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シークレットゲームコミュのシークレットゲーム 〜エピソード6〜 第13話[渚の決意]

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第13話[渚の決意]                              〈作・桐島成実〉

【残りの生存者数・・・9/13人】

〈現在の状態〉

             PDA      状態    手塚との関係
[グループA]
 手塚 義光     (10)       健康    
 御剣 総一     (A)        健康       良好
 姫萩 咲実     (Q)      足を負傷     普通
 綺堂 渚       (J)       健康       不穏
 葉月 克己     (4)      肩を負傷     良好
 
 高山 浩太     (?)       ??       険悪

 長沢 勇治     (?)       ??       敵対

 矢幡 麗佳     (?)       健康       敵対
  
 郷田 真弓     (5)        ??       敵対

 色条 優希     (?)       死亡       敵対

 漆山 権造     (7)        死亡       敵対

 陸島 文香     (?)       死亡       敵対

 北条 かりん    (?)        死亡      知らない





高山が去り、その場に残された総一達は、しばらく唖然としていたが、すぐに我を戻した後、行動を開始した。

【3階が進入禁止になりました!】

このままぐすぐずしていたのでは、いずれ5階も進入禁止となってしまう。

ルールという呪縛に囚われている以上、ゲームを放棄するヤツは、すなわち『死』を意味するのだから。

手塚は残り時間を確認しようと、ポケットにしまっていたPDAを取り出す。

手塚「っと、こっちじゃねえな。こ・・・」

その動きがピタリと止まる。

手塚「なんだ?偽装機能が解除されてやがる」

そのPDAはかつて手塚が最初に見た、道化師の姿へと戻っていたのだ。

手塚「俺自身が操作したわけじゃない。と、すると・・・」

その疑問の意味をたぐりよせた結果、一つの答えへとたどり着いた。

手塚「なるほどな、高山の大将のPDAは『2』ってコトか」

ルールの一覧に『2』のPDAの持ち主が半径1メートル以内に来ると偽装機能が自動的に解除されるって、書いていやがったな・・・。

そうすると、大将がJOKERを欲しがっていた理由も分かる。

手塚「コイツは、ますます面白いことになりそうだぜ」

遅かれ早かれ、いずれ再会することになりそうだな。

手塚はそんな風に考えていた。

そんな中、部屋を捜索していた手塚達は、溢れんばかりの銃器の数々に、驚きを通り越して呆れるしかなかった。

手塚「あの金髪の嬢ちゃん、5階で例のライフル銃を手に入れた後、階段前を見張っていた、ってことになるな」

手塚の手には麗佳が使っていた銃と同じものが手に握られていた。

総一「そうなりますね」

総一はそう言いつつ、別の木箱を開けてみる。

―――だが、いくら強力な銃であっても、相打ちじゃあ意味がねえな。

手塚は、新たな武器を手にするたび、側に居る総一達を攻撃しようともくろんでいた。

それが出来ない一番の理由は、渚の存在があったからだ。

渚は、常に銃を構えており、手塚が裏切らないか否かずっと見張っていた。部屋を探索する時でさえ、彼女は手塚と総一達の間に割って入る形をとっていた。

それは、総一達に銃を向けることを許さぬ、堅固たる意志の表れの様に手塚の目には映っていた。

この時点で、渚が只者でないことを手塚自身、揺ぎ無い確信を持っていた。

手塚「・・・もしかしたら、早い内に大胆に切り込んでいた方が楽だったかもな」

手塚はそう嘆く。確実さを優先させた結果となっているが、その方が性に合っていると自覚していた。

渚「何か言いましたかぁ〜?」

手塚の嘆きに、近くに居た渚が反応する。

手塚「いんや、何でもねえよ」

手塚はそうはぐらかす。

だが、恐らく、いや確実にこちらの意図を読み取っている。

手塚はこの目の前に居る女性に、イラ立ちを感じずにはいられなかった。何もかも見抜いている上で、あえて泳がされている。そんな気がするからだ。

―――結局のところ、狐と狸の化かしあい、ってトコか。

だが、それもいささか飽きたな。

そろそろ、ヤツの化けの皮を剥いでやりたいところだが・・・。

その機会は、もうすぐやってくるのであった。

最も、手塚自身もそれに気づくはずもなかったが。ただ一人を除いては・・・。



・・・
・・・・・


一方その頃、手塚達と別れた高山も、着々と準備を整え、行動をおこしていた。

高山「殺しの手伝いをしてもらいたい」

長沢「なっ!?」

