて国内市場シェアトップとなった。その後も国内市場を重視した戦略で、市場の拡大とともに売上を伸ばしたが、２００１年以後はその成長が鈍化し始めた。実際、２０００年の販売台数は前年比９３パーセント増であったが、０１年には同１７パーセントとなり０２年、０３年も１５パーセント前後の増加にとどまった。その要因はアメリカにおけるＩＴバブル崩壊や海外メーカーによる進出など様々であるが、兼容機による攻勢もレノボに大きな影響を与えていた。レノボは兼容機に対して更なる低価格で挑戦したが、その結果、レノボパソコンの販売利益率は１パーセントにまで落ち込んでしまった。このような状況を打開するためにレノボがとった戦略は海外展開することだった。そしてそのためにＩＢＭのパソコン事業部門を買収するという驚くべき戦略に打って出た。２００４年当時、レノボは世界的に見れば第９位のパソコンメーカーに過ぎなかった。そのレノボがＩＢＭを買収したことで一気に世界第３位のパソコンメーカーとなったのである。ＩＢＭは国際市場でトップレベルの販売ネットワークを持っていたため、中国市場のみに特化していたレノボにとっては強力な武器となる。また、「ＴｈｉｎｋＰａｄ」などのＩＢＭ商標を5年間使用できることになったため海外でのブランド力がないというレノボの問題も解決できた。ただ、ＩＢＭのパソコン部門は長年、赤字体質であったためレノボにその負担ができるのかが心配された。しかし、図のようにレノボとＩＢＭパソコン部門の会計上の統合がなされた２００６年３月期には純利益が5分の1になったものの、なんとか黒字を保つことができたためひとまず成功したと言える。
展望（未）
このように中国パソコン市場では垂直分裂が進みすぎた結果、製品同質化による際限ない価格競争というデメリットももたらされている。製品同質化の中で生まれた兼容機などのブランドなしパソコンはブランドメーカーにとってたしかに厄介な存在である。しかし、他社の作った製品の組み合わせによって構成されているというパソコンの構造や、ブランドの信頼感よりも価格を重視するという中国の消費者の考え方が変化しない限り、今後も存在し続けるだろう。
パソコン産業の課題
前章で述べたように垂直分裂は多くのメリットがあるが、その一方で別の解釈もできる。つまり、垂直分裂が進んでいるということは、それぞれの企業が外部経済を享受するために互換性のある製品を作るので製品の同質化を招いているのである。一般に製品が同質化すると市場は価格競争に陥りがちである。日本ではあまり多くは行われていないことだが、一般の人が市販の部品を購入してブランド品とあまり遜色ないパソコンを組み立てることもできる。実際に中国では組み立てを行ってくれる業者が多くおり、彼らによって作られたブランドなしパソコン(中国では兼容機と呼ぶ)が市場において大きな存在感を示している。実際に兼容機の中国市場でのシェアは１９９６年には４４パーセントという高いシェアを誇っていた。兼容機はブランド品ではないが、機能的にはブランド品と遜色ない上に、低価格である。そのため技術力のあるブランドメーカーといえども性能の面で決定的な差別化ができないため、兼容機との激しい価格競争を強いられており、パソコン産業は利幅の薄い産業となっている。中国ブランドメーカーの代表である聯想集団(レノボ)もその例外ではない。
対策
レノボは１９８４年に中国科学院計算技術研究所の研究者たちによって設立された企業であり、１９９６年に海外メーカーを抜いて国内市場シェアトップとなった。その後も国内市場を重視した戦略で、市場の拡大とともに売上を伸ばしたが、２００１年以後はその成長が鈍化し始めた。実際、２０００年の販売台数は前年比９３パーセント増であったが、０１年には同１７パーセントとなり０２年、０３年も１５パーセント前後の増加にとどまった。その要因はアメリカにおけるＩＴバブル崩壊や海外メーカーによる進出など様々であるが、兼容機による攻勢もレノボに大きな影響を与えていた。レノボは兼容機に対して更なる低価格で挑戦したが、その結果、レノボパソコンの販売利益率は１パーセントにまで落ち込んでしまった。このような状況を打開するためにレノボがとった戦略は海外展開することだった。そしてそのためにＩＢＭのパソコン事業部門を買収するという驚くべき戦略に打って出た。２００４年当時、レノボは世界的に見れば第９位のパソコンメーカーに過ぎなかった。そのレノボがＩＢＭを買収したことで一気に世界第３位のパソコンメーカーとなったのである。ＩＢＭは国際市場でトップレベルの販売ネットワークを持っていたため、中国市場のみに特化していたレノボにとっては強力な武器となる。また、「ＴｈｉｎｋＰａｄ」などのＩＢＭ商標を5年間使用できることになったため海外でのブランド力がないというレノボの問題も解決できた。ただ、ＩＢＭのパソコン部門は長年、赤字体質であったためレノボにその負担ができるのかが心配された。しかし、図のようにレノボとＩＢＭパソコン部門の会計上の統合がなされた２００６年３月期には純利益が5分の1になったものの、なんとか黒字を保つことができたためひとまず成功したと言える。
展望（未）
このように中国パソコン市場では垂直分裂が進みすぎた結果、製品同質化による際限ない価格競争というデメリットももたらされている。製品同質化の中で生まれた兼容機などのブランドなしパソコンはブランドメーカーにとってたしかに厄介な存在である。しかし、他社の作った製品の組み合わせによって構成されているというパソコンの構造や、ブランドの信頼感よりも価格を重視するという中国の消費者の考え方が変化しない限り、今後も存在し続けるだろう。
台湾完成版の前半
現在、世界のノートPCの約90%は台湾製である。その台湾製ノートPCの約95%は中国で生産されている。PC産業において深い関係にある中国と台湾であるが、その実態、また台湾PC産業について日本ではあまり知られていないのではないだろうか。
