もくじ
はじめに：英語と日本語は根本的に違います
0 英語と日本語の主な違いと共通点
0-1 英語と日本語は文の基本構造が違います
0-1-1 英語は〔名詞(主語) 動詞〕が連続して並んだ構造です
0-1-2 コンマと読点は役割が違います
0-2 英語と日本語は基底にある動詞が違います
0-2-1 have動詞には主体的意識が備わっています
0-3 英語と日本語は発話の形式が違います
0-3-1 英語は“あなた”と“私”の世界です
0-4 英語と日本語の共通点
0-4-1 相手に伝えたい（重要な、強調したい）語ほど文の前方に来ます
0-4-2 発音の仕方や繰り返しでニュアンスが変わります
0-4-3 音の似た単語の意味は似ています
0-4-3-1 語尾に付く-dには過去のイメージがあります
0-4-3-2 語尾に付く-sには現在と複数のイメージがあります
0-4-4 単語や熟語（idiom）の意味はその構成部分の足し算になっています
0-4-4-1 足し算によっては反対の意味が生まれることもあります
0-4-4-2 動詞に副詞を足して微妙なニュアンスを表現します
1 英文法の規範
1-1 英文の最小単位は【名詞(主語) 動詞】です
1-1-1 英文の基本単位は【名詞(主語) 動詞 名詞または形容詞】です
1-1-1-1 一般的で普遍的な語が個別的で特殊的な語の前に来ます
1-1-1-1-1 名詞を修飾する形容詞は一般的表現から個別的表現へと順に並べます
1-1-1-1-2 一般的な〔a 名詞〕は個別的な〔the 名詞〕よりも前に来ます
1-1-1-2 修飾語は修飾される語の前に置きます
1-1-1-3 同じ単語でも位置によって品詞（意味）が変わります
1-1-1-4 文中で単語の位置を変えると文意が変わります
1-1-2 最も相手に伝えたい（重要で、強調したい）語はできるだけ文の前方に置きます
1-1-2-1 強調したい単語を文の前方に出すと強く関連した単語がつられて前方に出ます
1-1-2-2 強調の程度が弱い時には関連した単語の引きつけ・同伴が起きません
1-1-3 強調の助動詞doを使うと強調できます
1-1-3-1 疑問文は助動詞doを使った一種の強調文です
1-1-3-2 否定文は助動詞doを使った一種の強調文です
1-1-3-2-1 notはあらゆる語を否定できます
1-1-3-2-2 短縮形のnotはその語自体を否定する場合と次の語を否定する場合があります
1-1-3-2-3 noはnotよりも強く感情を込めて否定します
1-1-4 疑問詞は強調語なので可能な限り文の前方に出します
1-1-5 強調が習慣化すると強調の意識が失われます
1-2 英語は主体的意識を基盤にした対話の言語です
1-2-1 英語はhave動詞とbe動詞が基底となった言語です
1-2-1-1 ２つ以上の動詞を並べて使う時は必ずhave動詞かbe動詞が最初に来ます
1-2-1-2 連続した名詞の意味関係は〔名詞 (have動詞またはbe動詞) 名詞〕です
1-2-1-3 連続した名詞と形容詞の意味関係は〔名詞 (be動詞) 形容詞〕です
1-2-2 英語は対話の主体である“私”の主張が出発点にあります
1-2-3 英語は“あなた”と“私”を明確に区別します
1-2-3-1 代名詞やbe動詞は“あなた”を特別扱いしています
1-2-3-2 theの基本的な意味は［「“あなた”が知っていて“私”も知っている」あの］です
1-2-3-3 YesとNoは“あなた”の気持ちに反応して送る合図です
1-2-3-4 多くの単語は対立的な意味を持っています
1-2-4 英語は「“あなた”と“私”」以外のものを明確に区別します
1-2-4-1「“あなた”と“私”」以外を対象とする単数・現在の動詞には-sが付きます
1-2-5 英語は単語の重複を嫌って省略したり他の語に置き換えたりします
1-2-5-1 形容詞として使う名詞は単数です
1-3 単語の基本イメージ（中核的な意味）で文のニュアンスをつかみます
1-3-1 動詞の基本イメージ
1-3-1-1〔call A B〕と〔expect A of B〕の違い
1-3-1-2〔rob A of B〕と〔ask A of B〕と〔free A of B〕の違い
1-3-2 助動詞の基本イメージ
1-3-2-1〔do、does、did〕は助動詞であると決めます
1-3-2-2 意志の助動詞willとshallは拡張されて推量や未来の気持ちを表します
1-3-2-3〔used to〕「ユーストウ」のusedは動詞です
1-3-2-4〔ought to〕とshouldと〔had better〕の違い
1-3-2-5 動詞needやdareは同じ意味のままで助動詞にもなります
1-3-3 副詞の基本イメージ
1-3-3-1 toとforの違い
1-3-3-2 toとofの違い
1-3-3-3 ofとoffの違い
1-3-3-4 upとdownの違い
1-3-3-5 withとagainstの違い
1-3-3-6 everとneverの違い
1-3-3-7 byとaroundとaboutの違い
1-3-3-8 atとonとinの違い
1-3-3-9 ofとfromとoutの違い
1-3-3-10 asから習慣的な表現〔as〜as〕が生まれた
1-4 英語は「数量」の感覚を重視します
1-4-1 名詞の前に置く「数量」を標示する語と名詞の語末に付ける-sを使い分けます
1-4-2「数量」を標示する語があると名詞は具体的なイメージを持ちます
1-4-3「数量」を標示する語がなくて名詞の語末に-sを付けると総称的なイメージになります
1-4-4 文は「数量」に矛盾がないようにします
1-5 英語には限定詞（決定詞）という特別な形容詞があります
1-5-1 限定詞はひとつの名詞に１つしか使えません
1-5-2 限定詞を付けないと名詞は抽象的なイメージになります
1-5-3 aの基本的な意味は［「どれでも良いがそのうち」ひとつの］です
1-5-4 aは［「どれでも良いがそのうち」ひとつの状態で］へと広がる
1-5-5 aは［圧倒的多数は別のもの］にまで広がる
1-5-6 theは［「“あなた”が想像できて“私”も想像できるような」あの］へと広がる
1-5-7 theは［「“あなた”も“私”も想像できるような」あの限定的な１つの］に広がる
1-5-8 theは［あの特定な時の］にまで広がる
1-5-9『所有格』にはtheのニュアンスがあるがtheよりもそっけない
1-5-10 thatやthoseにはtheのニュアンスがある
1-5-11 thatやthoseに対応する日本語には［この］もある
1-5-12 someとanyは限定する程度が違う
1-5-13 限定詞を付けて総称的なイメージを表すこともできます
1-6 英語は動詞で２つの「とき」を表します
1-6-1 動詞の６つの形はいずれも「語っている内容はいつのことか」を表します
1-6-2「とき」には「いつを基準にして語っているのか」もあります
1-6-3「いつを基準にして語っているのか」を表す動詞は現在形と過去形だけです
1-6-4 動詞の現在形と過去形と助動詞はひとつの文に１つしか使えません
1-6-5 動詞の原形と分詞は「語っている内容はいつのことか」だけを表します
1-6-5-1 動詞の原形が表す「語っている内容はいつのことか」は観念的で仮定的です
1-6-5-1-1 動詞の原形には形容詞と名詞のニュアンスがあります
1-6-5-1-2 文の動詞の数を減らすために原形が使えます
1-6-5-1-3 文の動詞の数を減らすために〔to 原形〕が使えます
1-6-5-2 現在分詞と過去分詞は形容詞になっています
1-6-5-2-1 文の動詞の数を減らすために分詞が使えます
1-6-5-2-2 疑問詞や接続詞を導入して分詞を使った文の意味を明確にします
1-6-5-2-3 副詞を導入して分詞を使った文の意味を明確にします
1-6-6 文は「とき」に矛盾がないようにします
1-7 英語は２つの「とき」を組み合わせて遠い過去から未来のことまでを表現します
1-7-1 １つまたは複数の動詞を使って２つの「とき」を表します
1-7-2 過去を基準にして語る表現
1-7-3 現在を基準にして語る表現
1-7-3-1〔have(has) 過去分詞〕の表現
1-7-3-2〔過去形助動詞 have 過去分詞〕の表現
1-7-3-3〔過去形助動詞 原形〕の表現
1-7-4 未来の表現
1-8 英語の複雑な文は単純な文を相手に伝えたい（重要な、強調したい）順に並べます
1-8-1 ２つの文をそのまま並べると複雑な文ができた
1-8-2 代名詞thatを文頭に出して接続詞の機能を持たせた
1-8-3 疑問詞にも接続詞の機能を持たせた
1-8-4 新たに接続詞を導入した
1-8-5 代名詞や副詞を疑問詞に置き換えた
1-8-6 動詞の形を原形や〔to 原形〕に変えた
1-8-7 文をつなぐ原則を拡張して分詞に適用しさらに副詞を導入した
1-8-8 分詞を使って文をつなぐ方法を拡張して〔to 原形〕に適用した
1-8-9 習慣的な表現を導入した
1-9 複雑な文の語順は〔名詞(主語) 動詞 名詞 動詞 名詞・・〕です
1-9-1〔・・動詞 名詞 動詞・・〕の名詞は次の動詞の主語になっています
1-9-2 拡張の結果〔・・名詞 名詞・・〕となることも起きます
1-9-3 拡張の結果〔・・名詞 動詞・・〕の名詞が次の動詞の主語でないことも起きます
1-9-4 拡張の結果〔・・動詞 動詞・・〕となることも起きます
1-9-5 省略の結果〔・・名詞 名詞・・〕となることもあります
1-9-6 動詞の代わりに名詞を使って〔・・名詞 名詞・・〕となる文もあります
1-9-7 英語は文頭から理解します
1-10 英語は接続詞を導入すれば複数の文をそのままつなげます
1-10-1 同じ役割を持った接続詞を２つ連続して並べることはできません
1-11 英語のコンマ類は同格関係を表します
1-11-1〔The 比較級【 】, the 比較級【 】〕は同格文です
2 動詞をめぐるニュアンスの違い
2-1 動詞の過去形と〔have(has) 過去分詞〕『現在完了形』の違い
2-2 動詞の現在形と〔have(has) 過去分詞〕『現在完了形』の違い
2-3 動詞の現在形と〔am(are, is) 現在分詞〕『現在進行形』の違い
2-4『自動詞』と『他動詞』の違い
2-5『受動態』〔be動詞 過去分詞〕と『能動態』の違い
2-6『受動態』のbe動詞とgetの違い
3 文の形をめぐるニュアンスの違い
3-1 (a) John honestと(b) John to be honestと(c) that John is honest
3-2 (a) Mary a photoと(b) a photo to Mary
3-3 (a) the Queen by the handと(b) the Queen’s hand
3-4 (a) paint on the wallと(b) the wall with paint
3-5 (a) his help、(b) him to help us、(c) him for help、(d) him helping us、(e) his helping us
4 文の構造と意味
4-1 Have you finally decided where to have the ceremony and reception?
［式と披露宴をどこでやるのか、ついに決めたのですか］
4-2 What kind of clothing did you finally decide would be appropriate for the bride and groom?
［新郎新婦にふさわしいものとして、最終的にどんな衣装に決めたのですか］
4-3 It is an ill wind that blows nobody (あるいはno one) good.
［誰のためにもならない風は吹かない］：［甲の損は乙の得］に相当することわざ
5「学校英文法」は断片的な規則の集積体です
5-1『時制の一致』
5-2『形式主語』または『仮主語』と『真主語』
5-3『分詞構文』
5-4『未来完了形』
5-5『未来形の代わりをする現在時制』
5-6『theの用法』
5-7『倒置』による主語と動詞（助動詞）の逆転
5-8『関係代名詞のasとthanとbut』
5-9『文末焦点〔End Focus〕』
はじめに：英語と日本語は根本的に違います
0 英語と日本語の主な違いと共通点
0-1 英語と日本語は文の基本構造が違います
0-1-1 英語は〔名詞(主語) 動詞〕が連続して並んだ構造です
0-1-2 コンマと読点は役割が違います
0-2 英語と日本語は基底にある動詞が違います
0-2-1 have動詞には主体的意識が備わっています
0-3 英語と日本語は発話の形式が違います
0-3-1 英語は“あなた”と“私”の世界です
0-4 英語と日本語の共通点
0-4-1 相手に伝えたい（重要な、強調したい）語ほど文の前方に来ます
0-4-2 発音の仕方や繰り返しでニュアンスが変わります
0-4-3 音の似た単語の意味は似ています
0-4-3-1 語尾に付く-dには過去のイメージがあります
0-4-3-2 語尾に付く-sには現在と複数のイメージがあります
0-4-4 単語や熟語（idiom）の意味はその構成部分の足し算になっています
0-4-4-1 足し算によっては反対の意味が生まれることもあります
0-4-4-2 動詞に副詞を足して微妙なニュアンスを表現します
1 英文法の規範
1-1 英文の最小単位は【名詞(主語) 動詞】です
1-1-1 英文の基本単位は【名詞(主語) 動詞 名詞または形容詞】です
1-1-1-1 一般的で普遍的な語が個別的で特殊的な語の前に来ます
1-1-1-1-1 名詞を修飾する形容詞は一般的表現から個別的表現へと順に並べます
1-1-1-1-2 一般的な〔a 名詞〕は個別的な〔the 名詞〕よりも前に来ます
1-1-1-2 修飾語は修飾される語の前に置きます
1-1-1-3 同じ単語でも位置によって品詞（意味）が変わります
1-1-1-4 文中で単語の位置を変えると文意が変わります
1-1-2 最も相手に伝えたい（重要で、強調したい）語はできるだけ文の前方に置きます
1-1-2-1 強調したい単語を文の前方に出すと強く関連した単語がつられて前方に出ます
1-1-2-2 強調の程度が弱い時には関連した単語の引きつけ・同伴が起きません
1-1-3 強調の助動詞doを使うと強調できます
1-1-3-1 疑問文は助動詞doを使った一種の強調文です
1-1-3-2 否定文は助動詞doを使った一種の強調文です
1-1-3-2-1 notはあらゆる語を否定できます
1-1-3-2-2 短縮形のnotはその語自体を否定する場合と次の語を否定する場合があります
1-1-3-2-3 noはnotよりも強く感情を込めて否定します
1-1-4 疑問詞は強調語なので可能な限り文の前方に出します
1-1-5 強調が習慣化すると強調の意識が失われます
1-2 英語は主体的意識を基盤にした対話の言語です
1-2-1 英語はhave動詞とbe動詞が基底となった言語です
1-2-1-1 ２つ以上の動詞を並べて使う時は必ずhave動詞かbe動詞が最初に来ます
1-2-1-2 連続した名詞の意味関係は〔名詞 (have動詞またはbe動詞) 名詞〕です
1-2-1-3 連続した名詞と形容詞の意味関係は〔名詞 (be動詞) 形容詞〕です
1-2-2 英語は対話の主体である“私”の主張が出発点にあります
1-2-3 英語は“あなた”と“私”を明確に区別します
1-2-3-1 代名詞やbe動詞は“あなた”を特別扱いしています
1-2-3-2 theの基本的な意味は［「“あなた”が知っていて“私”も知っている」あの］です
1-2-3-3 YesとNoは“あなた”の気持ちに反応して送る合図です
1-2-3-4 多くの単語は対立的な意味を持っています
1-2-4 英語は「“あなた”と“私”」以外のものを明確に区別します
1-2-4-1「“あなた”と“私”」以外を対象とする単数・現在の動詞には-sが付きます
1-2-5 英語は単語の重複を嫌って省略したり他の語に置き換えたりします
1-2-5-1 形容詞として使う名詞は単数です
1-3 単語の基本イメージ（中核的な意味）で文のニュアンスをつかみます
1-3-1 動詞の基本イメージ
1-3-1-1〔call A B〕と〔expect A of B〕の違い
1-3-1-2〔rob A of B〕と〔ask A of B〕と〔free A of B〕の違い
1-3-2 助動詞の基本イメージ
1-3-2-1〔do、does、did〕は助動詞であると決めます
1-3-2-2 意志の助動詞willとshallは拡張されて推量や未来の気持ちを表します
1-3-2-3〔used to〕「ユーストウ」のusedは動詞です
1-3-2-4〔ought to〕とshouldと〔had better〕の違い
1-3-2-5 動詞needやdareは同じ意味のままで助動詞にもなります
1-3-3 副詞の基本イメージ
1-3-3-1 toとforの違い
1-3-3-2 toとofの違い
1-3-3-3 ofとoffの違い
1-3-3-4 upとdownの違い
1-3-3-5 withとagainstの違い
1-3-3-6 everとneverの違い
1-3-3-7 byとaroundとaboutの違い
1-3-3-8 atとonとinの違い
1-3-3-9 ofとfromとoutの違い
1-3-3-10 asから習慣的な表現〔as〜as〕が生まれた
1-4 英語は「数量」の感覚を重視します
1-4-1 名詞の前に置く「数量」を標示する語と名詞の語末に付ける-sを使い分けます
1-4-2「数量」を標示する語があると名詞は具体的なイメージを持ちます
1-4-3「数量」を標示する語がなくて名詞の語末に-sを付けると総称的なイメージになります
1-4-4 文は「数量」に矛盾がないようにします
1-5 英語には限定詞（決定詞）という特別な形容詞があります
1-5-1 限定詞はひとつの名詞に１つしか使えません
1-5-2 限定詞を付けないと名詞は抽象的なイメージになります
1-5-3 aの基本的な意味は［「どれでも良いがそのうち」ひとつの］です
1-5-4 aは［「どれでも良いがそのうち」ひとつの状態で］へと広がる
1-5-5 aは［圧倒的多数は別のもの］にまで広がる
1-5-6 theは［「“あなた”が想像できて“私”も想像できるような」あの］へと広がる
1-5-7 theは［「“あなた”も“私”も想像できるような」あの限定的な１つの］に広がる
1-5-8 theは［あの特定な時の］にまで広がる
1-5-9『所有格』にはtheのニュアンスがあるがtheよりもそっけない
1-5-10 thatやthoseにはtheのニュアンスがある
1-5-11 thatやthoseに対応する日本語には［この］もある
1-5-12 someとanyは限定する程度が違う
1-5-13 限定詞を付けて総称的なイメージを表すこともできます
1-6 英語は動詞で２つの「とき」を表します
1-6-1 動詞の６つの形はいずれも「語っている内容はいつのことか」を表します
1-6-2「とき」には「いつを基準にして語っているのか」もあります
1-6-3「いつを基準にして語っているのか」を表す動詞は現在形と過去形だけです
1-6-4 動詞の現在形と過去形と助動詞はひとつの文に１つしか使えません
1-6-5 動詞の原形と分詞は「語っている内容はいつのことか」だけを表します
1-6-5-1 動詞の原形が表す「語っている内容はいつのことか」は観念的で仮定的です
1-6-5-1-1 動詞の原形には形容詞と名詞のニュアンスがあります
1-6-5-1-2 文の動詞の数を減らすために原形が使えます
1-6-5-1-3 文の動詞の数を減らすために〔to 原形〕が使えます
1-6-5-2 現在分詞と過去分詞は形容詞になっています
1-6-5-2-1 文の動詞の数を減らすために分詞が使えます
1-6-5-2-2 疑問詞や接続詞を導入して分詞を使った文の意味を明確にします
1-6-5-2-3 副詞を導入して分詞を使った文の意味を明確にします
1-6-6 文は「とき」に矛盾がないようにします
1-7 英語は２つの「とき」を組み合わせて遠い過去から未来のことまでを表現します
1-7-1 １つまたは複数の動詞を使って２つの「とき」を表します
1-7-2 過去を基準にして語る表現
1-7-3 現在を基準にして語る表現
1-7-3-1〔have(has) 過去分詞〕の表現
1-7-3-2〔過去形助動詞 have 過去分詞〕の表現
1-7-3-3〔過去形助動詞 原形〕の表現
1-7-4 未来の表現
1-8 英語の複雑な文は単純な文を相手に伝えたい（重要な、強調したい）順に並べます
1-8-1 ２つの文をそのまま並べると複雑な文ができた
1-8-2 代名詞thatを文頭に出して接続詞の機能を持たせた
1-8-3 疑問詞にも接続詞の機能を持たせた
1-8-4 新たに接続詞を導入した
1-8-5 代名詞や副詞を疑問詞に置き換えた
1-8-6 動詞の形を原形や〔to 原形〕に変えた
1-8-7 文をつなぐ原則を拡張して分詞に適用しさらに副詞を導入した
1-8-8 分詞を使って文をつなぐ方法を拡張して〔to 原形〕に適用した
1-8-9 習慣的な表現を導入した
1-9 複雑な文の語順は〔名詞(主語) 動詞 名詞 動詞 名詞・・〕です
1-9-1〔・・動詞 名詞 動詞・・〕の名詞は次の動詞の主語になっています
1-9-2 拡張の結果〔・・名詞 名詞・・〕となることも起きます
1-9-3 拡張の結果〔・・名詞 動詞・・〕の名詞が次の動詞の主語でないことも起きます
1-9-4 拡張の結果〔・・動詞 動詞・・〕となることも起きます
1-9-5 省略の結果〔・・名詞 名詞・・〕となることもあります
1-9-6 動詞の代わりに名詞を使って〔・・名詞 名詞・・〕となる文もあります
1-9-7 英語は文頭から理解します
1-10 英語は接続詞を導入すれば複数の文をそのままつなげます
1-10-1 同じ役割を持った接続詞を２つ連続して並べることはできません
1-11 英語のコンマ類は同格関係を表します
1-11-1〔The 比較級【 】, the 比較級【 】〕は同格文です
2 動詞をめぐるニュアンスの違い
2-1 動詞の過去形と〔have(has) 過去分詞〕『現在完了形』の違い
2-2 動詞の現在形と〔have(has) 過去分詞〕『現在完了形』の違い
2-3 動詞の現在形と〔am(are, is) 現在分詞〕『現在進行形』の違い
2-4『自動詞』と『他動詞』の違い
2-5『受動態』〔be動詞 過去分詞〕と『能動態』の違い
2-6『受動態』のbe動詞とgetの違い
3 文の形をめぐるニュアンスの違い
3-1 (a) John honestと(b) John to be honestと(c) that John is honest
3-2 (a) Mary a photoと(b) a photo to Mary
3-3 (a) the Queen by the handと(b) the Queen’s hand
3-4 (a) paint on the wallと(b) the wall with paint
3-5 (a) his help、(b) him to help us、(c) him for help、(d) him helping us、(e) his helping us
4 文の構造と意味
4-1 Have you finally decided where to have the ceremony and reception?
［式と披露宴をどこでやるのか、ついに決めたのですか］
4-2 What kind of clothing did you finally decide would be appropriate for the bride and groom?
［新郎新婦にふさわしいものとして、最終的にどんな衣装に決めたのですか］
4-3 It is an ill wind that blows nobody (あるいはno one) good.