高山の前に今居るのは、突然の出来事に驚いている長沢の姿だった。

長沢は最初、急接近してきた高山に対し、慌てて銃を構えようとした。

するとそこへ『待て!話がある』と高山が言った矢先に、この申し出である。

長沢は、その意図が読めずに困惑していたが、すぐに邪な笑みを浮かべ始める。

長沢「・・・もしかして前に俺がアンタを襲ったこと、もう忘れちまったのかよ。ボケる歳でもないだろうにさぁ」

高山「問題はない」

長沢の問いに、高山はキッパリと答える。

高山「その過程で、首輪なりPDAなり必要であれば、お前にくれてやろう」

長沢「つまり、俺と手を組めって言いたいわけ?」

高山「そうだ」

そのあまりにも整然とした態度に対し、長沢はあざ笑うように口元を歪ませる。

長沢「しかし、一体誰を殺そうってんだ?」

長沢は、高山の真意を探る為に、そう聞いてみた。

高山「お前が嫌っている、手塚という男だ」

長沢「へぇ・・・」

その答えに、長沢の口がさらにつり上がる。

高山「お前も、人を殺すことに躊躇いはないのだろう?」

一方の高山は、いつもと変わらず無表情なままだ。

長沢「それは奇遇だね。俺もあいつは殺そうとずっと思ってたんだ」

一度、手塚の面前で落とし穴の罠にかかって落ちたという事実は、プライドが高い長沢にとって、屈辱以外の何者でもなかった。

そのせいか、もはや彼には手塚を殺すことで頭が一杯だった。

高山「そうか」

高山も、この長沢が手塚に対して反感を持っている、ということは理解していた。

その為、手塚を葬る為に手を組むのは最適だと判断した。

高山「幸い、手塚の位置はこちらで特定出来る。その気になればすぐに攻撃を仕掛けることが出来るだろう」

長沢「ああ、わかったよ。ただし、とどめを刺すのは俺だ。首輪やPDAが壊されたらイヤだからね」

長沢は、自身の解除条件を明かすつもりは毛頭なかった。だから何のPDAを持っているのか分からない様にする為に、そんな言い方をした。

高山「いいだろう。・・・ただし俺を殺すのは、手塚を葬ったあとにした方がいい」

長沢「・・・へっ」



・・・
・・・・・


部屋の探索をしばらく行っていた手塚達であったが、怪我をしている葉月の状態が芳しくないことに、総一達は気づき始めた。

葉月「つっ・・・ふぅ・・・」

総一「大丈夫ですか?葉月さん!」

葉月は弾で肩を貫通していた。その弾は決して小さなものではなく、包帯には今も血がへっとりとついていた。

抗生物質により発熱等はないものの、この2日近くに及ぶ身体の酷使は、さすがに疲労を蓄積しているようだ。

実際、初老にさしかかっている葉月にとっては、相当なものだろう。

渚「今、手当てをしますからぁ〜」

渚はさっそく、救急箱を取り出し、丁寧に手当てしていく。

だが、その間も、手塚から目を背けるようなことはしなかった。

葉月「すまない、迷惑をかけるね」

葉月は本当に申し訳なさそうだった。

総一「それは言いっこなしですよ、葉月さん」

この2日あまりの共同作業で、すっかり打ち解けている風であった。

もっとも、手塚にとってはどうでも良いコトであったが。

手塚「に、しても、さすがに疲労もピークだな。今まで休憩のたんびに何か起こりやがったからなぁ」

総一「あ、じゃあしばらくはここで休息をとりますか?」

手塚「仕方ねえなぁ。先に急ぎてぇ気持ちもあるが、今は休め」

手塚はそう言いつつ、部屋を出て行こうとする。

葉月「あ、待ってくれ!君もずっと動き詰めじゃないか」

すると、痛みに呻いていた葉月が、手塚を引き止める。

たしかに葉月の言うとおり、休憩を取るたびに、手塚は外の見張りを買って出ていた。

葉月「こんな僕が言うのもなんだが、君も少しは休んだほうがいいんじゃないのかね?」

葉月の言うことももっともだ。

だが、心から相手を信用しきれない手塚にとっては、連中と一緒にいることの方が心が休まらないのであった。

手塚「気遣いは無用だぜ、オッサン。・・・それよりも、しっかりと身体を休めとくんだな」

手塚は足早に、その場を立ち去った。

そして、いつもの様に、廊下に背をもたれ、スミスから貰い受けた煙草を取り出し、一服する。

本来ならば、不審な行動ばかりが目立つ渚が居るこの集団から、今すぐ逃げ出すのが良策なのかもしれない。

すぐ側に渚が居る場合は別として、今は壁一枚を隔てている。不測の事態さえ無ければ逃げることも可能だ。

手塚「だが、それじゃあヤツが何者かがわからんしなぁ」

なんとか、ヤツの尻尾を掴ませることが出来ないか。このまま泳がされっぱなしってのもシャクにさわるしな。

彼は自身のPDAを取り出し、状況を整理しつつ、今後のことを考え始める。

脅威を取り除くに越したことはない。脅威に目を背けることは、かえって自身に迫る危機を見逃すことにもなりかねないからだ。

それは自身の首輪を外し、下の階に逃げた後でも例外ではない。

手塚「まぁ、ヤツの正体は、ヤツ自身に聞くのか一番手っ取り早いことか」

それならばと、と思案していた矢先。

ガチャッ!