台湾政府は、1970年代末、産業の高度化を図るため電子産業を重点戦略産業と指定し、1980年に台北に新竹科学工業園区を設立した。もともと新竹地区は、台湾有数の理工系大学である清華大学や交通大学がある学園都市であり、工業技術研究院や食品工業研究所など様々な研究機関が存在する。さらに交通の便も良いため、ハイテク企業の立地には好条件なのである。そして、新竹科学工業園区は台湾のシリコンバレーとも言われ、米国のシリコンバレーに似せて作られており、この二つの関係は重要である。1965年に米国の移民法改定によって、優秀な人材や、米国市民または永住権を持つ人の親近者の米国移住を認めるようになったことと、潤沢な奨学金が給与されたことにより、台湾からの渡米者が増加した。彼らの多くは、シリコンバレーのIBMやインテルなどハイテク企業で就労経験を積み、新竹科学工業園区の設立を機に政府の奨励策により多くの人材はその技術や人脈を持ち帰った。そして、同園区内で次々にベンチャー企業を設立し、台湾PC産業の発展を牽引することになった。アメリカから帰国した研究者は大学内出での研究プロジェクトに加わり、台湾PC生産の技術の高度化を支えている。国は、科学工業園区内に設立された企業に対し、税制面での優遇措置などの支援を行い、生活環境を設備し、帰国する子供の教育問題に取り組むなど、留学生や研究者などの多くの頭脳が帰国しやすくすることで台湾PC産業の成長を加速させようという国を挙げての取り組みである。また、政府が国営研究所の所長、職員をスピンオフさせ社長、従業員としたことも技術導入の一つとして挙げられる。このように、帰国者により次々に企業が設立され産業集積していき、台湾PC産業は飛躍的に成長し発展することとなった。
台湾企業のパソコン関連製品の特徴は、独自ブランドの製品を作るOBMより、取引相手先ブランドで販売する製品を生産するOEMや、取引相手先ブランドで販売する製品の設計と生産を行うODMに特化していることにある。OEM・ODMは、OBMに比べて、長期投資が必要なく、生産に専念できることで生産量の増加が可能になる。生産委託に伴う取引先からの技術指導により、更なる技術のレベルアップが進んで行った。また、台湾企業は、国際市場に照準をおき、OEM・ODMが高品質の製品であることや、生産・在庫管理のうまさ、低価格、開発・生産・納品の早さを売りにして、輸出路線転じ、更なるコスト削減や生産規模拡大のため、海外へ投資し、生産基地を移転していった。数あるPC関連部品のなかでも、CPUとメモリ以外は、すべて台湾のベンチャー企業によって作られている。PCを作るうえで、マザーボードなどの製品は必要不可欠で常に需要があるため、ベンチャー企業はますます成長し、台湾企業が世界トップレベルになったのである。台湾のPCメーカーである、ACERやASUSも、以上のような形態を行い、PC産業発展に伴って中国進出を果たしていった。
台湾企業の投資先は中国であった。中国に投資した理由として、1980年代以降の��小平による改革開放政策により、以前は閉鎖的であった中国が、対外的に開放し、海外の資金と技術を導入するようにしたことが挙げられる。さらに、台湾政府が1980年代後半から動き出し始め、1990年に対中投資を解禁したことで、投資が本格化され、活発に行われるようになった。
現在、世界のノートPCの約90%は台湾製である。その台湾製ノートPCの約95%は中国で生産されている。PC産業において深い関係にある中国と台湾であるが、その実態、また台湾PC産業について日本ではあまり知られていないのではないだろうか。
台湾政府は、1970年代末、産業の高度化を図るため電子産業を重点戦略産業と指定し、1980年に台北に新竹科学工業園区を設立した。もともと新竹地区は、台湾有数の理工系大学である清華大学や交通大学がある学園都市であり、工業技術研究院や食品工業研究所など様々な研究機関が存在する。さらに交通の便も良いため、ハイテク企業の立地には好条件なのである。そして、新竹科学工業園区は台湾のシリコンバレーとも言われ、米国のシリコンバレーに似せて作られており、この二つの関係は重要である。1965年に米国の移民法改定によって、優秀な人材や、米国市民または永住権を持つ人の親近者の米国移住を認めるようになったことと、潤沢な奨学金が給与されたことにより、台湾からの渡米者が増加した。彼らの多くは、シリコンバレーのIBMやインテルなどハイテク企業で就労経験を積み、新竹科学工業園区の設立を機に政府の奨励策により多くの人材はその技術や人脈を持ち帰った。そして、同園区内で次々にベンチャー企業を設立し、台湾PC産業の発展を牽引することになった。アメリカから帰国した研究者は大学内出での研究プロジェクトに加わり、台湾PC生産の技術の高度化を支えている。国は、科学工業園区内に設立された企業に対し、税制面での優遇措置などの支援を行い、生活環境を設備し、帰国する子供の教育問題に取り組むなど、留学生や研究者などの多くの頭脳が帰国しやすくすることで台湾PC産業の成長を加速させようという国を挙げての取り組みである。また、政府が国営研究所の所長、職員をスピンオフさせ社長、従業員としたことも技術導入の一つとして挙げられる。このように、帰国者により次々に企業が設立され産業集積していき、台湾PC産業は飛躍的に成長し発展することとなった。
