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語部夜行 〜カタリベヤコウ〜コミュの懺悔2 老婆

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そこは現か幻か。
 
人である者、ヒトならざるモノ。
 
それらが集い、怪奇なる話を語り合う地、『語部館』。
 
各々が怪奇なる話を持ち寄り、今宵も怪奇な宴が行われる
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
・・・・・・のはこれから半日ほど経過してから。今の時刻はまだ正午にすらなっていない。
語部館にヒトが集うのは主に夜。今現在館にいるのは夜子と黒崎だけである。
二人は昼食前に掃除をしていた。すると突然、館の扉が開かれる音がした。
 
 
夜子「語部館へようこ・・・・そ・・・・・・」
 
 
出迎えの言葉が訪問者を見た途端に、途中で途切れる。
 
 
聖「どーも。」
 
 
訪問者は神田聖。最近この館に来るようになった新顔だ。
夜子は聖の姿を見ると、回れ右をして立ち去った。逃げたとも言う。
 
 
聖「あれ?おーい、夜子さーん?」
 
 
黒崎「おや。聖くん、いらっしゃい。」
 
 
聖が途方にくれていると、黒崎がやってきた。
 
 
聖「あ、黒崎さん。何故か夜子さんが俺を見るなり逃げてったんだけど・・・・」
 
 
黒崎「ああ、彼女は聖職者が苦手なんですよ。」
 
 
聖「あー・・・・・・ん?」
 
 
黒崎の言葉に疑問を感じる。
 
 
聖「夜子さんは聖職者が苦手なのはわかったけど、なんで逃げたんですか?」
 
 
黒崎「いや、聖くんは聖職者じゃないですか。」
 
 
聖「俺が?」
 
 
黒崎「貴方が。」
 
 
しばし聖が止まる。
 
 
聖「・・・・・・・・誰ですか、そんなデマ流したの。」
 
 
黒崎「デマ?」
 
 
聖「俺は聖職者じゃなくて普通の高校生です。つーかクリスチャンですらねーし。」
 
 
黒崎「ではその格好は?」
 
 
神父服を指差しながら言う。
 
 
聖「これは早坂さんのお下がり。うち、あんま裕福じゃないから。あと懺悔聞くのに私服じゃアレでしょ。」
 
 
黒崎「なるほど。ところでこんな時間に何か用でも?」
 
 
聖「ちょっと寝に。」
 
 
そう言い、聖はソファーにどっかりと座る。
 
 
聖「うちは昼になると近日の子どもが集まってくるから、寝るのに向いてないんですよ。こっちは懺悔聞きに行って寝てないってのに・・・・・・」
 
 
黒崎「懺悔を聞きに、となると・・・・」
 
 
聖「お察しの通りですよ。」
 
 
 
 
 
━━━━━━━━━━━━━━━
 
 
 
 
 
昨夜、聖は山の中にいた。早坂の知り合いである山の所有者の頼みで、この山にある廃寺の調査に来たのだ。
なんでも人がいないのに物音がするだの笑い声が聞こえるだの、そういった出来事が多発しているらしい。さらにはその山で先月男性が行方不明になったとか。
警察が調べたが廃寺には何もなく、もしやと思った山の所有者が早坂に相談した。
 
初めは早坂が行こうとしていたがなんとか阻止した。一時間ほど説得したが聞かず、仕方ないのでこめかみにいい感じのフックを叩き込んで眠らせている。
 
 
聖「・・・・ここか。」
 
 
虫と戦いながら歩くこと一時間、ようやく目的地についた。
完全に廃れ、今にも朽ちそうな寺。人が住んでいるハズがない場所から明かりがもれている。
 
 
聖「ちょっくらごめんよ。」
 
 
中に入ると、そこには年齢もわからないほどに老いている老婆がいた。
 
 
「・・・・・・何用じゃ?」
 
 
老婆のはく息からは屍の臭いがする。
聖は老婆を観察する。
人ではないが霊でもない。老婆はなんらかの原因でヒトならざるモノへと変貌した存在だろう。
次に聖は廃寺の中を調べ始める。壁、床、天井を入念に。
 
