東海道本線沿線観光コミュの東門院

　天台宗比叡山東門院守山寺は中山道守山宿の中心に位置する寺院です。
　延暦年間(782～805)に至り、伝教大師最澄が比叡山の僧坊の一つを開きますが、征夷大将軍坂上田村麻呂が蝦夷征伐の際にこの寺の仁王像の霊験を感じたため、人皇第50代桓武天皇から「比叡山を守る東門」として東門院守山寺の名を賜り、「守山」の地名が生まれたとの伝承があります。
寺伝によれば、桓武天皇から名を賜った際に寺領として５村350石を賜ったとされています。
　本尊は十一面観音菩薩立像です。　
　護摩堂(不動堂)に安置されている藤原時代作の半丈六の木造不動明王坐像〔重要文化財〕は近江最大といわれています。彩色像で、左手に羂索を掲げて右手に剣を持ち、火焔光を背に岩座上で趺座して忿怒相を示し、口の両辺から牙が上下に生じています。桧材の寄木造りで、上腕部の飾りである臂釧(ﾋｾﾝ)と手首の飾りである腕釧(ﾜﾝｾﾝ)も共に木から彫り出しており、両肩の盛り上がりと膝の張り出しがバランス良く安定感のある構成となっています。また、両膝の裳の衣文(ｴﾓﾝ)線は翻波(ﾎﾝﾊﾟ)の手法で自由な流れがあり、肩口から脇腹に斜めにかかる布である条帛(ｼﾞｮｳﾊｸ)の折り返し部分の的確な表現と共に細部まで入念で繊細な藤原様式を伝えています。
　木造不動明王坐像脇侍の木造矜羯羅童子立像(ｺﾝｶﾞﾗﾄﾞｳｼﾞﾘｭｳｿﾞｳ)と木造制叱迦童子立像(ｾｲﾀｶﾄﾞｳｼﾞﾘｭｳｿﾞｳ)も平安時代の作で、守山市指定文化財です。
　境内には鎌倉時代作の石造五重塔〔重要文化財〕があります。相輪と第五重軸部は他の物を流用しているようですが、全体を通じて非常に古風な構造です。初重軸は背が高くて、前後の二つの石で薬師如来と阿弥陀如来と思われる像を彫り出しています。屋根勾配(ｺｳﾊﾞｲ)や軒廻りが緩やかな鎌倉時代の特色を良く現しています。
　五重塔の左側には石造宝塔〔重要美術品〕があります。相輪は後補された物ですが、基礎の四面は格狭間を作り、中軸の主要部はまろみを帯び、その上に反りの少ない屋根を載せて、全体としてどっしりとした落ちつきを現出しています。これも鎌倉時代の作です。
　五重塔右側には石造宝筐印塔(ﾎｳｷｮｳｲﾝﾄｳ)〔重要美術品〕があります。相輪上半が失われていまあすが、壇上積式基礎の四方を格狭間とし、何れも開花蓮を浮彫に、上端は複弁の反花とし、よくバランスがとれた端麗な佳品です。これもやはり鎌倉時代の作です。
　東門院の存在を示す最古の証拠が、応永３(1396)年の文字が背後に刻まれている山門葺き平瓦〔守山市指定文化財〕です。一次文献史料に登場して来るのも室町時代からで、観音信仰の霊場として信仰を集めました。
　東門院は江戸時代には江戸に向かう朝鮮通信使の宿舎にもなりました。正徳５(1715)年の中山道守山宿木製高札〔守山市指定文化財〕も保存されています。
　明治11(1878)年には二度に亙って明治天皇行幸の際の行在所(ｱﾝｻﾞｲｼｮ)にもなっています。
　東門院には樹齢600年のオハツキイチョウ(Ginkgo biloba 'Epiphylla')〔守山市指定天然記念物〕もあります。イチョウの変種で、葉の一部に「ぎんなん」を付ける珍しい形状です。
　東門院は多くの文化財を有する名刹でしたが、昭和61(1986)年12月の火災で本堂が焼失した際、多くの文化財が失われてしまいました。本堂が平成３(1991)年に再建された際、本尊十一面観音菩薩立像も修復されて安置されましたが、破損が甚だしかったため国の重要文化財指定は取り消されてしまいました。
　守山駅から西北へ600ｍ。
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