台湾企業のパソコン関連製品の特徴は、独自ブランドの製品を作るOBMより、取引相手先ブランドで販売する製品を生産するOEMや、取引相手先ブランドで販売する製品の設計と生産を行うODMに特化していることにある。OEM・ODMは、OBMに比べて、長期投資が必要なく、生産に専念できることで生産量の増加が可能になる。生産委託に伴う取引先からの技術指導により、更なる技術のレベルアップが進んで行った。また、台湾企業は、国際市場に照準をおき、OEM・ODMが高品質の製品であることや、生産・在庫管理のうまさ、低価格、開発・生産・納品の早さを売りにして、輸出路線転じ、更なるコスト削減や生産規模拡大のため、海外へ投資し、生産基地を移転していった。数あるPC関連部品のなかでも、CPUとメモリ以外は、すべて台湾のベンチャー企業によって作られている。PCを作るうえで、マザーボードなどの製品は必要不可欠で常に需要があるため、ベンチャー企業はますます成長し、台湾企業が世界トップレベルになったのである。台湾のPCメーカーである、ACERやASUSも、以上のような形態を行い、PC産業発展に伴って中国進出を果たしていった。
台湾企業の投資先は中国であった。中国に投資した理由として、1980年代以降の��小平による改革開放政策により、以前は閉鎖的であった中国が、対外的に開放し、海外の資金と技術を導入するようにしたことが挙げられる。さらに、台湾政府が1980年代後半から動き出し始め、1990年に対中投資を解禁したことで、投資が本格化され、活発に行われるようになった。
台湾完成版の後半
そして、1994年にACERが蘇州新区にデスクトップPCの工場を進出させたことを機に台湾PC産業の中国進出が始まる。土地価格や人件費の安さ、巨大消費地であること、言葉や文化が同じであること、中国の経済発展に伴い投資環境が大幅に改善され、生産基地としての条件が整ったため、投資が増加し、生産拠点を移転し現地生産となったのである。台湾企業の多くは、上海市から江蘇省にかけての長江デルタ地域に集積している。広大な土地がある中国のなかで、なぜ長江デルタを選ぶのだろうか。まず、この地域が金融センターであること。巨大な消費地の上海を控えていること。地理的にも交通輸送面でも便利であること。教育環境が整備されており、人材が豊富であること。法制度が他の地域に比べて整備されていること、が挙げられる。以上のような理由のため、長江デルタに企業が集積しており、現在、長江デルタにあるIT関連企業の約８割が台湾企業である。
2001年、中国でPC生産を順調に行っていた台湾PC企業に、転機が訪れる。政府により、ノートPCの対中投資の解禁が決定されたのである。これは台湾のWTO加盟の際の条件にそぐわなかったこと、民間企業からの要望の高まり、また規制をかいくぐって間接的な手法で中国に投資する企業家が出現したことで政府がやむなくとった政策だが、その結果、表3-2(2)からも読み取れるように台湾PC産業のノートPC生産地の構成は、2001年を境目に中国と台湾の生産比は逆転し、現在では95%が中国で生産されている。生産拠点は中国に完全に移ったが、開発や管理などを台湾本社に残している台湾企業が多く、生産と管理とを分轄しているのである。今までは、台湾と中国の直接往来が出来なかったため、香港を経由して資材調達など輸送業務を行っており、台湾企業はコスト高に苦しんでいた。しかし、2008年に直接往来を解禁する協定が結ばれたため、コスト高に苦しむ必要がなくなり、さらに低コストでの大量生産が中国で行われるようになり、台湾・中国のPC産業にとって大きな利益となるだろう。
このように台湾PC産業がここまで発展したのは、台湾の電子産業集積の成功が非常に重要になってくる。産業集積というのは、「一つの比較的狭い地域に相互の関連の深い多くの企業が集積している状態」を意味するが、そのメリットとしては３つ挙げることができる。まずは、技術者や技能者の市場が形成されることである。常に一定量の需要が生じるため、求人・求職が満たされるのである。２つ目は、中間財などの必要な部品、原材料などの需要ができるため、それを供給するために分業化されることになる。そうすると中間財の単価の下がり、コスト削減となる。３つ目は、産業のノウハウ、技術などを情報として企業間で交換が可能となることにより、新しいアイディアが生み出されやすくなるのである。台湾はそのPC産業のはじまりから政策により台北で電子産業を集積し、成長してきた。ここで台湾PCの主な生産地である中国におけるPC産業の特徴を考えると、それは垂直分裂という生産方式で、これは一つの最終生産物を生産する上で中間投入財を複数の企業が担う形式である。上述したように、台湾PC企業は中国の長江デルタに進出し展開した結果、長江デルタには電子産業が集積された。これにより、長江デルタ内の人的ネットワーク等を通じて知識や技術の情報共有が活発化し、全体としてPC生産技術の高度化が行われている。このように、中国PC産業の飛躍的な成長は台湾の存在なしにはなし得なかったことといえよう。今日の中国PC産業の地位の構築には台湾が大きく貢献したのである。
そして、1994年にACERが蘇州新区にデスクトップPCの工場を進出させたことを機に台湾PC産業の中国進出が始まる。土地価格や人件費の安さ、巨大消費地であること、言葉や文化が同じであること、中国の経済発展に伴い投資環境が大幅に改善され、生産基地としての条件が整ったため、投資が増加し、生産拠点を移転し現地生産となったのである。台湾企業の多くは、上海市から江蘇省にかけての長江デルタ地域に集積している。広大な土地がある中国のなかで、なぜ長江デルタを選ぶのだろうか。まず、この地域が金融センターであること。巨大な消費地の上海を控えていること。地理的にも交通輸送面でも便利であること。教育環境が整備されており、人材が豊富であること。法制度が他の地域に比べて整備されていること、が挙げられる。以上のような理由のため、長江デルタに企業が集積しており、現在、長江デルタにあるIT関連企業の約８割が台湾企業である。