 
「何用じゃ?」
 
 
再び老婆が尋ねる。
 
 
聖「ああ、調べ物があって・・・・・・こっちから片付けるか。えーと、貴女はいつからここに?」
 
 
聖の質問に、老婆は遠い目をして答える。
 
 
「かれこれ百年以上になるかのう・・・・いまだに死ぬこともできぬ。」
 
 
聖「それは何故?」
 
 
「答える前に聞きたい。」
 
 
逆に老婆が聖に尋ねる。
 
 
「お前はワシが恐くないのか?」
 
 
その問いに聖はあっさりとした感じで答える。
 
 
聖「ああ、慣れてますんで。それに貴女は人を食うってわけじゃないでしょ?」
 
 
先ほど部屋の中を観察した際に、血痕が全くないことから人を食わないと判断したのだ。
 
 
「くく、面白い童よ。確かにワシは人は食わぬ。しかしワシが罪深いことは事実よ。そして、その罪ゆえに死ねぬということも。」
 
 
聖「・・・・・・聞かせてもらえますか?貴女の罪を。」
 
 
「ワシはお供え物を食い、お布施をかすめ取り、屍の髪を編んで着物とし、その肉を食らっておる。この行い、罪と言わずして何と言おう。」
 
 
自らの罪を語る老婆。その行為はまさに禁忌。
が、聖は退屈そうに欠伸をしてから言った。
 
 
聖「それはどうでもいいんですよ。屍の肉を食うから死ねない?違うでしょ。貴女が死ねないのは自分の罪から目を背けているからだ。」
 
 
「なに?」
 
 
聖「さあ、話してください。貴女の罪を。貴方が何故『そうなった』のかを。」
 
 
「そ、それは・・・・」
 
 
老婆の言葉が詰まる。
長い沈黙。しばらくしてから老婆はゆっくりと言葉をはき出した。
 
 
「私の罪・・・・・・それはあの人を殺したこと。」
 
 
聖「あの人?」
 
 
「この寺の住職よ。」
 
 
最初は年齢もわからないほどに老いていたが、言葉をはき出すのとともに徐々に若返っていってる。
 
 
「私を嫁にすると言っておきながら、あの人は私を捨てたのよ!どこぞのお偉いお坊さんの娘との縁談が持ち上がったから!」
 
 
聖「だから殺した・・・・それが貴女の罪。」
 
 
「そうよ・・・・」
 
 
全てを語り終えたころには、老婆は20前後の女性になっていた。
 
 
聖「ところで気分はどうです?」
 
 
「・・・・少し軽くなったみたい。」
 
 
そう言うと、女性の体が透け始めてきた。
 
 
「これは?」
 
 
聖「貴女が罪と向かい合ったことで罪の意識が軽くなり、現世に留まる力が弱くなったんですよ。つまり貴女はようやく死ねるってわけです。」
 
 
「そう・・・・・・私はこれからどうなるの?」
 
 
聖「罰は受けるでしょうけど、情状酌量の余地があるんで軽くなると思いますよ。」
 
 
女性の体はだいぶ透け、見えなくなりそうだ。
 
 
聖「あ、そうだ。先月この山で行方不明になった人がいるんですけど、何か知りません?」
 
 
「?いえ、知らないわ。」
 
 
女性の返答に、聖はガックリと肩を落とす。
 
 
聖「残念。まあ、生まれ変わったら今度は裏切らない、いい男を選んでください。」
 
 
聖の言葉に、女性は笑みをこぼす。
 
 
「クス、そうするわ。それと・・・・ありがとう。」
 
 
そう言い、女性は完全に消えて天に還った。
 
 
聖「・・・・そりゃどーも。」
 
 
 
 
 
━━━━━━━━━━━━━━━
 
 
 
 
 
聖「・・・・・・と、いうわけですよ。」
 
 
黒崎「今回は力業ではなかったのですか?」
 
 
聖「うぐ・・・・嫌味ですか?」
 
 
痛いところを突かれて反論できない聖。そんな聖に黒崎はにこやかに言う。
 
 
黒崎「皮肉とも言いますよ。」
 
 
聖「・・・・どちらにせよ、のーさんきゅーで。」
 
 
黒崎「ところで行方不明になった男性はどうなったんですか?」
 
 
聖「ああ、発見しましたよ。もっとも死体で、ですが。本人の霊から聞いたら、恋人に崖から突き落とされたそうです。原因は別れ話とのことで。」
 
 
黒崎「おやおや。」
 
 

コメント(3)

どうも、らはぶです。目指せ月二投下で頑張っていきたいと思っています。
今回は黒崎さんも言っているように力業ではないです。あと夜子さんが聖を見て逃げるのは司狼さんの「夜子の怖いもの。」を読んで思いつきました。
今回の話に出てきた老婆の元ネタは「古庫裏婆」という妖怪です。
> キート⇔ゼトワールさん
恋愛でのいざこざや揉め事は聞きますが、恋愛相談は聞きません。聞いたところで、「押してダメなら引いてみろ。それでもダメなら押し倒せ」とか全く役にたたないアドバイスしかできませんww
ちなみに聖に恋愛話を聞くのは危険です。高確率でキレます。

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