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I am NOT神子!コミュの一瞬を永遠に

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「弁慶さん!今夜、花火大会があるそうです!!とっても行きたいです!!!!!!」

「花火・・・ですか。では、皆にも声をかけてみま・・」

「えっと、できれば梓と二人で行きませぬか!!
 ・・あー・・・えー・・・っと・・・もしかして望美ちゃんと行きたいですか・・・?」

「いえ、いいですよ。僕と君の2人で行きましょうか(微笑)」

「ほほほ本当ですか!?いいんですか!?後悔しませんね!?」

「ええ、もちろん」

「やったー!!じゃ、弁慶さんも浴衣着用ね!絶対想い出に残るようにするね!!」

「ありがとうございます。・・・・ふふ・・楽しみですね・・・」

「じゃあ、5時にまた迎えにきますから♪♪」


**********


・・・・っとは言ったものの、少し・・・いや、だいぶ花火大会というものをなめていた。

花火大会は7時からということで、7時ごろに着くように電車に乗ったのに
そんな開始の時間ですら、物凄い人の数。
皆もっと早くに来てると思った。
会場までの道順は調べてこなかったのだが、
人の波に流されて行ったらいつのまにかたくさんの屋台が立ち並ぶ土手についた。
花火の打ち上げられる河川敷には、
すでにその場に降りることもできないほど見事に人の絨毯が出来上がっている。

仕方なく、私と弁慶さんは屋台に沿って人の波についていった。

「・・・うぁあ・・・・凄い人・・・・・・・・・・・・座って見るどころか立ち見すらできないよ・・・・
 この人の流れは龍脈と同じで、巡ってないといけないんだよ・・・
 留まっちゃいけないんだ・・・・。どうしよう・・・・。」
「きっと、あの土手で座ってる人達は朝から場所取りをしていたのでしょうね。」

全国版の花火情報の雑誌に載っているようなお祭で、
雑誌によると、去年の屋台の数は400店舗、見物客は10万人だという。
まだ夕飯を食べていなかったので、焼きソバを買ってひたすら宛てもなく歩いていた。
少しでも花火の見えるような空き地にはもう既に人が座っているし、
ご飯を食べるような場所もない。
とりあえず時々見える花火に近付いてみると、
土手にぽっかりと誰もいない空間が見えた。



「あ!!あそこらへん空いてるよ!!!」
どうして空いてるかなど考えもせずに、弁慶さんの手を引いて走り出す。
慣れない下駄を履いてちょっと足が痛かったのだが、そんな事はもう意識外だ。

人を掻き分けてその場に来て



―――ようやく人のいない意味がわかった。



「木で全く見えない・・・・・・。」



打ち上げ場所からそんなに離れていないので、音だけはとても迫力がある。
音はするのに花火が見えないのが、何とももどかしい。

「とりあえずここに座って、さっき買った焼きそばを食べましょうか」
「・・・・・・うん」

きっと、弁慶さんは気付いていたのだと思う。
夕方に来て座る場所なんてないことも、近付けば近付くほど混雑していくことも。
だけど私があまりにもはしゃいでいて自信満々だったから、
好きなようにやらせてくれたんだ。
例えば途中で『近付いても場所はないと思います』と言っても、
きっと私は聞かなかった。
自分の目で確かめて「ああ、無理だ」と実感しないと自分の意思を変えられない。
頑固で我侭な梓の性格をよくわかっているから、黙って着いてきてくれたんだ。








「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・弁慶さん」
「はい」



「あ、あの・・・えーと、ごめんなさい・・・。
 私から誘ったのに、私が何も考えてなかったから花火も見れず、

 おまけにあっちこっち引っ張りまわしちゃって・・・・・。」



見えない花火のほうに視線を合わせたまま、
あからさまに落ち込んでいる梓に、弁慶さんは優しく声をかけてくれる。
「僕は花火が見れなくても君が隣りにいるだけで、とても楽しいですよ。
 ・・・だけど、それでは君の気持ちが治まらないんですよね。
 これを食べ終えたら、ちょっと花火の打ち上げの位置から離れてみましょう。
 確かにこの辺りから見るのは迫力がありますが、その分人も多いですしね。」

「あれ?!?!!? 今凄く嬉しいこと言われた!!!!!!
 隣りにいるだけで楽しいって言われた!!!!!」

自分から誘ったのに・・・と後ろめたさで弁慶さんとは目を合わせられなかったのだが
弁慶さんの意外な言葉に勢いよく振り返ってしまう。
そこにはいつもの優しげな表情で微笑む弁慶さんがいて、
目がバシッとあった瞬間、物凄い速さで心臓が収縮した。
漫画風に例えるならきっと梓の頭からはボフッっと何かが噴火し、
顔は真っ赤になっていたと思う。
恥ずかしくなって、また花火の光がかすかに漏れる大きな木に全身を向ける。


