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リレー小説「起承転結」コミュの願いは届くのか〜第一回「起・笑点・結」

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賽銭箱の中には小さな妖精がいるという。

妖精というと聞こえは良いが、不精髭のオヤジだ。かろうじて
背中に小さな羽根が生えているので妖精と分かる。
この妖精、賽銭箱の中をフラフラ〜っと飛び回っていて、参拝
者が来るのを待っているのだ。

賽銭箱の中はどうなっているのかというと、投入された賽銭が
貯まる箱が前方にあり、後方にはルーレットが置かれているの
だ。
このルーレットは円形で、均等に百に区切られていて、それぞ
れにランプが付いている。
百に区切られてはいるものの、文字や数字が書いてあるわけで
もなく、いったい何に使うのか不明だ。

そうこうしているうちに参拝客がやって来た。飛び回っていた
妖精はピタリと動きを止め、息を潜めて固唾を飲む。

「カタッ、コトリ、ジャリンッ」賽銭が落ちてきた。

妖精はその賽銭を両手で抱えると、ルーレットの投入口に入れ
る。
すると、何も書かれていなかったルーレットの百マスの一つに
、『当り』という文字が浮び上がり、ランプが音も無く回転し
始めた。


妖精は回転するランプを見つめながら「5円じゃ1マスだね.
..」と言った。

(鯊)
======

「あーあ、リアルな世の中だ。シブチンヤロウめ。」


「おっと、ため息ついちゃ、幸せが逃げていくわい…」
『他力本願』と書かれた分厚い浄財帳を取り出す。ポイント帳
だ。

点いたランプの『当り』数から“お楽しみポイント”に転記し
てある。
地道な軌跡、鬼籍の起席、気咳の黄赤、木堰の輝石、と言って
いい。


不精髭を剃り、ネクタイを締め、3段羽根の盛装に着替え、ポ
イントを初めから数え直す。
初心に帰り、敬虔な気持ちを取り戻す、夕べの祈りの時間だ。
「チューチュータコカイナ、チューチュータコカイナ、チュー
チュータコカイナ、チューチュータコカイナ、…」
3655マス。
「おお、ファンタスティック!」

開き癖のない次頁から真っ白なマス目が延々と続いている。
鉛筆で1マス塗り潰す。

何マス埋めたら“願いが届く”という保障はない。
そもそも、何を願っているのか?
只々、最後の頁に辿り着くのが願いなのか。

足音が二つ、近づいて来る。壁の節穴に飛び付いて外を覗くと、
恰幅のいい男が連れを従えて石段を上がって来る。
浴衣に雪駄履き。首が肩に埋まっている。
風呂敷を抱えた小男から蝦蟇口を受け取ると、紙幣を出して浴衣の懐に忍ばせた


「おい。仕舞っちゃうのか」

新たに小銭を一握り取り出して、賽銭箱に投げつけた。綱を振って鈴を鳴らし、
二礼二拍一礼。

「…白星さま、こっちゃ来い。黒星野郎、あっちゃ行け。
ひろみちゃん、こっちゃ来い。ともみにちづるは、あっちゃ行
け。
おせん泣かすな、馬肥やせ。…」

「リアルな野郎じゃ、しょうがねえなあ。早く帰れ!」

妖精は集めたコインを投入口に入れた。
ルーレットがカッタるそうに回り出した。

『当り』のランプが、幾つか弱々しく点る。

「実は、期待してまっせ…。予想はズバリ100ポイント!!!」
お神酒をあおって、景気付けだ。


ルーレットはゆっくり回り続け、止まる気配も無い。静止させ
ようと手を伸ばした瞬間、スピードを速めた。
区切りのランプが点いたり消えたりし出す。
小銭はマスに落ちるのを嫌うように、飛び跳ねて掛けずり回っ
ている。
ルーレットはガチャコン悲鳴を上げ、ついに部品を撒き散らし
、跡形もなく消えてしまった。


(P)
======


「よぉせぇよー」

妖精のティンカー・ベルヲは愕然。
ルーレットだけを楽しみに生きてきたベルヲ。
もうこんな寂れた木枠に用はない。

妖精は人間に姿を見られた瞬間。息絶えるという。
ベルヲは、賽銭貯金箱の方に移り、千円札にくるまり身を隠し、
神主が金を回収しにくるのをじっと待った。

黄昏どき、神主がローソンのからあげ君をつまみながら、回収にやってきた。

「おお、札入ってるよ札!
 明日はケンタのクリスピーチキン6Pセットだ!」

なまぐさ坊主が狂喜乱舞しているスキにベルヲは逃げ出した。

逃げ出したはいいものの、特に目的地があるわけでない。
風に身を任せ、フラフラ空を舞っていると、子供の笑い声が。
あの赤い屋根の家からだ。

えんとつからリビングに侵入、子供たちは「人生ゲーム」に興じていた。
その中心にルーレットがくるくる回っている。

「俺のルーレットはナンバー10しかないよな
 チンケなもんじゃないさ」

そうつぶやきながらも、のどかな雰囲気に一息ついていた。
子だくさんの車でゴーストタウン行きの決まった末っ子が泣いている。

ふとテレビを見ると、画面いっぱいにルーレットが、
わんさか映しだされている。ラスベガスのカジノ風景だ。

最後に入れた賽銭。あれは確か1ドルコイン。
ルーレットは本場の雰囲気に興奮し、いつもよりも多く回りすぎて、
ベカスへ輪廻転生したのかもしれない。

さっそくベルヲはベガスへ旅立つ。
交通機関という概念を持たないベルヲは自力で飛んでいった。

世界中のモナコやマカオに地道な軌跡を残し、
3年後ようやくベガス到着。ベルヲはベガス中のカジノを巡り巡って、
賽銭ルーレットを探した。しかし全然見つからない。

へとへとのミッドナイト、裏通りをフラフラ徘徊。
地上をトラックガラガラかっ飛ばす。

「あっ積荷に賽銭ルーレットが!!」

羽をすぼめてトラックの荷台へ急降下。
交通機関の存在を知った瞬間でもある。

3年ぶりの再会に胸震わせるベルヲ。
しかし賽銭ルーレットを光らせる術、コインがない。

車は止まった。ここはごみ処分場。
運転手はなんらかの手続きのため車を降りた。
助手席には、財布が忘れられている。1ドルコインを拝借し、
賽銭ルーレットに投入。ルーレットが語りだした。

「ベルヲさまお久しぶりです」
「お。おまえしゃべれるのか」

「すみません。今まで黙ってまして。
 あなたとはどうしても絡みずらかったので」
「感動の再会が台無しだな」

「お察しのとおり、私はあの日、おっさんの1ドルコインにカジノを想い、
 胸高ならせ、たくさん回って、図らずもベガスへワープしてしまいました。
 私の積年の想いが届いた瞬間でした」
「俺の突っ込みはスルーかよ。それがどうしてこんなことに」

「始めはもの珍しさも手伝って、大賑わいだったんです。
 でも。100に区切られているだけでその理由なんか私だって知らないし
 『当たり』って文字、アメ公に理解できるわけないしで人気がなく・・・」
「処分場行き。。。つらいこと聞いちまってごめんな」

「いいんです。私の命もあとわずか。
 そうだ、最期にあなたの願いをひとつ叶えましょう」
「願い?。。。そうさなあ。あの賽銭箱まで、
 二人であと何マスチューチュータコカイナ?」

ルーレットは100の当たりを撒き散らし高速回転を始めた。

(ご)


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