おはなし：萩野亮
進行：鈴木並木
2013年12月01日（日）19時〜21時（延長はなるべくナシの予定）
＠阿佐ヶ谷・よるひる軒（a.k.a. よるのひるね）
http://
参加費500円＋要１オーダー
参加自由／申し込み不要／途中入場・退出自由
☆入場時、鈴木に参加費500円をお支払いください。フード（麺類含む）やドリンクのご注文はお店の方にお願いします。
−−−
☆萩野亮（映画批評／neoneo）
1982年生れ。『ブレード・ランナー』（リドリー・スコット）、『わかめラーメン』（エースコック）などと同期。ドキュメンタリーカルチャーマガジン「neoneo」編集委員、立教大学非常勤講師。編著に『ソーシャル・ドキュメンタリー 現代日本を記録する映像たち』（フィルムアート社）、共著に『アジア映画で〈世界〉を見る――越境する映画、グローバルな文化』（作品社近刊）ほか。
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−−−
戦間期の1935年10月、ヴァルター・ベンヤミンは、一篇のエッセイの第一稿を書き記した。「複製技術時代の芸術作品」と呼ばれる決して長くはない論稿は、写真と映画をあいついで生んだ「複製技術時代」（＝近代）における「芸術作品」のありようをあざやかに描写した。そこで定式化された、《アウラ》の凋落のプロセスとしての、芸術作品の「礼拝的価値」から「展示的価値」への移行とは、いわばテクノロジーの伸張による芸術経験の変容を跡づけるものでもあった。
占領期を経た1958年8月、安藤百福は、ひとつの新商品を発売した。「チキンラーメン」と呼ばれる麺食品は、苦心のはてに「即席麺」（インスタントラーメン）と呼ばれるかつてない麺食文化の領野を拓いた。そこで実現された製麺技術は、麺料理を即席化・長期保存化・家庭化するとともに、麺料理の経験に新しいリアリズムをもたらした。
ベンヤミンがその到来に美術史の切断を見てとった写真・映画と、百福が開発した即席麺は、ともに「複製技術時代」の産物にほかならない。そこには近代における新しいリアリズムがこだましている。たとえば映画史が、発明からおよそ60年後の1950年代末に、街頭撮影によって新しいリアリズムをもたらした「ヌーヴェルヴァーグ」が押し寄せたように、即席麺の歴史では、発明からおよそ35年後の1990年代初頭に生タイプ麺による新しいリアリズムが台頭する。これを仮に「ヌードルヴァーグ」と名づけよう。
ヌードルヴァーグとその時代には、世界にあまねく複製技術が、文化の屈折としての近代主義が、加圧器にかけられるかのように圧縮している。映画史から即席麺史を読み解くこのこころみは、近代におけるリアリズムの歴史を問おうとしている。「廃墟」としての歴史に耳を澄まし、そこに「根源」を再生すべきべきアレゴリーを聴いたかつてのドイツの批評家にならって。
（文／萩野亮）
＜主要参考文献＞
ヴァルター・ベンヤミン「複製技術時代の芸術作品」（『ベンヤミン・コレクション�機戮舛�ま学芸文庫、1995年所収）、原著1935-39年
――「写真小史」（同）、原著1931年
遠藤薫『廃墟で歌う天使』、現代書館、2013年
竹峰義和『アドルノ、複製技術へのまなざし』、青弓社、2007年
廣瀬純『美味しい料理の哲学』、河出書房新社、2005年
安藤百福『魔法のラーメン発明物語』、日経ビジネス人文庫、2008年
山本利夫『即席麺サイクロペディア１』、社会評論社、2010年
（社）日本即席食品工業協会監修『インスタントラーメンのすべて』、日本食糧新聞社、2002年
−−−
こないだがゲームで今度が即席麺。はたからはあるいは迷走しているかのように見えるかもしれない当イヴェントですが、それは錯覚で、実はこういうやり方がこれからのメインストリーム。いわば批評の新主流派。
なぜなら、すぐれた批評には、論理の飛躍とそれによって生じるヒューモアが必要だ（とわたしは考える）からです。要するに、このゴダールの姿が麺類をたぐっているように見えるのか否かという問題。とても接続しそうに見えない複数の事柄を強引に接続することができない／しようとも思わないのであれば、批評などおやめになるがよろしい。（研究はまた話が別）
こちらからは以上です。では当日、ラーメンライスで乾杯しましょう！
http://
（文／鈴木並木）
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☆本篇終了後、おそらく引き続き同じ場所で、２次会があります。ご都合のつく方はこちらもあわせてご参加、ご歓談ください。費用は実費。
進行：鈴木並木
2013年12月01日（日）19時〜21時（延長はなるべくナシの予定）
＠阿佐ヶ谷・よるひる軒（a.k.a. よるのひるね）
http://
参加費500円＋要１オーダー
