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ヴゥーッヴゥーッヴゥーッヴゥーッ!


『非常事態発生ッ!外壁より敵が進入したッ!衛兵は直ちに現場へ急行せよッ!繰り返す――』


けたたましいサイレンが鳴ると、この地域全体に第一種警戒体制が発令された。
サーチライトの様な光りが城の周りに展開し、周囲を隈なく探知する。
恐らく対人物用の魔法でも放っているのであろう、無数の光りが遠目でも確認出来た。
ソレを見たサラもやはり苛立ちを隠せないらしく、舌打ちで誤魔化す。

「チッ…思ったより早くバレたなりッ!」


だがイヴはこの状況を予測していたらしく、涼やかな声でサラを嗜め、
次なる算段を練ろうとしている。
ソレにはタカも同意らしく、高らかに笑ってこの状況を楽しんでいるかにも見えた。


「外デアレダケ派手ニ暴レレバ気ヅカレテ当然デス、サテ如何シマショウカ?。」


「ハッハッハ!それもそうでござるな〜さて――…ムッ!衛兵が出てきたか!?」


緊迫したタカの声に前方を見ると堀の中央に橋があり、
その向こう側では右往左往する百人以上の兵士の姿が見えた。


『いたぞ〜ッ!』『あそこだ〜ッ!』


手に武器を持ち、次々と橋を渡ってくる兵士達。
ソノ表情には迷いなどある筈も無く只、目の前の怨敵にのみ注がれる。
しかしタカは臆す事無く、冷静に状況を見極め、
大地の感触を楽しむように一歩踏み出た。


「フム…長さはあるが二〜三人同時にしか渡れん橋か。
 この狭さが彼奴等の災いとなったな…拙者一人で行こう。」


スランッスランッ…チャキッ!


二刀を峰に構え、単独で歩み出たタカが橋の真ん中に立ち、
周囲四方を轟かす大声で、高らかに合戦前の名乗りを挙げた。


「近き者は目で見よッ!遠からば耳で聞けェィッ!
 我が名はタカ!闘う意思の無い者は道を開けよッ!
 邪魔立てすれば『風真二刀流』の神髄を、その体で思い知る事になるぞッ!」


そして疾風の如き速さで駆け出すと橋の兵士目掛け、弾丸の様にツッ込んでいった。


「ウォオオォォォォーーーーーーーッッッッ!」


ズバッドバッザシュッガッドカッドドッガシュ!


戦場に踊り出たタカの姿は凄まじい勢いで回転する独楽。
まさにそんな呼び方がピッタリだった。
右に左に最早常人の目では追い付けない速度で回転を繰り返し、次々と敵兵を薙ぎ払う。
そして誰もタカには指一本触れられないまま、彼等を橋の中程まで進入を許してしまった。


「えぇぃッ!魔法部隊ッ!前へッ!」


苛立つ部隊隊長の言葉で、後方で控えていた魔法部隊が一斉に呪文を唱え始める。
その声は大合唱とも言える程の迫力があり、空気を振るわせながらサラ達の下まで届く。
だがしかし、そんな雑音を黙って聞いている程、サラは大人しい子ではなかった。


「させないなりッ!我は求めるッ!
 我が口より出でし言葉以外、沈黙を願うッ!
 開け静寂の扉ッ!『サイレンスエリア』ッ!」


キィーーーーーーーーーンッ!


逸早くサラの呪文が成立すると半径1kmに亘り、橋のほぼ全体が光の球体に包まれ、
魔法部隊の唱えていた呪文が突如消滅し、彼等を一気に役立たずへと貶めて【おとしめて】しまう。


「何だとッ!?敵は最上級の魔法まで使えるのかッ!くそッ…弓矢部隊ッ前へッ!」


ザッザッ…ズチャ…


すると次は後方からボウガンより二廻り程大きい弓を番えた兵士が、わらわらと出てくる。
彼等は直ぐ様 狙いを定め、鬼神の如き猛進撃をするタカに向かい、
躊躇する事無く有りっ丈の矢を放った。


ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン…


「…危険物接近中…目標、矢182本…『フォトンブリッド』ニヨル迎撃ヲ開始シマス。
 ……ファイエルッ!」


ダルルルルルルルルルルルルルルルルルッ!