「(バッカじゃねーの?オレ!!
  何この乙女チックな反応!!似ー合ーわーねぇーーー!!!!)」


心の中で盛大に突っ込みを入れつつ、
動揺の為か口からはマシンガンのように言葉が飛び出る。

「いや、うん!でもさ!!梓さんは思うのだよ!!!
 こういう花火会場に来るのは、実は花火を見るためではない!
 雰囲気を楽しむためなのだよ・・・・!!
 この間近に聞こえる花火の音!!
 ぎっしりと並ぶ色々な屋台の数々!!!
 浴衣で歩く、ファミリーにカップル!
 ええ、もちろん、お友達で来ているグループの方々もおられましょう!!!
 これだけの人々が一挙にわざわざ集まるのは花火を間近で見たいと思う他に、
 この独特の雰囲気に酔いたいと思う気持ちがあるのでしょう!そうに違いない!!
 だってそうでしょう!花火が見たいだけなら、わざわざここまで来なくても見れる!
 ドラマ『結婚できない男』のように、屋上で1人で花火観賞だって出来る!!
 ええ、それに見て下さい弁慶さん!!
 木で邪魔されて全く見えないと思った花火でも、
 よく見ると葉っぱの隙間からかすかに見えるじゃありませんか!!
 そう、あれはあれで木が赤や黄や緑に輝き、美しい!!!
 いえ!もちろん弁慶さんの美しさには敵いませんがねっ・・・!!」

立ち上がって拳を握り締めて身振り手振りを合わせて熱く主張してみたが
大半は自分でも何言ったかはよくわからない。
落ち着こうと思って喋ったのだが、顔は熱くなるばかり。
そんな梓に、弁慶さんが一瞬目を丸くしたのに気付いた。


・・・・・・目を丸くしたのはきっと私に対してドン引きしたのだ、そうに違いない・・・。



「ふふ・・ビックリさせてしまってすまないね、姫君・・・・」
とりあえず、大人しく弁慶さんの隣りに腰を下ろす。
まだ動揺しているのか、うっかりヒノエが乗り移った。

「1度大きく深呼吸をして落ち着いて下さい、梓さん。
 一呼吸置いたら、もう食べ終わったことですし移動しましょうか」
「はいっ!!」

時計は7時45分を指している。
時々大きなドーンという花火とともに、河川敷の特等席の人達の歓声が聞こえる。

「(さっきはあー言ったけど、やっぱりゆっくり花火見たいよコンチクショー)」

人ごみの中を弁慶さんとはぐれないよう必死に歩く。
基本的に小心者なので人に道を譲ってしまうために、中々前に進む事ができない。




まぁ、はぐれたとしても
梓にとって弁慶さんは花火よりも輝いて見えるのですぐに見付けられるだろうけどね!


また、只でさえ下駄の帯が足に食い込んで痛いのに、
色んな人に足を踏まれ、そろそろ足が悲鳴をあげていた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・。」

先を歩く弁慶さんの後ろでまごついてる梓を見かねて、
弁慶さんが左手を握ってくれる。
さっき自分から弁慶さんの手を掴んで引っ張っていった時は、
全く緊張などしていなかったのだが、何故か同じ状態であるにも関わらず、
物凄くドキドキした。


「(ぬぁあああ!!!!!何だこの状況!!
  人ごみの中で手を引いてもらうとか、かなりの好シチュエーション!!!)」

かなりドキドキしていたので、顔に出てないかと心配である。
どうやら弁慶さんは橋の上に向かっているようだった。
かなり大きな川なので、橋の幅も長さもとても大きい。
その大きな橋も見物客で、人が1人分通れる隙間しか空いていない。
1人分の隙間を必死に通っていくと、
途中でギリギリ2人が立ち止まれるスペースを見付けた。

手を引いてその隙間に私を入れ、弁慶さんは私の後ろに立つ。
前には女の子が2人いたが、
背伸びをすればはっきりと花火が見れるような場所だった。
打ち上げ場所まで見えるし、
おまけに今回の花火大会の名物である川の上を走る花火も見る事ができた。




「・・・うっわぁ・・・・・・」

家のベランダから打ち上げ花火は見たことはあるが、
ここまで間近で見たことは初めて。

『夜空に咲いた大輪の花だよね』

ときメモGSではどのキャラにもバッチリ好印象なこの台詞を、
花火を見たら絶対に言おうと思っていたのに、
実際に花火を見たらそんなことは吹っ飛んでしまった。

「・・・きれー・・・・・」

「ええ、本当に」






ありきたりな感嘆の言葉しか出てこない。
打ち上げ花火にも色々なバリエーションがあり、
派手な音を立てて、一瞬で消えていくものもあれば
いつまでもキラキラと光りながらゆっくりと消えていくものもある。
大きくて派手な花火の時には「をを〜〜〜!!!」と歓声が上がり、
ゆっくりと儚く落ちていく花火の時は「あぁ・・・」と溜め息が聞こえる。