2001年、中国でPC生産を順調に行っていた台湾PC企業に、転機が訪れる。政府により、ノートPCの対中投資の解禁が決定されたのである。これは台湾のWTO加盟の際の条件にそぐわなかったこと、民間企業からの要望の高まり、また規制をかいくぐって間接的な手法で中国に投資する企業家が出現したことで政府がやむなくとった政策だが、その結果、表3-2(2)からも読み取れるように台湾PC産業のノートPC生産地の構成は、2001年を境目に中国と台湾の生産比は逆転し、現在では95%が中国で生産されている。生産拠点は中国に完全に移ったが、開発や管理などを台湾本社に残している台湾企業が多く、生産と管理とを分轄しているのである。今までは、台湾と中国の直接往来が出来なかったため、香港を経由して資材調達など輸送業務を行っており、台湾企業はコスト高に苦しんでいた。しかし、2008年に直接往来を解禁する協定が結ばれたため、コスト高に苦しむ必要がなくなり、さらに低コストでの大量生産が中国で行われるようになり、台湾・中国のPC産業にとって大きな利益となるだろう。
このように台湾PC産業がここまで発展したのは、台湾の電子産業集積の成功が非常に重要になってくる。産業集積というのは、「一つの比較的狭い地域に相互の関連の深い多くの企業が集積している状態」を意味するが、そのメリットとしては３つ挙げることができる。まずは、技術者や技能者の市場が形成されることである。常に一定量の需要が生じるため、求人・求職が満たされるのである。２つ目は、中間財などの必要な部品、原材料などの需要ができるため、それを供給するために分業化されることになる。そうすると中間財の単価の下がり、コスト削減となる。３つ目は、産業のノウハウ、技術などを情報として企業間で交換が可能となることにより、新しいアイディアが生み出されやすくなるのである。台湾はそのPC産業のはじまりから政策により台北で電子産業を集積し、成長してきた。ここで台湾PCの主な生産地である中国におけるPC産業の特徴を考えると、それは垂直分裂という生産方式で、これは一つの最終生産物を生産する上で中間投入財を複数の企業が担う形式である。上述したように、台湾PC企業は中国の長江デルタに進出し展開した結果、長江デルタには電子産業が集積された。これにより、長江デルタ内の人的ネットワーク等を通じて知識や技術の情報共有が活発化し、全体としてPC生産技術の高度化が行われている。このように、中国PC産業の飛躍的な成長は台湾の存在なしにはなし得なかったことといえよう。今日の中国PC産業の地位の構築には台湾が大きく貢献したのである。
このように台湾PC産業がここまで発展したことには、台湾の電子産業集積の成功が非常に重要になっている。産業集積というのは、「一つの比較的狭い地域に相互の関連の深い多くの企業が集積している状態」を意味するが、そのメリットとしては、効率的な生産循環が形成されることによる生産性の向上。そしてもう一つは関連の深い企業が集積することによる技術の高度化である。PCを含むハイテク産業に関しては生産性のよりも技術が重要である。台湾はそのPC産業のはじまりから政策により台北で電子産業を集積し、成長してきた。ここで台湾PCの主な生産地である中国におけるPC産業の特徴を考えると、それは垂直分裂という生産方式で、これは一つの最終生産物を生産する上で中間投入財を複数の企業が担う形式である。上述したように、台湾PC企業は中国の長江デルタに進出し、そこに電子産業を集積した。その結果、2000年から2004年のあいだに、台湾企業による生産量の対世界シェアは53%から73%へと上昇した。更なるコスト削減のために中国へ生産拠点を移動したことで可能になった量産能力の拡大は、台湾企業の世界的な位置づけを引き上げた。また、長江デルタ内の人的ネットワーク等を通じて知識や技術の情報共有が活発化し、全体としてPC生産技術の高度化が行われている。このように、中国PC産業の飛躍的な成長は台湾との相互協力なしではなし得なかったことといえよう。今日の中国PC産業の地位の構築には台湾が大きく貢献したのである。
台湾の最後の部分を直したものです。
このように、台湾PC産業がここまで発展したのは台湾の電子産業集積の成功がかぎになっている。産業集積というのは、「一つの比較的狭い地域に相互の関連の深い多くの企業が集積している状態」を意味するが、それにはメリットが２つある。ひとつは効率的な生産循環が形成されることによる生産性の向上、そしてもうひとつは関連の深い企業が集積することによる技術の高度化である。台湾はそのPC産業のはじまりから政策により台北で電子産業を集積し、成長してきた。上述したように、台湾PC企業は中国の長江デルタに進出し展開した結果、長江デルタには電子産業が集積された。これにより、長江デルタ内の人的ネットワーク等を通じて知識や技術の情報共有が活発化され、全体としてPC生産技術の高度化が行われている。2001年のノートPCの中国生産解禁を境に台湾ノートPCの生産拠点が中国に移転したことで、表3-2-2でもわかるように台湾のノートPC対世界生産量シェアも53％から73％へと飛躍的に伸びた。台湾PC企業は中国の豊富で安価な労働力・土地を利用することでPC価格を低く抑えることを可能にし、その結果台湾企業へのOEM・ODM生産依頼は増加し、現在世界のノートPCの約90％を生産する程にまで成長した。今日の中国・台湾両国のPC産業は互いの存在なしには現在の地位を築くことはできなかっただろう。中国のリーディング産業のひとつであるPC産業はこのように台湾との支え合いによって発展してきた。
