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語部夜行 〜カタリベヤコウ〜コミュの実験施設

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「はあ・・・・はあ・・・・」


なんなんだよ、これは!
新薬のテストじゃないのかよ!?
簡単で割のいいバイトだと思ったのに!
なんでこんなことになるんだよ!?
なんでだよ!?
なんなんだよ!?


「なんなんだよコイツらは!?」





―――――――――――――――





春休み

交通量の少ない山道。そこに一陣の風が吹き抜ける。


聖「WRYYYYYYYYYYY!!」


チロ「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


ロードレーサーで疾走するジャージ姿の聖と、ロードレーサーのフレームに必死でしがみついているチロである。
スピードメーターをつけていないため速度は不明だが、競輪の選手も真っ青なスピードなのは確かだ。だが真に驚くべきは、そのスピードを維持し続けるスタミナかもしれない。
一方チロはそんな高速で走るロードレーサーに生身でしがみついているため、何度も死を覚悟した。そして後にこう語った。


チロ「スタントマンの恐怖がわかったよ・・・・・・」


と。

そんな異常なスピードでノンストップで走ること二時間、聖は目的地に到着した。
やって来たのは山の中にある、木々に囲まれた研究施設だ。


チロ「聖、ここは?」


聖「なんでも薬作ってるとこらしく、うちの学校のヤツがここの新薬のテストのバイトに行ったっきり連絡がとれないらしい。」


ことの発端は昨日。
新薬のテストのアルバイトに行った友達が期間が過ぎたのに帰ってこない上に連絡がとれない、と同じ学校の生徒に相談されたことだ。


聖「つーことでわざわざここまで来たわけだが・・・・・・おい、出て来たらどうだ?」


聖がそう言うと、木々の中からスーツ姿の男が現れた。男の年齢は30代後半といったところだろうか。全くといっていいほど特徴がなく、記憶に残らない外見をしている。


聖「おやおや、これは比留間 項明(ひるま こうめい)警視正殿。アンタやっぱ暇なのか?」


比留間の登場により聖の纏っていた空気が変わる、敵意と嫌悪に。
一方の比留間は無機質に、無感情に応える。


項明「ここは『ヤツら』の研究施設の一つだ。」


聖「ああ、あのゲテモノランドの。ゾンビ、人面犬の次は何が出るのやら・・・・って、マズいな。早く中の奴らを助けないと。」


項明「アルバイトたちが連れてこられたのが五日前だ。生きてはいないだろうし、そいつらがどうなろうと俺には関係ない。」


聖「・・・・あぁ?」


聖の表情に怒りが宿るのを見て、チロは慌てて話をそらす。


チロ「ねえ聖、この人は誰なの?『警視正』って言ったから警察の人みたいだけど。」


聖「ああ。奴、比留間項明は警察だが公安警察、しかも『ゼロ』だ。」


警視庁公安局警備企画課、別名『ゼロ』。
国家の安全を守る公安警察の中でもさらに特別な部署で、任務のためならば非合法な手段をとることは珍しくない。
かつては『サクラ』『チヨダ』という隠語で呼ばれていた。