部屋のドアがゆっくりと開いた。

そしてそこから人が姿を現す。

渚「手塚く〜ん」

・・・まさか、ヤツの方から姿を現すとはな。

手塚は内心、チャンスだと思った。

手塚「何だ?手当てはもう済んだのか?」

フレンドリーな感じで返事を返した手塚に対し、渚の表情はどこか硬い。

その渚は後ろ手にドアを閉め、ゆっくりと手塚の方へと歩んでいく。

渚「もう芝居はやめにしましょう」

その口調は、かつての渚のものではなかった。

冷たく、感情の篭っていない、だが、静かな鋭さを秘めている口調だった。

手塚「ほぉ、只者じゃないって認めるわけだな」

手塚は笑っていた。だがその目は鋭く渚を見続けていた。

渚「ええ、そうよ。あなた、どうやら私の正体が知りたいらしいわね」

渚は、油断ならない目つきで、手塚の放つ鋭い目線に、真っ向から挑んできた。

手塚「盗み聞きしてたってか?ったく、油断ならねえアマだな」

渚「聞かれたくない事なら、口にするのは間違いだった。そうよね、手塚君」

渚のその手には、今もアサルトライフルが握られている。

手塚「言ってくれる。で?わざわざ自身の正体ってのを、ご高説ってか?」

手塚は冗談めかして言っているものの、一触即発の空気で辺りは張り詰めていた。

渚「その必要はないわ」

そう言って渚は握っていたライフル銃を前に構え、手塚の方へと向ける。

手塚「くくくっ!まさかそっちから挑んできやがるたぁ、こりゃ予想外だったぜ」

手塚は爽快に笑い飛ばしてみせた。銃を向けられているのに、むしろ余裕の表情だった。

渚「無駄よ、今の状況を考えればすぐわかるわ」

手塚「テメェに向けて銃を向けたその瞬間に、俺を撃つってか?」

手塚は銃こそ手元にあるものの、構えて狙いを定めているわけではなかった。

そう考えると、まるで自然な動作で手塚に狙いを定めた渚の方が、歴戦を潜り抜けたという感がありありと浮かぶ。

渚「そうよ。今のあなたは逃げられやしない」

恐らく本当だろう。これがハッタリでないことは手塚もよく理解していた。

手塚「だがよぉ、なんでわざわざ一人で来た訳だ?俺を殺すつもりなら、多人数でかかった方が確実じゃねえか?」

渚「・・・あの人達には、人殺しはさせられないわ」

渚はその時だけ、沈んだような表情を浮かべた。

手塚「くっくっくっ、はははははっ!!」

今度の笑いは、豪快ともいえるものだった。

手塚「テメェ、さては今まで相当人殺しをしてきやがったな?その人殺しが一人前に偽善者ぶるってか!?」

手塚は、さも面白おかしく笑い転げる。

渚「あなたの言う通りよ。・・・私は人殺し、それは言いようのない事実」

一方の渚は、まるで動じていなかった。

渚「けれど、そんな私でも、今出来ることがあるって分かったの。総一君をこのゲームに勝たせる為には―」

その後の言葉は最後まで続かなかった。代わりに、別の言葉が告げられる。

渚「だからあなたを殺すの。あなたが、総一くん達を殺す前に」

その表情に迷いは微塵も感じられなかった。

手塚「やっぱり気付いていやがったか。だが、いいコトを聞いちまったぜ」

手塚の表情から笑みが消え始め、代わりに冷酷な本性をかもしだす。

手塚「いささか無分別な行動だったようだな、あぁ?」

手塚は吸っていた煙草を投げ捨て、身構えた。