「あのキラキラ感はまるで魔法みたいだね!
 特にディズニーで魔法が解けていく時みたいな」


「魔法・・・ですか・・」


「うん、魔法。いつかは解けてしまう魔法。儚いもんだね。
 ありきたりな言葉だけどさ。だけどキレイ・・・」

「昔から言いますよね、“儚いからこそ尊い”って。
 花火とか桜とか・・・・」

「すぐ消えちゃうからこそその一瞬が大切、みたいな感じ?・・・・・寂しいなそれ・・・
 ・・・・・・・・・・弁慶さんは消えないでね・・・?

 ・・・って、あ!!今のってチョウチョ!?凄い〜〜〜!!」
「ええ、さすが職人技ですね」

隣りに弁慶さんがいる時は、大抵弁慶さんに夢中になる。
だけど、花火を見ている間はずっと花火に惹きつけられていた。

・・・・やるじゃん、花火。

花火を見ながら、時には感動しつつ、時にははしゃぎつつ、
時間が経つのを忘れて、ひたすら眺めていた。
7時〜9時半の集大成ともいえる最後の一発は、今までにない音や大きさでさすが終止符。
大きな音と一緒にはじけてから七色の光を放ち、ゆっくりと消えていくのを見て

少しだけ寂しくなる。




「終わっちゃいましたね・・・。

・・・・では・・・帰りましょうか・・・・」

もう花火は打ち上がらない空をまだ見ている梓の手を握り、弁慶さんが歩き出す。
一斉に駅に向かう波に、弁慶さんに手を引かれながらボーっとする梓。

周りの人が「キレイだったねー」とか
「また来年も来ようね」とかざわざわしている中
黙黙と歩く、梓と弁慶さん。










前を歩く弁慶さんの背中を見上げながら、ゆっくり話し掛ける。




「ねぇねぇ、弁慶さん。
 さっき、儚いものこそ尊いとかいう話をしたよね。
 でもそれ違うよ。

 だって、こうやって目を閉じるとさっきの光景が鮮明に浮かぶもん。
 きっといつだって、今日のことを思い出しながら目を閉じれば浮かぶよ?

 だから、花火は終わってない。

 自分がそれを忘れなければ、ずぅーっと花火は終わらないんだ!」



自分でも何言ってるかよくわからない。

よくわからないけど、そんなような気がする。

だから、綺麗なものを見たり・・・楽しい時を過ごしたりしても・・・
それがいつか終わってしまうものなんだと悲しくなったりする必要はないんだ。





だから今感じてる左手のぬくもりだって、

離れてしまえばすぐに冷めてしまうものなんだと思うのはやめにする。


fin

コメント(1)


2年前に書いたものだけど、ちょっと場所借りました(笑)

------------
〜あとがき的な〜

ちょっと有名(?)な花火をね、母と間近で見てきた。
凄いよ!打ち上げ台も見えた!!
ちなみにこの話はほぼ実話です(笑)
空いてる場所があったと思ったら、木で見えない・・・・・!!
ウロウロしてたらたまたまくっきり見える場所を見つけちゃってラッキー♪
マシンガンで語ったことも、花火見ながら考えてたことも実話(笑)

よく花火とかって「綺麗だけどすぐに消えてしまう儚いもの」って表現されるけどさ
確かに、フッっと消えた瞬間に少し寂しくなるけど、また打ちあがるじゃん(笑)
最後の一発が終わっても、目を閉じるとまだ花火は次から次へと打ちあがる。
だから、永遠に終わる事ないんだよ!!

私はよく満たされると不安になったり楽しいと悲しくなったりします。
まぁ、天邪鬼だからっていえばそれっきりなんだけど(笑)
例えば、満たされてしまえばそれがいつか欠けてしまうのが不安になるし
楽しい時はいつかその楽しい時間が終わるのが寂しくなる。
友達と喋ってて、それが楽しくて楽しくて仕方ないのに、
気付くともう帰らなければいけない時間に着々と近付いている。
それが切なくて切なくて嫌ー。

それをね、あれ?これってもしかして花火みたいなもの?っと重ねてみたらね。
花火が消える瞬間が凄く寂しい時間になった。
だけど、目を閉じてもどんどん花火は上がるよ。終わらない。
楽しいのだって何もその時だけじゃない、またある。
だったらわざわざ楽しい時に、
その時間の終わりを考えて悲しくなるのはやめようよと。
そんなことを自分に言い聞かせる為に書いたけど、意味わかんないねー!はっは


とりあえず、あらゆるところに私の願望が練りこまれてます・・・!!

手を引いてもらって歩くとかね〜〜〜(*´Д`)んふふ


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