参加自由／申し込み不要／途中入場・退出自由
☆入場時、鈴木に参加費500円をお支払いください。フード（麺類含む）やドリンクのご注文はお店の方にお願いします。
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☆萩野亮（映画批評／neoneo）
1982年生れ。『ブレード・ランナー』（リドリー・スコット）、『わかめラーメン』（エースコック）などと同期。ドキュメンタリーカルチャーマガジン「neoneo」編集委員、立教大学非常勤講師。編著に『ソーシャル・ドキュメンタリー 現代日本を記録する映像たち』（フィルムアート社）、共著に『アジア映画で〈世界〉を見る――越境する映画、グローバルな文化』（作品社近刊）ほか。
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戦間期の1935年10月、ヴァルター・ベンヤミンは、一篇のエッセイの第一稿を書き記した。「複製技術時代の芸術作品」と呼ばれる決して長くはない論稿は、写真と映画をあいついで生んだ「複製技術時代」（＝近代）における「芸術作品」のありようをあざやかに描写した。そこで定式化された、《アウラ》の凋落のプロセスとしての、芸術作品の「礼拝的価値」から「展示的価値」への移行とは、いわばテクノロジーの伸張による芸術経験の変容を跡づけるものでもあった。
占領期を経た1958年8月、安藤百福は、ひとつの新商品を発売した。「チキンラーメン」と呼ばれる麺食品は、苦心のはてに「即席麺」（インスタントラーメン）と呼ばれるかつてない麺食文化の領野を拓いた。そこで実現された製麺技術は、麺料理を即席化・長期保存化・家庭化するとともに、麺料理の経験に新しいリアリズムをもたらした。
ベンヤミンがその到来に美術史の切断を見てとった写真・映画と、百福が開発した即席麺は、ともに「複製技術時代」の産物にほかならない。そこには近代における新しいリアリズムがこだましている。たとえば映画史が、発明からおよそ60年後の1950年代末に、街頭撮影によって新しいリアリズムをもたらした「ヌーヴェルヴァーグ」が押し寄せたように、即席麺の歴史では、発明からおよそ35年後の1990年代初頭に生タイプ麺による新しいリアリズムが台頭する。これを仮に「ヌードルヴァーグ」と名づけよう。
ヌードルヴァーグとその時代には、世界にあまねく複製技術が、文化の屈折としての近代主義が、加圧器にかけられるかのように圧縮している。映画史から即席麺史を読み解くこのこころみは、近代におけるリアリズムの歴史を問おうとしている。「廃墟」としての歴史に耳を澄まし、そこに「根源」を再生すべきべきアレゴリーを聴いたかつてのドイツの批評家にならって。
（文／萩野亮）
＜主要参考文献＞
ヴァルター・ベンヤミン「複製技術時代の芸術作品」（『ベンヤミン・コレクション�機戮舛�ま学芸文庫、1995年所収）、原著1935-39年
――「写真小史」（同）、原著1931年
遠藤薫『廃墟で歌う天使』、現代書館、2013年
竹峰義和『アドルノ、複製技術へのまなざし』、青弓社、2007年
廣瀬純『美味しい料理の哲学』、河出書房新社、2005年
安藤百福『魔法のラーメン発明物語』、日経ビジネス人文庫、2008年
山本利夫『即席麺サイクロペディア１』、社会評論社、2010年
（社）日本即席食品工業協会監修『インスタントラーメンのすべて』、日本食糧新聞社、2002年
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こないだがゲームで今度が即席麺。はたからはあるいは迷走しているかのように見えるかもしれない当イヴェントですが、それは錯覚で、実はこういうやり方がこれからのメインストリーム。いわば批評の新主流派。
なぜなら、すぐれた批評には、論理の飛躍とそれによって生じるヒューモアが必要だ（とわたしは考える）からです。要するに、このゴダールの姿が麺類をたぐっているように見えるのか否かという問題。とても接続しそうに見えない複数の事柄を強引に接続することができない／しようとも思わないのであれば、批評などおやめになるがよろしい。（研究はまた話が別）
こちらからは以上です。では当日、ラーメンライスで乾杯しましょう！
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（文／鈴木並木）
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☆本篇終了後、おそらく引き続き同じ場所で、２次会があります。ご都合のつく方はこちらもあわせてご参加、ご歓談ください。費用は実費。
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