［誰のためにもならない風は吹かない］：［甲の損は乙の得］に相当することわざ
5「学校英文法」は断片的な規則の集積体です
5-1『時制の一致』
5-2『形式主語』または『仮主語』と『真主語』
5-3『分詞構文』
5-4『未来完了形』
5-5『未来形の代わりをする現在時制』
5-6『theの用法』
5-7『倒置』による主語と動詞（助動詞）の逆転
5-8『関係代名詞のasとthanとbut』
5-9『文末焦点〔End Focus〕』
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コメント(146)
1-8-3 疑問詞にも接続詞の機能を持たせた
疑問詞にも接続詞と同じように２つの文をつなぐ機能をもたせました。たとえば、I don’t know who he is.［彼が誰なのか知りません］は、単純な文?I don’t know it.と?Who is he?をちょっとした工夫をしてつないだ文です。
そのまま２つの文をつなぐと、itは文?のことですから重複感があるので、まずはitを削除します。すると、ひとつの文に「いつを基準にして語っているのか」を示す動詞が〔don’t know〕とisの２つあることになるので、疑問詞のwhoに文をつなぐ接続詞の機能を持たせることにしたわけです。けれども、そのままではI don’t know who is he.となって文の基本的な語順である〔名詞(主語) 動詞〕にはなりません。そこでisとheの順序を逆にして、文として完成させました。
また、This is the woman who helped me.［こちらが私を助けてくれた女性です］は、単純な文?This is the woman.と?She helped me.をつなぐために、Sheを疑問詞whoで置き換えた文です。
「学校英文法」用語を使って説明すれば、whoは疑問詞から『関係代名詞』※（接続詞＋代名詞）に変化したことになりますが、その拡張の途中においては、［こちらが例の女性だよ、誰って、つまり私を助けてくれた人だよ］といった感覚が介在したそうです。
あるいは、I can’t remember where I put my watch.［時計をどこに置いたか思い出せない］という文は、?I can’t remember it.と?Where did I put my watch?をつないだ文です。これも意味が重複するitを削除し、疑問詞のwhereに文をつなぐ機能を持たせて、I can’t remember where did I put my watch.としました。しかしこのままでは、文の基本的な語順〔名詞(主語) 動詞〕になっていないので、無くても文意が理解できる強調の助動詞didを削除し文として完成させました。
こうして、たとえばwhen he turned up, the party was over.［彼が現れた時、パーティーは終わった］の接続詞whenは、もとが疑問詞ですから強調のニュアンスを持っており、そのため文頭に置くことになったと考えることができます。従って、この文は［いつ彼は現れたのか、その時パーティーは終わったのだ］というニュアンスであることがわかります。
※疑問詞who、what、which、how、when、where、whyの意味が「疑問」から［そして〜は］という意味に広がると、疑問詞は『関係代名詞』や『関係副詞』と呼ばれます。その際に、whenやwhereの意味がさらに拡張されて、thatとほとんど同じ意味で使われることもあります。
疑問詞の意味を拡張して『関係代名詞』として使った時、たとえばShe has a daughter who is a pianist.という文では、whoの前で息継ぎせずに続けて読み［彼女にはピアニストの娘がいる］つまり「その娘以外にも娘がいる」ことを表します。ところが、She has a daughter, who is a pianist.という文では、コンマ［すなわち］があるので息継ぎして読み、［彼女には娘がいる、そして（すなわち）その娘はピアニストである］つまり「娘は一人しかいない」ことを表します。
疑問詞の意味を拡張して『関係副詞』として使った時も同様で、たとえばI went into the room, where I found some children sitting on the sofa.という文は、コンマがあるので息継ぎして読み［部屋に入って行った、するとそこには、ソファーに座っている子供たちがいた］となります。
ところで、疑問詞が『関係代名詞』へと拡張されるプロセスは、以下のように説明できるそうです。たとえば、whoの場合ですが、英語の二項対立的特徴からwho［だれ］にはもともとそれに対応する［ある者、その者］という反対の意味が潜在しており、one［その者］よりも意味が弱いのですが、それが『関係代名詞』whoとして使われました。従って、whoは強音で発音されると疑問詞となり、弱音で発音されると『関係代名詞』となります。
このwho＝oneという関係の好例が、Mr. Dennis coughed and shook his head, as who should say, “A mystery indeed!”［デニス氏は「まったく神秘だ！」と言わんばかりに咳払いをして頭を横にふった］（チャールズ・ディケンズ）の〔as who should say〕［〜と言わんばかりに］という言い回しだそうです。
以上から、疑問詞と『関係代名詞』と代名詞の関係は、下表のようになります。
疑問詞にも接続詞と同じように２つの文をつなぐ機能をもたせました。たとえば、I don’t know who he is.［彼が誰なのか知りません］は、単純な文?I don’t know it.と?Who is he?をちょっとした工夫をしてつないだ文です。
そのまま２つの文をつなぐと、itは文?のことですから重複感があるので、まずはitを削除します。すると、ひとつの文に「いつを基準にして語っているのか」を示す動詞が〔don’t know〕とisの２つあることになるので、疑問詞のwhoに文をつなぐ接続詞の機能を持たせることにしたわけです。けれども、そのままではI don’t know who is he.となって文の基本的な語順である〔名詞(主語) 動詞〕にはなりません。そこでisとheの順序を逆にして、文として完成させました。
また、This is the woman who helped me.［こちらが私を助けてくれた女性です］は、単純な文?This is the woman.と?She helped me.をつなぐために、Sheを疑問詞whoで置き換えた文です。
「学校英文法」用語を使って説明すれば、whoは疑問詞から『関係代名詞』※（接続詞＋代名詞）に変化したことになりますが、その拡張の途中においては、［こちらが例の女性だよ、誰って、つまり私を助けてくれた人だよ］といった感覚が介在したそうです。
あるいは、I can’t remember where I put my watch.［時計をどこに置いたか思い出せない］という文は、?I can’t remember it.と?Where did I put my watch?をつないだ文です。これも意味が重複するitを削除し、疑問詞のwhereに文をつなぐ機能を持たせて、I can’t remember where did I put my watch.としました。しかしこのままでは、文の基本的な語順〔名詞(主語) 動詞〕になっていないので、無くても文意が理解できる強調の助動詞didを削除し文として完成させました。
こうして、たとえばwhen he turned up, the party was over.［彼が現れた時、パーティーは終わった］の接続詞whenは、もとが疑問詞ですから強調のニュアンスを持っており、そのため文頭に置くことになったと考えることができます。従って、この文は［いつ彼は現れたのか、その時パーティーは終わったのだ］というニュアンスであることがわかります。
※疑問詞who、what、which、how、when、where、whyの意味が「疑問」から［そして〜は］という意味に広がると、疑問詞は『関係代名詞』や『関係副詞』と呼ばれます。その際に、whenやwhereの意味がさらに拡張されて、thatとほとんど同じ意味で使われることもあります。
疑問詞の意味を拡張して『関係代名詞』として使った時、たとえばShe has a daughter who is a pianist.という文では、whoの前で息継ぎせずに続けて読み［彼女にはピアニストの娘がいる］つまり「その娘以外にも娘がいる」ことを表します。ところが、She has a daughter, who is a pianist.という文では、コンマ［すなわち］があるので息継ぎして読み、［彼女には娘がいる、そして（すなわち）その娘はピアニストである］つまり「娘は一人しかいない」ことを表します。
疑問詞の意味を拡張して『関係副詞』として使った時も同様で、たとえばI went into the room, where I found some children sitting on the sofa.という文は、コンマがあるので息継ぎして読み［部屋に入って行った、するとそこには、ソファーに座っている子供たちがいた］となります。
ところで、疑問詞が『関係代名詞』へと拡張されるプロセスは、以下のように説明できるそうです。たとえば、whoの場合ですが、英語の二項対立的特徴からwho［だれ］にはもともとそれに対応する［ある者、その者］という反対の意味が潜在しており、one［その者］よりも意味が弱いのですが、それが『関係代名詞』whoとして使われました。従って、whoは強音で発音されると疑問詞となり、弱音で発音されると『関係代名詞』となります。
このwho＝oneという関係の好例が、Mr. Dennis coughed and shook his head, as who should say, “A mystery indeed!”［デニス氏は「まったく神秘だ！」と言わんばかりに咳払いをして頭を横にふった］（チャールズ・ディケンズ）の〔as who should say〕［〜と言わんばかりに］という言い回しだそうです。
以上から、疑問詞と『関係代名詞』と代名詞の関係は、下表のようになります。
さて、疑問詞whoが主語として使われた場合には単数名詞としてしか使えない、つまりその動詞は常に単数扱いになるという制約があります。たとえば、Who controls(×control) the Senate, the Democrats or the Republicans?［民主党と共和党のどちらが上院を支配していますか］では、主語whoが複数名詞であるthe Democrats［民主党員］かthe Republicans［共和党員］のどちらかを示していることは明らかですが、それでも動詞は、複数形のcontrolではなく、単数形のcontrolsとなります。この制約は上述のwho＝oneという関係の反映であるように思われます。なぜなら、この制約はwhoだけではなく、上表のwhatとwhichにも適用されますが、疑問詞whatとwhichに対応する代名詞が単数名詞であるthatだからです。
おもしろいことに、whoなどが疑問詞から『関係代名詞』へと拡張されると、この制約も拡張されて、複数名詞としても使えるようになりますが、それは『関係代名詞』が弱音で発音されることと関係があるように思われます。弱音となることによって、元の代名詞がoneやthatであったという記憶も弱まって忘れ去られてしまうからではないでしょうか。しかし、『関係代名詞』としてのwhatは例外であって、いつも単数名詞として取り扱われるそうです。
なお、『関係代名詞』thatは、『指示代名詞』thatから拡張されたものなので、whoやwhichよりも「それ」と指示する力が強く、それだけ『先行詞』と強く結びつくため、『先行詞』と『関係代名詞』の間に距離を生む『継続用法』（コンマを使って結ぶ用法で、『非制限用法』とも呼ばれます）には使えません。『先行詞』がeveryやnoなど強いイメージの形容詞を伴った名詞の場合に、『関係代名詞』としてwhichではなくthatを使うのも同じ理由からでしょう。
ところで、疑問詞whenの意味が拡張されて接続詞thatとほとんど同じ意味で使われた文としては、たとえばI remember when what passes now for multitasking used to be called absent-mindedness or lack of attention.［今では、マルチタスクとして通用していることは、かつては注意散漫とか注意不足だと言われていたものですよ］やWhich is why I hate it when the bill at some restaurants includes a predetermined “gratuity.”［それこそが、レストランによっては勘定にあらかじめ「チップ」が含まれているのを、私が嫌う理由です］があります。なお当然のことながら、ここでthatではなくwhenが使われているのは、「こと」よりも「とき」のニュアンスを伝えたいがためです。
逆に、This is the reason that he came.［これが彼の来た理由です］やThat was the day that he left.［それが彼の出発した日だった］のように、thatは『関係副詞』whyやwhenの意味でも使われますから、thatはもともと疑問詞のニュアンスを持っていると言えそうです。そのことが『関係代名詞』thatは、複数であってもthoseではなく単数thatの形で使われる理由なのかも知れません。
《英語文法批判 宮下眞二 日本翻訳家養成センター（1982）によれば、What he says is not important.［彼の言うことは重要でない］のwhatは『先行詞』を兼ねた『関係詞』ではなく『不特定代名詞』であって、『先行詞』を対象とするのではなくて実体や属性を対象とするという。すなわち、ある言明をまず『不特定代名詞』whatで抽象的に表し、次にそれの一側面の表現を言明の再把握を抜きにして（言明の再把握である『関係詞』を続けるという形をとらずに）直結し、次に言明の属性の表現を続けている。（このことが『関係代名詞』としてのwhatがいつも単数名詞として取り扱われる理由なのかも知れません）》
おもしろいことに、whoなどが疑問詞から『関係代名詞』へと拡張されると、この制約も拡張されて、複数名詞としても使えるようになりますが、それは『関係代名詞』が弱音で発音されることと関係があるように思われます。弱音となることによって、元の代名詞がoneやthatであったという記憶も弱まって忘れ去られてしまうからではないでしょうか。しかし、『関係代名詞』としてのwhatは例外であって、いつも単数名詞として取り扱われるそうです。
なお、『関係代名詞』thatは、『指示代名詞』thatから拡張されたものなので、whoやwhichよりも「それ」と指示する力が強く、それだけ『先行詞』と強く結びつくため、『先行詞』と『関係代名詞』の間に距離を生む『継続用法』（コンマを使って結ぶ用法で、『非制限用法』とも呼ばれます）には使えません。『先行詞』がeveryやnoなど強いイメージの形容詞を伴った名詞の場合に、『関係代名詞』としてwhichではなくthatを使うのも同じ理由からでしょう。
ところで、疑問詞whenの意味が拡張されて接続詞thatとほとんど同じ意味で使われた文としては、たとえばI remember when what passes now for multitasking used to be called absent-mindedness or lack of attention.［今では、マルチタスクとして通用していることは、かつては注意散漫とか注意不足だと言われていたものですよ］やWhich is why I hate it when the bill at some restaurants includes a predetermined “gratuity.”［それこそが、レストランによっては勘定にあらかじめ「チップ」が含まれているのを、私が嫌う理由です］があります。なお当然のことながら、ここでthatではなくwhenが使われているのは、「こと」よりも「とき」のニュアンスを伝えたいがためです。
逆に、This is the reason that he came.［これが彼の来た理由です］やThat was the day that he left.［それが彼の出発した日だった］のように、thatは『関係副詞』whyやwhenの意味でも使われますから、thatはもともと疑問詞のニュアンスを持っていると言えそうです。そのことが『関係代名詞』thatは、複数であってもthoseではなく単数thatの形で使われる理由なのかも知れません。
《英語文法批判 宮下眞二 日本翻訳家養成センター（1982）によれば、What he says is not important.［彼の言うことは重要でない］のwhatは『先行詞』を兼ねた『関係詞』ではなく『不特定代名詞』であって、『先行詞』を対象とするのではなくて実体や属性を対象とするという。すなわち、ある言明をまず『不特定代名詞』whatで抽象的に表し、次にそれの一側面の表現を言明の再把握を抜きにして（言明の再把握である『関係詞』を続けるという形をとらずに）直結し、次に言明の属性の表現を続けている。（このことが『関係代名詞』としてのwhatがいつも単数名詞として取り扱われる理由なのかも知れません）》
1-8-4 新たに接続詞を導入した
新たに接続詞を導入して解決した例です。Please tell me if the shop is open today.［今日、お店が開いているかどうか教えて下さい］は、?Please tell me it.と?Is the shop open today? をつないだ文です。
まず意味が重複するitを削除しますが、元の文には文をつなぐ機能を持った接続詞がないので、適切な接続詞（ここではifまたはwhether）を導入して２つの文をつなぎます。するとPlease tell me if is the shop open today.となりますが、基本的な語順〔名詞(主語) 動詞〕ではありません。そこで、isと〔the shop〕の順序を逆にして文として完成させました。
なお、この文は副詞Please［どうぞ］と動詞の原形を使った一種の強調文なので、名詞が文頭には来ません。
1-8-5 代名詞や副詞を疑問詞に置き換えた
代名詞を文頭に出すことのできる疑問詞に置き換えた例です。The book I borrowed from him was dull.［彼から借りた本は退屈だった］は、?The book was dull.と?I borrowed it from him.をつないだ文です。
このままでは２つの文をつなぐことができないので、文?の代名詞itを疑問詞のwhichで置き換えることにします。疑問詞に置き換えると、［あの本は退屈だったよ。どれって？、私が彼から借りた本だよ］といった感じになって、２つの文がつながるからです。
すると、文?はI borrowed which from him.となります。疑問詞whichは文頭に出すことができるので、which I borrowed from him.とし、これを?の〔The book〕の後に挿入します。さらに、無くても文意が理解できるwhichを省略すると元の文が完成します。
「学校英文法」用語を使って説明すれば、whichが疑問詞から『関係代名詞』（接続詞＋代名詞）に拡張されたことになりますが、事実『関係代名詞』whichは疑問詞から生まれたそうです。なお、無くても文意が理解できる『関係代名詞』は省略することができますが、疑問詞は省略すると文意が理解できなくなるので省略できません。
また、The boy, who they attacked, suffered a fractured skull.［彼らが襲った少年は頭蓋骨を折った］（「襲われた少年は一人だけ」の場合）は、?The boy suffered a fractured skull.と?They attacked him.を疑問詞whoでつないだ文ですが、文意から新たにコンマを導入します。
まず、文?のhimを疑問詞のwhoあるいはwhomで置き換えます。実際に、古い英語ではwhoとwhomは同じように使われたそうですが、コンマでくくる用法ではwhomよりもwhoの方が好まれる傾向があるそうですからwhoを使うことにします。疑問詞whoは文頭に出すことができるので、文頭に出してから?の〔The boy〕の後に挿入します。すると、The boy who they attacked suffered a fractured skull.となりますが、これでは「彼らが襲わなかった少年もいる」という文意になってしまうので、?に相当する文をコンマでくくって意味の区切りをつくれば最初の文になります。この場合も「学校英文法」用語を使って説明すれば、whoは疑問詞から『関係代名詞』（接続詞＋代名詞）に拡張されたことになります。
あるいは、This is the town where I was born.［ここは私が生まれた町です］は、?This is the town.と?I was born there.を疑問詞のwhereを使ってつないだ文です。
まず、文?のthereを疑問詞のwhereで置き換えます。疑問詞は文頭に出すことができるので、これを文頭に出してから?の〔the town〕の後に挿入すれば元の文ができます。「学校英文法」の用語を使って説明すれば、whereは疑問詞から『関係副詞』（接続詞＋副詞）に拡張されたことになります。
新たに接続詞を導入して解決した例です。Please tell me if the shop is open today.［今日、お店が開いているかどうか教えて下さい］は、?Please tell me it.と?Is the shop open today? をつないだ文です。
まず意味が重複するitを削除しますが、元の文には文をつなぐ機能を持った接続詞がないので、適切な接続詞（ここではifまたはwhether）を導入して２つの文をつなぎます。するとPlease tell me if is the shop open today.となりますが、基本的な語順〔名詞(主語) 動詞〕ではありません。そこで、isと〔the shop〕の順序を逆にして文として完成させました。
なお、この文は副詞Please［どうぞ］と動詞の原形を使った一種の強調文なので、名詞が文頭には来ません。
1-8-5 代名詞や副詞を疑問詞に置き換えた
代名詞を文頭に出すことのできる疑問詞に置き換えた例です。The book I borrowed from him was dull.［彼から借りた本は退屈だった］は、?The book was dull.と?I borrowed it from him.をつないだ文です。
このままでは２つの文をつなぐことができないので、文?の代名詞itを疑問詞のwhichで置き換えることにします。疑問詞に置き換えると、［あの本は退屈だったよ。どれって？、私が彼から借りた本だよ］といった感じになって、２つの文がつながるからです。
すると、文?はI borrowed which from him.となります。疑問詞whichは文頭に出すことができるので、which I borrowed from him.とし、これを?の〔The book〕の後に挿入します。さらに、無くても文意が理解できるwhichを省略すると元の文が完成します。
「学校英文法」用語を使って説明すれば、whichが疑問詞から『関係代名詞』（接続詞＋代名詞）に拡張されたことになりますが、事実『関係代名詞』whichは疑問詞から生まれたそうです。なお、無くても文意が理解できる『関係代名詞』は省略することができますが、疑問詞は省略すると文意が理解できなくなるので省略できません。
また、The boy, who they attacked, suffered a fractured skull.［彼らが襲った少年は頭蓋骨を折った］（「襲われた少年は一人だけ」の場合）は、?The boy suffered a fractured skull.と?They attacked him.を疑問詞whoでつないだ文ですが、文意から新たにコンマを導入します。
まず、文?のhimを疑問詞のwhoあるいはwhomで置き換えます。実際に、古い英語ではwhoとwhomは同じように使われたそうですが、コンマでくくる用法ではwhomよりもwhoの方が好まれる傾向があるそうですからwhoを使うことにします。疑問詞whoは文頭に出すことができるので、文頭に出してから?の〔The boy〕の後に挿入します。すると、The boy who they attacked suffered a fractured skull.となりますが、これでは「彼らが襲わなかった少年もいる」という文意になってしまうので、?に相当する文をコンマでくくって意味の区切りをつくれば最初の文になります。この場合も「学校英文法」用語を使って説明すれば、whoは疑問詞から『関係代名詞』（接続詞＋代名詞）に拡張されたことになります。
あるいは、This is the town where I was born.［ここは私が生まれた町です］は、?This is the town.と?I was born there.を疑問詞のwhereを使ってつないだ文です。
まず、文?のthereを疑問詞のwhereで置き換えます。疑問詞は文頭に出すことができるので、これを文頭に出してから?の〔the town〕の後に挿入すれば元の文ができます。「学校英文法」の用語を使って説明すれば、whereは疑問詞から『関係副詞』（接続詞＋副詞）に拡張されたことになります。
《英語教師のための英文法 吉田正治 研究社出版（1995）によれば、たとえばThere are a lot of things that I need to do before I leave tonight.［今晩出発する前にやっておく必要のあることがたくさんある］のthatは「学校英文法」では『関係代名詞』とされているが、厳密な意味では接続詞です。（つまり、疑問詞が元になっている『関係代名詞』と『指示代名詞』thatが元になっている『関係代名詞』とは性格が違うということです。そうならば、『関係代名詞』のwhichとthatは意味も異なっているはずですから、たとえば前者は疑問詞らしく［「どれか」と言うと］、後者は名詞らしく［「それは」と言うと］などのように区別して表現する必要があるでしょう。そうすれば前者からは疑問詞の「任意的」なニュアンス、後者からは名詞の「確定的」なニュアンスを感じ取ることができます）》
《謎解きの英文法 冠詞と名詞 久野�臓�高見健一 くろしお出版（2004）によれば、『関係代名詞』にwhoを使うかwhichを使うかの選択の基準は、「学校英文法」が教えるような『先行詞』が「人間」か、「人間以外のもの」かではなくて、『関係代名詞』で置き換えた元の名詞がその『関係節』の中で「人間」を表すか、「人間以外のもの」を表すかで決まり、前者ではwho、後者ではwhichを使う。たとえば、This loan program is for first-time buyers, which(×who) you don’t seem to be.［この住宅ローンは初めて家を買う人のためのものです。お客様はどうもそうではないようですね。］では、whoではなくwhichを使います。この文は、?This loan program is for first-time buyers.と?you don’t seem to be a first-time buyer.をコンマでつないだ文です。?の〔first-time buyers〕は、「人一般」を指していますが、?では「人の属性」つまり「無生物」を指しているのでwhoではなくwhichを使うというわけです。そのほかMy father is a college teacher, which(×who) I don’t want to become. ［私の父は大学教師ですが、私は大学教師にはなりたくありません］も同様です》
《謎解きの英文法 冠詞と名詞 久野�臓�高見健一 くろしお出版（2004）によれば、『関係代名詞』にwhoを使うかwhichを使うかの選択の基準は、「学校英文法」が教えるような『先行詞』が「人間」か、「人間以外のもの」かではなくて、『関係代名詞』で置き換えた元の名詞がその『関係節』の中で「人間」を表すか、「人間以外のもの」を表すかで決まり、前者ではwho、後者ではwhichを使う。たとえば、This loan program is for first-time buyers, which(×who) you don’t seem to be.［この住宅ローンは初めて家を買う人のためのものです。お客様はどうもそうではないようですね。］では、whoではなくwhichを使います。この文は、?This loan program is for first-time buyers.と?you don’t seem to be a first-time buyer.をコンマでつないだ文です。?の〔first-time buyers〕は、「人一般」を指していますが、?では「人の属性」つまり「無生物」を指しているのでwhoではなくwhichを使うというわけです。そのほかMy father is a college teacher, which(×who) I don’t want to become. ［私の父は大学教師ですが、私は大学教師にはなりたくありません］も同様です》
1-8-6 動詞の形を原形や〔to 原形〕に変えた
動詞の形を原形に換えて解決した例です。He insisted she go.［彼は彼女が行くと主張した］は、文?He insisted on it.と?It is that she goes.をつないだ文です。
２つの文をつないでから重複するitをひとつ削除するとHe insisted on it is that she goes.となります。１つの文に「いつを基準にして語っているのか」を示す動詞は１つしか許されないので、無くても文意が理解できるbe動詞のisを削除するとHe insisted on it that she goes.となります。ここで、「彼女が行く」ということは、現実のできごとではなくて彼がinsisted［主張した］ことですから、現在形の動詞goesを仮定的なニュアンスを持つ「原形」goに換えてHe insisted on it that she go.とします。この表現は過去の古い英語では実際に使われていたそうですが、〔on it〕は〔that she go〕と同じことを指していて重複感があるので削除するとHe insisted that she go.となります。さらに、無くても文意が理解できるthatを削除すれば元の文ができあがります。この文の基本構造は、〔名詞 動詞 名詞 動詞〕です。
次は、動詞の形を〔to 原形〕に換えて解決した例です。She wants a housemaid to look after her.［彼女は世話をしてもらえるお手伝いさんを捜している］は、文?She wants a housemaid.と?The housemaid looks after her.をつないだ文です。
２つの文をつないでから重複する〔a (the) housemaid〕をひとつ削除すると、She wants a housemaid looks after her.となります。「いつを基準にして語っているのか」を示す動詞が２つありますから、文意を考えて動詞looksの形を換えます。文意は「お手伝いさんは彼女を（今後ずっと）世話する」ということであり、〔to 原形〕にはtoが持っている［（対象）に向き合って］というイメージから「ずっと」という未来のニュアンスがあるので、〔to look〕の形にするのが適切だろうと判断できます。すると元の文ができて、その基本構造は〔名詞 動詞 名詞 動詞 名詞〕となっています。
《学校文法の語らなかった英語構文 足立公也、都築雅子 中京大学文化科学研究所（2010）によれば、知覚動詞は基本的に直接知覚を表しているゆえに厳密な同時性を要求する。そのためBill saw John cross the street.のようにtoを伴わない裸不定詞をとる。使役動詞の場合にはtoを伴わない裸不定詞でも同時性が守られないことがある。（結局は「同時性」だけがtoの有無を決める基準ではないことになります）》
動詞の形を原形に換えて解決した例です。He insisted she go.［彼は彼女が行くと主張した］は、文?He insisted on it.と?It is that she goes.をつないだ文です。
