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憲法学コミュの中国残留婦人裁判

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憲法を研究・勉強している方のご意見をうかがいたく、トピを立てさせていただきました。

現在、東京高裁で中国残留婦人の国賠請求訴訟が係争中です。

●事案の概要:2001年12月に、中国残留婦人3名が、?終戦後、国は原告の早期帰国を図る義務があったのにこれを怠ったこと(早期帰国義務違反)、および、?国は帰国後の原告に対して十分な自立支援(日本語学習や生活保護など)措置を実施する必要があるのにこれを怠ったこと(自立支援義務違反)が、国の職務上の義務違反であると主張し、国を被告として、国家賠償法に基づき、これによる精神的損害の賠償として1人2000万円を支払うよう求めた。

●第一審判決(東京地裁:2006年2月15日)
請求棄却

判決は、?の早期帰国義務違反、?の自立支援義務違反について、事実認定において、ほぼ全面的に原告側の主張を認めた上で、いずれも国の「政治的責務の懈怠」に言及しながらも、最終的には、政策の立案および実施は行政裁量に委ねられ、また、立法の不作為の違法性を肯定するには一歩足りないと判示しました。

?(早期帰国義務違反)について:
「自国民保護は政府の使命であり、外地の危険地帯への国策移民と危機発生時の国民保護策立案の懈怠という先行行為が原因で原告ら長期未帰還者を大量発生させたのであるから、被告は条理上その早期帰国を実現すべき政治的責務を負う。」
「政策立案及び実施の当否は、基本的に行政府の裁量的判断に委ねられ、国家賠償法上の違法を認めるためのハードルは高い。…原告らが1988年までに永住帰国したことを考えると、国家賠償法上の違法性を認めるには今一歩足りない。」

?(自立支援義務違反)について
「中国に取り残された長期未帰還者(残留婦人・残留孤児)は、青少年期に日本社会から取り残され、周囲に日本人がおらず、日本語の文字情報も音声情報もない環境下に30年以上置かれ、成人として完成した日本語の能力と日本の社会習慣を身につけることができず、日本社会における労働能力(収入獲得能力)を失った。」
「生活保護とは別の援助金支給制度(年金制度の特例を含む。)の創設には立法が必要となる。国会議員の立法不作為が国家賠償法上違法となるには、当該立法をしないことが憲法の一義的な文言に違反していることが必要であるところ、長期未帰還者の生活保障のための特別法の制定を一義的に命ずる憲法の文言を捜し出すことは困難であり、国家賠償法上違法であると断ずるまでには至らない。」

事実認定でほぼ原告の主張を認め、繰り返し政治的責務の懈怠を指摘しながら、最終的には違法性には一歩足りない、という論理をみると、結局は前半の事実認定はリップサービス似すぎないのかな、と思ったりもします。あるいは、司法消極主義の典型例ともいえます。

立法不作為の判例変遷からすれば、在宅投票制訴訟、在外選挙訴訟がすぐに想起されます。

また、日本政府の過去の責任の問題からすれば、ハンセン病隔離違憲判決(熊本地裁)と北朝鮮拉致被害者への手厚い補償という二つの事例がすぐに想起されます。ハンセン病では立法不作為の違憲判決が出たのにこの残留邦人の問題ではそうはならないのはなぜなのか、北朝鮮拉致被害者についてはかなり手厚い保護がなされているのに残留邦人問題に国が冷たいのはなぜなのか?

皆さんは憲法学の視点からこの判示をどう評価されますか?

また、訴訟技術として、高裁でこの判決をひっくり返せるとしたら、どのような戦術が有用だと思いますか?

なお、判決全文は、中国帰国者の会HPから入手できます。
http://kikokusha.at.infoseek.co.jp/toppage.htm

長文で失礼しました。

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