ブレスの効果を纏った彼女の身体が目映く光輝き、飛来する矢に標準を合わせる、
そしてイヴの指先より発射された光の弾丸は、一発たりとも外す事無く、
正確に全ての矢を撃ち落とした。


「もうよいッ!私 自らが出るッ除けィッ!」


悉く【ことごとく】部隊を役立たずにされ、怒りの頂点に達した部隊長が遂に最前線に出てきた。
一際豪華な鎧に包まれたその身体は、見る者を圧倒する威圧感がある。
身の丈2m以上、腕はそこらの女子の腰より太く、
足に至っては、詰め込まれた筋肉が張り裂けそうに発達し、
歴戦の士【もののふ】だけが持てる風格を只立っているだけで、溢れんばかりに出していた。


…………………チンッ!ドサッ…


「風真二刀流奥義…『薙旋【なぎつむじ】』…。」


最後の衛兵を倒し、刀を収めるタカ。
その頃には無傷の侭、三人揃って橋を渡りきっていた。
正面を見ると城の大きな門があるが、
しかしソノ前方で怒りを露にする彼が最後の防衛線を張っている。


「…貴様…タカとか申したなッ!ココまで部隊をコケにされたのは初めてだぞ…ッ!!
 我が名は皇室近衛隊長ベリアルの『ウハク』ッ!この名を…地獄まで持って行くがよいッ!」


チャキッ…ズラァン…


ウハクは2mは有ろうかと思われるグレートソードを正面に構え、不敵に笑うタカを睨みつけた。
対するタカの瞳は微妙に笑っておリ、この闘いを心から楽しんでいるかに思える。


「ほぅ…漸く兵【つわもの】が現れたか…いざッ!尋常に勝負ッ!」


「死ねェィッッ!!!」


ウハクから残像しか見えない程の鋭い上段斬りが迫り、タカを亡きモノにしようと襲い掛かる。

刹那ッ!

刀で受け止めようとしたタカが何を思ったか構えを解き、大きく一歩後ろに退がった。


ズガシュッッ!バリバリバリッッ!


ウハクが振り下ろした剣は大地を穿ち、大気をも焦がしている。
もしタカがそのまま刀で受け止めていたら、全身をアノ雷が走り抜けたであろう。


「フッ…良い勘をしてるな…我が剣ライトニングファングッ!
 受け止めようものなら、その身を骨まで焦がすぞッ!」


ブンッ!


「クッ!」


刀で止める事が出来ず防戦一方のタカだが、全てを紙一重でかわす。
だがかわす最中【さなか】に見え隠れするソノ瞳は、何かを狙っている様にも見えた。


「援護致シマス。」


「うにっ!」


「手出し無用ッ!ここは拙者にお任せあれッ!」


「フッ良いのか?仲間に助けてもらわなくて?」


その言葉を聞いたタカが不遜にも唇を歪め、余裕顔のウハクを言葉の刃で斬る。


「いらぬ心配だ、それに貴殿の刀筋…既に見切ったわッ!」


「何ィッ!?」


ザザッ!


再び対峙する二人…押し黙った侭、刀を向け合う…。

………ソノ重苦しい沈黙を破ったのはウハクの獣じみた雄叫びだった。
凄まじい形相を浮かべながら剣を上段に構え、真ッ正面から駆け抜けて来るウハク。
並の者ならその鬼気迫る顔を見ただけで、足が竦んで動けなくなるだろう。


「ウォオォォォオオォォォオッッッ!」


対するタカは静かに瞳を伏せ、やや腰を落とし気味に構えており、
精神をギリギリまで鋭く尖らせながら、身体に気を張り巡らせている。
そして突如 目を見開いたかと思うと、戦場から彼の姿が忽然と消えた…。


…タカの瞳には全てが止まって見えていた。
まるで水の様な…ゼリーの様な緩やかな感じのする中、
只一人、タカだけが動いている…。
自分の動作が酷く緩慢に感じ、思う様に素早く動けない…。
しかしそれでも動いているのは彼だけであり、周囲はモノクロの世界の侭、びくともしない…。
時間をかけて刀を抜き、漸くタカの刃がウハクの身体を撫でる様に斬ると、
恰もスローモーションの如く、ゆっくりと鎧にヒビが入っていく。


ズガッシュゥゥッッッッッ!!!バァーーーーーーーンッッ!!


「グハァアッッツッ!!!」


鋭い斬激音が響いたかと思うと、ウハクの鎧が粉々に砕け、
斬られた事も気付かぬ侭、彼は地面へ仰向けに倒れた。


「神速…奥義『緋路【ヒロ】』…。」


目にも止まらぬ斬激をウハクと擦れ違い様に叩き込み、ひっそりと呟くタカ。
ウハクの胸には、まるで緋色の道が走った様な痕が残っており、
どれ程の威力があったかを、雄弁に物語っている。


チンッ


次の瞬間、彼が刀を鞘に収める音が周囲に響くと同時に、忘れ去られていた時間が漸く動き出した。


「た、隊長ォッッ!」


するとソノ光景を真の当たりにした一人の若者が、思い出した様に飛び出してくると、
こちらを睨みながら三人の前に立ちはだかる。


「き、貴様…よくも隊長を…ッ!」


歯が砕けんばかりに噛み締め、言い得ぬ悔しさを自分の事の様に噴出させる若者。
彼は一呼吸すると細身の剣を構え、タカと正面から対峙した。


「わ、我が名は副隊長バールのヒュ、ヒューマ!い、いざ尋常に勝負だッ!!」


悔しさと緊張でガチガチに固まったまま名乗りを挙げるヒューマ。
だがタカはそんな彼を一瞥すると、何故か刀を収めたまま向かい合う。


「よかろう…くるがよい。」


「クソッ!ナメるなァアッツッッ!!」


シャッ!ピタッ!