２つの文をつないでから重複するitをひとつ削除するとHe insisted on it is that she goes.となります。１つの文に「いつを基準にして語っているのか」を示す動詞は１つしか許されないので、無くても文意が理解できるbe動詞のisを削除するとHe insisted on it that she goes.となります。ここで、「彼女が行く」ということは、現実のできごとではなくて彼がinsisted［主張した］ことですから、現在形の動詞goesを仮定的なニュアンスを持つ「原形」goに換えてHe insisted on it that she go.とします。この表現は過去の古い英語では実際に使われていたそうですが、〔on it〕は〔that she go〕と同じことを指していて重複感があるので削除するとHe insisted that she go.となります。さらに、無くても文意が理解できるthatを削除すれば元の文ができあがります。この文の基本構造は、〔名詞 動詞 名詞 動詞〕です。
次は、動詞の形を〔to 原形〕に換えて解決した例です。She wants a housemaid to look after her.［彼女は世話をしてもらえるお手伝いさんを捜している］は、文?She wants a housemaid.と?The housemaid looks after her.をつないだ文です。
２つの文をつないでから重複する〔a (the) housemaid〕をひとつ削除すると、She wants a housemaid looks after her.となります。「いつを基準にして語っているのか」を示す動詞が２つありますから、文意を考えて動詞looksの形を換えます。文意は「お手伝いさんは彼女を（今後ずっと）世話する」ということであり、〔to 原形〕にはtoが持っている［（対象）に向き合って］というイメージから「ずっと」という未来のニュアンスがあるので、〔to look〕の形にするのが適切だろうと判断できます。すると元の文ができて、その基本構造は〔名詞 動詞 名詞 動詞 名詞〕となっています。
《学校文法の語らなかった英語構文 足立公也、都築雅子 中京大学文化科学研究所（2010）によれば、知覚動詞は基本的に直接知覚を表しているゆえに厳密な同時性を要求する。そのためBill saw John cross the street.のようにtoを伴わない裸不定詞をとる。使役動詞の場合にはtoを伴わない裸不定詞でも同時性が守られないことがある。（結局は「同時性」だけがtoの有無を決める基準ではないことになります）》
1-8-7 文をつなぐ原則を拡張して分詞に適用しさらに副詞を導入した
文をつなぐ原則を拡張した上で、新たに副詞を導入した例です。I keep the time difference in mind when calling overseas.［私は海外に電話するとき、時差を忘れないようにしている］は、文?I keep the time difference in mind.と?I call overseas.をつないだ文です。
文をつなぐ機能を持った語がないので、ふつうは新たに接続詞を導入してつなぎますが、２つの文がほぼ同時に起きているできごとである場合に限り、「いつを基準にして語っているのか」を示す動詞を現在分詞や過去分詞の形にすれば、文をつなぐ原則を拡張して文をそのまま並べるだけで（２つの文に共通する語を並べて同格の形にするのではなく）つなぐことができます。同時に起きたできごとは、現在分詞の［〜し続けている状態で］や過去分詞の［〜された状態で］や［〜した状態で］というイメージに合っているからです。
この方法を適用することにして、２つの文をつないでから重複するIをひとつ削除し、動詞callを現在分詞の形callingにします。するとI keep the time difference in mind calling overseas.となります。このままでも良いのですが、「いつか」という意識を明確にするために、副詞whenを導入すると元の文ができます。
なお、ニュアンスは少し変わりますが、whenの代わりにwhenよりも時間幅の長いwhile［〜している間に］を使うこともできます。もちろん、接続詞whenを導入して文?と?をそのままつないでもよく、その時にはI keep the time difference in mind when I call overseas.となります。
また、She came in with her eyes shining.［彼女は目を輝かせて入ってきた］は、文?She came in.と?Her eyes were shining.をつないだ文です。
動詞を現在分詞の形にして２つの文をそのままつなぐことにします。ここでは、初めから文?が現在分詞の形になっているので、単にbe動詞（were）を削除するだけです。するとShe came in her eyes shining.となります。このままでは舌足らずなので、目「で」を明確にするために副詞withを〔her eyes〕の前に挿入すると元の文になります。
同様に、He sat at his desk, with his eyes closed. ［彼は目を閉じて机に向かっていた］は、文?He sat at his desk.と?His eyes were closed.をつないだ文です。
動詞を過去分詞の形にして２つの文をそのままつなぎます。ここでも、文?が過去分詞の形になっているので、単にbe動詞（were）を削除するだけです。するとHe sat at his desk his eyes closed.となります。やはりこのままでは舌足らずなので、目「で」を明確にするために副詞withを導入します。さらに、文?と?の間にコンマ（ , ）を導入して気持ちの不連続性を表現することにします。
なお、以前は副詞を導入するのが普通であったにも関わらず、最近は使わなくなって来たという例があり、たとえばJapan has spent more than a half century (in) building a US-style oil civilization system.［日本もここ半世紀以上かけてアメリカ型の石油文明をつくり上げてきた］では、inを省くのが普通だそうです。
ところで、隠れん坊をしている時にプールの中に隠れた相手に向かって、In the pool is not fair.［プールに隠れるのはフェアじゃない］と言うことがあるそうですが、これは?You are in the pool.と?It is not fair.をつないだ文です。言わなくてもわかるYouとit［「前述」のそれ］を削除し、areを現在分詞Beingにすると、Being in the pool is not fair.となりますが、Beingも無くても分かるので削除すると、元の文ができます。この文は見かけ上、〔In the pool〕が主語のように見えるので、文法書で『前置詞句が主語になる例』として紹介されていますが、そうではなくて、主語は隠れたBeingを含めた〔Being in the pool〕です。
同様に、『副詞節が主語になる例』として、Just because I don’t like her attitude does not mean that I don’t agree with her idea.［彼女の態度が気に食わないからといって彼女の考えを支持しないということではない］という文が紹介されていますが、これは?It is just because I don’t like her attitude.と?It does not mean that I don’t agree with her idea.をつないだ文です。文?の全体を指している文?のitと、言わなくても分かる文?のitを削除し、isを現在分詞beingにすると、Being just because I don’t like her attitude does not mean that I don’t agree with her idea.となります。ここから無くても分かるBeingを削除すると、元の文ができます。つまり、『副詞節が主語』になっているわけではなく、主語は隠れたBeingを含めた〔Being just because I don’t like her attitude〕です。
文をつなぐ原則を拡張した上で、新たに副詞を導入した例です。I keep the time difference in mind when calling overseas.［私は海外に電話するとき、時差を忘れないようにしている］は、文?I keep the time difference in mind.と?I call overseas.をつないだ文です。
文をつなぐ機能を持った語がないので、ふつうは新たに接続詞を導入してつなぎますが、２つの文がほぼ同時に起きているできごとである場合に限り、「いつを基準にして語っているのか」を示す動詞を現在分詞や過去分詞の形にすれば、文をつなぐ原則を拡張して文をそのまま並べるだけで（２つの文に共通する語を並べて同格の形にするのではなく）つなぐことができます。同時に起きたできごとは、現在分詞の［〜し続けている状態で］や過去分詞の［〜された状態で］や［〜した状態で］というイメージに合っているからです。
この方法を適用することにして、２つの文をつないでから重複するIをひとつ削除し、動詞callを現在分詞の形callingにします。するとI keep the time difference in mind calling overseas.となります。このままでも良いのですが、「いつか」という意識を明確にするために、副詞whenを導入すると元の文ができます。
なお、ニュアンスは少し変わりますが、whenの代わりにwhenよりも時間幅の長いwhile［〜している間に］を使うこともできます。もちろん、接続詞whenを導入して文?と?をそのままつないでもよく、その時にはI keep the time difference in mind when I call overseas.となります。
また、She came in with her eyes shining.［彼女は目を輝かせて入ってきた］は、文?She came in.と?Her eyes were shining.をつないだ文です。
動詞を現在分詞の形にして２つの文をそのままつなぐことにします。ここでは、初めから文?が現在分詞の形になっているので、単にbe動詞（were）を削除するだけです。するとShe came in her eyes shining.となります。このままでは舌足らずなので、目「で」を明確にするために副詞withを〔her eyes〕の前に挿入すると元の文になります。
同様に、He sat at his desk, with his eyes closed. ［彼は目を閉じて机に向かっていた］は、文?He sat at his desk.と?His eyes were closed.をつないだ文です。
動詞を過去分詞の形にして２つの文をそのままつなぎます。ここでも、文?が過去分詞の形になっているので、単にbe動詞（were）を削除するだけです。するとHe sat at his desk his eyes closed.となります。やはりこのままでは舌足らずなので、目「で」を明確にするために副詞withを導入します。さらに、文?と?の間にコンマ（ , ）を導入して気持ちの不連続性を表現することにします。
なお、以前は副詞を導入するのが普通であったにも関わらず、最近は使わなくなって来たという例があり、たとえばJapan has spent more than a half century (in) building a US-style oil civilization system.［日本もここ半世紀以上かけてアメリカ型の石油文明をつくり上げてきた］では、inを省くのが普通だそうです。
ところで、隠れん坊をしている時にプールの中に隠れた相手に向かって、In the pool is not fair.［プールに隠れるのはフェアじゃない］と言うことがあるそうですが、これは?You are in the pool.と?It is not fair.をつないだ文です。言わなくてもわかるYouとit［「前述」のそれ］を削除し、areを現在分詞Beingにすると、Being in the pool is not fair.となりますが、Beingも無くても分かるので削除すると、元の文ができます。この文は見かけ上、〔In the pool〕が主語のように見えるので、文法書で『前置詞句が主語になる例』として紹介されていますが、そうではなくて、主語は隠れたBeingを含めた〔Being in the pool〕です。
同様に、『副詞節が主語になる例』として、Just because I don’t like her attitude does not mean that I don’t agree with her idea.［彼女の態度が気に食わないからといって彼女の考えを支持しないということではない］という文が紹介されていますが、これは?It is just because I don’t like her attitude.と?It does not mean that I don’t agree with her idea.をつないだ文です。文?の全体を指している文?のitと、言わなくても分かる文?のitを削除し、isを現在分詞beingにすると、Being just because I don’t like her attitude does not mean that I don’t agree with her idea.となります。ここから無くても分かるBeingを削除すると、元の文ができます。つまり、『副詞節が主語』になっているわけではなく、主語は隠れたBeingを含めた〔Being just because I don’t like her attitude〕です。
1-8-8 分詞を使って文をつなぐ方法を拡張して〔to 原形〕に適用した
２つの文がほぼ同時に起きているできごとである場合には、「いつを基準にして語っているのか」を示す動詞を現在分詞や過去分詞の形にして、そのまま並べてつなぐことができますが、これを拡張して〔to 原形〕に適用します。〔to 原形〕は［（動詞の原形が意味すること）に向き合って］という意味ですから、現在分詞や過去分詞と同じように「ほぼ同時に起きている」感覚があるからです。
たとえば、I have something to tell you.［君に話したいことがある］は、文?I have something.と?I tell you it.をつないだ文です。動詞tellを〔to 原形〕の形〔to tell〕にして、２つの文をそのままつなぎ、重複するIとitを削除すれば元の文I have something to tell you.ができます。
ここで、I have something to tell you.［君に話したいことがある］は、〔×something tells you〕［何かが君に話す］のではないので、×I have something to be told you.［私は何かを持っている、何かは君に話される］となりそうですが、そうならないのは上記のように、元の文が?I have something.と?I tell you it.をつないだ文であったからです。
同様に、He is to blame for the accident.［その事故の責任は彼にある］のHe is to blame.も、意味からするとHe is to be blamed.［彼は責められるべきだ］となりそうですが、これは古い英語の名残であって、古くは〔to do〕という形しかなかったためにできあがった文だそうです。〔to be done〕という形が登場してきたのは14世紀になってからであり、その後He is to be blamed for it.［そうなったのは彼の責任だ］という表現が加わりましたが、〔for〜〕がない場合には、今でもHe is to blame.という形にするのが普通だそうです。
ところが、動詞seemを使った文は一筋縄ではいきません。たとえば、John seems to be clever.［ジョンは賢いように見える］の動詞seemsの主語はJohnになっていますが、実際には「ジョンは賢い」のであって、そのように見ているのはJohn以外の人です。もともと、動詞seemは、「人」を主語に取る動詞ではなかったのですが、中期英語から近代英語の時代に「人」を主語の位置に置くようになって、この形が生まれたそうです。
具体的には、このプロセスは以下のようになります。たとえば、Susan seems a very sensible person.［スーザンはとても分別のある人のようだ］という文は、２つの文?It seems.と?Susan is a very sensible person.からできています。
ここで、接続詞thatを導入して文?と?をつなぐと、(a) It seems that Susan is a very sensible person.となります。このままでも良いのですが、上述のように動詞seemは「人」を主語に取ることができるようになったので、Susanを文頭に出し、Itとthatを省略して、動詞isを〔to be〕の形にすると、(b) Susan seems to be a very sensible person.となります。
この客観的な事実として表現された文(b)を主観的な印象として表現したい思った場合には、つまりtoの「ずっと」というイメージが文意にそぐわないと思った場合は、〔to be〕を削除しますが、そうすると元の文(c) Susan seems a very sensible person.になります。
ところで、現在では文(a)よりも(b)の形の頻度が圧倒的に多いそうです。また、〔to be〕のある文(b)には客観的なニュアンスがあり、〔to be〕のない文(c)は主観的なニュアンスになりますが、その違いは以下のようにも説明できるそうです。
たとえば、［誰かが病気だと思われる］という意味は、以下の文(b)と(c)で表現できます。
(b) Someone seems to be sick.
(c) Someone seems sick.
客観的なニュアンスの文(b)が以下の(1)と(2)の２つの解釈を持つのに対して、主観的なニュアンスの文(c)は(1)の意味しか持ち得ないそうです。
(1) There is someone who seems to be sick.［病気だと思われるような人が誰か１人いる］
(2) There seems to be someone sick.［誰かが病気のようである］
２つの文がほぼ同時に起きているできごとである場合には、「いつを基準にして語っているのか」を示す動詞を現在分詞や過去分詞の形にして、そのまま並べてつなぐことができますが、これを拡張して〔to 原形〕に適用します。〔to 原形〕は［（動詞の原形が意味すること）に向き合って］という意味ですから、現在分詞や過去分詞と同じように「ほぼ同時に起きている」感覚があるからです。
たとえば、I have something to tell you.［君に話したいことがある］は、文?I have something.と?I tell you it.をつないだ文です。動詞tellを〔to 原形〕の形〔to tell〕にして、２つの文をそのままつなぎ、重複するIとitを削除すれば元の文I have something to tell you.ができます。
ここで、I have something to tell you.［君に話したいことがある］は、〔×something tells you〕［何かが君に話す］のではないので、×I have something to be told you.［私は何かを持っている、何かは君に話される］となりそうですが、そうならないのは上記のように、元の文が?I have something.と?I tell you it.をつないだ文であったからです。
同様に、He is to blame for the accident.［その事故の責任は彼にある］のHe is to blame.も、意味からするとHe is to be blamed.［彼は責められるべきだ］となりそうですが、これは古い英語の名残であって、古くは〔to do〕という形しかなかったためにできあがった文だそうです。〔to be done〕という形が登場してきたのは14世紀になってからであり、その後He is to be blamed for it.［そうなったのは彼の責任だ］という表現が加わりましたが、〔for〜〕がない場合には、今でもHe is to blame.という形にするのが普通だそうです。
ところが、動詞seemを使った文は一筋縄ではいきません。たとえば、John seems to be clever.［ジョンは賢いように見える］の動詞seemsの主語はJohnになっていますが、実際には「ジョンは賢い」のであって、そのように見ているのはJohn以外の人です。もともと、動詞seemは、「人」を主語に取る動詞ではなかったのですが、中期英語から近代英語の時代に「人」を主語の位置に置くようになって、この形が生まれたそうです。
具体的には、このプロセスは以下のようになります。たとえば、Susan seems a very sensible person.［スーザンはとても分別のある人のようだ］という文は、２つの文?It seems.と?Susan is a very sensible person.からできています。
ここで、接続詞thatを導入して文?と?をつなぐと、(a) It seems that Susan is a very sensible person.となります。このままでも良いのですが、上述のように動詞seemは「人」を主語に取ることができるようになったので、Susanを文頭に出し、Itとthatを省略して、動詞isを〔to be〕の形にすると、(b) Susan seems to be a very sensible person.となります。
この客観的な事実として表現された文(b)を主観的な印象として表現したい思った場合には、つまりtoの「ずっと」というイメージが文意にそぐわないと思った場合は、〔to be〕を削除しますが、そうすると元の文(c) Susan seems a very sensible person.になります。
ところで、現在では文(a)よりも(b)の形の頻度が圧倒的に多いそうです。また、〔to be〕のある文(b)には客観的なニュアンスがあり、〔to be〕のない文(c)は主観的なニュアンスになりますが、その違いは以下のようにも説明できるそうです。
たとえば、［誰かが病気だと思われる］という意味は、以下の文(b)と(c)で表現できます。
(b) Someone seems to be sick.
(c) Someone seems sick.
客観的なニュアンスの文(b)が以下の(1)と(2)の２つの解釈を持つのに対して、主観的なニュアンスの文(c)は(1)の意味しか持ち得ないそうです。
(1) There is someone who seems to be sick.［病気だと思われるような人が誰か１人いる］
(2) There seems to be someone sick.［誰かが病気のようである］
《英文法教室＜新装版＞ 伊藤和夫 研究社（2011）によれば、〔I am sorry (glad、disappointed、surprised、etd.)＋『to 不定詞』〕の形は、形容詞や過去分詞によって示される感情の原因を『不定詞』が示す形であるから、厳密に言えばまず『to 不定詞』によって示される動作があって次に喜びや驚きの感情が生ずることが多いはずである。両者が近接していてほとんど同時と感じられるときには、単純形の『不定詞』が用いられる》
《英語構文を探求する 大庭幸男 開拓社（2011）によれば、以下(a)〜(c)のニュアンスは異なっており、
(a) John believes that Bill is intelligent.［ジョンはビルが聡明であると思っています］
(b) John believes Bill to be intelligent.［ジョンはビルを聡明だと思っています］
(c) John believes Bill intelligent.［ジョンはビルを聡明だと思っています］
(a)は、経験的に証明できる事実について客観的な見解を述べており、(b)はその事実について個人的な経験や判断を主観的に述べており、(c)は個人的な経験や意見をさらに主観的に述べている》
1-8-9 習慣的な表現を導入した
たとえば、Tommy is too short to reach the window.［トミーは背が低すぎて、窓に手が届かない］は、文?Tommy is very short.と文?He can’t reach the window.を〔too〜to〜〕という習慣的な表現を使ってつないだ文です。
文?ではveryの代わりにtoo［あまりにも〜、〜すぎて］を用い、文?では重複するHeを削除してcan’tの代わりにto［向き合ってずっと］を用いることによって、「背が低すぎる」ことが「窓に手が届く」ことにto［向き合ってずっと］、つまり「背が低すぎて、いつまでも手が届かない」という否定的なニュアンスを表現したわけです。
この２つの文は〔too〜to〜〕以外にも、同じように習慣的な語法である〔so〜that〜〕を使ってつなぐこともできます。文?のveryの代わりに強調語のso［それほど、そんなに］を用い、また接続詞thatを導入して文?につなぐとTommy is so short that he can’t reach the window.［トミーは背が低いので窓に手が届かない］となり、似たような意味を表現できます。
しかしながら、ふたつの文のニュアンスは異なっており、tooが否定的なニュアンスであるのに対してsoは因果関係を強調しているので、tooでは背の低いことを非難しているがsoでは単に背が低いから届かなかったという事実を伝えているだけだそうです。
《英語構文を探求する 大庭幸男 開拓社（2011）によれば、以下(a)〜(c)のニュアンスは異なっており、
(a) John believes that Bill is intelligent.［ジョンはビルが聡明であると思っています］
(b) John believes Bill to be intelligent.［ジョンはビルを聡明だと思っています］
(c) John believes Bill intelligent.［ジョンはビルを聡明だと思っています］
(a)は、経験的に証明できる事実について客観的な見解を述べており、(b)はその事実について個人的な経験や判断を主観的に述べており、(c)は個人的な経験や意見をさらに主観的に述べている》
1-8-9 習慣的な表現を導入した
たとえば、Tommy is too short to reach the window.［トミーは背が低すぎて、窓に手が届かない］は、文?Tommy is very short.と文?He can’t reach the window.を〔too〜to〜〕という習慣的な表現を使ってつないだ文です。
文?ではveryの代わりにtoo［あまりにも〜、〜すぎて］を用い、文?では重複するHeを削除してcan’tの代わりにto［向き合ってずっと］を用いることによって、「背が低すぎる」ことが「窓に手が届く」ことにto［向き合ってずっと］、つまり「背が低すぎて、いつまでも手が届かない」という否定的なニュアンスを表現したわけです。
この２つの文は〔too〜to〜〕以外にも、同じように習慣的な語法である〔so〜that〜〕を使ってつなぐこともできます。文?のveryの代わりに強調語のso［それほど、そんなに］を用い、また接続詞thatを導入して文?につなぐとTommy is so short that he can’t reach the window.［トミーは背が低いので窓に手が届かない］となり、似たような意味を表現できます。
しかしながら、ふたつの文のニュアンスは異なっており、tooが否定的なニュアンスであるのに対してsoは因果関係を強調しているので、tooでは背の低いことを非難しているがsoでは単に背が低いから届かなかったという事実を伝えているだけだそうです。
1-9 複雑な文の基本構造は〔名詞(主語) 動詞 名詞 動詞 名詞・・〕です
複雑な文は複数の単純な文が直線的に並んだ構造をしており、かつ単純な文の最小単位は【名詞(主語) 動詞】ですから、原則的にはあらゆる複雑な文が〔名詞 動詞 名詞 動詞・・〕という基本構造をしていることになります。ここで言う動詞とは、できあがった複雑な文においては広い意味の動詞に形を変えていますが、元の単純な文では現在形や過去形であった「いつを基準にして語っているのか」を示す狭い意味の動詞のことです。
複雑な文は単純な文が直線的に並んでいるのですから、名詞の後にある動詞からその名詞を見ると「主語」に見え、名詞の前にある動詞からその名詞を見ると「述語」に見えます。
実際には、名詞が連続して並んだり動詞が連続して並んだりすることもありますが、複雑な文の基本構造は〔名詞(主語) 動詞 名詞 動詞・・・〕であるという原則を理解することが重要です。
《言葉は身振りから進化した マイケル・コーバリス 勁草書房（2008）によれば、英語は次の４つの規則、（１）文＝『名詞句＋動詞句』、（２）『名詞句』＝『冠詞』＋名詞＋（『関係詞節』）、（３）『関係詞節』＝『関係代名詞＋動詞句』、（４）『動詞句』＝動詞＋『名詞句』からできあがっている。（そうであれば、英文が原則的に〔名詞 動詞 名詞 動詞 ・・・〕という構造になるのは当然のことになります）》
1-9-1〔・・動詞 名詞 動詞・・〕の名詞は次の動詞の主語になっています
たとえば、I noticed a police car cruising the street making an announcement in Japanese and English.［パトカーが通りを巡回しながら、日本語と英語でアナウンスを流しているのに気づきました］という文は、文?I noticed a police car.と?The police car was cruising the street.と?The police car was making an announcement in Japanese and English.をつないだ文になっています。
元の文はこの３つの文から重複している〔a (the) police car〕と無くても文意が理解できるbe動詞（was）を削除しただけですから、その基本構造は〔名詞 動詞 名詞 動詞 名詞 動詞、名詞〕であり、名詞は次の動詞の主語になっています。但し、３つ目の動詞makingの主語は直前の〔the street〕ではなく、元の文を見ればわかるように〔a police car〕［パトカー］です。
また、The doctor’s careful treatment of the patient brought about her quick recovery.［医師が患者をよく診てくれたおかげで患者は直ちに快復した］という文の動詞はbroughtひとつだけですが、動詞がもとになった名詞treatmentとrecoveryを動詞と見なせば、〔名詞 動詞 名詞 動詞 名詞 動詞〕という基本構造であり、名詞はいずれも次の動詞の主語になっています。
同様に、I think Yoko may disagree with your description of cosmetics and handbags as “nonessential.”［化粧品やハンドバッグは「なくても困らない」という、あなたの表現に洋子は異議を唱えるかも知れません］という文の後半は、You descrive cosmetics and handbags as “nonessential.”を名詞化した文ですから、〔名詞 動詞 名詞 動詞 名詞 動詞 名詞〕という基本構造であり、名詞はいずれも次の動詞の主語になっています。
1-9-2 拡張の結果〔・・名詞 名詞・・〕となることも起きます
1-2-1-2節で紹介したように、名詞が連続して並んでいる場合は、〔名詞（have動詞）名詞〕または〔名詞（be動詞）名詞〕のように、文意からするとその間にhave動詞またはbe動詞が省略されているわけですから、本質的には常に〔名詞(主語) 動詞 名詞 動詞・・・〕となっていることになります。
興味深いことに単純な文においても、たとえばMy boss angrily tore up my resignation letter.［上司はカンカンになって私の辞表を引きちぎった］という文には、be動詞（was）が存在しているかのように、つまりMy boss was angry.［上司は怒った］という文意を感じるそうです。
ですから、〔・・名詞 名詞・・〕という語順は、本来であれば名詞の間に存在したhave動詞やbe動詞が、それが無くてもわかることから省略されてあたりまえになってしまった文であると考えることができます。
複雑な文は複数の単純な文が直線的に並んだ構造をしており、かつ単純な文の最小単位は【名詞(主語) 動詞】ですから、原則的にはあらゆる複雑な文が〔名詞 動詞 名詞 動詞・・〕という基本構造をしていることになります。ここで言う動詞とは、できあがった複雑な文においては広い意味の動詞に形を変えていますが、元の単純な文では現在形や過去形であった「いつを基準にして語っているのか」を示す狭い意味の動詞のことです。