渚「無駄って言ったはずよ?殺されたくなかったら、今すぐここを離れることね」

渚のその表情には、普段の様子からは想像もつかない威圧感が、ありありと浮かんでいた。

かつて大切だった人を筆頭に、沢山の人達の命と、心の内の『何か』を犠牲にして、得た殺しの器量・・・。

皮肉にも、それが総一達を守ることに使われようとしていた。

手塚「どうだかな?確かに、銃を構える隙を逃すアンタじゃねえわな」

手塚は身構えているものの、そこから動こうとはしなかった。

手塚「だがなぁ、俺の手には今『コレ』があるんだぜ」

渚「・・・・・」

手塚は銃を構えるではなく、ずっと手元に持っていたPDAを、渚の死角になる形で、片手で素早く操作した。

手塚「やっぱりアンタは冷酷になりきれていねぇ。ごたくを並べずにさっさと俺を殺しておけばよかったものをよぉ」

そして、手塚はPDAをさっと口元に持っていく。

しかる後に、大きく息を吸う。

手塚「御剣!!渚に殺されそうになってる!助けてくれ!部屋の外にいる、今も銃で狙われている!!」

手塚はPDAに向けてまくし立てる。

渚「―えっ!?」

手塚のあまりにも意外な行動に、一瞬唖然とする。

その後すぐに、部屋のドアが勢いよく開かれる。

総一「て、手塚さん!?」

そこには、総一の姿があった。

渚「そ、総一くん!?」

そこに至った時点で、渚は手塚の意図に気付いた。

そう、彼が使ったのは、PDAの通信機能。

今まで行われたゲームの中でも、この通信機能を使って相手を出し抜こうとした例はいくつかある。

だが、銃を突きつけられているという切羽詰った状況で、大胆にも通信機能を使うということは、さすがに渚も想定していなかった。

いや、それとも手塚が言うとおり、彼らの『絆』に触れ合ったことで、冷酷さを失ってしまったのかもしれない。

渚は動揺していた。

手塚に1本とられたことに対してではない。

他ならぬ総一に、自身が人殺しをしようとした瞬間を見られた、その事に関してだった。

手塚は、渚の隙を瞬時に見抜き、さらに煽った。

手塚「気をつけろ!御剣!コイツ、俺たちを皆殺しにする気だ!」

総一「な・・・」

総一は、突然の状況に、完全に戸惑っていた。

総一「そ、そんな、ほ、本気ですか!?渚さん!?」

渚は今も、銃口を手塚に突きつけたままだ。

その事に気が付いた渚は、慌てて銃の構えを解く。

渚「ち、違うのよ!?私は・・・!」

その後の台詞が続かない。渚が手塚を殺そうとしていたのは、紛れもない事実だったからだ。

その慌てぶりは、総一を前にして、純真無垢な少女に戻ってしまったかのようだ。

手塚はその隙を突き、腰に下げていた片手用の小型拳銃を、密かに渚に向ける。

わざわざ小型の拳銃を使った理由は2つある。

小型の銃の方が、構えて撃つまでのタイムロスが少なくて済むから。

もう一つは、渚に向けたその銃は、ちょうど総一から見て死角だったことだ。

渚「!?」

銃を向けられた渚は、反射的に手元にあった銃を構えてしまう。

その頭によぎったのは、渚自身の命の危機ではない。

自身が倒れた後の、他ならぬ総一の身の危機だった。

総一「渚さんっ!?」

総一の叫びに、渚はビクンと反応する。

ガァーン!!