このように、台湾PC産業がここまで発展したのは台湾の電子産業集積の成功がかぎになっている。産業集積というのは、「一つの比較的狭い地域に相互の関連の深い多くの企業が集積している状態」を意味するが、それにはメリットが２つある。ひとつは効率的な生産循環が形成されることによる生産性の向上、そしてもうひとつは関連の深い企業が集積することによる技術の高度化である。台湾はそのPC産業のはじまりから政策により台北で電子産業を集積し、成長してきた。上述したように、台湾PC企業は中国の長江デルタに進出し展開した結果、長江デルタには電子産業が集積された。これにより、長江デルタ内の人的ネットワーク等を通じて知識や技術の情報共有が活発化され、全体としてPC生産技術の高度化が行われている。2001年のノートPCの中国生産解禁を境に台湾ノートPCの生産拠点が中国に移転したことで、表3-2-2でもわかるように台湾のノートPC対世界生産量シェアも53％から73％へと飛躍的に伸びた。台湾PC企業は中国の豊富で安価な労働力・土地を利用することでPC価格を低く抑えることを可能にし、その結果台湾企業へのOEM・ODM生産依頼は増加し、現在世界のノートPCの約90％を生産する程にまで成長した。今日の中国・台湾両国のPC産業は互いの存在なしには現在の地位を築くことはできなかっただろう。中国のリーディング産業のひとつであるPC産業はこのように台湾との支え合いによって発展してきた。
奇瑞汽車は近年来とても速いペースで合弁企業や外資企業を追いかけている。中国自動車工業協会の統計では、2005年度の自動車販売量は中国国内で第7位。2007年にはシェアを中国国内第5位にまで上げた。まだ、中国の消費者の中で最も人気が高まっている民族系企業である。まさに民族系企業の旗頭ともいえる。
�顱檻雲源困砲�ける垂直分裂
奇瑞汽車をはじめとする中国の民族系企業は最初の創業段階技術力が弱く、エンジン、トランスミッションなどの基幹部品を含む、ほぼすべての部品を自動車部品メーカーから寄せ集め、そしてそれらの部品を組み合わせという独特の生産方式〔部品寄せ集め型〕に着手した。また、同じ垂直分裂の環境下にある外資企業と比較した時、部品調達先にも特徴がある。まずは、既存の外資企業に提供している部品メーカーから、購入するため、品質については一定の信頼が獲得できる。次に、調達先の部品メーカー自体についても、地場の部品メーカーから積極的に部品を購入している。このときに購入する部品の多くは、「汎用品」と呼ばれる複数の完成車メーカーに対応できる部品である。もともと、地場メーカーはOEMにより、複数の完成車メーカに対応できる「汎用品」生産を大量に行っている。そのため、部品自体が「規模の経済」により低価格である。奇瑞は、このような部品を、外資などにより多く使用しているため、それによって低価格を武器にあっという間に無視できない規模のあるメーカーに育ってきた。元々、民族系企業は「中国自動車工業年鑑」によると、２００２年の中国自動車産業の研究開発費は８６億２０００万元で、自動車工業販売総額に占める比率は１．５％に過ぎない。この割合は、海外の主要完成車メーカーが通常５％〜１０％を研究開発費として投入しているのと比較すると、非常に投資規模が小さいということがわかる。 但し、奇瑞は、エンジンの自主開発など、内製化を進めている。
��-２研究開発における垂直分裂
垂直分裂を利用した中国自動車の生産は、その車種の生産決定から販売開始までの期間が短い。それは外国から入ってきたタイプの、例えばトヨタのカローラやマツダのデミオといった車の既存モデルに合わせた寄せ集めでできるものであった。
2003年に発売されたQQというコンパクトカーをみてみると、従来の中国自動車の生産とは少し異なった垂直分裂の生かし方をしている。QQは既存のモデルではないが、しかし奇瑞はこれを垂直分裂で生産している。それまでは、先にも述べたとおり垂直分裂をする場合は既存モデルに合わせた寄せ集めしかなかった。奇瑞がどうして新車種を短期間で売り出せるに至ったかというと、奇瑞が資本金の３分の２を出資することにより、意東風汽車で働いていた技術のある人材が、佳景科技有限公司という開発会社を設立したからである。人材も外部から調達した佳景科技有限公司から技術を買い取る形になっており、奇瑞はすべて垂直分裂でQQという新車種を販売できることができた。佳景科技有限公司は今奇瑞にしか技術提供をしていない。奇瑞は垂直分裂の利を生かしながら、実質内部開発に成功した。つまりすべてを垂直分裂で行いながら、今までの中国自動車生産ではありえなかった新車種の開発が短期間でできたのである。
近年は、デザインを外部委託している。そのため、消費者のニーズに合いやすく、販売台数を伸ばしている。
��-３人材
前述したように、奇瑞は、外部から人材を上手く引き抜くのも特徴である。QQについては、東風からの技術者を引き抜き、独自の設計会社を作ったことで、研究・開発の時間短縮を可能にした。
2005年、奇瑞の従業員数は8500人だった。そのうち国内の大手自動車会社からの引き抜きが150人、一気に関しては100人。他にも、ダイムラークライスラーやホンダなどからも引き抜いている。彼らを、生産、開発、経理などの要所に幹部として配置し、（図）これにより奇瑞は組織の充実を図った。
日本などでは、人材は長い時間をかけて内部養成するのが基本である。奇瑞の場合は、外部から引き抜くことで、研究開発の時間短縮と生産現場の向上を可能にした。このことが、垂直分裂による部品の寄せ集めだけに終わらず、売れる車種の設計において重要な役割になったのである。
�顱檻雲源困砲�ける垂直分裂
奇瑞汽車をはじめとする中国の民族系企業は最初の創業段階技術力が弱く、エンジン、トランスミッションなどの基幹部品を含む、ほぼすべての部品を自動車部品メーカーから寄せ集め、そしてそれらの部品を組み合わせという独特の生産方式〔部品寄せ集め型〕に着手した。また、同じ垂直分裂の環境下にある外資企業と比較した時、部品調達先にも特徴がある。まずは、既存の外資企業に提供している部品メーカーから、購入するため、品質については一定の信頼が獲得できる。次に、調達先の部品メーカー自体についても、地場の部品メーカーから積極的に部品を購入している。このときに購入する部品の多くは、「汎用品」と呼ばれる複数の完成車メーカーに対応できる部品である。もともと、地場メーカーはOEMにより、複数の完成車メーカに対応できる「汎用品」生産を大量に行っている。そのため、部品自体が「規模の経済」により低価格である。奇瑞は、このような部品を、外資などにより多く使用しているため、それによって低価格を武器にあっという間に無視できない規模のあるメーカーに育ってきた。元々、民族系企業は「中国自動車工業年鑑」によると、２００２年の中国自動車産業の研究開発費は８６億２０００万元で、自動車工業販売総額に占める比率は１．５％に過ぎない。この割合は、海外の主要完成車メーカーが通常５％〜１０％を研究開発費として投入しているのと比較すると、非常に投資規模が小さいということがわかる。 但し、奇瑞は、エンジンの自主開発など、内製化を進めている。