複雑な文は単純な文が直線的に並んでいるのですから、名詞の後にある動詞からその名詞を見ると「主語」に見え、名詞の前にある動詞からその名詞を見ると「述語」に見えます。
実際には、名詞が連続して並んだり動詞が連続して並んだりすることもありますが、複雑な文の基本構造は〔名詞(主語) 動詞 名詞 動詞・・・〕であるという原則を理解することが重要です。
《言葉は身振りから進化した マイケル・コーバリス 勁草書房（2008）によれば、英語は次の４つの規則、（１）文＝『名詞句＋動詞句』、（２）『名詞句』＝『冠詞』＋名詞＋（『関係詞節』）、（３）『関係詞節』＝『関係代名詞＋動詞句』、（４）『動詞句』＝動詞＋『名詞句』からできあがっている。（そうであれば、英文が原則的に〔名詞 動詞 名詞 動詞 ・・・〕という構造になるのは当然のことになります）》
1-9-1〔・・動詞 名詞 動詞・・〕の名詞は次の動詞の主語になっています
たとえば、I noticed a police car cruising the street making an announcement in Japanese and English.［パトカーが通りを巡回しながら、日本語と英語でアナウンスを流しているのに気づきました］という文は、文?I noticed a police car.と?The police car was cruising the street.と?The police car was making an announcement in Japanese and English.をつないだ文になっています。
元の文はこの３つの文から重複している〔a (the) police car〕と無くても文意が理解できるbe動詞（was）を削除しただけですから、その基本構造は〔名詞 動詞 名詞 動詞 名詞 動詞、名詞〕であり、名詞は次の動詞の主語になっています。但し、３つ目の動詞makingの主語は直前の〔the street〕ではなく、元の文を見ればわかるように〔a police car〕［パトカー］です。
また、The doctor’s careful treatment of the patient brought about her quick recovery.［医師が患者をよく診てくれたおかげで患者は直ちに快復した］という文の動詞はbroughtひとつだけですが、動詞がもとになった名詞treatmentとrecoveryを動詞と見なせば、〔名詞 動詞 名詞 動詞 名詞 動詞〕という基本構造であり、名詞はいずれも次の動詞の主語になっています。
同様に、I think Yoko may disagree with your description of cosmetics and handbags as “nonessential.”［化粧品やハンドバッグは「なくても困らない」という、あなたの表現に洋子は異議を唱えるかも知れません］という文の後半は、You descrive cosmetics and handbags as “nonessential.”を名詞化した文ですから、〔名詞 動詞 名詞 動詞 名詞 動詞 名詞〕という基本構造であり、名詞はいずれも次の動詞の主語になっています。
1-9-2 拡張の結果〔・・名詞 名詞・・〕となることも起きます
1-2-1-2節で紹介したように、名詞が連続して並んでいる場合は、〔名詞（have動詞）名詞〕または〔名詞（be動詞）名詞〕のように、文意からするとその間にhave動詞またはbe動詞が省略されているわけですから、本質的には常に〔名詞(主語) 動詞 名詞 動詞・・・〕となっていることになります。
興味深いことに単純な文においても、たとえばMy boss angrily tore up my resignation letter.［上司はカンカンになって私の辞表を引きちぎった］という文には、be動詞（was）が存在しているかのように、つまりMy boss was angry.［上司は怒った］という文意を感じるそうです。
ですから、〔・・名詞 名詞・・〕という語順は、本来であれば名詞の間に存在したhave動詞やbe動詞が、それが無くてもわかることから省略されてあたりまえになってしまった文であると考えることができます。
1-9-3 拡張の結果〔・・名詞 動詞・・〕の名詞が次の動詞の主語でないことも起きます
たとえば、The staff at a small hotel have a smaller group of guests to keep track of and can offer better security and service.［小さいホテルのほうが、スタッフが目を配るべき宿泊客の数が少ないですし、より良い警備とサービスを提供できるということです］の前半部分The staff at a small hotel have a smaller group of guests to keep track of.は、〔名詞 動詞 名詞 動詞〕の形になっていますが、「目を配る」のはスタッフであるのにも関わらず、〔a smaller group of guests to keep track of〕と「宿泊客」が目を配るような形になっています。
元の文の前半部分は、文?The staff at a small hotel have a smaller group of guests.と?The staff at a small hotel keep track of a smaller group of guests.から重複する語や無くてもわかる語を削除し、動詞keepを〔to 原形〕の形〔to keep〕にしてつないだ文です。
つまり、文をつなぐ原則を拡張して〔to 原形〕の形にも適用した結果、原則通りの語順〔名詞 動詞 名詞 動詞〕ではあっても、〔名詞 動詞〕の名詞〔a smaller group of guests〕が動詞keepの主語ではない場合が生まれてくるわけです。
同様に、They‘re not giving themselves any time to absorb and analyze the content of the lecture.［彼らは、講義の内容を吸収したり分析したりする時間を自らなくしているわけですからね］という文でも、動詞absorbの主語は直前の〔any time〕ではなくて、文頭のTheyですが、これは元の文が、?They‘re not giving themselves any time.と?They absorb and analyze the content of the lecture.から重複する語Theyを削除し、動詞absorbを〔to 原形〕の形〔to absorb〕にしてつないだ文だからです。
1-9-4 拡張の結果〔・・動詞 動詞・・〕となることも起きます
動詞を〔to 原形〕の形にして文をつなぐ方法を採用すると、1-9-3節で紹介したように、名詞が次の動詞の主語でないことがあるだけでなく、文の基本構造が〔名詞 動詞 動詞〕のように、動詞が連続してしまうことも起きます。
たとえば、(a) It seems that Susan is a very sensible person.［スーザンはとても分別のある人のようだ］という文で、Susanを文頭に出してItと接続詞thatを省略し、動詞isを〔to be〕の形にしてつなぐと、(b) Susan seems to be a very sensible person.となりますが、この文の基本構造は、〔名詞 動詞 動詞 名詞〕と動詞が２つ並んだ変則的な形をしています。
一般に〔動詞 to 動詞〕は、〔動詞 something to 動詞〕からsomething（文意から容易に推定できる名詞相当語）が省略された形であると考えると理解しやすくなります。
たとえば、The idea was to simulate retirement.［引退後の生活をシミュレートするというのが、ねらいでした］では、〔was to simulate〕を〔was something to simulate〕と考えます。この場合には、something＝peopleであって、The idea was that people simulated retirement.であったとするのが自然でしょう。あるいはSorry, I have to go now.［悪いけれど、もう行かなくては］では、〔have to go〕を〔have something to go〕であると考えます。
そのように考えると、語順が〔動詞 名詞 動詞〕と原則的になるだけでなく、たとえばThe idea was to simulate retirement.［引退後の生活をシミュレートするというのが、ねらいでした］で、「いつを基準に語っているのか」を示す動詞was（過去形です）と「語っている内容はいつのことか」を示す動詞である原形のsimulate（原形は、観念的で仮定的な世界を表現するので未来のニュアンスがあります）が「現在の時点」を素通りして、つまり「過去の時点」と「未来の時点」が「現在の時点」を経ずに直接toを介してつながるという論理的な矛盾も回避できます。
《新々英文解釈研究（復刻版）山崎貞 研究社（2008）によれば、I heard him say so.［彼がそういうのを聞いた］という形ではなく、I often heard say so.［世間の人がそういうのをよく聞いた］という形があるが、この場合にはhearの次にpeopleなどという語が省略されている》
《英語構文を探求する 大庭幸男 開拓社（2011）によれば、統語論ではThey decided PRO to sink the boat.［彼らはその船を沈めることに決めた］のように、動詞sinkの発音されない主語としてPROという概念を導入します。PROは意味解釈上、先行する表現と同じ人や物を指すので、PRO＝Theyとなります。PROの機能は代名詞と同じですが、代名詞は発音されるのに対してPROは発音されないという違いがあります》
たとえば、The staff at a small hotel have a smaller group of guests to keep track of and can offer better security and service.［小さいホテルのほうが、スタッフが目を配るべき宿泊客の数が少ないですし、より良い警備とサービスを提供できるということです］の前半部分The staff at a small hotel have a smaller group of guests to keep track of.は、〔名詞 動詞 名詞 動詞〕の形になっていますが、「目を配る」のはスタッフであるのにも関わらず、〔a smaller group of guests to keep track of〕と「宿泊客」が目を配るような形になっています。
元の文の前半部分は、文?The staff at a small hotel have a smaller group of guests.と?The staff at a small hotel keep track of a smaller group of guests.から重複する語や無くてもわかる語を削除し、動詞keepを〔to 原形〕の形〔to keep〕にしてつないだ文です。
つまり、文をつなぐ原則を拡張して〔to 原形〕の形にも適用した結果、原則通りの語順〔名詞 動詞 名詞 動詞〕ではあっても、〔名詞 動詞〕の名詞〔a smaller group of guests〕が動詞keepの主語ではない場合が生まれてくるわけです。
同様に、They‘re not giving themselves any time to absorb and analyze the content of the lecture.［彼らは、講義の内容を吸収したり分析したりする時間を自らなくしているわけですからね］という文でも、動詞absorbの主語は直前の〔any time〕ではなくて、文頭のTheyですが、これは元の文が、?They‘re not giving themselves any time.と?They absorb and analyze the content of the lecture.から重複する語Theyを削除し、動詞absorbを〔to 原形〕の形〔to absorb〕にしてつないだ文だからです。
1-9-4 拡張の結果〔・・動詞 動詞・・〕となることも起きます
動詞を〔to 原形〕の形にして文をつなぐ方法を採用すると、1-9-3節で紹介したように、名詞が次の動詞の主語でないことがあるだけでなく、文の基本構造が〔名詞 動詞 動詞〕のように、動詞が連続してしまうことも起きます。
たとえば、(a) It seems that Susan is a very sensible person.［スーザンはとても分別のある人のようだ］という文で、Susanを文頭に出してItと接続詞thatを省略し、動詞isを〔to be〕の形にしてつなぐと、(b) Susan seems to be a very sensible person.となりますが、この文の基本構造は、〔名詞 動詞 動詞 名詞〕と動詞が２つ並んだ変則的な形をしています。
一般に〔動詞 to 動詞〕は、〔動詞 something to 動詞〕からsomething（文意から容易に推定できる名詞相当語）が省略された形であると考えると理解しやすくなります。
たとえば、The idea was to simulate retirement.［引退後の生活をシミュレートするというのが、ねらいでした］では、〔was to simulate〕を〔was something to simulate〕と考えます。この場合には、something＝peopleであって、The idea was that people simulated retirement.であったとするのが自然でしょう。あるいはSorry, I have to go now.［悪いけれど、もう行かなくては］では、〔have to go〕を〔have something to go〕であると考えます。
そのように考えると、語順が〔動詞 名詞 動詞〕と原則的になるだけでなく、たとえばThe idea was to simulate retirement.［引退後の生活をシミュレートするというのが、ねらいでした］で、「いつを基準に語っているのか」を示す動詞was（過去形です）と「語っている内容はいつのことか」を示す動詞である原形のsimulate（原形は、観念的で仮定的な世界を表現するので未来のニュアンスがあります）が「現在の時点」を素通りして、つまり「過去の時点」と「未来の時点」が「現在の時点」を経ずに直接toを介してつながるという論理的な矛盾も回避できます。
《新々英文解釈研究（復刻版）山崎貞 研究社（2008）によれば、I heard him say so.［彼がそういうのを聞いた］という形ではなく、I often heard say so.［世間の人がそういうのをよく聞いた］という形があるが、この場合にはhearの次にpeopleなどという語が省略されている》
《英語構文を探求する 大庭幸男 開拓社（2011）によれば、統語論ではThey decided PRO to sink the boat.［彼らはその船を沈めることに決めた］のように、動詞sinkの発音されない主語としてPROという概念を導入します。PROは意味解釈上、先行する表現と同じ人や物を指すので、PRO＝Theyとなります。PROの機能は代名詞と同じですが、代名詞は発音されるのに対してPROは発音されないという違いがあります》
1-9-5 省略の結果〔・・名詞 名詞・・〕となることもあります
たとえば、She found that her “topless” students scored an average of 11 percent higher on an exam she gave her class.［自分のクラスの学生におこなった試験で「トップレス」（ラップトップパソコンを持って来ない）の学生の方が平均して11パーセント得点が高いことがわかりました］では、〔an exam〕とsheの２つの名詞が並んでいます。それは単に、その間にあった接続詞thatが省略されたためですが、こうした省略が起きるのは、短い文に接続詞を使うと何かもったいぶったように感じること、および文頭で〔She found that〕と接続詞thatを使ったので、その重複感を嫌ったからでしょう。
1-9-6 動詞の代わりに名詞を使って〔・・名詞 名詞・・〕となる文もあります
1-9-1節で紹介したように、The doctor’s careful treatment of the patient brought about her quick recovery.［医師が患者をよく診てくれたおかげで患者は直ちに快復した］では、動詞がもとになった名詞treatmentとrecoveryを動詞と見なせば〔名詞 動詞 名詞 動詞 名詞 動詞〕のように原則通りの語順になりますが、そう見なさないと〔名詞 名詞 名詞 動詞 名詞 名詞〕ですから、名詞が連続していることになります。
同様に、I think Yoko may disagree with your description of cosmetics and handbags as “nonessential.”［化粧品やハンドバッグは「なくても困らない」という、あなたの表現に洋子は異議を唱えるかも知れません］においても、descriptionは名詞なので〔名詞 動詞 名詞 動詞 名詞 名詞 名詞〕という基本構造であり、名詞が連続しています。
たとえば、She found that her “topless” students scored an average of 11 percent higher on an exam she gave her class.［自分のクラスの学生におこなった試験で「トップレス」（ラップトップパソコンを持って来ない）の学生の方が平均して11パーセント得点が高いことがわかりました］では、〔an exam〕とsheの２つの名詞が並んでいます。それは単に、その間にあった接続詞thatが省略されたためですが、こうした省略が起きるのは、短い文に接続詞を使うと何かもったいぶったように感じること、および文頭で〔She found that〕と接続詞thatを使ったので、その重複感を嫌ったからでしょう。
1-9-6 動詞の代わりに名詞を使って〔・・名詞 名詞・・〕となる文もあります
1-9-1節で紹介したように、The doctor’s careful treatment of the patient brought about her quick recovery.［医師が患者をよく診てくれたおかげで患者は直ちに快復した］では、動詞がもとになった名詞treatmentとrecoveryを動詞と見なせば〔名詞 動詞 名詞 動詞 名詞 動詞〕のように原則通りの語順になりますが、そう見なさないと〔名詞 名詞 名詞 動詞 名詞 名詞〕ですから、名詞が連続していることになります。
同様に、I think Yoko may disagree with your description of cosmetics and handbags as “nonessential.”［化粧品やハンドバッグは「なくても困らない」という、あなたの表現に洋子は異議を唱えるかも知れません］においても、descriptionは名詞なので〔名詞 動詞 名詞 動詞 名詞 名詞 名詞〕という基本構造であり、名詞が連続しています。
1-9-7 英語は文頭から理解します
単語は、相手に伝えたい（重要で、強調したい）順に並んでいるので、文末からではなく、文頭から順に読まないと正しく理解できません。
たとえば、以下の文(a)、(b)、(c)は副詞frequentlyの位置が違うだけで、そのニュアンスが異なります。こうしたニュアンスの違いは、文頭から理解していけば自然に把握できます。
(a) Someone got drunk frequently.［誰か（ある特定の人物）がしばしば酔っぱらった］
(b) Frequently, someone got drunk.［しばしば誰か（不特定の人物）が酔っぱらった］
(c) Someone frequently got drunk.（上記のどちらの意味にも解釈できる）
また、以下の文(a)と(b)はニュアンスが違いますが、文末から訳すと同じ訳にならざるを得ません。
(a) I was angry at Mary’s getting married.［私はメアリが結婚したことを怒っていた］
(b) I was angry at Mary getting married.［私はメアリを彼女が結婚したので怒っていた］
文(a)では、怒りの対象がメアリの結婚ですが、文(b)では、怒りの対象がメアリ自身です。文頭から訳すと、文(a)は［私は怒っていた、メアリが結婚したことを］となり、文(b)は［私は怒っていた、メアリを、メアリは結婚した］となって、両者の違いがわかります。
複雑な文では、文末から訳そうとすると混乱します。たとえばThis reminds me of the incredible runaround I experienced last year when the airline I used when I flew to Denver lost my luggage.［それで思い出したのですが、去年デンバーへ行った時のこと、私の荷物を紛失したにもかかわらず、航空会社の対応はその場しのぎのとんでもないものだったという経験があります］や、動詞がたくさんつながったMailboxes that are underused are being junked in dumps by the thousands.［利用者が少ない郵便ポストは、数千個単位でどさっと廃棄されていますね］といった文です。
こうした文では、たとえば、Just be sure you don’t eat so much that you can’t fit into your seat on the plane on your return flight.［食べ過ぎて帰りの飛行機の座席に座れなくなったりしないよう、気をつけて下さいね］で、〔Just be sure〕→〔you don’t eat〕→〔so much〕→〔that you can’t fit into your seat〕のように順に理解していかないと意味が把握できません。
また、いわゆる『倒置構文』でもわかりにくくなるでしょう。たとえば、Never have I seen such a beautiful scene.［そんなに美しい景色を見たことがない］は、Never［決してそんなことはないよ！］→〔have I seen〕［私が見た状態で持っている！］→〔such a beautiful scene〕［そんなに美しい景色］と順に理解していくと、そう言いたかった話し手の気持ちも同時に把握できます。
《英語脳の鍛え方 金子光茂、リチャードＨ.シンプソン 南雲堂（2010）によれば、英文は語順どおりに頭から訳すことが大事で、言いたいことや重要な伝達情報をまっ先にズバリ言ってしまうというのが英語の特性だからです》
《英語のしくみと訳しかた 真野泰 研究社（2010）によれば、一言で言えば直訳に毛が生えたような意訳、毛はうっすらと生えた程度で原文の頭の格好が透けて見えるような、けれども独り立ちした文章として読める訳文を書きたい。力不足でそれができないときに限り、やむを得ず思い切った意訳に踏み切る。原文で４つの情報が?→?→?→?と出てきたら、特段の事情のない限り訳文でもその順を守りたい。文の数は守れないだろうが、むやみに切りたくはない。翻訳することによって失われるものを最小限にとどめるのと同時に、翻訳することによってくっついてしまうものも最小限にとどめたい》
単語は、相手に伝えたい（重要で、強調したい）順に並んでいるので、文末からではなく、文頭から順に読まないと正しく理解できません。
たとえば、以下の文(a)、(b)、(c)は副詞frequentlyの位置が違うだけで、そのニュアンスが異なります。こうしたニュアンスの違いは、文頭から理解していけば自然に把握できます。
(a) Someone got drunk frequently.［誰か（ある特定の人物）がしばしば酔っぱらった］
(b) Frequently, someone got drunk.［しばしば誰か（不特定の人物）が酔っぱらった］
(c) Someone frequently got drunk.（上記のどちらの意味にも解釈できる）
また、以下の文(a)と(b)はニュアンスが違いますが、文末から訳すと同じ訳にならざるを得ません。
(a) I was angry at Mary’s getting married.［私はメアリが結婚したことを怒っていた］
(b) I was angry at Mary getting married.［私はメアリを彼女が結婚したので怒っていた］
文(a)では、怒りの対象がメアリの結婚ですが、文(b)では、怒りの対象がメアリ自身です。文頭から訳すと、文(a)は［私は怒っていた、メアリが結婚したことを］となり、文(b)は［私は怒っていた、メアリを、メアリは結婚した］となって、両者の違いがわかります。
複雑な文では、文末から訳そうとすると混乱します。たとえばThis reminds me of the incredible runaround I experienced last year when the airline I used when I flew to Denver lost my luggage.［それで思い出したのですが、去年デンバーへ行った時のこと、私の荷物を紛失したにもかかわらず、航空会社の対応はその場しのぎのとんでもないものだったという経験があります］や、動詞がたくさんつながったMailboxes that are underused are being junked in dumps by the thousands.［利用者が少ない郵便ポストは、数千個単位でどさっと廃棄されていますね］といった文です。
こうした文では、たとえば、Just be sure you don’t eat so much that you can’t fit into your seat on the plane on your return flight.［食べ過ぎて帰りの飛行機の座席に座れなくなったりしないよう、気をつけて下さいね］で、〔Just be sure〕→〔you don’t eat〕→〔so much〕→〔that you can’t fit into your seat〕のように順に理解していかないと意味が把握できません。
また、いわゆる『倒置構文』でもわかりにくくなるでしょう。たとえば、Never have I seen such a beautiful scene.［そんなに美しい景色を見たことがない］は、Never［決してそんなことはないよ！］→〔have I seen〕［私が見た状態で持っている！］→〔such a beautiful scene〕［そんなに美しい景色］と順に理解していくと、そう言いたかった話し手の気持ちも同時に把握できます。
《英語脳の鍛え方 金子光茂、リチャードＨ.シンプソン 南雲堂（2010）によれば、英文は語順どおりに頭から訳すことが大事で、言いたいことや重要な伝達情報をまっ先にズバリ言ってしまうというのが英語の特性だからです》
《英語のしくみと訳しかた 真野泰 研究社（2010）によれば、一言で言えば直訳に毛が生えたような意訳、毛はうっすらと生えた程度で原文の頭の格好が透けて見えるような、けれども独り立ちした文章として読める訳文を書きたい。力不足でそれができないときに限り、やむを得ず思い切った意訳に踏み切る。原文で４つの情報が?→?→?→?と出てきたら、特段の事情のない限り訳文でもその順を守りたい。文の数は守れないだろうが、むやみに切りたくはない。翻訳することによって失われるものを最小限にとどめるのと同時に、翻訳することによってくっついてしまうものも最小限にとどめたい》
1-10 英語は接続詞を導入すれば複数の文をそのままつなげます
接続詞には文をつなぐ機能があるので、接続詞を導入すればひとつの文に「いつを基準にして語っているのか」を示す複数の動詞を使うことができます。しかし、1-6-3節で紹介したように、厳密な意味では「いつを基準にして語っているのか」を表す動詞はひとつです。
接続詞にはand、but、or、if、as、that、whether、while、till、since、after、becauseなどがあり、その意味や使い方はそれぞれの単語が持っている基本イメージによって決まります。
たとえば、接続詞thatを導入した場合は、I heard the news that our team had won.［私はそのニュースを聞いた、それというのは、我々のチームが勝ったということだった］、I don’t think that she is happy.［私はそうは思わない、それというのは、彼女が幸せだということだ］、The trouble is that we have no money.［問題はそのことだ、それというのは、我々はお金を持っていないということだ］などのようになります。
なお、たとえばI know that he will do it all right.［私はそれを知っている、それというのは、彼がそれをちゃんとやるということだ］のような文では、接続詞thatが省略できて、I know he will do it all right.とすることができると説明されることが多いのですが、この文はHe will do it all right, I know.とすることも可能だそうですから、thatを省略すると文のニュアンスが変わることになります。つまり、接続詞も他の単語と同じように、省略すれば必ず文のニュアンスが変わることに注意する必要があります。
1-10-1 同じ役割を持った接続詞を２つ連続して並べることはできません
ふたつ文をつなぐ機能を持った接続詞は、それが同じ役割であればひとつで十分ですから２つ連続して並ぶことはあり得ません。もちろん２つの接続詞の役割が異なれば、連続して並べることができます。
たとえば、It’s natural to worry that if you don’t go in, the work won’t get done.［会社に行かないと仕事が終わらないのではないか、と心配するのは当然のことです］では、〔that if〕と２つの接続詞が並んでいますが、thatは〔It’s natural to worry〕と〔if you don’t go in, the work won’t get done〕をつないでおり、一方ifは〔you don’t go in〕と〔the work won’t get done〕をつないでいるので、thatとifの役割が異なっており、接続詞が２つ連続して並んでいても良いことになります。
《英語教師のための英文法 吉田正治 研究社出版（1995）によれば、古い英語では〔this book of which that I make mencion(=mention)〕のように、『関係代名詞』（接続詞）のwhichとthatが連続して並ぶことがあった》
接続詞には文をつなぐ機能があるので、接続詞を導入すればひとつの文に「いつを基準にして語っているのか」を示す複数の動詞を使うことができます。しかし、1-6-3節で紹介したように、厳密な意味では「いつを基準にして語っているのか」を表す動詞はひとつです。
接続詞にはand、but、or、if、as、that、whether、while、till、since、after、becauseなどがあり、その意味や使い方はそれぞれの単語が持っている基本イメージによって決まります。
たとえば、接続詞thatを導入した場合は、I heard the news that our team had won.［私はそのニュースを聞いた、それというのは、我々のチームが勝ったということだった］、I don’t think that she is happy.［私はそうは思わない、それというのは、彼女が幸せだということだ］、The trouble is that we have no money.［問題はそのことだ、それというのは、我々はお金を持っていないということだ］などのようになります。
なお、たとえばI know that he will do it all right.［私はそれを知っている、それというのは、彼がそれをちゃんとやるということだ］のような文では、接続詞thatが省略できて、I know he will do it all right.とすることができると説明されることが多いのですが、この文はHe will do it all right, I know.とすることも可能だそうですから、thatを省略すると文のニュアンスが変わることになります。つまり、接続詞も他の単語と同じように、省略すれば必ず文のニュアンスが変わることに注意する必要があります。
1-10-1 同じ役割を持った接続詞を２つ連続して並べることはできません
ふたつ文をつなぐ機能を持った接続詞は、それが同じ役割であればひとつで十分ですから２つ連続して並ぶことはあり得ません。もちろん２つの接続詞の役割が異なれば、連続して並べることができます。
