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高齢者情報資料室コミュの再生09年 老後 少しずつ支え合えたら

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社説
再生09年 老後 少しずつ支え合えたら

松竹映画「男はつらいよ」が初公開されたのは一九六九年、今から四十年前のことだ。かつては正月映画の定番だった。主役の「フーテンの寅さん」を演じた渥美清さんは、存命ならば八十歳である。
 さて、寅さんはどんな老後を迎えているのだろうか。独身で一人暮らし。失礼ながら蓄えもなさそうだ。
 けれど、心身が弱って誰かの助けが必要になった時、親類や柴又の仲間があれこれ世話を焼いてくれそうな気がする。入所した介護施設で「結構毛だらけ…」と、得意の口上を披露しているかもしれない。

◆「一人世帯」の時代に
 こんなことに思いを巡らせたのは少子高齢化が急速に進む中、高齢者の一人暮らしが増えている現実があるからだ。独身でなくても、誰もが身寄りのない老後を迎える可能性はある。
 老後の生活を心穏やかに過ごしていくためには何が必要なのか。あらためて考えてみたい。
 厚生労働省の二〇〇七年国民生活基礎調査を見ると、日本の家族構成が大きく変容していることが分かる。
 六十五歳以上の高齢者だけの世帯は全体の二割を占め、その半分は一人で暮らす。調査が始まった一九八六年に比べると高齢者世帯は約三倍だ。
 本県は県人口の四人に一人が六十五歳以上で、高齢化率は全国平均を上回る。お年寄りの世帯も増えている。
 二〇〇八年版の高齢社会白書は、十人に一人が七十五歳以上となった日本を「本格的な高齢社会」と表現した。
 三世代が同居し、家族で助け合いながら子どもを育てるのが当然とされた時代は遠ざかって久しい。
 新たな家族の形、社会のありように呼応した社会保障システムを構築していくことが求められているのだ。

◆安全網が欠かせない
 「一人の老後」には医療、介護、年金といった安全網がしっかり機能していることが前提となる。高齢者の間でも経済格差が広がる。貧困対策は社会保障制度の基盤だ。
 昨年四月には七十五歳以上をひとくくりにした後期高齢者医療制度が発足したが、高齢者らの反発に遭い、見直すことになった。年齢で一律に区分する医療制度は確かに問題がある。
 だが、高齢者の医療・介護費用を誰がどう負担するかが重要な政策課題であることは間違いない。
 少子高齢社会を支える年金制度の設計も、その裏付けとなる財源問題を詰める時期に来ている。
 四月には基礎年金の国庫負担割合が引き上げられる。社会保障費への充当を目的とした消費税の引き上げも論議されている。年金制度の将来像を国民にきちんと説明し、応分の負担を求めていくのも政治の仕事だ。
 介護保険制度が二〇〇〇年に始まって八年が過ぎた。家族だけで介護を引き受けるのではなく、サービスを利用する方式はかなり定着したが、制度は十分に機能しているだろうか。
 高齢の配偶者らが介護する「老老介護」や、認知症になった老夫婦同士の「認認介護」は珍しくない時代だ。
 介護に疲れ果てての殺人や高齢者の虐待という痛ましい事件が起きている。「SOS」をすくい上げる仕組みをもっと充実させ、制度を血の通ったものにしていかねばならない。

◆人間関係も「貯金」を
 安心を担保する社会保障制度の確立が急がれる。日常生活での「安全網」も重要だ。自らの老いを見定めて、社会とのかかわりを広げておきたい。
 血縁関係や職場以外の人と付き合い、何かの際には助け合える「近くの他人」をつくりたい。何より、人との触れ合いは心を豊かにしてくれる。
 ボランティアで積極的に地域にかかわるのもいいだろう。厚生労働省は、介護保険ではカバーできない話し相手やペットの世話などをする介護サポーターを育成する方針だ。介護で疲れた知人の愚痴を聞くだけでもいい。
 効率ばかりが優先されがちな社会でお年寄りの温かさは大きな財産だ。
 新潟市東区にある小規模多機能型居宅介護の事業所「ささえ愛あわやま」。ここで働く男性職員(25)は以前、十年近く引きこもり生活を送っていた。
 社会福祉関係の仕事をしていた親の勧めで手伝いを始めた。介護の仕事は楽ではない。夜勤もある。
 最初は緊張したが、周りに助けられて通ううちに、お年寄りが少しずつ心を開いてくれるようになった。
 「戦時中の苦労やお連れ合いの話をしてくださるようになって…」
 「ありがとう」と言ってもらえた時は、とてもうれしかった。お年寄りの人生の豊かさから、社会で生き直すパワーを受け取ったのかもしれない。
 誰もがいずれは老いてゆく。困っている人に手を貸せば、巡り巡って自分に返ってくるかもしれない。「情けは人の為(ため)ならず」は「一人の老後」時代にこそふさわしい言葉だ。
 特別な財産はなくても、温かな人間関係という「貯金」を積んできた寅さんの老後は結構楽しい気がする。

[新潟日報1月4日(日)]

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