『ブリーフ・ヒストリー・オブ・メモリー』 A Brief History of Memory 監督:チュラヤーンノン・シリポン Chulayarnnon Siriphol タイ/2010/タイ語/モノクロ/ビデオ/14分 バンコクで起きた暴動の犠牲者となった息子について語る母。日常に襲い来 る喪失と悲しみ、心の奥底のざわめきが、アブストラクトな映像となってモ ノクロームの路地や生活空間と交錯する。
『ソレイユのこどもたち』 Children of the Sun, Soleil 監督:奥谷洋一郎 Okutani Yoichiro 日本/2011/日本語/カラー/ビデオ/107分 東京、多摩川の河口で、モーターボートの修理をしながら、船で暮す男。犬 を傍らに、時折カメラに向かって話しかける。カメラは彼をじっと見つめ、 見ること聞くことだけに徹する。
『ギフト』 Gift 監督:奥間勝也 Okuma Katsuya 日本/2011/日本語/カラー、モノクロ/ビデオ/40分 少年ヨウスケは、公園に住む初老の男、亀ちゃんの嘘を信じてしまう。そん な二人を見守るのはアメラジアンの男。変わりゆく那覇を舞台に物語の虚構 を解体する試みが繰り広げられる。
『柔らかな河、鉄の橋』 Hard Rails Across a Gentle River 監督:ファム・トゥー・ハン、チャン・ティ・アイン・フゥン、 ドー・ヴァン・ホアン、チャン・タイン・ヒエン Pham Thu Hang, Tran Thi AnhPhuong, Do Van Hoang, Tran Thanh Hien ベトナム/2010/ベトナム語/カラー/ビデオ/45分 ハノイの鉄橋とその周辺で、4人の監督それぞれが遭遇した人間模様。路上 で野菜を売る女性、水浴びをする男たち、たむろする少年少女、カップルた ち…庶民の生活が生き生きと描かれる。
『イラン式料理本』 Iranian Cookbook 監督:モハマド・シルワーニ Mohammad Shirvani イラン/2010/ペルシャ語/カラー/ビデオ/72分 台所で料理する監督の家族や親戚たちと、カメラの後ろから彼女らに話しか ける監督が繰り広げる小宇宙。多彩な香辛料の匂い、炒める音、こねられた 肉の感触と共に、イラン社会の姿が垣間見える。
『わたしの町』 My Own City 監督:サミーラー・ジャイン Sameera Jain インド/2011/ヒンディー語/カラー/ビデオ/67分 大都市デリーの路上で交錯するジェンダー化された視線をカメラアイにし、 男たちの視線にさらされる女性運転手の日常をスケッチする。この町に住ま う女の経験を映像で見せるセンスが光る。
『大海原へ』 On the Way to the Sea 監督:古涛(グー・タオ) Gu Tao カナダ、中国/2010/中国語/モノクロ/ビデオ/20分 2008年の四川大地震で被災し、引っ越しを重ねる老いた両親を訪ねる監督。 離れて暮らす息子、当時の映像や声、重機、アルバム写真の断片をコラー ジュし、人の記憶を8ミリフィルムに焼き付ける。
『獄中楽園論』 Prison and Paradise 監督:ダニエル・ルディ・ハリヤント Daniel Rudi Haryanto インドネシア/2010/インドネシア語/モノクロ、カラー/ビデオ/93分 2002年12月のバリ島爆弾テロ事件を取材した記者。監督は、実行犯の一人と 同じイスラム教の学校に通った彼と共に、被害者と加害者の家族の思い、そ して獄中の実行犯の言葉とを行き交い、原理主義と向き合う。
『赤道雨』 The Red Rain on the Equator 監督:ノーヴァ・ゴー Nova Goh マレーシア、台湾/2010/中国語/カラー/ビデオ/150分 母からの手紙で、親戚の過去を知った監督。マレーシア独立運動、その後の 革命運動に身を捧げた元闘士の人々が語り、訓練生活の映像、侵略の歴史の 舞台を引用しながら、赤道下の華人アイデンティティーを探る。
『三人の女性の自画像』 Self-Portrait with Three Women 監督:章梦奇(ジャン・モンチー) Zhang Mengqi 中国/2010/中国語/カラー/ビデオ/75分 一緒に暮らす母と祖母に反発しながらも、対話を試みる監督。男探しか、真 実の愛探しか、大学を卒業したばかりの23歳が、失恋をバネに、身体を使っ て思い切りシャウトする。
