一緒にお話を作ろうよコミュの直線の迷宮

いつからだろうか

私は走っている

どれぐらいの時間を走ってきたのか

全速力に近いはずなのに

まだ走り続けられる

建物の中なのだろうか

両脇には硬い壁がある

途中には分岐している道がいくつもあった

曲がることもできたはずなのに

曲がらず進んできた

曲がったら出れなくなりそうで

曲がったらたどり着けなくなりそうで

ん？

どこから出ようとしてるんだろうか？

どこにたどり着こうとしているのだろうか？

走りながら考える

後ろを振り返ると

来た道がやみに閉ざされている

引き返すことはできなさそうだ

分岐している道のほうからは

光が漏れていたり

音楽が聞こえていたり

人の話す声、叫ぶ声、歌う声･･･

罠なのか

それともそれがゴールなのか

そう思いながらも

ひたすらわき道にそれずにまっすぐ走っている

かなりの時間が過ぎたはずだ

私の速力は変らない

こんな速度で走り続けたら

息が上がって倒れるだろう

体力があっても筋力がついていけないだろう

そんな分析をしながら何時間過ぎたのだろうか

この時間の感覚すらよくわからない

本当に何時間も過ぎているのか

走っているのだけれど

身体を動かしている感じがしない

地面に叩きつける脚に痛みを感じない

そうか

私は夢を見ているのか

それなら説明が付く

そうか夢だったのか

それなら目が覚めるまで走り続けるのかな

この夢の迷宮はどこまで続くのか

目が覚めればここから出ることはできる

しかし

何を目指して走っているのだろうか？

たどり着きたいところ

それがどこにあって

どんなものなのだろうか

そんなことを思っていると

出口が近い

そんな気がしてきた

まっすぐ進んできた道の先が明るくなってきた

あと少しだ

道の途切れるところが見える

まぶしいぐらい光るその場所に

私は飛び込んだ





ドンｯ






背中を強打した音がした




そうかベッドから落ちて目が覚めたのか

ゴールじゃなくて朝がきただけなのか

夢落ちと言うのかな

ベッドの枕元においていた携帯を手に取り

時間を確認しようとした


着信音が大音量で鳴り響く


「もしも〜し」

「おはよう、私だけど　起こしちゃったかな？」

「さっき目が覚めたところだ電話で起きたわけじゃないぞ、どうした？」

「私も目が覚めちゃってね」

「そうか、もう朝だもんな」

「え？　まだ3時過ぎたぐらいだよ」

カーテンを開けて外を見るとまだ空は闇に包まれていた

出口の光は太陽の光じゃなかったのか･･･

「で、その3時過ぎにどうしたんだ？」

「うん、夢の話なんだけどね」

「うん」

「私のいる場所にあなたが走ってくる夢だったの」

「そうなのか」

「どんどん近づいてくるのがわかって嬉しかったんだけど」

「うん」

「目の前に来た瞬間にあなたがいなくなっちゃったのね」

「そうなのか」

「それで心配になって電話しちゃったの」

「夢の話なのにか？」

「うん、迷惑だった？」

「そんなことないよ。ありがとう。背中を打っただけで大丈夫だよ」

「？」

そのあと少し話をして電話を終えた



そうか

たどり着きたかったのは

彼女の夢の中だったのかな

もう少しでたどり着けたのにな

夢は繋がっていたってことになるんだろうか

それも嬉しいような気もするな

たどり着けなかったけど

そのおかげで

こんな夜中に彼女と話すことができた

これも嬉しいことかな



彼女の夢に向かってまっすぐに走ってたのか

なんだか照れくさいな

そう思いながら私はベッドに戻り

朝まで眠ることにした



「明日、ご飯でも一緒に行こう」


朝起きたらそう電話しよう