たとえば、It’s natural to worry that if you don’t go in, the work won’t get done.［会社に行かないと仕事が終わらないのではないか、と心配するのは当然のことです］では、〔that if〕と２つの接続詞が並んでいますが、thatは〔It’s natural to worry〕と〔if you don’t go in, the work won’t get done〕をつないでおり、一方ifは〔you don’t go in〕と〔the work won’t get done〕をつないでいるので、thatとifの役割が異なっており、接続詞が２つ連続して並んでいても良いことになります。
《英語教師のための英文法 吉田正治 研究社出版（1995）によれば、古い英語では〔this book of which that I make mencion(=mention)〕のように、『関係代名詞』（接続詞）のwhichとthatが連続して並ぶことがあった》
1-11 英語のコンマ類は同格関係を表します
英文のコンマ類は、原則としてすべて同格関係を表現するので、基本的には［すなわち］という意味になります。従って、日本語の読点（文を読みやすくするために使う記号「、」）と同じように、意味さえ通ればどこに付けても良いということはありません。
コンマ（,）の基本的な用法は、同じ範疇に属するいくつかの項目が続いて出てきた時に、それを区切ることです。従って、コンマ（,）を使って区切ることができるためには、それらの項目が同格であることが前提になります。
たとえば、Jay’s father, who was born in Borneo, is a math teacher.［ジェイの父親は、ボルネオで生まれたのだが、数学の教師だ］では、挿入句〔who was born in Borneo〕の前と後をコンマ（,）でくくって〔Jay’s father〕と同格であることを示しています。
これを文に拡張して、たとえば、The sun is shining, the birds are singing.［太陽は輝き、小鳥たちは鳴いている］のように、同格のイメージがあって互いに形の似ている非常に短い文同士をつなぐ時にも、コンマ（,）が使われます。こうした同格文では、複数の単純な文が「同格」の文として並んでいるのですから、「いつを基準にして語っているのか」を示す動詞や助動詞が複数あっても良いことになります。
なお、複数の形容詞、名詞、副詞などを並べる場合は、いくつか並べた最後の単語の前にandを入れても入れなくても良く、andを入れた場合もその前にコンマがあってもなくても良いことになっています。そのほか、YesやNo、住所の区切り、手紙の書き出し、数字の桁の後にも使います。
また、副詞的な語句の前や後にも使いますが、コンマの有無によって意味が変わります。たとえば、In no clothes does Miss A look pretty.は［どんな服を着ていてもAさんはかわいく見えない］という意味ですが、In no clothes, Miss A looks pretty.は［服を着ていないと（裸であれば）Aさんはかわいく見える］という意味になるそうです。
ですから、同格ではあってもコンマを使うと意味が強くなり過ぎる場合には、You students should study much harder at school.［君たち学生は学校でもっと熱心に勉強すべきだ］の〔You students〕のようにコンマを使いません。また〔her best friend Lisa〕［彼女の親友のリサ］のように、名詞が形容詞として使われている場合もコンマを使いません。
セミコロン（；）は、コンマ（,）とピリオド（.）の中間の役割（コンマより強くピリオドより弱い途切れを表す役割）を果たし、ひとつの項目の中にすでにコンマが使われている時に、さらに項目どうしを区切るために使います。
たとえば、Mr. Starks, the science teacher; Mr. Mason, the math teacher; and my father held a long discussion.［科学のスタークス先生、数学のメイソン先生、そして僕の父が、長い話し合いをした］のようです。
また、コンマの場合と同様に、拡張して文をつなぐこともできます。たとえば、We had no money; we decided to stay home.［私たちにはお金がない、だから家にいることにした］やHelen agreed with our plan; Michael opposed it violently.［ヘレンは私たちの計画に同意した、マイケルは激しく反対した］のようです。
コロン（：）は、その後に続く内容が前の内容と密接に結びついていることを示し、大抵の場合、コロンの後の部分は前の部分をより詳しく説明します。
たとえば、The company offered many benefits, but it did not offer what everyone wanted: a pay raise.［その会社は多くの手当を支給したが、みんなの望んでいたもの、つまり昇給はなかった］のようです。
コロンも拡張されて文をつなぐことができます。たとえば、There was only one problem: they didn’t have any money.［ただ１つ問題があった。彼らにはまったくお金がなかった］のようです。
英文のコンマ類は、原則としてすべて同格関係を表現するので、基本的には［すなわち］という意味になります。従って、日本語の読点（文を読みやすくするために使う記号「、」）と同じように、意味さえ通ればどこに付けても良いということはありません。
コンマ（,）の基本的な用法は、同じ範疇に属するいくつかの項目が続いて出てきた時に、それを区切ることです。従って、コンマ（,）を使って区切ることができるためには、それらの項目が同格であることが前提になります。
たとえば、Jay’s father, who was born in Borneo, is a math teacher.［ジェイの父親は、ボルネオで生まれたのだが、数学の教師だ］では、挿入句〔who was born in Borneo〕の前と後をコンマ（,）でくくって〔Jay’s father〕と同格であることを示しています。
これを文に拡張して、たとえば、The sun is shining, the birds are singing.［太陽は輝き、小鳥たちは鳴いている］のように、同格のイメージがあって互いに形の似ている非常に短い文同士をつなぐ時にも、コンマ（,）が使われます。こうした同格文では、複数の単純な文が「同格」の文として並んでいるのですから、「いつを基準にして語っているのか」を示す動詞や助動詞が複数あっても良いことになります。
なお、複数の形容詞、名詞、副詞などを並べる場合は、いくつか並べた最後の単語の前にandを入れても入れなくても良く、andを入れた場合もその前にコンマがあってもなくても良いことになっています。そのほか、YesやNo、住所の区切り、手紙の書き出し、数字の桁の後にも使います。
また、副詞的な語句の前や後にも使いますが、コンマの有無によって意味が変わります。たとえば、In no clothes does Miss A look pretty.は［どんな服を着ていてもAさんはかわいく見えない］という意味ですが、In no clothes, Miss A looks pretty.は［服を着ていないと（裸であれば）Aさんはかわいく見える］という意味になるそうです。
ですから、同格ではあってもコンマを使うと意味が強くなり過ぎる場合には、You students should study much harder at school.［君たち学生は学校でもっと熱心に勉強すべきだ］の〔You students〕のようにコンマを使いません。また〔her best friend Lisa〕［彼女の親友のリサ］のように、名詞が形容詞として使われている場合もコンマを使いません。
セミコロン（；）は、コンマ（,）とピリオド（.）の中間の役割（コンマより強くピリオドより弱い途切れを表す役割）を果たし、ひとつの項目の中にすでにコンマが使われている時に、さらに項目どうしを区切るために使います。
たとえば、Mr. Starks, the science teacher; Mr. Mason, the math teacher; and my father held a long discussion.［科学のスタークス先生、数学のメイソン先生、そして僕の父が、長い話し合いをした］のようです。
また、コンマの場合と同様に、拡張して文をつなぐこともできます。たとえば、We had no money; we decided to stay home.［私たちにはお金がない、だから家にいることにした］やHelen agreed with our plan; Michael opposed it violently.［ヘレンは私たちの計画に同意した、マイケルは激しく反対した］のようです。
コロン（：）は、その後に続く内容が前の内容と密接に結びついていることを示し、大抵の場合、コロンの後の部分は前の部分をより詳しく説明します。
たとえば、The company offered many benefits, but it did not offer what everyone wanted: a pay raise.［その会社は多くの手当を支給したが、みんなの望んでいたもの、つまり昇給はなかった］のようです。
コロンも拡張されて文をつなぐことができます。たとえば、There was only one problem: they didn’t have any money.［ただ１つ問題があった。彼らにはまったくお金がなかった］のようです。
ダッシュ（−）は、コンマよりも強い区切りを表しますが、コロン（：）ほど改まってはいないため、コロン（：）やコンマ（,）が使いにくい場合に限って使うと良いそうです。
たとえば、All sorts of people−students, housewives, office workers taking the day off, the merely curious, and others−showed up for the demonstration.［あらゆる人々−学生、主婦、休暇を取った会社員、単なる野次馬、その他の人々−がデモに参加した］、あるいはFree time, a good book, a comfortable chair−these are all I need to be happy.［自由時間、よい書物、座り心地のいい椅子−それさえあれば私は幸せだ］のように、同格語がいくつも続く時に読みやすくするために使われます。
また、Mrs. Blandish−your mother will remember her−came to see me the other day.［ブランディッシュ夫人−あなたのお母様は覚えておいででしょう−が先日私に会いにきました］といった使い方もします。
なお、コンマの用法をさらに拡張すると同格文のひとつである『付加疑問文』ができます。『付加疑問文』は、たとえばBob came here.［ボブはここに来ました］に対して、Didn’t he come here?［彼はここに来なかったのですか］のように、確認の気持ちを付け加える時に使います。
２つの文をコンマでつないで重複する単語を取り除くと、Bob came here, didn’t he?［ボブはここに来た、そうじゃなかったの］となり、「ボブがここに来た」ということに対する最終的な確認を相手に求めることができます。
一方、『付加疑問文』は、話し手の意図を聞き手に強引に分からせるといった反語的性格も持っており、時には詰問調に響くそうです。
たとえば、以下の文(a)や(b)のような肯定を肯定で、否定を否定で受ける『付加疑問文』は、聞き手の陳述に対する話し手の興味・関心・驚き・怒りといった感情を表し、(a)は上昇調で発音されて強い関心を、(b)は下降調で発音されて怒りを表しますが、とりわけ(b)は攻撃的に響くので注意が必要だそうです。
(a) So you’re getting married, are you? How nice!［で、結婚なさるわけね。まあすてき！］
(b) So you don’t like my cooking, don’t you?［で、私の料理がお嫌いってわけね］
たとえば、All sorts of people−students, housewives, office workers taking the day off, the merely curious, and others−showed up for the demonstration.［あらゆる人々−学生、主婦、休暇を取った会社員、単なる野次馬、その他の人々−がデモに参加した］、あるいはFree time, a good book, a comfortable chair−these are all I need to be happy.［自由時間、よい書物、座り心地のいい椅子−それさえあれば私は幸せだ］のように、同格語がいくつも続く時に読みやすくするために使われます。
また、Mrs. Blandish−your mother will remember her−came to see me the other day.［ブランディッシュ夫人−あなたのお母様は覚えておいででしょう−が先日私に会いにきました］といった使い方もします。
なお、コンマの用法をさらに拡張すると同格文のひとつである『付加疑問文』ができます。『付加疑問文』は、たとえばBob came here.［ボブはここに来ました］に対して、Didn’t he come here?［彼はここに来なかったのですか］のように、確認の気持ちを付け加える時に使います。
２つの文をコンマでつないで重複する単語を取り除くと、Bob came here, didn’t he?［ボブはここに来た、そうじゃなかったの］となり、「ボブがここに来た」ということに対する最終的な確認を相手に求めることができます。
一方、『付加疑問文』は、話し手の意図を聞き手に強引に分からせるといった反語的性格も持っており、時には詰問調に響くそうです。
たとえば、以下の文(a)や(b)のような肯定を肯定で、否定を否定で受ける『付加疑問文』は、聞き手の陳述に対する話し手の興味・関心・驚き・怒りといった感情を表し、(a)は上昇調で発音されて強い関心を、(b)は下降調で発音されて怒りを表しますが、とりわけ(b)は攻撃的に響くので注意が必要だそうです。
(a) So you’re getting married, are you? How nice!［で、結婚なさるわけね。まあすてき！］
(b) So you don’t like my cooking, don’t you?［で、私の料理がお嫌いってわけね］
1-11-1〔The 比較級【 】, the 比較級【 】〕は同格文です
この形の文には、【主語 述語】の中身の違いによって、以下のように、(a)【名詞 動詞 〜】、(b)【名詞 動詞】、(c)【名詞】、(d)【なし】という各基本型およびそれらの混合型があります。
(a) The longer I stayed there, the more I liked the place.［そこに長く滞在すればするほど、ますますその土地が気に入った］
(b) The more one has, the more one wants.［人は持てば持つほど、欲しくなる］
(c) The greater the investment gains, the higher the risks of the investment scheme.［大きな投資利益が見込まれるものほど、その投資計画にはより大きなリスクが伴います］
(d) The sooner, the better.［早ければ早いほうが良い］
文(a)の場合で説明すると、その誕生プロセスは以下のようになります。
?文(a)は、I stayed there longer than 〜.とI liked the place more than 〜.という２つの文からできています。
?比較級のlongerとmoreを一段と強調するために、一般に使われるmuchではなく副詞のtheを使います。形容詞theは拡張されて［それだけ、ますます］という意味を持った強調の副詞theとして使うことができるからです。
?強調文の原則に従って、強調した〔the 比較級〕を文頭に出すと、２つの文はそれぞれThe longer I stayed there than 〜.およびThe more I liked the place than 〜.となります。
?２つの文をコンマでつなぎ、類似した重複感のある語を削除してから同格文にすると、The longer I stayed there, the more I liked the place.［私はそこにますます長く滞在した、すなわち、私はますますその場所を好きになった］つまり［そこに長く滞在すればするほど、ますますその土地が気に入った］という文ができます。これは同格文ですから、ひとつの文に２つの動詞があっても構いません。
?同格文の基本は対称的な文構造ですから、理解さえできるならば主語や述語を省略しても違和感がありません。従って、(a)の形からそれらを省略した(b)、(c)、(d)のような形が成立するわけです。ですから、たとえば文(b)の原則的な日本語訳は［人はますます多く持つ、すなわち、人はますます欲しくなる］となります。これをなめらかに表現すれば上記のような日本語訳になるわけです。
ところで、一般に強い意味を持った形容詞はveryではなく、muchやgreatlyやwellなどで強調するので、普通であれば比較級もmuchで修飾するはずですが、ここではなぜ副詞のtheを使うのでしょうか。このtheは、古英語（西暦450年〜1100年頃に使われた英語でOld Englishと呼ばれます）の生き残りであって、日本語の「で」にあたり、英語ではwithやbyにあたる「手段」を表す古い言葉だそうです。
ですから、こうした文では比較級を強調するためにtheを使うと覚えるほかありませんが、あえてtheの「手段」から「程度」への拡張プロセスを説明すれば、次のように言えるかも知れません。たとえば、「カードで有利に買えます」の「で」は手段を表し、「カードならば有利に買えます」の「ば」は仮定の条件を表します。「カードで買うほど有利になります」の「ほど」は程度を表します。つまり、「カードで有利に買えます」という内容の広がりの中に、「手段」、「仮定の条件」、「程度」という異なる表現が存在するのですから、theについても、「手段」から「程度」への意味の広がりがあっても不思議ではないでしょう。
なお、この同格文がさらに拡張されて、〔The 比較級〕が接続詞のように使われることもあるそうです。
《叙述と修飾 岸本秀樹、菊地朗 研究社（2008）によれば、〔The 比較級【 】, the 比較級【 】〕構文は、初めの文と後の文が並置文（parataxis）になっている。（Culicover and Jackendoff 2005）》
この形の文には、【主語 述語】の中身の違いによって、以下のように、(a)【名詞 動詞 〜】、(b)【名詞 動詞】、(c)【名詞】、(d)【なし】という各基本型およびそれらの混合型があります。
(a) The longer I stayed there, the more I liked the place.［そこに長く滞在すればするほど、ますますその土地が気に入った］
(b) The more one has, the more one wants.［人は持てば持つほど、欲しくなる］
(c) The greater the investment gains, the higher the risks of the investment scheme.［大きな投資利益が見込まれるものほど、その投資計画にはより大きなリスクが伴います］
(d) The sooner, the better.［早ければ早いほうが良い］
文(a)の場合で説明すると、その誕生プロセスは以下のようになります。
?文(a)は、I stayed there longer than 〜.とI liked the place more than 〜.という２つの文からできています。
?比較級のlongerとmoreを一段と強調するために、一般に使われるmuchではなく副詞のtheを使います。形容詞theは拡張されて［それだけ、ますます］という意味を持った強調の副詞theとして使うことができるからです。
?強調文の原則に従って、強調した〔the 比較級〕を文頭に出すと、２つの文はそれぞれThe longer I stayed there than 〜.およびThe more I liked the place than 〜.となります。
?２つの文をコンマでつなぎ、類似した重複感のある語を削除してから同格文にすると、The longer I stayed there, the more I liked the place.［私はそこにますます長く滞在した、すなわち、私はますますその場所を好きになった］つまり［そこに長く滞在すればするほど、ますますその土地が気に入った］という文ができます。これは同格文ですから、ひとつの文に２つの動詞があっても構いません。
?同格文の基本は対称的な文構造ですから、理解さえできるならば主語や述語を省略しても違和感がありません。従って、(a)の形からそれらを省略した(b)、(c)、(d)のような形が成立するわけです。ですから、たとえば文(b)の原則的な日本語訳は［人はますます多く持つ、すなわち、人はますます欲しくなる］となります。これをなめらかに表現すれば上記のような日本語訳になるわけです。
ところで、一般に強い意味を持った形容詞はveryではなく、muchやgreatlyやwellなどで強調するので、普通であれば比較級もmuchで修飾するはずですが、ここではなぜ副詞のtheを使うのでしょうか。このtheは、古英語（西暦450年〜1100年頃に使われた英語でOld Englishと呼ばれます）の生き残りであって、日本語の「で」にあたり、英語ではwithやbyにあたる「手段」を表す古い言葉だそうです。
ですから、こうした文では比較級を強調するためにtheを使うと覚えるほかありませんが、あえてtheの「手段」から「程度」への拡張プロセスを説明すれば、次のように言えるかも知れません。たとえば、「カードで有利に買えます」の「で」は手段を表し、「カードならば有利に買えます」の「ば」は仮定の条件を表します。「カードで買うほど有利になります」の「ほど」は程度を表します。つまり、「カードで有利に買えます」という内容の広がりの中に、「手段」、「仮定の条件」、「程度」という異なる表現が存在するのですから、theについても、「手段」から「程度」への意味の広がりがあっても不思議ではないでしょう。
なお、この同格文がさらに拡張されて、〔The 比較級〕が接続詞のように使われることもあるそうです。
《叙述と修飾 岸本秀樹、菊地朗 研究社（2008）によれば、〔The 比較級【 】, the 比較級【 】〕構文は、初めの文と後の文が並置文（parataxis）になっている。（Culicover and Jackendoff 2005）》
2 動詞をめぐるニュアンスの違い
動詞の形の分類表からもわかるように、動詞の原形は微妙な存在です。「とき」を明確には示さない動詞として仮定的なニュアンスを表し、事象を観念的に表現したり、現在の瞬間の事象を表現したりすることができる一方、形容詞のように振る舞ったり、古英語期から引き継いだ「名詞」的な性格、つまり安定した存在感もあるので、I saw him cross the street.には［私は彼がその通りを横切るのを「一部始終」見た］、つまり［私は、彼がその通りを端から端まで横切るのを最後まで見とどけた］というニュアンスもあります。
ところが、原形ではなく現在分詞を使うと、I saw him crossing the street.［私は彼がその通りを横切っているところを「その最中に」見た］、つまり［私は、彼がその通りを横切っているところをちらっと見かけた］というニュアンスになります。
現在分詞は、「現在〜し続けている」という現時点での行動や動作を表しているので、時間間隔が短く臨場感のあるイメージがあり、「現在〜し続けている」ということは「過去にも〜していた」はずですから、過去のニュアンスもあります。
一方、過去分詞は［〜された状態で］や［〜した状態で］という過去の状態を表します。現在分詞と過去分詞は動詞の形容詞形ですが、どの程度形容詞になっているのかは個々の語で異なります。つまり、動詞に近い場合には動詞のように振る舞い、形容詞に近い場合には形容詞のように振る舞うわけです。
以上のようなニュアンスの違いから、動詞自体の基本イメージとの関連で、文として原形、〔to 原形〕、現在分詞、過去分詞のどれがふさわしいのかという選択が必要になります。
たとえば、I do not choose to go to the gym.［ジムなんかに通いたくない］と言えますが、×I do not select to go to the gym.とは言えないそうです。動詞chooseは、［未来につながる選択をおこなう］場合に用いられるので、未来志向の〔to 原形〕を使うことができますが、動詞selectはそのような「未来志向」の意味合いを持たないので、未来志向の〔to 原形〕を使うことができないのです。
また、［女性の夜の一人歩きは危険だ］は、It is dangerous for women to walk alone at night.と言い、×It is dangerous that women walk alone at night.とは言えないそうです。〔to 原形〕には未来のイメージがあるので、最初の文は「女性が夜に一人歩きしたら」という仮定的なニュアンスを表現できますが、後の文は現在表現なので［女性は例外なく夜になると一人で習慣的に歩いているがそれは危険だ］という意味になってしまうそうです。
あるいは、〔play baseball〕とも〔practice baseball〕とも言えますが、fencingやswimmingのような〜ingの付くスポーツは、〔×play 〜ing〕とは言えないそうです。playは［試合やスポーツに競争的に参加する］という意味であり、一方practiceは［上達するまで繰り返し技術を磨くことに集中する］ですから、〜ingのイメージがplayに合わないのです。
一方、とくに練習する技術がないような場合、たとえばjoggingは〔×practice jogging〕とは言わずに〔go jogging〕と言いますが、深く技術がからんでくる武術の場合は〔Let’s practice karate〕［空手を練習しよう］のように、すべてpracticeを使います。
同じ［提案する］という動詞であっても、suggestは［控えめに勧める、提案して人に考えさせる、連想によって思い出させる］であり、proposeは［公式に提案する、受諾を求めて申し出る］です。ですから〔suggest 〜ing〕は、［〜し続けていたことを控えめに提案する、連想によって思い出させる］ということで問題ないのですが、〔×suggest to〕は［控えめに提案する、連想によって思い出させる］が［ずっと向き合って、〜する］ことになるので違和感があり、使われません。一方、〔propose 〜ing〕は、［〜し続けていたことを公式に提案する］ということなので問題なく、〔propose to〕も［公式に提案する］が［ずっと向き合って、〜する］とニュアンスに違和感がないので、いずれも使われます。
同様に、［物を差し出して受諾を求める］という意味の動詞offerの場合、〔×offer 〜ing〕は［〜し続けていたことを申し出る］ことになり、実行していないことを前提とする［申し出］がすでにおこなわれていることになってしまうので使われません。しかし、〔offer to〕ならば、［申し出る］が［ずっと向き合って、〜する］なので矛盾せず、使うことができます。
動詞finish［完了する］の場合は、〔finish 〜ing〕であれば［〜し続けていたことを終える］ので問題ありませんが、〔×finish to〕は［終える］が［ずっと向き合って、〜する］となり、奇妙なイメージとなるので使われません。
動詞の形の分類表からもわかるように、動詞の原形は微妙な存在です。「とき」を明確には示さない動詞として仮定的なニュアンスを表し、事象を観念的に表現したり、現在の瞬間の事象を表現したりすることができる一方、形容詞のように振る舞ったり、古英語期から引き継いだ「名詞」的な性格、つまり安定した存在感もあるので、I saw him cross the street.には［私は彼がその通りを横切るのを「一部始終」見た］、つまり［私は、彼がその通りを端から端まで横切るのを最後まで見とどけた］というニュアンスもあります。
ところが、原形ではなく現在分詞を使うと、I saw him crossing the street.［私は彼がその通りを横切っているところを「その最中に」見た］、つまり［私は、彼がその通りを横切っているところをちらっと見かけた］というニュアンスになります。
現在分詞は、「現在〜し続けている」という現時点での行動や動作を表しているので、時間間隔が短く臨場感のあるイメージがあり、「現在〜し続けている」ということは「過去にも〜していた」はずですから、過去のニュアンスもあります。
一方、過去分詞は［〜された状態で］や［〜した状態で］という過去の状態を表します。現在分詞と過去分詞は動詞の形容詞形ですが、どの程度形容詞になっているのかは個々の語で異なります。つまり、動詞に近い場合には動詞のように振る舞い、形容詞に近い場合には形容詞のように振る舞うわけです。
以上のようなニュアンスの違いから、動詞自体の基本イメージとの関連で、文として原形、〔to 原形〕、現在分詞、過去分詞のどれがふさわしいのかという選択が必要になります。
たとえば、I do not choose to go to the gym.［ジムなんかに通いたくない］と言えますが、×I do not select to go to the gym.とは言えないそうです。動詞chooseは、［未来につながる選択をおこなう］場合に用いられるので、未来志向の〔to 原形〕を使うことができますが、動詞selectはそのような「未来志向」の意味合いを持たないので、未来志向の〔to 原形〕を使うことができないのです。
また、［女性の夜の一人歩きは危険だ］は、It is dangerous for women to walk alone at night.と言い、×It is dangerous that women walk alone at night.とは言えないそうです。〔to 原形〕には未来のイメージがあるので、最初の文は「女性が夜に一人歩きしたら」という仮定的なニュアンスを表現できますが、後の文は現在表現なので［女性は例外なく夜になると一人で習慣的に歩いているがそれは危険だ］という意味になってしまうそうです。
あるいは、〔play baseball〕とも〔practice baseball〕とも言えますが、fencingやswimmingのような〜ingの付くスポーツは、〔×play 〜ing〕とは言えないそうです。playは［試合やスポーツに競争的に参加する］という意味であり、一方practiceは［上達するまで繰り返し技術を磨くことに集中する］ですから、〜ingのイメージがplayに合わないのです。
一方、とくに練習する技術がないような場合、たとえばjoggingは〔×practice jogging〕とは言わずに〔go jogging〕と言いますが、深く技術がからんでくる武術の場合は〔Let’s practice karate〕［空手を練習しよう］のように、すべてpracticeを使います。
同じ［提案する］という動詞であっても、suggestは［控えめに勧める、提案して人に考えさせる、連想によって思い出させる］であり、proposeは［公式に提案する、受諾を求めて申し出る］です。ですから〔suggest 〜ing〕は、［〜し続けていたことを控えめに提案する、連想によって思い出させる］ということで問題ないのですが、〔×suggest to〕は［控えめに提案する、連想によって思い出させる］が［ずっと向き合って、〜する］ことになるので違和感があり、使われません。一方、〔propose 〜ing〕は、［〜し続けていたことを公式に提案する］ということなので問題なく、〔propose to〕も［公式に提案する］が［ずっと向き合って、〜する］とニュアンスに違和感がないので、いずれも使われます。
同様に、［物を差し出して受諾を求める］という意味の動詞offerの場合、〔×offer 〜ing〕は［〜し続けていたことを申し出る］ことになり、実行していないことを前提とする［申し出］がすでにおこなわれていることになってしまうので使われません。しかし、〔offer to〕ならば、［申し出る］が［ずっと向き合って、〜する］なので矛盾せず、使うことができます。