だから、銃から弾が吐き出されたのは、渚の銃ではなく、手塚の銃だった。

渚「きゃ!あ、うっ!ご、ごふっ・・・!」

銃を持つ手から力が抜け、下に落ちる。

手塚が放った一発は、無情にも渚の心臓を貫いていた。

そして、ゆっくりとその身体が力なく倒れていく。

―――やったぜ!このまま御剣のヤツも始末して・・・。

ガチャン!

手塚「ん?」

渚の身体が床に投げ出された瞬間、聞きなれない音が通路上に響いた。

それを疑問に思った手塚だったが、それはすぐに打ち切られた。

総一「なっ!手塚さん!なぜ撃ったりしたんですか!?」

総一は、あまりの展開にしばらく呆然としていたが、手塚が渚を撃ったことを大声で責め立てた。

それを打ち消すかのように、手塚は声を荒らげる。

手塚「馬鹿か、お前は!このまま俺が撃たれたら、次は御剣、お前の番だったんだぞ。そうなりゃ、部屋の中に居る嬢ちゃん達は誰が守る?」

総一「そ、それは・・・」

手塚の剣幕に、総一は返す言葉に詰まる。

総一とて、手塚を非難したいわけではない。ただ、人の命が失われた。その事実に憤慨していたのだ。

手塚「仲間を守りたければ、時には覚悟を決めなくちゃならねえ。それに、だ」

そう言って、総一から目を離した手塚は、もはや動かなくなった渚に近づき、身体のあちこちを調べ始めた。

総一「て、手塚さん、一体何を・・・」

手塚「ホラ、コイツを見てみろ」

手塚は渚のスカートの部分を軽くめくりあげた。すると、そこには腰から太ももにかけて、いくつもの機材の様なものがぶら下がっていた。

そこからケーブルがいくつも接続されている。

手塚「コイツは、監視カメラか?こっちは、無線機か何かか?」

総一「こ、これは一体・・・?」

総一も続いて渚に近づき、そこに備え付けられている機材に目を剥く。

手塚「事情はよく分からんが、恐らく俺たちを監視する為のものだろうな」

手塚は総一の方を振り向いてそう言った。

総一「ま、まさか、それじゃあ」

導き出された答えは一つ。

手塚「コイツは、間違いなく誘拐犯の一味、という事になるな」

手塚の発言に、総一はただただ呆然とするばかりだった。

手塚「ただ、腑に落ちねえこともある」

総一「え・・・?」

思考が半ば止まっている総一に対し、手塚は冷静に今の状況を整理している。

手塚「なんでコイツが、わざわざ俺たち同様に首輪をしているのか。いや、違うな。なぜ首輪の解除条件を満たそうとしていたのか」

総一「そ、それは一体どういう・・・?」

状況が飲み込めない総一に、手塚はある一点を指す。

そこには、渚の身体に隠れる形で、一つのPDAが床に落ちていた。

総一「こ、これは!」

それを見た総一は、驚きに顔をこわばらせる。

手塚「俺を殺そうとした理由は、恐らくはコレだ」

そのPDAは『3』の数字が描かれていた。

総一「そ、そんな!だって、渚さんは『J』のPDAを持っていて・・・!」

総一の疑問はもっともだ。

その疑問に手塚が答える。

手塚「あくまで推論だが、この『J』の本来の持ち主は、陸島、と言ったな。ヤツのPDAだったんじゃねえか?」

総一「え!?」

総一は意外な答えに、驚きを隠せなかった。

手塚「で、陸島をこの渚が殺した。その後、何食わぬ顔をしてお前達の仲間のフリをしていた、ってのはどうだ?」

手塚「そうすりゃ、最初の頃に陸島がお前らと行動を共にしていた理由も、このアマが俺たちを殺そうとした理由も説明がつく」

総一「・・・・・」

そこで、手塚は一旦話を打ち切り、『3』のPDAと渚のポケットに入っていた『J』のPDAを取り出し、自身のポケットにしまいこんだ。

手塚「つまるところ、信じるだの情だのなんてのは、自身を盲目にさせるだけの、ただの戯言にしか過ぎねえってコトさ」

いまだ呆然とする総一をよそに、手塚はそう締めくくった。

―――くくくっ。そう、まさにそう言うわけよ。

手塚は内心総一のコトをあざ笑っていた。JOKERを『3』に偽装して作り話をする。とっさの思いつきとはいえ、これほどまでにうまくいくとは思わなかった。

