HENRY COWのUNRESTを手に入れたのは、ヨハンが14歳の時だった。子供には背伸びし過ぎたその前衛ジャズロックを理解する機会は、いとも簡単に訪れた。部屋の小さな白黒TVに、丁度UNRESTをかけていた時間に流れたNHKのニュース映像だった。ポーランドに戒厳令が敷かれ、ソ連の軍隊がポーランドを制圧している映像だった。HENRY COW のUNRESTはまさに、ポーランドの連帯がソ連にはむかい、戦車に押しつぶされて行く、そんな状況に対する不安だった。マルクス、そしてスターリニズムとスターリン批判、岩谷宏氏がロック雑誌を読む子供向けに説く文章は、ヨハンには難解ではなかった。ヒットチャートを賑わすロック音楽はすでに、14歳のヨハンのターンテーブルには載らなかった。マルクス。19歳のヨハンは必死に資本論の第1巻を読んだ。社会科学研究会で読み進む商品論における貨幣の起こり方は、ドフトエフスキーの大審問官に通ずる問題を感じた。そして後に読んだ、埴谷雄高の著作におけるスターリン批判に、一党独裁政権の問題を子供に論じた岩谷宏の言いたかった事が全て理解できた。