動詞finish［完了する］の場合は、〔finish 〜ing〕であれば［〜し続けていたことを終える］ので問題ありませんが、〔×finish to〕は［終える］が［ずっと向き合って、〜する］となり、奇妙なイメージとなるので使われません。
〔to 原形〕を使ったHe forgot to mail the letter.という文は、［彼はその手紙を投函するのを忘れた］ですから手紙は投函されていませんが、He forgot mailing the letter.は［彼はその手紙を投函したことを忘れた］ですから手紙は投函されていることになります。なぜなら、前の文では［忘れた］と［投函する］が［向き合って］いるのですから、ずっと忘れていて投函しなかったことになるわけです。後の文は、手紙を［投函し続けている状態であることを忘れた］のですから、手紙は投函されていることになります。
以下の(a)と(b)の文は、同じ〔it is hard 〜〕という形ですが、(a)は次に〔to 原形〕が来るのに、(b)では次に現在分詞が来ています。
(a) It is hard to learn German.［ドイツ語を覚えるのは難しい］
(b) Well, it’s hard settling into a new job and community.［そうですね、新しい仕事や地域社会に慣れるのは大変です］
これも〔to 原形〕と現在分詞が持っているニュアンスが違うからであって、(a)の文は、ドイツ語を覚えるのは今も大変だが今後も大変だという感じであり、(b)の文は、新しい仕事などに慣れるのは大変だったし今も大変だが、それも遠からず終わるといった感じです。
同様に、以下の(a)は、［（その時まで別のことをしていて）それからさらに〜する］というニュアンスであり、(b)は［（その時までしていたことをそのまま）〜し続ける］というニュアンスです。
(a) He went on to point out their mistakes.［彼はさらに今度は彼らの間違いを指摘し始めた］
(b) He went on pointing out their mistakes.［彼は彼らの間違いを指摘し続けた］
以下の(a)と(b)の文では、(b)は現在分詞の［〜し続けている状態で］という意味とその過去のニュアンスで容易に理解することができますが、〔to 原形〕の(a)にはちょっと戸惑います。
(a) He stopped to smoke.［彼は立ち止まって（手を休めて）タバコを吸った］
(b) He stopped smoking.［彼はタバコを吸うのをやめた］
文(a)の〔stopped to smoke〕は［止めた、立ち止まった］［タバコを吸うことに向き合って］ですから、［ずっとタバコを吸うのを止めた］とも［立ち止まった］［タバコを吸うことにずっと向き合って］＝［立ち止まって、それからタバコを吸った］とも解釈できます。つまり、まったく逆の解釈が可能になるからです。
ここでもstopと〔to 原形〕のニュアンスについて考える必要があります。もしもstopを［止める］と解釈すると、toが持っている「ずっと」というニュアンスと矛盾してしまい、stopの「中断」のニュアンスがtoの「未来」のニュアンスと合わないのです。従って、文(a)のstopを［止める］と解釈することには無理があり、［立ち止まった］と解釈するほかないので、［立ち止まってタバコを吸った］という意味になるわけです。
さらに、I like cooking, but I don’t like to cook in a hurry.［私は料理が「一般的に」好きだが、急いで料理するのは好きではない］のように、現在分詞のcookingは一般的なことについて用いますが、〔to cook〕は特定の行為に用いるという傾向があるそうです。現在分詞には過去のイメージがあるので、過去のニュアンスがある日常的な行為に使われ、未来のイメージがある〔to 原形〕は、逆に特定の行為で使われるわけです。
過去分詞の使い方は比較的単純で、That broken vase is my grandfather’s.［あの壊れた花瓶は祖父のものです］、Look at the mountain covered with snow.［雪で覆われた山を見てごらんなさい］、I will have a new suit made.［新しいスーツを仕立ててもらおう］、あるいは〔fallen leaves〕［落ちた状態にある葉］＝［落ち葉］のようです。
《日本人に共通する英語のミス151 ジェイムズ・H・M・ウェブ ジャパンタイムズ（2006）によれば、格闘技にはI used to do judo, but now I’m learning karate.［昔は柔道をやっていましたが、今は空手を習っています］のように、playではなくdoやlearnを使います》
《100の超基本名詞で広がる英語コロケーション2500 クリストファ・バーナード プレイス（2010）によれば、競技場や運動する場所のあるスポーツをする場合は〔play sports〕と言う。特定の場所を持たない屋外スポーツの場合は〔go -ing〕という。〔practise archery〕と言うのは、アーチェリーが試合ではないからである。アーチェリーは練習を繰り返すことにより向上する技術である》
以下の(a)と(b)の文は、同じ〔it is hard 〜〕という形ですが、(a)は次に〔to 原形〕が来るのに、(b)では次に現在分詞が来ています。
(a) It is hard to learn German.［ドイツ語を覚えるのは難しい］
(b) Well, it’s hard settling into a new job and community.［そうですね、新しい仕事や地域社会に慣れるのは大変です］
これも〔to 原形〕と現在分詞が持っているニュアンスが違うからであって、(a)の文は、ドイツ語を覚えるのは今も大変だが今後も大変だという感じであり、(b)の文は、新しい仕事などに慣れるのは大変だったし今も大変だが、それも遠からず終わるといった感じです。
同様に、以下の(a)は、［（その時まで別のことをしていて）それからさらに〜する］というニュアンスであり、(b)は［（その時までしていたことをそのまま）〜し続ける］というニュアンスです。
(a) He went on to point out their mistakes.［彼はさらに今度は彼らの間違いを指摘し始めた］
(b) He went on pointing out their mistakes.［彼は彼らの間違いを指摘し続けた］
以下の(a)と(b)の文では、(b)は現在分詞の［〜し続けている状態で］という意味とその過去のニュアンスで容易に理解することができますが、〔to 原形〕の(a)にはちょっと戸惑います。
(a) He stopped to smoke.［彼は立ち止まって（手を休めて）タバコを吸った］
(b) He stopped smoking.［彼はタバコを吸うのをやめた］
文(a)の〔stopped to smoke〕は［止めた、立ち止まった］［タバコを吸うことに向き合って］ですから、［ずっとタバコを吸うのを止めた］とも［立ち止まった］［タバコを吸うことにずっと向き合って］＝［立ち止まって、それからタバコを吸った］とも解釈できます。つまり、まったく逆の解釈が可能になるからです。
ここでもstopと〔to 原形〕のニュアンスについて考える必要があります。もしもstopを［止める］と解釈すると、toが持っている「ずっと」というニュアンスと矛盾してしまい、stopの「中断」のニュアンスがtoの「未来」のニュアンスと合わないのです。従って、文(a)のstopを［止める］と解釈することには無理があり、［立ち止まった］と解釈するほかないので、［立ち止まってタバコを吸った］という意味になるわけです。
さらに、I like cooking, but I don’t like to cook in a hurry.［私は料理が「一般的に」好きだが、急いで料理するのは好きではない］のように、現在分詞のcookingは一般的なことについて用いますが、〔to cook〕は特定の行為に用いるという傾向があるそうです。現在分詞には過去のイメージがあるので、過去のニュアンスがある日常的な行為に使われ、未来のイメージがある〔to 原形〕は、逆に特定の行為で使われるわけです。
過去分詞の使い方は比較的単純で、That broken vase is my grandfather’s.［あの壊れた花瓶は祖父のものです］、Look at the mountain covered with snow.［雪で覆われた山を見てごらんなさい］、I will have a new suit made.［新しいスーツを仕立ててもらおう］、あるいは〔fallen leaves〕［落ちた状態にある葉］＝［落ち葉］のようです。
《日本人に共通する英語のミス151 ジェイムズ・H・M・ウェブ ジャパンタイムズ（2006）によれば、格闘技にはI used to do judo, but now I’m learning karate.［昔は柔道をやっていましたが、今は空手を習っています］のように、playではなくdoやlearnを使います》
《100の超基本名詞で広がる英語コロケーション2500 クリストファ・バーナード プレイス（2010）によれば、競技場や運動する場所のあるスポーツをする場合は〔play sports〕と言う。特定の場所を持たない屋外スポーツの場合は〔go -ing〕という。〔practise archery〕と言うのは、アーチェリーが試合ではないからである。アーチェリーは練習を繰り返すことにより向上する技術である》
2-1『自動詞』と『他動詞』の違い
動詞の意味を「xが活動して」「yが変化し」「yの状態が変わる」という行為の連鎖として見たとき、ⓐ xとyが異なる場合を『他動詞』と呼び、たとえばx broke y.という形になり、ⓑ xとyが同じと見なされる場合を『自動詞』と呼び、x(y) broke.という形になるそうです。
言い換えれば、『自動詞』は主語名詞の内的な性質ないしは内的活動が誘因になって起こる自発的な変化を表現するものであり、行為や動作の影響が他に及ぶ場合は『他動詞』を使うことになります。しかし、そうした影響が及ぶか及ばないかは主観的な捉え方の問題であるため、その区別は客観的には決まらず、さらに『自動詞』が『他動詞』として使われる傾向があるため、ますますその区別はあいまいになるそうです。
たとえば、動詞visit［訪問する］を辞書で調べると『他動詞』と『自動詞』の２つの場合が載っていますが、どのように使い分けるのかがわかりません。I visit my aunt in the country.［いなかの叔母の所へ行って滞在する］は『他動詞』であり、I visit at my friend’s.［友人の所に泊まる］やI visit in New York.［ニューヨークへ見物に行く］は『自動詞』であると書いてあるだけです。
ところが、実際には単純で、ただ単に［〜を訪問する］のか、あるいは［（狭い場所：at〜）を訪問する］のか、［（広い空間：in〜）を訪問する］のかという違いだけです。
あるいは、The horse kicked me.は単に［馬が私を蹴った］ですが、The horse kicked at me.は［馬が私を（目掛けて：at〜）蹴った］ということなので、馬の足は私に当たっていない可能性が高いということになります。
同様に、A drowning man will catch at a straw.は［溺れる者は、わらでも（いいから目掛けて：at）つかむ］ということですが、A drowning man will catch a straw.になると［溺れる者は、わらをつかむ］となるので、「わら以外はつかまない」ことになります。
その他、『他動詞』believeの用法であるI believe you.［君の言うことを信じる］と 『自動詞』の用法であるHe believes in ghosts.［彼は、幽霊は存在すると思っている］についても、前者は単に［〜を信じる］であるのに対して、後者は［（広い空間：in〜）を信じる］つまり［（広く〜）を信じる］という違いがあります。ですから、I believe him but I don’t believe in him.は［私は、彼の言葉は信じるが、人柄までは信用していない］という意味になります。
あるいは、I want to lay in the sand all day.［一日中、砂浜に横たわっていたい］という文があります。「学校英文法」であれば、『他動詞』のlay［横たえる］ではなく、『自動詞』のlie［横たわる］を使うと教えるところですが、この場合は「横たえようとする」という行為をイメージする人が多いので『他動詞』のlayを使う方が普通だそうです。
ある文にどの語を選択するのかは、しゃべり出す時に話者が頭にいだいているイメージによって決定されるため、すでに横たわった状態にある自分をイメージしているならば『自動詞』を使ったI want to lie in the sand.であり、自分の身体を横たえようとする行為をイメージしているならば『他動詞』を使ったI want to lay in the sand.となるわけです。
一方、［何かを得る］や［何かに働きかける］という意味の『他動詞』getがI get nervous.［神経質になる］やI get mad.［頭にくる］のように『自動詞』として使われるのは、I get myself to be nervous.という元の文から、無くてもわかるmyselfと〔to be〕が省略されているためだそうです。
また、『他動詞』〔think A〕［Aを考える］とは、Aという内容を直接的に考えることであり、『自動詞』〔think of C〕［Cのことを考える］は、Cという内容を間接的に考えることを意味しますが、これは〔think something of C〕［somethingを考える、somethingとCは切っても切れない関係にある］からsomethingが省略された形であると考えると納得できます。
同様に、『自動詞』〔know of C〕［Cをうわさなどで間接的に知っている］も、〔know something of C〕［somethingを知っている、somethingとCは切っても切れない関係にある］からsomethingが省略された形になので、［Cを間接的に知っている］となるわけです。
〔know of C〕と同じ形の『自動詞』〔know about C〕［Cの知識を幅広く知っている］も、元は〔know something about C〕［Cを中心にしてその周囲にあるsomething を知っている］であったと考えると、［Cについて具体的な知識があり幅広く知っている］という意味になることが納得できます。
動詞の意味を「xが活動して」「yが変化し」「yの状態が変わる」という行為の連鎖として見たとき、ⓐ xとyが異なる場合を『他動詞』と呼び、たとえばx broke y.という形になり、ⓑ xとyが同じと見なされる場合を『自動詞』と呼び、x(y) broke.という形になるそうです。
言い換えれば、『自動詞』は主語名詞の内的な性質ないしは内的活動が誘因になって起こる自発的な変化を表現するものであり、行為や動作の影響が他に及ぶ場合は『他動詞』を使うことになります。しかし、そうした影響が及ぶか及ばないかは主観的な捉え方の問題であるため、その区別は客観的には決まらず、さらに『自動詞』が『他動詞』として使われる傾向があるため、ますますその区別はあいまいになるそうです。
たとえば、動詞visit［訪問する］を辞書で調べると『他動詞』と『自動詞』の２つの場合が載っていますが、どのように使い分けるのかがわかりません。I visit my aunt in the country.［いなかの叔母の所へ行って滞在する］は『他動詞』であり、I visit at my friend’s.［友人の所に泊まる］やI visit in New York.［ニューヨークへ見物に行く］は『自動詞』であると書いてあるだけです。
ところが、実際には単純で、ただ単に［〜を訪問する］のか、あるいは［（狭い場所：at〜）を訪問する］のか、［（広い空間：in〜）を訪問する］のかという違いだけです。
あるいは、The horse kicked me.は単に［馬が私を蹴った］ですが、The horse kicked at me.は［馬が私を（目掛けて：at〜）蹴った］ということなので、馬の足は私に当たっていない可能性が高いということになります。
同様に、A drowning man will catch at a straw.は［溺れる者は、わらでも（いいから目掛けて：at）つかむ］ということですが、A drowning man will catch a straw.になると［溺れる者は、わらをつかむ］となるので、「わら以外はつかまない」ことになります。
その他、『他動詞』believeの用法であるI believe you.［君の言うことを信じる］と 『自動詞』の用法であるHe believes in ghosts.［彼は、幽霊は存在すると思っている］についても、前者は単に［〜を信じる］であるのに対して、後者は［（広い空間：in〜）を信じる］つまり［（広く〜）を信じる］という違いがあります。ですから、I believe him but I don’t believe in him.は［私は、彼の言葉は信じるが、人柄までは信用していない］という意味になります。
あるいは、I want to lay in the sand all day.［一日中、砂浜に横たわっていたい］という文があります。「学校英文法」であれば、『他動詞』のlay［横たえる］ではなく、『自動詞』のlie［横たわる］を使うと教えるところですが、この場合は「横たえようとする」という行為をイメージする人が多いので『他動詞』のlayを使う方が普通だそうです。
ある文にどの語を選択するのかは、しゃべり出す時に話者が頭にいだいているイメージによって決定されるため、すでに横たわった状態にある自分をイメージしているならば『自動詞』を使ったI want to lie in the sand.であり、自分の身体を横たえようとする行為をイメージしているならば『他動詞』を使ったI want to lay in the sand.となるわけです。
一方、［何かを得る］や［何かに働きかける］という意味の『他動詞』getがI get nervous.［神経質になる］やI get mad.［頭にくる］のように『自動詞』として使われるのは、I get myself to be nervous.という元の文から、無くてもわかるmyselfと〔to be〕が省略されているためだそうです。
また、『他動詞』〔think A〕［Aを考える］とは、Aという内容を直接的に考えることであり、『自動詞』〔think of C〕［Cのことを考える］は、Cという内容を間接的に考えることを意味しますが、これは〔think something of C〕［somethingを考える、somethingとCは切っても切れない関係にある］からsomethingが省略された形であると考えると納得できます。
同様に、『自動詞』〔know of C〕［Cをうわさなどで間接的に知っている］も、〔know something of C〕［somethingを知っている、somethingとCは切っても切れない関係にある］からsomethingが省略された形になので、［Cを間接的に知っている］となるわけです。
〔know of C〕と同じ形の『自動詞』〔know about C〕［Cの知識を幅広く知っている］も、元は〔know something about C〕［Cを中心にしてその周囲にあるsomething を知っている］であったと考えると、［Cについて具体的な知識があり幅広く知っている］という意味になることが納得できます。
以上のように、『自動詞』か『他動詞』かと区別する必要はなく、主張したいことを的確に表すにはどの動詞を使えば良いのか、その動詞が持っている基本的なイメージのままで良いのか、そのイメージに何かを付け加える必要があるのかを考えるだけであって、あくまでも動詞それ自身が持っている基本的なイメージから出発すれば済むことです。
最後に、似ていますが意味の異なる文(a)と(b)をまとめていくつか紹介します。
(a) They discussed the boy.［彼らはその少年のことを話し合った］
(b) They discussed with the boy.［彼らはその少年と議論した］
(a) They serched the house.［彼らは家宅捜査した］
(b) They serched for the house.［彼らはその家を探した］
(a) He consulted the doctor.［彼は医者に診てもらった］
(b) He consulted with the doctor.［彼は医者と相談した］
(a) I’ll see it.［僕はそれを見よう］
(b) I’ll see to it.［その件は僕が面倒を見よう］
(a) He will want nothing.［彼は何も望まないだろう］
(b) He shall want for nothing.［彼には何も不自由させない］
2-2〔am(are, is) 過去分詞〕と〔have(has) 過去分詞〕の違い
〔am(are, is) 過去分詞〕と〔have(has) 過去分詞〕は、同じ〔動詞の現在形 過去分詞〕という形であり、単に「いつを基準にして語っているのか」を表す動詞が［〜する］という意味のbe動詞か、［〜を持っている］という意味のhave動詞か、という違いだけです。
具体的には、たとえば(a) When the immigration procedure is finished, apply for a foreign registration card at the city hall.［入国管理局の手続きが終わったら（終えられた状態である時は）市役所で外国人登録の申請をして下さい］と、(b) The police have finished their investigation into the bribery scandal.［警察はその収賄事件の捜査を終えた（終わった状態で持っている）］のように（終えられた状態である）と（終わった状態で持っている）という違いだけです。
しかし、0-2-1節で紹介したように、have動詞には話者の主体性が反映されていますから、直接的には表現されていないものの、そこには話者の「言外の意味」が存在するはずです。どのような文脈で語られているのかによって異なりますが、文(b)の場合は［捜査が終わって安堵しているところだ］とか［次の捜査に取りかかることができる］といったようなことが考えられます。
一方、文(a)は［手続きが終わった］現在の状況を淡々と述べているだけですから、特別な文脈でない限り、そうした言外の意味はありません。
最後に、似ていますが意味の異なる文(a)と(b)をまとめていくつか紹介します。
(a) They discussed the boy.［彼らはその少年のことを話し合った］
(b) They discussed with the boy.［彼らはその少年と議論した］
(a) They serched the house.［彼らは家宅捜査した］
(b) They serched for the house.［彼らはその家を探した］
(a) He consulted the doctor.［彼は医者に診てもらった］
(b) He consulted with the doctor.［彼は医者と相談した］
(a) I’ll see it.［僕はそれを見よう］
(b) I’ll see to it.［その件は僕が面倒を見よう］
(a) He will want nothing.［彼は何も望まないだろう］
(b) He shall want for nothing.［彼には何も不自由させない］
2-2〔am(are, is) 過去分詞〕と〔have(has) 過去分詞〕の違い
〔am(are, is) 過去分詞〕と〔have(has) 過去分詞〕は、同じ〔動詞の現在形 過去分詞〕という形であり、単に「いつを基準にして語っているのか」を表す動詞が［〜する］という意味のbe動詞か、［〜を持っている］という意味のhave動詞か、という違いだけです。
具体的には、たとえば(a) When the immigration procedure is finished, apply for a foreign registration card at the city hall.［入国管理局の手続きが終わったら（終えられた状態である時は）市役所で外国人登録の申請をして下さい］と、(b) The police have finished their investigation into the bribery scandal.［警察はその収賄事件の捜査を終えた（終わった状態で持っている）］のように（終えられた状態である）と（終わった状態で持っている）という違いだけです。
しかし、0-2-1節で紹介したように、have動詞には話者の主体性が反映されていますから、直接的には表現されていないものの、そこには話者の「言外の意味」が存在するはずです。どのような文脈で語られているのかによって異なりますが、文(b)の場合は［捜査が終わって安堵しているところだ］とか［次の捜査に取りかかることができる］といったようなことが考えられます。
一方、文(a)は［手続きが終わった］現在の状況を淡々と述べているだけですから、特別な文脈でない限り、そうした言外の意味はありません。
2-3〔am(are, is) 過去分詞〕と『能動態』の違い
『能動態』は、I saw her dance.［私は彼女がダンスしているのを見た］のように、動作の働きかけが主語から他に及ぶことを表す動詞の形です。一方〔am(are, is) 過去分詞〕の形は、［〜された状態である］という意味ですから、「意志とは無関係に」というイメージがあり、そこから「偶然に」というニュアンスが生まれるそうです。
ですから、I saw her dance.は、［私は「見たいと思って見たら」彼女が「見られることを承知で」ダンスをしているのを見た］というニュアンスとなり、She was seen to dance.は、［彼女は「人目をはばかりながら」ダンスをしているのを「偶然私によって」見られた］というニュアンスになるそうです。
〔am(are, is) 過去分詞〕の形であっても『能動態』であっても、文の最初に来る語が最も重要であるという英語の原則には変わりはないので、主語となる名詞が文意の上で最も重要な語となっている必要があります。
たとえば、『能動態』の文A speeding car approached Mary.［猛スピードで走っている車がメアリに接近した］を〔am(are, is) 過去分詞〕の形に書き直した文×Mary was approached by a speeding car.は成立しませんが、『能動態』の文Several fund raisers approached Mary for contributions.［何人かの寄付金を集めている人たちがメアリに近づいて寄付を依頼した］を〔am(are, is) 過去分詞〕の形に書き直した文Mary was approached for contributions by several fund raisers.は成立するそうです。最初の文は［猛スピードで走っている車がメアリとの距離を縮めた］なので、文意の中心はあくまでも「猛スピードで走っている車」であり、メアリではありません。そのため文意のターゲットではないメアリが主語になる文をつくると奇妙な感じになります。一方、後の文では［寄付金を集めている人たちが寄付をメアリに依頼した］のですから、メアリは文意のターゲットになっているので、メアリを主語にした文が成立するというわけです。
2-4 動詞の過去形と〔have(has) 過去分詞〕の違い
動詞の過去形を使ったWhen I was in Paris, I saw her often.は［パリに（一度）滞在した時、私は彼女にしばしば会った］という意味ですが、〔have(has) 過去分詞〕の形When I have been in Paris, I have often seen her.は、［パリに（何度も）滞在した時、私はしばしば彼女に会った］という意味になるそうです。後の文は［私がパリにいた状態で持っている（「自分の意志で」パリにいた）時は、私はしばしば彼女に会った状態で持っています（「自分の意志で」彼女に会った状態です）］と話しているわけですから、（何度も）というニュアンスになるのもわかる気がします。
なお、Have you been to America?［君はアメリカに行ったことがありますか］の答として、単純な肯定であればYes, I have.と言いますが、もし［去年、行った］と答えるのなら×Yes, I have been there last year.ではなく、Yes, I was there last year.と言わなければなりません。「去年」という過去の特定な時期を明示すると「過去を基準にして語っている」ことになるので、動詞を現在ではなく過去の形にする必要があるからです。
『能動態』は、I saw her dance.［私は彼女がダンスしているのを見た］のように、動作の働きかけが主語から他に及ぶことを表す動詞の形です。一方〔am(are, is) 過去分詞〕の形は、［〜された状態である］という意味ですから、「意志とは無関係に」というイメージがあり、そこから「偶然に」というニュアンスが生まれるそうです。
ですから、I saw her dance.は、［私は「見たいと思って見たら」彼女が「見られることを承知で」ダンスをしているのを見た］というニュアンスとなり、She was seen to dance.は、［彼女は「人目をはばかりながら」ダンスをしているのを「偶然私によって」見られた］というニュアンスになるそうです。
〔am(are, is) 過去分詞〕の形であっても『能動態』であっても、文の最初に来る語が最も重要であるという英語の原則には変わりはないので、主語となる名詞が文意の上で最も重要な語となっている必要があります。
たとえば、『能動態』の文A speeding car approached Mary.［猛スピードで走っている車がメアリに接近した］を〔am(are, is) 過去分詞〕の形に書き直した文×Mary was approached by a speeding car.は成立しませんが、『能動態』の文Several fund raisers approached Mary for contributions.［何人かの寄付金を集めている人たちがメアリに近づいて寄付を依頼した］を〔am(are, is) 過去分詞〕の形に書き直した文Mary was approached for contributions by several fund raisers.は成立するそうです。最初の文は［猛スピードで走っている車がメアリとの距離を縮めた］なので、文意の中心はあくまでも「猛スピードで走っている車」であり、メアリではありません。そのため文意のターゲットではないメアリが主語になる文をつくると奇妙な感じになります。一方、後の文では［寄付金を集めている人たちが寄付をメアリに依頼した］のですから、メアリは文意のターゲットになっているので、メアリを主語にした文が成立するというわけです。
2-4 動詞の過去形と〔have(has) 過去分詞〕の違い
動詞の過去形を使ったWhen I was in Paris, I saw her often.は［パリに（一度）滞在した時、私は彼女にしばしば会った］という意味ですが、〔have(has) 過去分詞〕の形When I have been in Paris, I have often seen her.は、［パリに（何度も）滞在した時、私はしばしば彼女に会った］という意味になるそうです。後の文は［私がパリにいた状態で持っている（「自分の意志で」パリにいた）時は、私はしばしば彼女に会った状態で持っています（「自分の意志で」彼女に会った状態です）］と話しているわけですから、（何度も）というニュアンスになるのもわかる気がします。
なお、Have you been to America?［君はアメリカに行ったことがありますか］の答として、単純な肯定であればYes, I have.と言いますが、もし［去年、行った］と答えるのなら×Yes, I have been there last year.ではなく、Yes, I was there last year.と言わなければなりません。「去年」という過去の特定な時期を明示すると「過去を基準にして語っている」ことになるので、動詞を現在ではなく過去の形にする必要があるからです。
2-5 動詞の現在形と〔have(has) 過去分詞〕の違い
たとえば、［エドは1年生の時から一番の親友だ］という文は、以下のように、(a)現在形is、(b)〔have(has) 過去分詞〕、(c)〔過去形was and 現在形is〕の形で表現できるそうです。
(a) Ed is my best friend since first grade.