��-２研究開発における垂直分裂
垂直分裂を利用した中国自動車の生産は、その車種の生産決定から販売開始までの期間が短い。それは外国から入ってきたタイプの、例えばトヨタのカローラやマツダのデミオといった車の既存モデルに合わせた寄せ集めでできるものであった。
2003年に発売されたQQというコンパクトカーをみてみると、従来の中国自動車の生産とは少し異なった垂直分裂の生かし方をしている。QQは既存のモデルではないが、しかし奇瑞はこれを垂直分裂で生産している。それまでは、先にも述べたとおり垂直分裂をする場合は既存モデルに合わせた寄せ集めしかなかった。奇瑞がどうして新車種を短期間で売り出せるに至ったかというと、奇瑞が資本金の３分の２を出資することにより、意東風汽車で働いていた技術のある人材が、佳景科技有限公司という開発会社を設立したからである。人材も外部から調達した佳景科技有限公司から技術を買い取る形になっており、奇瑞はすべて垂直分裂でQQという新車種を販売できることができた。佳景科技有限公司は今奇瑞にしか技術提供をしていない。奇瑞は垂直分裂の利を生かしながら、実質内部開発に成功した。つまりすべてを垂直分裂で行いながら、今までの中国自動車生産ではありえなかった新車種の開発が短期間でできたのである。
近年は、デザインを外部委託している。そのため、消費者のニーズに合いやすく、販売台数を伸ばしている。
��-３人材
前述したように、奇瑞は、外部から人材を上手く引き抜くのも特徴である。QQについては、東風からの技術者を引き抜き、独自の設計会社を作ったことで、研究・開発の時間短縮を可能にした。
2005年、奇瑞の従業員数は8500人だった。そのうち国内の大手自動車会社からの引き抜きが150人、一気に関しては100人。他にも、ダイムラークライスラーやホンダなどからも引き抜いている。彼らを、生産、開発、経理などの要所に幹部として配置し、（図）これにより奇瑞は組織の充実を図った。
日本などでは、人材は長い時間をかけて内部養成するのが基本である。奇瑞の場合は、外部から引き抜くことで、研究開発の時間短縮と生産現場の向上を可能にした。このことが、垂直分裂による部品の寄せ集めだけに終わらず、売れる車種の設計において重要な役割になったのである。
�髻“羂″譽�ート（以下 ＢＹＤオート）
中国の民族系メーカーの乗用車生産は、主にトラック、オートバイなどの分野から出発し、次に乗用車に参入したケースと、異業種から参入したケースとがある。BYDオートは異業種の参入で最も目立つ一社である。
BYDオートは、元々、BYDという中国の電池企業であり、主にリチウムイオン電池の製造を行っている。2000年には、リチウムイオン電池で世界シェア第7位だったが、2005年には、第5位。現在は、携帯電話機用電池で世界1位、ノートパソコン用の電池などでは世界2位である。また、リチウムイオン電池のリコールは起きていないそのため電池技術については定評がある。そのBYDが、将来の電気・ハイブリッド自動車の需要を期待して、電気自動車を作る目的で2003年に自動車産業に新規参入をした。それによって誕生したのが、BYDオートだ。
しかし、電気自動車を作る目的で参入したBYDオートであるが、当初は、ガソリン車を製造・販売していた。BYDオートの車は、中型セダンであるF3と大型セダンであるF６に三菱製のエンジンを使用している。このことは、繰り返しになるが垂直分裂によって、エンジンなどの基幹製品が、自由に売買できることによるものである。結果として、BYDオートにとっては、電気自動車を販売するまでの間の、自動車製造における技術蓄積につながることになった。 参入当初は、2万台近くの販売台数だったが、2006年、主力車種である「F3」は63153台の販売を実現させ、同期比472％伸びた。さらに、2006年にはBYD乗用車中国産乗用車初となるウクライナ進出を果たした。BYDオートは、製品を１６カ国と地域に輸出した。 2007年、BYDオートは連続月1万台以上の販売を実現し、また2007年6月から１年間で、10万台を販売するという快挙を成し遂げた。
最近になって世界初となるプラグインハイブリッド車「F3DM」を、2008年末に中国国内で販売することを発表した。プラグインハイブリッドとは、家庭のコンセントで充電ができるハイブリッド車である。「F3DM」は、独自開発した充電池を搭載し、電力のみによる走行と、ガソリンエンジンによる補助走行が可能である。電池は、家庭用プラグイン電源により７〜９時間で完全に充電でき、車両専用の電源だと１５分で８０％の充電が可能だという。最高時速は１５０キロメートルで、完全充電時の走行可能距離は１００キロメートルである。この場合、必要なエンジンはガソリン車のガソリン７リットルに対し、F3DMではわずか１５キロワットの電力で済み、約３０元（日本円で約４２０円）程度の節約になるという。米国及び、欧州市場には2011年に投入する計画であり、また電気自動車「E6」については、2009年に中国で投入予定である。
このようにBYDが成長を遂げることができたのは、BYD自身が電池に強い技術を持っていた点、自動車産業の環境への対応する流れに乗った点、そして垂直分裂を理由として、日米欧と比較すると自動車製造への新規参入がしやすかった点が挙げられる。