ヒューマは罵声と共に常人では避けきれ無い程、スピードが乗った上段斬りを繰り出したが、
その剣は信じ難い事に、タカの顔面僅か2cm位手前の所で止まっていた。


「なッ!?そ、そん、なッ…。」


余りの事に驚愕するヒューマ…。
良く見るとヒューマの剣の根元には、僅かに開いたタカの柄【つか】があてられ、
その微々たる動きで凄まじい斬激を防いでいる。
この場に居る誰もがソノ光景に心奪われ、一歩も動けないでいた。


「…お主はまだ若い…修行するが良い…。」


チンッ……


鯉口を閉じ、ヒューマの横を通りすぎるタカ。
ヒィーマは彼との擦れ違い様に剣を強く握りると、涙混じりの目でタカの事を睨み、
その瞳に言葉では現せない悔しさを込めた。


「…通らせてもらおう…道を開けェィッ!」


ヒューマを背にタカが一喝すると、まるでモーゼの十戒の如く人波が割れ、一本の道が出来る。


「さぁ参ろうか、御二方ッ!」


「うにッ!今行くなりッ!」


「少々オ待チヲ…アノ…コレヲ使ッテ下サイ。」


地面に倒れたウハクの隣で、力無く項垂れるヒューマの側に、イヴが駆け寄る。
良く見ると彼女の手には何か握られていた。


「…何だそれは?」


「傷薬デス、隊長サンニ使ッテアゲテ下サイ。」


「いらぬお世話だッ!!」


目を剥き、怒りを露にするヒューマ、しかしイヴは動じず彼を見つめる。



「貴方ニハ必要アリマセンガ、隊長サンニハ必要デス。
 意地ナド張ッテ、傷ガ広ガッタラ手遅レニナリマスヨ…サァ…。」


激昂するヒューマを優しく諭し、ソッと彼の手に薬を置く。
なし崩し的に受け取り、暫く黙った侭薬を見つめていたヒューマだったが、
自分の行動を思い直し、紳士有るまじき行為を恥じたのか、俯きながらボソボソと口を動かす。


「…………ありがとう。」


「イエ、オ気ニナサラズ…ソレデハ通ラセテ頂キマスネ。」


彼の謝礼を耳にすると、イヴは暖かい木漏れ日の様な微笑みを残し、
自分を待つ仲間の元へ駆けていった。
しかし不意に顔を上げたヒューマの言葉に足を止める。


「待てッ!」


「何カ?」


「…城の中庭右に塔がある…今までは誰も使ってなかったが先日、明かりが洩れていた…。
 何が目的でこの城に入るのかは知らんが、恐らく其処にお前等が探す何かがある…と思う…。」


「ッ!!アリガトウゴザイマシタッ!」


タッタッタッタッタッタ…


走り去る三人の背中を見つめるヒューマ。
イヴから貰った薬を使い、応急手当をしていると不意に下方から声がした。


「き、機密漏洩は重大な戦犯だぞ…。」


「た、隊長ッ!」


驚くヒューマを手で制し、胸に手を当てよろめきながら上体を起こすウハク。
辺りの状況を我が目で見て確認すると、溜息混じりに重たい口を開いた。


「…ふぅ……どうやら私達は負けた様だな…。」


「ハイ…ですが死者は一名たりとも出ておりません。」


「そうか……不思議な事もあるものだな…。」


「そうですね……それと御言葉ですが、私は戦犯なんかではありませんよ?」


「何?」

ヒューマは最早姿が見えなくなった彼女等の方を見ると、冗談っぽくウハクに話す。


「私は只一人でロボットと『会話の様な戯れ言』してたまでに過ぎません。
 第一、機械が私と喋るなんておかしな話ではありませんか?」


「……クックック…ハーッハッハ!
 いや失敬…そうだな、この魔界には喋るロボットは存在してなかったな……クッ!」


「隊長…ここに居ては傷に障ります。
 取り敢えず応急手当はしてありますが、キチンとした治療をせねば…。」


すると何時もらしからぬヒューマの行動に、ウハクの片眉が上がる。


「ほぅ…お前、薬なんか携帯してたのか?」


「さぁ…どうでしょうね。」


悪戯っぽく笑うヒューマ、その手には先程の薬が握られている。
ウハクもソレ以上言及はせず自嘲気味に笑うと、撤退命令を出すようヒューマに命じた。


「……帰還する…全軍に伝達してくれ…。」


「ハッ!隊長より伝令ッ!全軍退却ッ城に戻れェッ!」


『サー、イエッサーッ!』


ザッザッザッザッザッザッザッ……


負傷者を担ぎながら城に撤退する兵士達、ウハクとヒューマもそれに続く。


「フッ…私達も帰還しよう。」


「ハイッ!隊長ッ!!」

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