(b) Ed has been my best friend since first grade.
(c) Ed was and is my best friend since first grade.
文(a)は、動詞の現在形が持つ「厳然として存在している」というイメージを伝えたかったのであり、(b)はhave動詞を使って［持っています、あった状態で］と言いながら、「だから、エドにはいつでも相談できる」といったような何らかの言外のニュアンスを伝えたかったのでしょう。(c)は単純に「過去も、今も」という感じを伝えたかったことになります。
但し、since［〜以来ずっと］で始まる語や文を使った場合は、その文の動詞を〔have(has) 過去分詞〕の形にしたいという気持ちが働くので、たとえば［パスタを食べてから久しい］は以下の４つの表現が可能ですが、〔have(has) 過去分詞〕の形による表現が好まれるそうです。
(a) It’s a long time since I had pasta.
(b) It’s a long time since I’ve had pasta.
(c) It’s been a long time since I had pasta.
(d) It’s been a long time since I have had pasta.
2-6 動詞の現在形と〔am(are, is) 現在分詞〕の違い
現在形には「現在という特定の時に、厳然としてそこに存在している」というイメージがあります。ただ「現在」と言っても、それは対話している人同士が共有している時間感覚のことですから、その時間幅は人によって異なり、「過去」から「未来」までを含むことがあります。
〔am(are, is) 現在分詞〕は、「現在の動作や出来事が一定の時間内で進行し連続しており、まだ終了していない」ことを表しています。現在形に比べて時間間隔が短く、臨場感のある表現です。
たとえば、「今ピアノを弾いている」といった人の動作が単純に継続している場合、「毎日聖書を読んでいる」といった人の動作が断続的につながっている場合、「客が次々に到着している」といった複数の人の動作が全体として断続的につながっている場合など、いろいろな連続的な状況を表現することができます。ですから、like［好き］のような動作ではなく状態を表す動詞であっても、I am liking you more and more each week.のように「好きだ」という状態が毎週少しずつ変化している場合には、〔am(are, is) 現在分詞〕）の形で表現することができます。
同様に、The dog is dying.［犬は死にかけている］もあり得ますし、John and Mary are getting married next spring.［ジョンとメアリは来春結婚します］のように、結婚という事象が進行していなくても、新居探しなど結婚に至る過程が連続して起きていると考えられる時には、〔am(are, is) 現在分詞〕）の形を使うことができるそうです。
現在形と〔am(are, is) 現在分詞〕を比較してみると、たとえば、現在形のMy watch works perfectly.は［私の時計は（最初からずっと）調子よく動いている］といった永続的な性質を表しますが、〔am(are, is) 現在分詞〕のMy watch is working perfectly.は［私の時計は（今のところ）調子よく動いている］のように一時的な性質を表します。
従って、She is pretty.は、［彼女は（生まれながらに）かわいい］という意味ですが、She is being pretty.と言うと、［彼女はかわいいふりをしている］と、彼女の一時的な態度について述べていることになるそうです。
同様に、He always breaks a date with me.は、［彼はいつも私とのデートの約束を破る］という意味ですが、He’s always breaking a date with me.は、［彼ったら、いつも私とのデートの約束を破ってばかりいるの］という女性のいらいらした気持ちを表した感情表現となり、He is a fool.は、［彼は（どうにも直しようがない）バカだ］という意味ですが、He is being a fool.は、［彼はバカなふりをしている（ふだんは賢い）］という意味になるそうです。
たとえば、［エドは1年生の時から一番の親友だ］という文は、以下のように、(a)現在形is、(b)〔have(has) 過去分詞〕、(c)〔過去形was and 現在形is〕の形で表現できるそうです。
(a) Ed is my best friend since first grade.
(b) Ed has been my best friend since first grade.
(c) Ed was and is my best friend since first grade.
文(a)は、動詞の現在形が持つ「厳然として存在している」というイメージを伝えたかったのであり、(b)はhave動詞を使って［持っています、あった状態で］と言いながら、「だから、エドにはいつでも相談できる」といったような何らかの言外のニュアンスを伝えたかったのでしょう。(c)は単純に「過去も、今も」という感じを伝えたかったことになります。
但し、since［〜以来ずっと］で始まる語や文を使った場合は、その文の動詞を〔have(has) 過去分詞〕の形にしたいという気持ちが働くので、たとえば［パスタを食べてから久しい］は以下の４つの表現が可能ですが、〔have(has) 過去分詞〕の形による表現が好まれるそうです。
(a) It’s a long time since I had pasta.
(b) It’s a long time since I’ve had pasta.
(c) It’s been a long time since I had pasta.
(d) It’s been a long time since I have had pasta.
2-6 動詞の現在形と〔am(are, is) 現在分詞〕の違い
現在形には「現在という特定の時に、厳然としてそこに存在している」というイメージがあります。ただ「現在」と言っても、それは対話している人同士が共有している時間感覚のことですから、その時間幅は人によって異なり、「過去」から「未来」までを含むことがあります。
〔am(are, is) 現在分詞〕は、「現在の動作や出来事が一定の時間内で進行し連続しており、まだ終了していない」ことを表しています。現在形に比べて時間間隔が短く、臨場感のある表現です。
たとえば、「今ピアノを弾いている」といった人の動作が単純に継続している場合、「毎日聖書を読んでいる」といった人の動作が断続的につながっている場合、「客が次々に到着している」といった複数の人の動作が全体として断続的につながっている場合など、いろいろな連続的な状況を表現することができます。ですから、like［好き］のような動作ではなく状態を表す動詞であっても、I am liking you more and more each week.のように「好きだ」という状態が毎週少しずつ変化している場合には、〔am(are, is) 現在分詞〕）の形で表現することができます。
同様に、The dog is dying.［犬は死にかけている］もあり得ますし、John and Mary are getting married next spring.［ジョンとメアリは来春結婚します］のように、結婚という事象が進行していなくても、新居探しなど結婚に至る過程が連続して起きていると考えられる時には、〔am(are, is) 現在分詞〕）の形を使うことができるそうです。
現在形と〔am(are, is) 現在分詞〕を比較してみると、たとえば、現在形のMy watch works perfectly.は［私の時計は（最初からずっと）調子よく動いている］といった永続的な性質を表しますが、〔am(are, is) 現在分詞〕のMy watch is working perfectly.は［私の時計は（今のところ）調子よく動いている］のように一時的な性質を表します。
従って、She is pretty.は、［彼女は（生まれながらに）かわいい］という意味ですが、She is being pretty.と言うと、［彼女はかわいいふりをしている］と、彼女の一時的な態度について述べていることになるそうです。
同様に、He always breaks a date with me.は、［彼はいつも私とのデートの約束を破る］という意味ですが、He’s always breaking a date with me.は、［彼ったら、いつも私とのデートの約束を破ってばかりいるの］という女性のいらいらした気持ちを表した感情表現となり、He is a fool.は、［彼は（どうにも直しようがない）バカだ］という意味ですが、He is being a fool.は、［彼はバカなふりをしている（ふだんは賢い）］という意味になるそうです。
2-7〔am(are, is) 過去分詞〕と〔get 過去分詞〕の違い
「学校英文法」では、get［無い状態から有る状態を引き起こすという状態の変化と獲得という意味で（ある状態に）なる］、become［be＋come］、remain［（周囲の変化があっても）残る］などの動詞は、過去分詞［〜された状態で］とつなぐと『受動態』をつくるとされています。
それは、これらの動詞がいずれもbe動詞のように［ある］という存在のイメージを持っているためですが、使う動詞が異なるのですからニュアンスは異なります。
たとえば、He is dressed.は［彼は（誰かに）着せてもらう］や［彼は衣服を身にまとっている（状態にある）］という意味ですが、getを使ったHe gets dressed.は［彼は（自分で）着る］や［彼は衣服を身にまとう（動作をしている）］という意味になるそうです。
また、He was shot on purpose.は、［彼は（誰かに）故意にねらわれた］、つまり「第三者によってなされた事柄である」というニュアンスですが、He got shot on purpose.は、［彼が（自ら）わざと弾にあたった］、つまり［自分自身に対しておこなう事柄である］というニュアンスになり、He was arrested by the police.は［彼は警察に逮捕された］という事実を単に客観的に表現していますが、getを使ったHe got arrested by the police.は話し手の不快感や困惑を示す主観的な表現となるそうです。
ですから、［では始めましょう］は、Let’s get going.やLet’s get started.やLet’s get rolling.あるいはLet’s roll.などと表現することができますが、get［（ある状態に）なる］を使わないLet’s roll.には「〜の状態になる」というニュアンスはなく、単に物理的なgoingやmovingという意味になります。
「学校英文法」では、get［無い状態から有る状態を引き起こすという状態の変化と獲得という意味で（ある状態に）なる］、become［be＋come］、remain［（周囲の変化があっても）残る］などの動詞は、過去分詞［〜された状態で］とつなぐと『受動態』をつくるとされています。
それは、これらの動詞がいずれもbe動詞のように［ある］という存在のイメージを持っているためですが、使う動詞が異なるのですからニュアンスは異なります。
たとえば、He is dressed.は［彼は（誰かに）着せてもらう］や［彼は衣服を身にまとっている（状態にある）］という意味ですが、getを使ったHe gets dressed.は［彼は（自分で）着る］や［彼は衣服を身にまとう（動作をしている）］という意味になるそうです。
また、He was shot on purpose.は、［彼は（誰かに）故意にねらわれた］、つまり「第三者によってなされた事柄である」というニュアンスですが、He got shot on purpose.は、［彼が（自ら）わざと弾にあたった］、つまり［自分自身に対しておこなう事柄である］というニュアンスになり、He was arrested by the police.は［彼は警察に逮捕された］という事実を単に客観的に表現していますが、getを使ったHe got arrested by the police.は話し手の不快感や困惑を示す主観的な表現となるそうです。
ですから、［では始めましょう］は、Let’s get going.やLet’s get started.やLet’s get rolling.あるいはLet’s roll.などと表現することができますが、get［（ある状態に）なる］を使わないLet’s roll.には「〜の状態になる」というニュアンスはなく、単に物理的なgoingやmovingという意味になります。
3 文の形をめぐるニュアンスの違い
ここでは、文の形とそのニュアンスを整理してみました。
3-1 (a) John honestと(b) John to be honestと(c) that John is honest
(a) I believe John honest.
(b) I believe John to be honest.
(c) I believe that John is honest.
文(a)は［私は、ジョンの正直な振る舞いを実際に知っていて、ジョンが正直であることを疑っている人にジョンは正直だと主張する］といった場合の表現ですが、(c)は［私はジョンが正直であることを実際には体験していないが、色々な人の話からジョンは十分に正直であると言えると思う］といった場合の表現になり、(b)はその中間的な表現になるそうです。
なぜなら、(a)は［私は信じている］［ジョン］（be動詞の意味関係）［正直だ］ですから、［私はジョンを信じている、ジョンは正直だ］と直接的な表現となっていますが、(c)は［私はそれを信じている］［それというのは、ジョンは正直であるということだ］ですから、間接的な表現になります。一方、(b)は［私は信じている］［ジョン］［向き合って、ずっと］［正直である］ですから、(a)よりも間接的になり、上記のようなニュアンスの違いが生まれます。
3-2 (a) Mary a photoと(b) a photo to Mary
(a) John showed Mary a photo.
(b) John showed a photo to Mary.
文(a)は［ジョンがメアリに見てごらんと写真を差し出した時、別のことをしていたメアリが気付いて振り向き、写真を見た］といった場合の表現ですが、(b)は［ジョンがメアリに見てごらんと写真を差し出した時、メアリは自分の仕事に夢中になっていたり、居眠りを始めたりしていて、写真を差し出されているのに気付かない］ような場合の表現だそうです。
なぜなら、(a)は［ジョンは見せた］［メアリ］（have動詞の意味関係）［写真］ですから、メアリに視点があり、［メアリが写真を持っています］が、(b)は［ジョンは見せた］［写真］［向き合ってずっと］［メアリ］ですから、写真に視点があり、［写真はメアリにずっと向き合っている］ので、上記のようなニュアンスの違いが生まれます。
3-3 (a) the Queen by the handと(b) the Queen’s hand
(a) John kissed the Queen by the hand.
(b) John kissed the Queen’s hand.
文(a)は［ジョンと女王の間で密かな愛情が抱かれているのではないかと想像させる］ような表現ですが、(b)は［儀礼的に女王の手に口づけした］ような場合の表現となるそうです。
(a)は［ジョンは口づけした］［女王］［女王の手に近接して］ですから、女王に視点がありますが、(b)は［ジョンは女王の手に口づけした］ですから、上記のようなニュアンスの違いが生まれます。
3-4 (a) paint on the wallと(b) the wall with paint
(a) John sprayed paint on the wall.
(b) John sprayed the wall with paint.
文(a)は［塗料で覆われたのが壁の一部であっても良い］ような場合の表現であり、(b)は［壁の全体が塗料で覆われたという意味合いで受け取られる］ような表現だそうです。
(a)は［ジョンが吹き付けた］［塗料］［壁の上に］ですから塗料に視点がありますが、(b)は［ジョンが吹き付けた］［壁］［塗料で］ですから壁に視点があります。そのために、上記のようなニュアンスの違いが生まれます。
ここでは、文の形とそのニュアンスを整理してみました。
3-1 (a) John honestと(b) John to be honestと(c) that John is honest
(a) I believe John honest.
(b) I believe John to be honest.
(c) I believe that John is honest.
文(a)は［私は、ジョンの正直な振る舞いを実際に知っていて、ジョンが正直であることを疑っている人にジョンは正直だと主張する］といった場合の表現ですが、(c)は［私はジョンが正直であることを実際には体験していないが、色々な人の話からジョンは十分に正直であると言えると思う］といった場合の表現になり、(b)はその中間的な表現になるそうです。
なぜなら、(a)は［私は信じている］［ジョン］（be動詞の意味関係）［正直だ］ですから、［私はジョンを信じている、ジョンは正直だ］と直接的な表現となっていますが、(c)は［私はそれを信じている］［それというのは、ジョンは正直であるということだ］ですから、間接的な表現になります。一方、(b)は［私は信じている］［ジョン］［向き合って、ずっと］［正直である］ですから、(a)よりも間接的になり、上記のようなニュアンスの違いが生まれます。
3-2 (a) Mary a photoと(b) a photo to Mary
(a) John showed Mary a photo.
(b) John showed a photo to Mary.
文(a)は［ジョンがメアリに見てごらんと写真を差し出した時、別のことをしていたメアリが気付いて振り向き、写真を見た］といった場合の表現ですが、(b)は［ジョンがメアリに見てごらんと写真を差し出した時、メアリは自分の仕事に夢中になっていたり、居眠りを始めたりしていて、写真を差し出されているのに気付かない］ような場合の表現だそうです。
なぜなら、(a)は［ジョンは見せた］［メアリ］（have動詞の意味関係）［写真］ですから、メアリに視点があり、［メアリが写真を持っています］が、(b)は［ジョンは見せた］［写真］［向き合ってずっと］［メアリ］ですから、写真に視点があり、［写真はメアリにずっと向き合っている］ので、上記のようなニュアンスの違いが生まれます。
3-3 (a) the Queen by the handと(b) the Queen’s hand
(a) John kissed the Queen by the hand.
(b) John kissed the Queen’s hand.
文(a)は［ジョンと女王の間で密かな愛情が抱かれているのではないかと想像させる］ような表現ですが、(b)は［儀礼的に女王の手に口づけした］ような場合の表現となるそうです。
(a)は［ジョンは口づけした］［女王］［女王の手に近接して］ですから、女王に視点がありますが、(b)は［ジョンは女王の手に口づけした］ですから、上記のようなニュアンスの違いが生まれます。
3-4 (a) paint on the wallと(b) the wall with paint
(a) John sprayed paint on the wall.
(b) John sprayed the wall with paint.
文(a)は［塗料で覆われたのが壁の一部であっても良い］ような場合の表現であり、(b)は［壁の全体が塗料で覆われたという意味合いで受け取られる］ような表現だそうです。
(a)は［ジョンが吹き付けた］［塗料］［壁の上に］ですから塗料に視点がありますが、(b)は［ジョンが吹き付けた］［壁］［塗料で］ですから壁に視点があります。そのために、上記のようなニュアンスの違いが生まれます。
3-5 (a) his help、(b) him to help us、(c) him for help、(d) him helping us、(e) his helping us
(a) We can’t count on his help.［彼の助けは期待できない（当てにできない）］
(b) We can’t count on him to help us.［彼が私たちを助けてくれるのは期待できない］
(c) We can’t count on him for help.［彼に助けを期待することはできない］
(d) We can’t count on him helping us.［彼が私たちを助けてくれることを期待できない］
(e) We can’t count on his helping us.［彼が私たちを助けてくれることを期待できない］
文(a)は〔his help〕［彼の助け］に視点を置いています。(b)はhim［彼］という人に視点を置いてHe helps us.と言っていることになり、これが最も普通の表現だそうです。(c)も同様に、him［彼］に視点を置いていますが、明確にHe helps us.と言ってはおりません。(d)はhim［彼］に視点を置き、He is helping us.と言っています。(e)はHe is helping us.に視点を置いています。
人に視点を置いている(b)〜(e)の微妙な違いですが、(b)は〔him to help〕ですから［彼が、今後ずっと助けてくれる］というニュアンスです。(c)は単純にhim［彼］が期待できないと言っており、(d)と(e)はhelping の形ですから「今」に焦点を当てていることになります。
4 文の構造と意味
ここでは、わかりにくい文の構造と意味について考えます。
4-1 Have you finally decided where to have the ceremony and reception?
［式と披露宴をどこでやるのか、ついに決めたのですか］
この文は、?Have you finally decided it?と?Where do you have the ceremony and reception?をつないだ文です。
?と?の文をつなぐ際、まず?のitは単に?の文を指しているだけであり、重複するので削除します。次に?の疑問文を作るために使った強調のdoと重複しているyouを削除します。最後に動詞haveの形ですが、〔have the ceremony and reception〕は将来のことですから、未来イメージのある〔to 原形〕の形を採用するのが適切でしょう。すると表題の文ができます。
文の意味は［あなたは最終的に決めたのですか］［どこで］［に向き合って］［式と披露宴を持っている］ですから、なめらかな日本語にすれば［式と披露宴をどこでやるのか、ついに決めたのですか］となるわけです。
ところで、文?と?をつなぐ方法は他にもあり、たとえば文?のyouを削除せずに残したHave you finally decided where you have the ceremony and reception?も成立します。
「学校英文法」は、表題の文を『疑問詞＋to不定詞で名詞句をつくる文』であると解説しており、またこれは『間接疑問文』である２番目の文を簡単にした文であると解説しています。けれども、こうした説明では、文の成り立ち、つまり元になっている２つの文からどのようにして表題の文ができたのかについて、学習者はまったく理解することができません。
(a) We can’t count on his help.［彼の助けは期待できない（当てにできない）］
(b) We can’t count on him to help us.［彼が私たちを助けてくれるのは期待できない］
(c) We can’t count on him for help.［彼に助けを期待することはできない］
(d) We can’t count on him helping us.［彼が私たちを助けてくれることを期待できない］
(e) We can’t count on his helping us.［彼が私たちを助けてくれることを期待できない］
文(a)は〔his help〕［彼の助け］に視点を置いています。(b)はhim［彼］という人に視点を置いてHe helps us.と言っていることになり、これが最も普通の表現だそうです。(c)も同様に、him［彼］に視点を置いていますが、明確にHe helps us.と言ってはおりません。(d)はhim［彼］に視点を置き、He is helping us.と言っています。(e)はHe is helping us.に視点を置いています。
人に視点を置いている(b)〜(e)の微妙な違いですが、(b)は〔him to help〕ですから［彼が、今後ずっと助けてくれる］というニュアンスです。(c)は単純にhim［彼］が期待できないと言っており、(d)と(e)はhelping の形ですから「今」に焦点を当てていることになります。
4 文の構造と意味
ここでは、わかりにくい文の構造と意味について考えます。
4-1 Have you finally decided where to have the ceremony and reception?
［式と披露宴をどこでやるのか、ついに決めたのですか］
この文は、?Have you finally decided it?と?Where do you have the ceremony and reception?をつないだ文です。
?と?の文をつなぐ際、まず?のitは単に?の文を指しているだけであり、重複するので削除します。次に?の疑問文を作るために使った強調のdoと重複しているyouを削除します。最後に動詞haveの形ですが、〔have the ceremony and reception〕は将来のことですから、未来イメージのある〔to 原形〕の形を採用するのが適切でしょう。すると表題の文ができます。
文の意味は［あなたは最終的に決めたのですか］［どこで］［に向き合って］［式と披露宴を持っている］ですから、なめらかな日本語にすれば［式と披露宴をどこでやるのか、ついに決めたのですか］となるわけです。
ところで、文?と?をつなぐ方法は他にもあり、たとえば文?のyouを削除せずに残したHave you finally decided where you have the ceremony and reception?も成立します。
「学校英文法」は、表題の文を『疑問詞＋to不定詞で名詞句をつくる文』であると解説しており、またこれは『間接疑問文』である２番目の文を簡単にした文であると解説しています。けれども、こうした説明では、文の成り立ち、つまり元になっている２つの文からどのようにして表題の文ができたのかについて、学習者はまったく理解することができません。
4-2 What kind of clothing did you finally decide would be appropriate for the bride and groom?［新郎新婦にふさわしいものとして、最終的にどんな衣装に決めたのですか］
この文は、What kind of clothing did you finally decide?のwhatを文頭に出す前の形である?Did you finally decide what kind of clothing?と?The clothing would be appropriate for the bride and groom.をつないだ文です。
?と?のclothingが共通しているので、ひとつのclothingを削除してそのまま２つの文をつなぐと、Did you finally decide what kind of clothing would be appropriate for the bride and groom.となります。ここでwhatは強調する語ですから、できる限り前方に出すと表題の文ができます。
文の意味は、［あなたは最終的にどんな種類の服に決めたのですか］（そのことは）［新婦と新郎に適切でしょう］ですから、なめらかな日本語にすれば表題のようになります。
「学校英文法」の中には、表題の文をWhat kind of clothing would be appropriate for the bride and groom?という文中に〔did you finally decide〕を挿入した文であると説明しているものがあります。もしそうであるとすれば、［どんな衣装が新郎新婦にふさわしいのか］が文の中心的なテーマになるので、表題の文が最も伝えたいはずのこと［最終的にどんな衣装に決めたのですか］が付け足しになってしまいます。文の成り立ちに無関心であると文のニュアンスを正しく把握できないわけです。
なかには、新たな文法用語を導入して、〔I think〕や〔I was taught〕などの要素が他の『節』に挿入される形を『連鎖節』と呼ぶと解説している「学校英文法」もあります。そしてThe man who I thought was your uncle proved to be a total stranger.［君のおじさんだと僕が思った人はあかの他人だった］のような文例を挙げています。
けれどもこの文もまた、?The man proved to be a total stranger.と?I thought the man was your uncle.という２つの文をつないだものです。つまり、?の〔the man〕を疑問詞のwhoで置き換えて文頭に出し、?の〔The man〕につないだ文であって、〔I think〕を「他の文に挿入した」文ではありません。
この文は、What kind of clothing did you finally decide?のwhatを文頭に出す前の形である?Did you finally decide what kind of clothing?と?The clothing would be appropriate for the bride and groom.をつないだ文です。
?と?のclothingが共通しているので、ひとつのclothingを削除してそのまま２つの文をつなぐと、Did you finally decide what kind of clothing would be appropriate for the bride and groom.となります。ここでwhatは強調する語ですから、できる限り前方に出すと表題の文ができます。
文の意味は、［あなたは最終的にどんな種類の服に決めたのですか］（そのことは）［新婦と新郎に適切でしょう］ですから、なめらかな日本語にすれば表題のようになります。
「学校英文法」の中には、表題の文をWhat kind of clothing would be appropriate for the bride and groom?という文中に〔did you finally decide〕を挿入した文であると説明しているものがあります。もしそうであるとすれば、［どんな衣装が新郎新婦にふさわしいのか］が文の中心的なテーマになるので、表題の文が最も伝えたいはずのこと［最終的にどんな衣装に決めたのですか］が付け足しになってしまいます。文の成り立ちに無関心であると文のニュアンスを正しく把握できないわけです。
なかには、新たな文法用語を導入して、〔I think〕や〔I was taught〕などの要素が他の『節』に挿入される形を『連鎖節』と呼ぶと解説している「学校英文法」もあります。そしてThe man who I thought was your uncle proved to be a total stranger.［君のおじさんだと僕が思った人はあかの他人だった］のような文例を挙げています。
けれどもこの文もまた、?The man proved to be a total stranger.と?I thought the man was your uncle.という２つの文をつないだものです。つまり、?の〔the man〕を疑問詞のwhoで置き換えて文頭に出し、?の〔The man〕につないだ文であって、〔I think〕を「他の文に挿入した」文ではありません。
4-3 It is an ill wind that blows nobody (あるいはno one) good.