中国の民族系メーカーの乗用車生産は、主にトラック、オートバイなどの分野から出発し、次に乗用車に参入したケースと、異業種から参入したケースとがある。BYDオートは異業種の参入で最も目立つ一社である。
BYDオートは、元々、BYDという中国の電池企業であり、主にリチウムイオン電池の製造を行っている。2000年には、リチウムイオン電池で世界シェア第7位だったが、2005年には、第5位。現在は、携帯電話機用電池で世界1位、ノートパソコン用の電池などでは世界2位である。また、リチウムイオン電池のリコールは起きていないそのため電池技術については定評がある。そのBYDが、将来の電気・ハイブリッド自動車の需要を期待して、電気自動車を作る目的で2003年に自動車産業に新規参入をした。それによって誕生したのが、BYDオートだ。
しかし、電気自動車を作る目的で参入したBYDオートであるが、当初は、ガソリン車を製造・販売していた。BYDオートの車は、中型セダンであるF3と大型セダンであるF６に三菱製のエンジンを使用している。このことは、繰り返しになるが垂直分裂によって、エンジンなどの基幹製品が、自由に売買できることによるものである。結果として、BYDオートにとっては、電気自動車を販売するまでの間の、自動車製造における技術蓄積につながることになった。 参入当初は、2万台近くの販売台数だったが、2006年、主力車種である「F3」は63153台の販売を実現させ、同期比472％伸びた。さらに、2006年にはBYD乗用車中国産乗用車初となるウクライナ進出を果たした。BYDオートは、製品を１６カ国と地域に輸出した。 2007年、BYDオートは連続月1万台以上の販売を実現し、また2007年6月から１年間で、10万台を販売するという快挙を成し遂げた。
最近になって世界初となるプラグインハイブリッド車「F3DM」を、2008年末に中国国内で販売することを発表した。プラグインハイブリッドとは、家庭のコンセントで充電ができるハイブリッド車である。「F3DM」は、独自開発した充電池を搭載し、電力のみによる走行と、ガソリンエンジンによる補助走行が可能である。電池は、家庭用プラグイン電源により７〜９時間で完全に充電でき、車両専用の電源だと１５分で８０％の充電が可能だという。最高時速は１５０キロメートルで、完全充電時の走行可能距離は１００キロメートルである。この場合、必要なエンジンはガソリン車のガソリン７リットルに対し、F3DMではわずか１５キロワットの電力で済み、約３０元（日本円で約４２０円）程度の節約になるという。米国及び、欧州市場には2011年に投入する計画であり、また電気自動車「E6」については、2009年に中国で投入予定である。
このようにBYDが成長を遂げることができたのは、BYD自身が電池に強い技術を持っていた点、自動車産業の環境への対応する流れに乗った点、そして垂直分裂を理由として、日米欧と比較すると自動車製造への新規参入がしやすかった点が挙げられる。
?考察
各産業の課題と展望
?-1-?中国PC産業の課題
前章で述べたように垂直分裂に多くのメリットがあるが、その一方で別の解釈もできる。垂直分裂が進んでいるということは、それぞれの企業が外部経済を享受するために互換性のある製品を作るので製品の同質化を招いているのである。一般に製品が同質化すると市場は価格競争に陥りがちである。日本ではあまり多くは行われていないことだが、一般の人が市販の部品を購入してブランド品とあまり遜色ないPCを組み立てることもできる。実際に中国では組み立てを行ってくれる業者が多く存在し、彼らによって作られたブランドなしPC(中国では兼容機と呼ぶ)が市場において大きな存在感を示している。実際に兼容機の中国市場でのシェアは１９９６年には４４パーセントという高いシェアを誇っていた。兼容機はブランド品ではないが、機能的にはブランド品と遜色ない上に、低価格である。そのため技術力のあるブランドメーカーといえども性能の面で決定的な差別化ができないため、兼容機との激しい価格競争を強いられており、PC産業は利幅の薄い産業となっている。中国ブランドメーカーの代表である聯想集団(レノボ)もその例外ではない。
レノボは１９８４年に中国科学院計算技術研究所の研究者たちによって設立された企業であり、１９９６年に海外メーカーを抜いて国内市場シェアトップとなった。その後も国内市場を重視した戦略で、市場の拡大とともに売上を伸ばしたが、２００１年以後はその成長が鈍化し始めた。実際、２０００年の販売台数は前年比９３パーセント増であったが、０１年には同１７パーセントとなり０２年、０３年も１５パーセント前後の増加にとどまった。その要因はアメリカにおけるＩＴバブル崩壊や海外メーカーによる進出など様々であるが、兼容機による攻勢もレノボに大きな影響を与えていた。レノボは兼容機に対して更なる低価格で挑戦したが、その結果、レノボPCの販売利益率は１パーセントにまで落ち込んでしまった。このような状況を打開するためにレノボがとった戦略は、海外展開することだった。そしてそのためにＩＢＭのPC事業部門を買収するという驚くべき戦略に打って出た。２００４年当時、レノボは世界的に見れば第９位のパソコンメーカーに過ぎなかった。そのレノボがＩＢＭを買収したことで一気に世界第３位のPCメーカーとなったのである。ＩＢＭは国際市場でトップレベルの販売ネットワークを持っていたため、中国市場のみに特化していたレノボにとっては強力な武器となる。また、「ＴｈｉｎｋＰａｄ」などのＩＢＭ商標を5年間使用できることになったため海外でのブランド力がないというレノボの問題も解決できた。ただ、ＩＢＭのPC部門は長年、赤字体質であったため、レノボにその負担ができるのかが心配された。しかし、図のようにレノボとＩＢＭのPC部門の会計上の統合がなされた２００６年３月期には純利益が5分の1になったものの、なんとか黒字を保つことができたため、ひとまず成功したと言える。
?-1-?中国PC産業の展望