『草庵の村』 Thatched Cottages on the Enclave 監督:孟小為(モン・シャオウェイ) Meng Xiaowei 中国 /2010/中国語/カラー/ビデオ/55分 中国・甘粛省の山村、20年以上前に移り住んで出来た集落。森が消えてしま い、村の行く末も案じる彼らの生活を淡々と映すカメラからは、村の人々の 日常の生命力がにじみでる。
『髪を切るように』 A Trip to the Barbershop 監督:サリーム・ムラード Selim Mourad デンマーク、レバノン/2010/アラビア語、英語、デンマーク語/モノク ロ、カラー/ビデオ/23分 ロアンヌにいる彼への携帯メール、ベイルートにいる両親との日常会話、そ して僕はコペンハーゲンで生活していた。異郷の地での孤独、愛する者たち と過ごした時間を綴るラブレター。
『水手』 Water Hands 監督:ヴラディミル・トドロヴィッチ Vladimir Todorovic シンガポール、セルビア、モンテネグロ/2010/広東語、北京語、セルビア 語/モノクロ、カラー/ビデオ/93分 旅先から手紙を書く水夫と、帰郷を促す「彼女」の往復書簡。親密な目線 で、ある村に伝わる民話、大都市の喧噪、夢見心地の現実、リアリティ溢れ る夢、シンガポールとバルカン半島の波間をたゆたう。
『私たちは距離を測ることから始めた』 we began by measuring distance 監督:バスマ・アルシャリーフ Basma Alsharif パレスティナ、エジプト/2009/アラビア語/カラー/ビデオ/19分 ローマ=ジュネーヴ、ガザ=エルサレム、測られた距離が示される。豊穣な 音とテキストが、何層にも重なり、不思議と連続性のある映像は、やがてパ レスティナの寓話へとつながっていく。
『夜が終わって、一日が始まる』 We’ve never seen a night which has finished by reaching a day 監督:イ・ジュヒョン Lee Ju-hyoung フランス、韓国/2010/フランス語、韓国語/カラー/ビデオ/41分 アルジェリア戦争中の売春婦の小説が提示され、並行して、旧日本軍に「慰 安婦」にされたハルモニの語りが暗闇に響く。ハルモニと監督の親密なカメ ラの距離の狭間に、侵略の記憶が刻まれる。
『女と孤児と虎』 The Woman, the Orphan, and the Tiger 監督:ジェーン・ジン・カイスン、ガストン・ソンディン・クン Jane Jin Kaisen, Guston Sondin-Kung 韓国、デンマーク、アメリカ、中国/2010/英語、デンマーク語、韓国語/ モノクロ、カラー/ビデオ/76分 旧日本軍に「慰安婦」にされた女たち、韓国駐留米軍兵士のセックスワー カーの女たち、朝鮮戦争以降、欧米に養子に出された多くの子どもたち。彼 女たちの生の点と点を結ぶ思索的な試み。
『影のない世界』 World Without Shadow 監督:邱涌耀(クー・エンヨー) Khoo Eng Yow マレーシア/2011/マレー語/カラー/ビデオ/60分 マレーシア、クランタン州で、政治に翻弄され、衰退の一途を辿る影絵のワ ヤン・クリ。劇の枠組みを使い、政治と芸術の狭間で、生活苦にあえぎなが らも細々と続ける影絵師などを丹念に描く。
『龍山(ヨンサン)』 Yongsan 監督:ムン・ジョンヒョン Mun Jeong-hyun 韓国/2010/韓国語/カラー/ビデオ/73分 2009年1月、ソウル市、龍山地区再開発による強制立ち退きの最中、警察と の衝突で起きた火事で5人が死亡した事件。軍事政権下や民主化闘争の犠牲 者、残された者たちの記憶から民衆の闘いの系譜をひも解く。
『雨果(ユィグォ)の休暇』 Yuguo and His Mother 監督:顧桃(グー・タオ) Gu Tao 中国/2011/中国語/カラー/ビデオ/49分 内モンゴルの北東、敖魯古雅(オルグヤ)の森に積もった雪の中、全身全霊 で愛情を表現する母親を受け止め、気遣う息子の雨果(ユィグォ)。離れて 暮らす息子が故郷に戻り、家族と生活するつかの間の時間を見守る。