ここまでくると、お人好し転じて、ただのおめでたいヤツだと、手塚はそう思ったからだ。

さてと、これからどうするか。

手塚は心の内で、次の行動を考えていた。

当初は、人の位置を感知するソフトを探す為にヤツラを泳がせていたわけだが。

邪魔者がいなくなり、怪我人が居る以上、さっさと始末して一人で探す方がかえって手間が省ける。

それじゃ、目の前に居る御剣に、更なる絶望を味あわせてやるとしますかねぇ。

手塚は、壁に立てかけていた銃を手に持ち、総一の方に振り返った。

だが、手塚のその目論見は、達成せぬまま終わってしまうのだった。


・・・
・・・・・


いよいよ総一達を裏切ろうとする手塚とは裏腹に、最終局面が間近に迫っていることに、彼はまだ気付いていなかった。



次回は第14話[向けられた牙]壮絶な攻防戦が起ころうとしています。一体誰と誰が対峙し、そして命を落としてしまうのか・・・?乞うご期待★



コメント(5)

なんか凄い展開になってきましたね><
それにしても高山さんと長沢が手を組むとは・・・w
おはようございます手(パー)今日は読むのが朝になってしまったあせあせ疲れてたのかなーあせあせ(飛び散る汗)


今週は色々な人の思惑が入り交じってましたねー手(パー)来週からは高山・長沢vs手塚パパの勝負になりそうで楽しみでするんるん



PS.いつの間にか春休みがあと2週間しかないという衝撃の事実衝撃ぴかぴか(新しい)
ザキさん、おハローなのです〜♪

今回のエピソード『6』は、これまでの話の流れと違い、完全に手塚ワールド?と化しつつあります。

高山さんからして見れば、あまり時間が無いといえます。ずる賢い手塚さんが総一くん達を殺して首輪を外し、早々と進入禁止エリアの階(今だと3階)に引き上げることが目に見えていたからです。

そんなことをされてはJOKERまで下の階に持っていかれ、自身の首輪は外すことは不可能、すなわち死を意味します。

ですから、なりふり構わないのでしょうね・・・。

もりへいさん、バイトとか色々ご苦労さまなのです〜♪

高山さん・長沢くんコンビと手塚くんとの戦いは、確定的と言えるでしょう。そうなった時、手塚くんと総一くん達がどのような行動に出るか、見ものですね♪

今回の手塚くんは結構回りくどいやり口が目立ったので、次回のエピソード『7』ではもう少し大胆に切り込ませる展開もありなのかなぁ、と。

そういえば、ポジション的には咲実さんはヒロインの筈なのに、あんまり目立ってない・・・。今後挽回出来るかなぁ?

そろそろ花見の時期ですね。ここで一句。『桜舞い、酒に酔いつつ、夢心地。儚き命、花と華かな』・・・思いつきですので、聞き流してください(汗)



なるみさん、どうもです〜♪

渚の決意というタイトルなのに、即脱落な渚さんでしたが…(;^_^A

とりあえず手塚さんは総一くんを狙うのはヤメにして、来るであろう敵に備えますよね。
高山さんと長沢のコンビは、長沢が猪突猛進しないように高山さんがコントロール出来れば…というところですね爆弾爆弾
麗佳さんは言うまでもなく強敵ですし、今まで動きのなかった郷田さんが渚さんの脱落でどう動いてくるかも気になるところです台風
レッドさん、どうもなのです〜♪

渚さんの場合、前回同様に思い切った行動をとった直後に命を落とす結果と相成りました。しかも今回は、総一くん達を助けようとした事すら知らされない内に・・・。

手塚くんが事を起こす前に高山さん達、もしくは麗佳さんか郷田さんが来てしまえば、総一くんと共闘するか、総一くん達を見捨てるという可能性の2通りが考えられますね。

高山さんなら、長沢くんをうまく使うでしょう。なにせ本編では手塚くんに隙を見せずに、共に行動し続けていたぐらいですから。

いずれにせよ、次回から決戦の始まりです。果たして生き残るのは誰か・・・?

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