2.心の哲学とはなにか
20世紀後半になって現代科学哲学のなかで注目を浴びるようになった心の哲学(Philosophy of Mind)は、21世紀にはいって今なおホットな研究途上の学問である。『岩波 哲学思想事典』岩波書店(1998年3月「心の哲学」519Lページ)によれば、次のように解説されている。「心の本性をめぐる問題は、特に近世に入ってデカルトが物心二元論を唱えて以来、哲学の中心問題として大きく浮上した。デカルトは心と物を異なる実体としたために、両者間の相互作用をいかにして説明しうるかという難問を抱え込むこととなった。デカルト以降、この問題に対処するために機会原因論や並行論のようなさまざまな説が唱えられたが、いずれも満足のいくものではなく、そのため二元論を放棄して、唯心論や唯物論のような一元論が提起されもしたが、それらもまたあまり満足のいくものではなかった。こうして心の本性を問う問題、特に心と物ないし身体の関係を問う「心身問題」は、現在でもなお哲学の中心的な難問でありつづけている。」