聖「比留間、俺はテメェが嫌いだ。けど今やるべきことは一緒だ。だから協力してやるよ。」


項明「好きにしろ。」


険悪な空気ではあるが、二人は施設に足を進めた。

鍵がかかっている入り口の扉を蹴破ると中は錆びた鉄の匂いが充満しており、床や壁だけではなく天井や天井についている大型の通気ダクトまでも赤く染まっていた。


聖「うわっ、くっせー。にしてもこの通気ダクト、デカいな。」


項明「おそらく大人一人ならば通行が可能だろう。」


聖「ダクトの中に何かいたりしてなー。」


そんなことを言っていたら、ダクトから何かが現れて聖に襲いかかってきた。


聖「なんだこいつ?」


だが聖は相手の頭部を掴むとそれを力任せに壁に叩きつけ、さらに駄目押しに頭部に拳を叩き込んだ。
グシャリ、と拳に相手の頭部が潰れる感触が伝わる。


聖「・・・・・・ガチでこいつなんだ?」


聖の一撃により絶命したそれは胴体が異様に長く、多数の腕がついている人間、いうなれば『ムカデ人間』といったところか。


聖「ゲテモノランドの次の出し物はムカデ人間でございます、ってか。ところで何してんだ?」


比留間は聖の問いには応えず、ムカデ人間を仰向けにすると懐から取り出したナイフで解体を始めた。


項明「ふむ、どうやら内部は人間とほぼ同じ、単純に臓器が長くなったようなものか。」


聖「あばら骨少なくね?」


項明「おそらく狭い場所での行動力を追求したのだろうが、人間をベースにしているから防御面に難があるな。」


比留間はあらかたの解体を終えると、ナイフを懐にしまった。


項明「構造はわかった。残りを狩るぞ。」


聖「狩るっつっても残りが何匹かわかんねーだろ。生存者捜すのが先だ。」


項明「いるかどうかもわからない生存者を捜すなど無駄な行為だ。それに俺の任務はこの施設の調査、その際に部外者である生存者がいたら邪魔になる。」


聖「敵が何匹いるかわかんねーのに調査とかってオマエ馬鹿だろ。」


またもや険悪な空気になり、チロが困ったように口を開く。


チロ「せめてあと一人か二人いたらね。」


そう言うと、二人は同時にチロを見る。


聖「あ、たしかに。」


項明「なるほど。ならば生存者が見つかったら近場で待機している部下を呼ぼう。」


チロの提案を受け入れる二人。
その後、簡素なバリケードで封鎖された部屋の中で聖の学校の生徒を含む三名の生存者を発見、比留間の部下に保護してもらった。
・・・・・・・・・・ちなみに比留間の部下が来るまでの間、聖が暇つぶしと言って三匹ほどムカデ人間を壊した。


聖「さて、生存者の話じゃ計六匹だから残りは二匹。ムカデ人間の相手、飽きてきたからサクッと終わらそうか。」


チロ「飽きてきたって・・・・」


生存者の保護が終わり、二人と一匹は調査を再開する。
個室、食堂、多目的ホール、会議室を調べたが何もなく、最後に資料室にたどり着いた。


聖「ここで最後か。」


資料室の扉を開けると同時に、中から残り二匹のムカデ人間が襲いかかってきた。
普通の人間ならば異形の怪物が襲いかかってくれば動揺するものだが、そこは聖、動揺することもなく食堂から拝借した包丁を投げる。
投げた包丁は眉間に刺さり、二匹のムカデ人間は絶命した。


聖「・・・・・・今気付いたんたが、コイツらばんばんブチのめしてるけど殺人にならない・・・・よな?」


項明「殺人とは人間を殺すことだ。貴様はコイツらが人間に見えるか?」


聖「『人間とはなんぞや』って哲学的な問題にブチ当たりそうだが、まあ人間には見えねぇな。じゃあ器物損壊か?」


項明「犯罪とは往々にして警察に届け出があって初めて犯罪になる。貴様がこのゲテモノの持ち主だったら、貴様は警察に被害届を出すか?」


聖「・・・・ねーな、出さねーな。何つっこまれるかわかんねーもんな・・・・・・っと、コレか?」


話しながら資料室をあさっていると、目的の資料を発見した。
死者の遠隔操作方法、人面犬やムカデ人間の製造法、ならびにそれらの結果報告。
さらには次の会議の日時と場所が記載されている。


聖「会議か、乗り込んだら一網打尽ってやつだな。」

項明「そうだな。俺は行くが、貴様はどうする?」


項明の問いに口角を上げて応える。その表情は愉快そうだが、見る者をゾッとさせるような表情だった。


コメント(4)

さて、「名前のない駅」「下水道の怪物」に続くお話です。

・・・・・・後半、少々面倒くさくなって放り投げたくなりましたが。


謎の多い公安の中でもさらに謎の多い警備企画課、そしてそれが追っている謎の組織、そして相変わらず人間離れした聖の腕力!
この続いていた話は次で終わります。

おまけ



***



チロ「なんか二人は仲悪いけど、なにかあったの?」


項明「いや。単純にコイツの自分勝手に噛み付く野良犬のようなところが気にくわんだけだ。」


聖「コイツの任務任務で任務に忠実な忠犬なところがムカつくだけ。」


チロ「(・・・・・・どっちも犬って、ある意味似た者同士な気がする・・・・)」


治験バイトはホラーの温床☆
寝てるだけで何十万のおいしいバイトと喜んでたら『かゆ…うま…』になったんだろうなと夢が広がります。


それと

比留間氏と聖君の仲の悪さに腐女子回路をまわしかけてごめんなさい。

『ロードレーサー』を『ロードローラー』と読み間違えた挙句、聖君だからと何ら違和感を感じず読み進めてごめんなさい。
>はぴさん
謎のあるバイトはホラー盛り放題ですからね。「うまい話には裏がある」ってことで。


そして腐女子妄想をした人にはお仕置きだべー!



***


ブンッ ブンッ


湊「・・・・ひ、聖くん。何をする気かな〜?」


太い鉄パイプで素振りする聖に、椅子に縛られた湊が尋ねる。


聖「いや、これからスイカ割りをしようかなーって。まあ、スイカはまだ時期じゃないんで湊さんの頭で代用しようかなー、と。」


湊「死んじゃう!そんなので殴られたら死んじゃう!」


太い鉄パイプと聖の馬鹿力、本気で殴られたら割れるどころか木っ端微塵だろう。


湊「そして比留間さんは何をやってるの!?」


比留間はというと、拳銃のマガジンに弾をこめていた。


項明「祭りに射的というものがあるだろう?それをやろうかと思ってな。」


湊「射的は本物の銃ではやらない!!チロさん、助けて!!」


チロ「ボクは高級毛皮なので喋れませーん。」


湊「喋ってんじゃねぇかぁぁぁ!!」



なんて酷い話だ!

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