このように中国パソコン市場では垂直分裂が進みすぎた結果、製品同質化による際限ない価格競争というデメリットももたらされている。製品同質化の中で生まれた兼容機などのブランドPCはブランドメーカーにとってはたしかに厄介な存在である。しかし、他社の作った製品の組み合わせによって構成されているというPCの構造や、ブランドの信頼感よりも価格を重視するという中国の消費者の考え方が変化しない限り、今後も存在し続けるだろう。
?-2-?中国自動車産業の課題
2008年上半期の中国自動車生産は519万3000台で、ついにアメリカを抜き日本に次ぐ第2位となった。ますます巨大化する中国自動車市場であるが、この成長を持続可能なものとしていくためには業界全体の再編が必至となるだろう。自動車自体を求める消費者の数は今後も衰えることはなく、生活水準の向上による購買層の増加で市場の拡大はさらに進むことが確実視される。しかし、自動車を求める消費者のニーズも経済発展に伴い高度化しているのが事実であり、安価な価格を売りとする民族系企業は岐路に立たされつつある。これからの中国で求められるのは価格・デザイン・燃費・品質（性能）がそろった車である。市場の発展が急速に進んできたように、中国においては5年前の流行は最早通用しない。
中国自動車産業の持続的発展のためには、市場ニーズへのすばやく的確な対応、コア技術の獲得が急務である。
各産業の課題と展望
?-1-?中国PC産業の課題
前章で述べたように垂直分裂に多くのメリットがあるが、その一方で別の解釈もできる。垂直分裂が進んでいるということは、それぞれの企業が外部経済を享受するために互換性のある製品を作るので製品の同質化を招いているのである。一般に製品が同質化すると市場は価格競争に陥りがちである。日本ではあまり多くは行われていないことだが、一般の人が市販の部品を購入してブランド品とあまり遜色ないPCを組み立てることもできる。実際に中国では組み立てを行ってくれる業者が多く存在し、彼らによって作られたブランドなしPC(中国では兼容機と呼ぶ)が市場において大きな存在感を示している。実際に兼容機の中国市場でのシェアは１９９６年には４４パーセントという高いシェアを誇っていた。兼容機はブランド品ではないが、機能的にはブランド品と遜色ない上に、低価格である。そのため技術力のあるブランドメーカーといえども性能の面で決定的な差別化ができないため、兼容機との激しい価格競争を強いられており、PC産業は利幅の薄い産業となっている。中国ブランドメーカーの代表である聯想集団(レノボ)もその例外ではない。
レノボは１９８４年に中国科学院計算技術研究所の研究者たちによって設立された企業であり、１９９６年に海外メーカーを抜いて国内市場シェアトップとなった。その後も国内市場を重視した戦略で、市場の拡大とともに売上を伸ばしたが、２００１年以後はその成長が鈍化し始めた。実際、２０００年の販売台数は前年比９３パーセント増であったが、０１年には同１７パーセントとなり０２年、０３年も１５パーセント前後の増加にとどまった。その要因はアメリカにおけるＩＴバブル崩壊や海外メーカーによる進出など様々であるが、兼容機による攻勢もレノボに大きな影響を与えていた。レノボは兼容機に対して更なる低価格で挑戦したが、その結果、レノボPCの販売利益率は１パーセントにまで落ち込んでしまった。このような状況を打開するためにレノボがとった戦略は、海外展開することだった。そしてそのためにＩＢＭのPC事業部門を買収するという驚くべき戦略に打って出た。２００４年当時、レノボは世界的に見れば第９位のパソコンメーカーに過ぎなかった。そのレノボがＩＢＭを買収したことで一気に世界第３位のPCメーカーとなったのである。ＩＢＭは国際市場でトップレベルの販売ネットワークを持っていたため、中国市場のみに特化していたレノボにとっては強力な武器となる。また、「ＴｈｉｎｋＰａｄ」などのＩＢＭ商標を5年間使用できることになったため海外でのブランド力がないというレノボの問題も解決できた。ただ、ＩＢＭのPC部門は長年、赤字体質であったため、レノボにその負担ができるのかが心配された。しかし、図のようにレノボとＩＢＭのPC部門の会計上の統合がなされた２００６年３月期には純利益が5分の1になったものの、なんとか黒字を保つことができたため、ひとまず成功したと言える。
?-1-?中国PC産業の展望
このように中国パソコン市場では垂直分裂が進みすぎた結果、製品同質化による際限ない価格競争というデメリットももたらされている。製品同質化の中で生まれた兼容機などのブランドPCはブランドメーカーにとってはたしかに厄介な存在である。しかし、他社の作った製品の組み合わせによって構成されているというPCの構造や、ブランドの信頼感よりも価格を重視するという中国の消費者の考え方が変化しない限り、今後も存在し続けるだろう。
?-2-?中国自動車産業の課題
2008年上半期の中国自動車生産は519万3000台で、ついにアメリカを抜き日本に次ぐ第2位となった。ますます巨大化する中国自動車市場であるが、この成長を持続可能なものとしていくためには業界全体の再編が必至となるだろう。自動車自体を求める消費者の数は今後も衰えることはなく、生活水準の向上による購買層の増加で市場の拡大はさらに進むことが確実視される。しかし、自動車を求める消費者のニーズも経済発展に伴い高度化しているのが事実であり、安価な価格を売りとする民族系企業は岐路に立たされつつある。これからの中国で求められるのは価格・デザイン・燃費・品質（性能）がそろった車である。市場の発展が急速に進んできたように、中国においては5年前の流行は最早通用しない。
中国自動車産業の持続的発展のためには、市場ニーズへのすばやく的確な対応、コア技術の獲得が急務である。
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