［誰のためにもならない風は吹かない］：［甲の損は乙の得］に相当することわざ
文の構造は単純ですが、英文と日本語訳の対応がつかない不思議な文です。素直に英文を読むと、［それは「どれでも良いがそのうち」ひとつの悪い風だ］［それは誰にも利益を吹き付けない］となって、もし悪い風があるとすれば、悪いのですから誰の利益にならなくても当然かもしれませんが、そんな風があるのか、またそれがなぜことわざになるのかがわかりません。
何のことかわからなくなったら、英語の大きな特徴である意味の拡張が起きているのではないかと思うのがポイントです。
限定詞aは［「どれでも良いがそのうち」ひとつの］という意味ですが、それが拡張されると［どれでも良いがそのうちひとつの物に過ぎない］となり、さらには［圧倒的多数は別の物］へと意味が広がります。この文のaはその［圧倒的多数は別の物］という意味であるのかも知れません。
もしそうであれば、［それは「圧倒的多数は別の物」である悪い風だ］［それは誰にも利益を吹き付けない］となるので、［それはほとんど悪い風ではない］［それは誰にも利益を吹き付けない］となります。なめらかな日本語にすれば［誰の利益にもならないのは悪い風ではない］つまり［誰のためにもならないからと言って悪い風ではない］、結局［甲の損は乙の得］となります。
こうした〔It is a 〜〕というパターンのことわざはほかにもあって、たとえば、It is a long lane that has no turning.［どんな長い道にも必ず曲がり角はある］：［待てば海路の日和あり］に相当することわざ、あるいはIt is a wise father that knows his own child.［どんな賢い父親でも我が子のことはわからない］：［親ばか］に相当することわざなどです。
これらではいずれも、aの意味が［どれでも良いがそのうちひとつの］から［圧倒的多数は別の物］へと拡張されているのは大変興味深いことです。もしこの拡張が古い英語のなごりであるとすれば、特別な言葉やことわざにそうした言い回しが残っていても不思議ではありません。
［誰のためにもならない風は吹かない］：［甲の損は乙の得］に相当することわざ
文の構造は単純ですが、英文と日本語訳の対応がつかない不思議な文です。素直に英文を読むと、［それは「どれでも良いがそのうち」ひとつの悪い風だ］［それは誰にも利益を吹き付けない］となって、もし悪い風があるとすれば、悪いのですから誰の利益にならなくても当然かもしれませんが、そんな風があるのか、またそれがなぜことわざになるのかがわかりません。
何のことかわからなくなったら、英語の大きな特徴である意味の拡張が起きているのではないかと思うのがポイントです。
限定詞aは［「どれでも良いがそのうち」ひとつの］という意味ですが、それが拡張されると［どれでも良いがそのうちひとつの物に過ぎない］となり、さらには［圧倒的多数は別の物］へと意味が広がります。この文のaはその［圧倒的多数は別の物］という意味であるのかも知れません。
もしそうであれば、［それは「圧倒的多数は別の物」である悪い風だ］［それは誰にも利益を吹き付けない］となるので、［それはほとんど悪い風ではない］［それは誰にも利益を吹き付けない］となります。なめらかな日本語にすれば［誰の利益にもならないのは悪い風ではない］つまり［誰のためにもならないからと言って悪い風ではない］、結局［甲の損は乙の得］となります。
こうした〔It is a 〜〕というパターンのことわざはほかにもあって、たとえば、It is a long lane that has no turning.［どんな長い道にも必ず曲がり角はある］：［待てば海路の日和あり］に相当することわざ、あるいはIt is a wise father that knows his own child.［どんな賢い父親でも我が子のことはわからない］：［親ばか］に相当することわざなどです。
これらではいずれも、aの意味が［どれでも良いがそのうちひとつの］から［圧倒的多数は別の物］へと拡張されているのは大変興味深いことです。もしこの拡張が古い英語のなごりであるとすれば、特別な言葉やことわざにそうした言い回しが残っていても不思議ではありません。
5「学校英文法」は断片的な規則の集積体です
「学校英文法」が断片的な規則の集積体となっていることについては何度も触れましたが、最後にまとめて整理しておきます。
5-1『時制の一致』
「学校英文法」では、『主節の動詞が過去形になると従属節の動詞もこれに対応して時制が変化する』という規則を設け、『時制の一致』と呼んで重視しています。
『時制』とは、「いつを基準にして語っているのか」を示す動詞が表す「とき」のことで、『主節』と『従属節』が存在する文とは、複雑な文のひとつですから、これを言い直せば、複雑な文で「いつを基準にして語っているのか」を示す動詞が過去形になると、それまでは「いつを基準にして語っているのか」を示していたその他の動詞も過去形になるということです。
1-6-3節と1-10節で紹介したように、「いつを基準にして語っているのか」を示す動詞は文にひとつだけです。接続詞を導入した複雑な文では、複数の「いつを基準にして語っているのか」を示す動詞があっても良いのですが、中核となる動詞はやはりひとつです。そして、文意を明確にするために、その他の動詞が「いつを基準にして語っているのか」を示す動詞の支配下に入ります。あくまでも文意を明確にするためですから、誤解の恐れがなければ、そうしない場合もあります。要するに文意が正確に伝わるようにする必要があるということです。
たとえば、［私は、最近知ったのですが、彼女はこの７年間彼の暮らしに関わってきました（彼女と彼の不倫関係はまだ続いています）］と言いたい時には、『時制の一致』に従ってhadを使い、(a) I recently learned she had been in his life for the last seven years. と言うのではなく、hasを使って(b) I recently learned she has been in his life for the last seven years. のように言うそうです。
文(a)では、恐らく不倫関係にあった彼と彼女の関係がその時点ですでに切れていたことを示唆しているのに対して、(b)はその関係がまだ切れていないことを示唆しているからです。なぜなら、文(a)は［彼女は持っていた、彼の暮らしに関わってきた］ですから、過去にそうであったと言っていますが、(b)では［彼女は持っている、彼の暮らしに関わってきた］ですから、今も彼女は彼と不倫関係にあることになります。
また、I recently read an article about expats in China who’ve landed executive-level jobs with leading firms.［中国で一流企業のエグゼクティブ・レベルの職に就いた外国人の記事を最近読みました］では、過去にread［読んだ］記事に、外国人が［エグゼクティブ・レベルの職に就いた］と〔have landed〕の形で書かれています。過去に記事を読んだのですから、その記事に載っている人が職に就いたのも過去のことであり、その人はすでに退職しているかも知れません。それにも関わらず〔have landed〕［持っている、（職に）就いた］と「いつを基準にして語っているのか」を示す動詞の「とき」は「現在」です。多分、語り手である“私”は、読んだ記事はごく最近のものだと思っているのでしょう。目の前にいる“あなた”の存在を意識して、言外に何かを言いたかったのかも知れません。
「学校英文法」が断片的な規則の集積体となっていることについては何度も触れましたが、最後にまとめて整理しておきます。
5-1『時制の一致』
「学校英文法」では、『主節の動詞が過去形になると従属節の動詞もこれに対応して時制が変化する』という規則を設け、『時制の一致』と呼んで重視しています。
『時制』とは、「いつを基準にして語っているのか」を示す動詞が表す「とき」のことで、『主節』と『従属節』が存在する文とは、複雑な文のひとつですから、これを言い直せば、複雑な文で「いつを基準にして語っているのか」を示す動詞が過去形になると、それまでは「いつを基準にして語っているのか」を示していたその他の動詞も過去形になるということです。
1-6-3節と1-10節で紹介したように、「いつを基準にして語っているのか」を示す動詞は文にひとつだけです。接続詞を導入した複雑な文では、複数の「いつを基準にして語っているのか」を示す動詞があっても良いのですが、中核となる動詞はやはりひとつです。そして、文意を明確にするために、その他の動詞が「いつを基準にして語っているのか」を示す動詞の支配下に入ります。あくまでも文意を明確にするためですから、誤解の恐れがなければ、そうしない場合もあります。要するに文意が正確に伝わるようにする必要があるということです。
たとえば、［私は、最近知ったのですが、彼女はこの７年間彼の暮らしに関わってきました（彼女と彼の不倫関係はまだ続いています）］と言いたい時には、『時制の一致』に従ってhadを使い、(a) I recently learned she had been in his life for the last seven years. と言うのではなく、hasを使って(b) I recently learned she has been in his life for the last seven years. のように言うそうです。
文(a)では、恐らく不倫関係にあった彼と彼女の関係がその時点ですでに切れていたことを示唆しているのに対して、(b)はその関係がまだ切れていないことを示唆しているからです。なぜなら、文(a)は［彼女は持っていた、彼の暮らしに関わってきた］ですから、過去にそうであったと言っていますが、(b)では［彼女は持っている、彼の暮らしに関わってきた］ですから、今も彼女は彼と不倫関係にあることになります。
また、I recently read an article about expats in China who’ve landed executive-level jobs with leading firms.［中国で一流企業のエグゼクティブ・レベルの職に就いた外国人の記事を最近読みました］では、過去にread［読んだ］記事に、外国人が［エグゼクティブ・レベルの職に就いた］と〔have landed〕の形で書かれています。過去に記事を読んだのですから、その記事に載っている人が職に就いたのも過去のことであり、その人はすでに退職しているかも知れません。それにも関わらず〔have landed〕［持っている、（職に）就いた］と「いつを基準にして語っているのか」を示す動詞の「とき」は「現在」です。多分、語り手である“私”は、読んだ記事はごく最近のものだと思っているのでしょう。目の前にいる“あなた”の存在を意識して、言外に何かを言いたかったのかも知れません。
同様に、Well, I was at an office party last week when this jovial older woman came up to me and asked very casually if I was seeing anyone and if I’m interested in American men.［実は、先週社内のパーティーに出ていた時に、陽気な年配の女性が私のところに来て、付き合っている人はいるのか、アメリカ人の男性に興味はあるのかと、とても気軽に尋ねたのです］においても、「とき」は基本的に過去形ですが、最後だけ〔am interested〕と「現在」になっています。これも多分、話しを終える時に、話し手である“私”がふと我に返ったかのように目の前にいる人が気になって、［いま、アメリカ人の男性に興味はあるのか、なんて尋ねたの］といった気分を表現したかったのでしょう。
大事なのは、『時制の一致』ではなく、書く人の気持ちや事実が正確に伝わるように「とき」に注意しつつ表現するということです。
《英語教師のための英文法 吉田正治 研究社出版（1995）によれば、話し手・書き手が問題の（陳述）内容を発話時を基準点にして見たときに、何らかの意味でその内容が依然として「生きている」なら『時制』の照応は起こらない》
大事なのは、『時制の一致』ではなく、書く人の気持ちや事実が正確に伝わるように「とき」に注意しつつ表現するということです。
《英語教師のための英文法 吉田正治 研究社出版（1995）によれば、話し手・書き手が問題の（陳述）内容を発話時を基準点にして見たときに、何らかの意味でその内容が依然として「生きている」なら『時制』の照応は起こらない》
5-2『形式主語』または『仮主語』と『真主語』
「学校英文法」には『形式主語』または『仮主語』と『真主語』いう用語があって、次のように説明しています。すなわち、以下の文(a)は、『形式主語』または『仮主語』itを使って、文(b)のように書き換えることができる。この『形式主語』または『仮主語』には意味はなく、『不定詞』の部分を『真主語』という。(a) To learn a foreign language is difficult. (b) It is difficult to learn a foreign language.
文(a)は、文(b)に比べると形式張った言い方であると、両者の違いを説明している文法書もありますが、大きな問題は文のニュアンスを変えることなく、こうした書き換えができると錯覚させてしまうことです。
さらに、文頭からそのまま読む（理解する）という基本的な素養が身に付きません。『形式主語』などと説明すると、英文を文末から訳すことになってしまうからです。
また、文章を尊重する態度が養えません。作家にとって文章に使った単語で不要なものはひとつもないはずです。慎重に選んだ言葉を別の言葉で置き換えたり無視されたりしたら、作家は怒るに違いありません。
従って、(a)は［外国語を学ぶことは難しい］と訳し、(b)は［あれは難しい、外国語を学ぶことは］つまり［難しいですね、外国語を学ぶのは］などと、(a)と(b)を区別して訳すべきでしょう。
もちろん、翻訳作家の仕事であればこれにこだわらず、英文がかもし出す雰囲気を彷彿とさせる日本語で表現するよう努めることは当然のことです。たとえば、英文が過去形であっても、臨場感を生み出すために現在形で翻訳するとか、構文にこだわらず『能動態』の文を『受動態』にするとか、複数の文をつないで訳すなど、日本語らしい文にするための多くの工夫が必要でしょう。
もともとitは、その語源が古英語のhit（he［彼］の中性形）であることからわかるように、その基本イメージは［「前述の」あれ、それ］ですから、空間的心理的に話し手から遠いものを指すthat［あの、その］とは異なります。それぞれの複数形が、they［「前述の」それら、彼ら］とthose［あれら、それら］であることからも、両者の違いがわかります。
他の語と同様に、itもいろいろな使われ方をしますが、それらはすべてitの基本イメージ［「前述の」あれ、それ］の拡張として理解することができます。
これが［「すでに知っている」あれ］や［「すでに気付いている」あれ］へと拡張されると、たとえば、It rained all day yesterday.は、［「すでに知っている（気付いている）」あれ］［雨が降った］［終日］［昨日］ですから、［「すでに知っている（気付いている）ことだが」昨日は終日雨だった］となります。
さらに、［「すでにイメージのある」あれ］や［「すでにわかっている」あれ］に拡張されると、たとえば、It’s important to keep your promise.は、［あれって大切ですねぇ、約束を守ることですよ］となります。
同様に「学校英文法」では、〔There is 名詞〕のThereは『形式主語』であって、後ろに続く「名詞」が『真主語』である、と説明します。しかし、こうした形式的な説明では以下の(a)〜(d)のような文がなぜ存在するのか、なぜ筆者はこのような形で表現したいと思ったのだろうか、という疑問に答えることはできないでしょう。
(a) It is necessary for there to be a peaceful settlement.［平和的解決の必要がある］
(b) In spite of there having been no rain, the ground was wet.［雨が降らなかったにもかかわらず、地面は濡れていた］
(c) There stands an old castle on the hill.［丘の上には古いお城が建っている］
(d) There followed a long silence.［その後、長い沈黙が続いた］
文(a)は２つの文It is necessary.とThere is a peaceful settlement.をつないだ文です。筆者は、この２つの文が持っているニュアンスをできる限り残しつつ、ひとつの文で表現したいと思ったに違いありません。その時、接続詞thatを使って２つの文を単純につないでしまうことには大いに抵抗感があったのでしょう。「動詞を分詞にして、動詞の数を減らす」方法を採用しようと考えたかも知れませんが、分詞を使うと［平和的な解決は未来までずっと続く］というニュアンスが表せないので、分詞の代わりに〔to 原形〕の形を採用することにし、さらにthere［そこ］を「指す」ためにforを導入して、(a)の文が生まれたわけです。〔There is〕の用法では、副詞there［そこ］が極限にまで拡張され、「目の前には無いけれども、どこかにあるものを頭の中に思い浮かばせる機能だけを残した名詞(主語)」となっていますから、forを導入することによって、there［そこ］が持っているそうしたイメージを残したかったのでしょう。
「学校英文法」には『形式主語』または『仮主語』と『真主語』いう用語があって、次のように説明しています。すなわち、以下の文(a)は、『形式主語』または『仮主語』itを使って、文(b)のように書き換えることができる。この『形式主語』または『仮主語』には意味はなく、『不定詞』の部分を『真主語』という。(a) To learn a foreign language is difficult. (b) It is difficult to learn a foreign language.
文(a)は、文(b)に比べると形式張った言い方であると、両者の違いを説明している文法書もありますが、大きな問題は文のニュアンスを変えることなく、こうした書き換えができると錯覚させてしまうことです。
さらに、文頭からそのまま読む（理解する）という基本的な素養が身に付きません。『形式主語』などと説明すると、英文を文末から訳すことになってしまうからです。
また、文章を尊重する態度が養えません。作家にとって文章に使った単語で不要なものはひとつもないはずです。慎重に選んだ言葉を別の言葉で置き換えたり無視されたりしたら、作家は怒るに違いありません。
従って、(a)は［外国語を学ぶことは難しい］と訳し、(b)は［あれは難しい、外国語を学ぶことは］つまり［難しいですね、外国語を学ぶのは］などと、(a)と(b)を区別して訳すべきでしょう。
もちろん、翻訳作家の仕事であればこれにこだわらず、英文がかもし出す雰囲気を彷彿とさせる日本語で表現するよう努めることは当然のことです。たとえば、英文が過去形であっても、臨場感を生み出すために現在形で翻訳するとか、構文にこだわらず『能動態』の文を『受動態』にするとか、複数の文をつないで訳すなど、日本語らしい文にするための多くの工夫が必要でしょう。
もともとitは、その語源が古英語のhit（he［彼］の中性形）であることからわかるように、その基本イメージは［「前述の」あれ、それ］ですから、空間的心理的に話し手から遠いものを指すthat［あの、その］とは異なります。それぞれの複数形が、they［「前述の」それら、彼ら］とthose［あれら、それら］であることからも、両者の違いがわかります。
他の語と同様に、itもいろいろな使われ方をしますが、それらはすべてitの基本イメージ［「前述の」あれ、それ］の拡張として理解することができます。
これが［「すでに知っている」あれ］や［「すでに気付いている」あれ］へと拡張されると、たとえば、It rained all day yesterday.は、［「すでに知っている（気付いている）」あれ］［雨が降った］［終日］［昨日］ですから、［「すでに知っている（気付いている）ことだが」昨日は終日雨だった］となります。
さらに、［「すでにイメージのある」あれ］や［「すでにわかっている」あれ］に拡張されると、たとえば、It’s important to keep your promise.は、［あれって大切ですねぇ、約束を守ることですよ］となります。
同様に「学校英文法」では、〔There is 名詞〕のThereは『形式主語』であって、後ろに続く「名詞」が『真主語』である、と説明します。しかし、こうした形式的な説明では以下の(a)〜(d)のような文がなぜ存在するのか、なぜ筆者はこのような形で表現したいと思ったのだろうか、という疑問に答えることはできないでしょう。
(a) It is necessary for there to be a peaceful settlement.［平和的解決の必要がある］
(b) In spite of there having been no rain, the ground was wet.［雨が降らなかったにもかかわらず、地面は濡れていた］
(c) There stands an old castle on the hill.［丘の上には古いお城が建っている］
(d) There followed a long silence.［その後、長い沈黙が続いた］
文(a)は２つの文It is necessary.とThere is a peaceful settlement.をつないだ文です。筆者は、この２つの文が持っているニュアンスをできる限り残しつつ、ひとつの文で表現したいと思ったに違いありません。その時、接続詞thatを使って２つの文を単純につないでしまうことには大いに抵抗感があったのでしょう。「動詞を分詞にして、動詞の数を減らす」方法を採用しようと考えたかも知れませんが、分詞を使うと［平和的な解決は未来までずっと続く］というニュアンスが表せないので、分詞の代わりに〔to 原形〕の形を採用することにし、さらにthere［そこ］を「指す」ためにforを導入して、(a)の文が生まれたわけです。〔There is〕の用法では、副詞there［そこ］が極限にまで拡張され、「目の前には無いけれども、どこかにあるものを頭の中に思い浮かばせる機能だけを残した名詞(主語)」となっていますから、forを導入することによって、there［そこ］が持っているそうしたイメージを残したかったのでしょう。
同様に、(b)は、In spite of it, the ground was wet.とThere had been no rain.という２つの文からできています。ひとつの文で表現したいと思った筆者は、［雨は降り続いてはいなかった］というニュアンスを伝えるために、現在分詞を使って文をつなごうと考えたのでしょう。
また、(c)と(d)の文では、筆者は〔There is〕のニュアンスを使って「どこかにあるものをぼんやりと頭の中に思い浮かばせる」効果をねらったのでしょう。
他にも〔There is〕を使ったThat’s all there is to it.［ただそれだけのことだ］というわかりにくい文がありますが、これもThat’s all.とThere is all to it.という文からできており、allをthatで置き換えてつないでから、そのthatを省略した文であると説明することができます。
なお、「学校英文法」には『形式主語の構文』とよく似た『強調構文』があり、異なる構文であると説明されていますが、『強調構文』も『形式主語の構文』と同じように理解することができます。
たとえば、『強調構文』のIt was here that I first came across him.［私が初めて彼と偶然出会ったのは、ここだった］は、It was here.とI first came across him here.という２つの文を接続詞thatでつないで、重複する語hereを削除した文です。
一方、『形式主語の構文』のIt is true that he passed the exam.［彼が試験に合格したのは、本当だ］は、It is true.とHe passed the exam.という２つの文を接続詞thatでつないだ文です。
つまり、２つの文はニュアンスが違うだけで、文が成立するプロセスには本質的な違いがありません。
《英語の感覚 大津栄一郎 岩波新書（1993）によれば、itはこれから述べようとする「事」の代用として先に提示された「ある観念」であり、さらに言えば「ある観念」として明確化される以前の「観念」、まだ特定されていない「観念」です》
《現代日本語文典 小泉保 大学書林（2008）によれば、日本語では「こと」や「の」といった形式名詞（名詞としての具体的な意味が薄く、抽象的で形式的内容をもち、その前に形容詞句を伴って文の部分を形成する）が多用される。（英語の『形式主語』と同じような位置づけの名詞が実は日本語にもたくさんあるわけです）》
また、(c)と(d)の文では、筆者は〔There is〕のニュアンスを使って「どこかにあるものをぼんやりと頭の中に思い浮かばせる」効果をねらったのでしょう。
他にも〔There is〕を使ったThat’s all there is to it.［ただそれだけのことだ］というわかりにくい文がありますが、これもThat’s all.とThere is all to it.という文からできており、allをthatで置き換えてつないでから、そのthatを省略した文であると説明することができます。
なお、「学校英文法」には『形式主語の構文』とよく似た『強調構文』があり、異なる構文であると説明されていますが、『強調構文』も『形式主語の構文』と同じように理解することができます。
たとえば、『強調構文』のIt was here that I first came across him.［私が初めて彼と偶然出会ったのは、ここだった］は、It was here.とI first came across him here.という２つの文を接続詞thatでつないで、重複する語hereを削除した文です。
一方、『形式主語の構文』のIt is true that he passed the exam.［彼が試験に合格したのは、本当だ］は、It is true.とHe passed the exam.という２つの文を接続詞thatでつないだ文です。
つまり、２つの文はニュアンスが違うだけで、文が成立するプロセスには本質的な違いがありません。
《英語の感覚 大津栄一郎 岩波新書（1993）によれば、itはこれから述べようとする「事」の代用として先に提示された「ある観念」であり、さらに言えば「ある観念」として明確化される以前の「観念」、まだ特定されていない「観念」です》
《現代日本語文典 小泉保 大学書林（2008）によれば、日本語では「こと」や「の」といった形式名詞（名詞としての具体的な意味が薄く、抽象的で形式的内容をもち、その前に形容詞句を伴って文の部分を形成する）が多用される。（英語の『形式主語』と同じような位置づけの名詞が実は日本語にもたくさんあるわけです）》
5-3『分詞構文』
「学校英文法」には『分詞構文』という用語があって、「接続詞で結びつけられた文を現在分詞や過去分詞を使って書き直す」教育がおこなわれています。『分詞構文とは現在分詞または過去分詞で始まる語群が副詞句となって主節を修飾する文である』と定義されています。つまり、「接続詞を使わずに分詞を用いて短い文にしたのが『分詞構文』である」というわけです。
ニュアンスを変えずに文の書き換えができると錯覚させてしまうことが大きな問題ですが、『分詞構文』の中には今では使われなくなった文も多いそうですから、そもそも『分詞構文』と銘打って教える意味がないのかも知れません。しかし何よりも問題なのは、複数の単純な文をつないでひとつの複雑な文をつくることは、「いつを基準にして語っているのか」を示す動詞はひとつの文に１つしか使えないという原則に従って動詞の数を減らすプロセスである、という英文法の本質が見えてこないことです。
『分詞構文』とは、「２つの文がほぼ同時に起きているできごとである場合に限って、文をつなぐ原則を拡張して（２つの文に共通する語を並べて同格の形にするのではなくて）、動詞を現在分詞や過去分詞に換えれば、文をそのまま並べてつなぐことができる」という規則をさらに拡張したものです。すなわち、新たにコンマを導入することによって、２つの文から構成されていることを明確に示した文です。
たとえば、『分詞構文』であるSeeing a policeman, he ran away.［警官を見ると、彼は走り去った］という文は、ほぼ同時のできごとである?He saw a policeman.と?He ran away.を現在分詞seeingと同格のコンマを使ってつないだ文です。
改めて言えば、以下のように、２つの文をひとつにする方法は色々あるので、どれを採用したら良いのかは、文全体の意図や雰囲気で決める必要があると教えるべきでしょう。
He saw a policeman.＋He ran away.
→Seeing a policeman, he ran away.：『分詞構文』
→He, who saw a policeman, ran away.
→When he saw a policeman, he ran away.
→He saw a policeman and ran away.
《英文法のカラクリがわかる 佐久間治 研究社（2005）によれば、現在分詞はもともと形容詞として〔sit smoking〕［タバコを吸いながら座っている］のように、特定の動詞の後に置かれて「〜しながら」という意味で使われていた。初めのうちは『目的語』を取らなかったのだが、次第にHe sits smoking a pipe.のように『目的語』を取るようになり、次にはHe sits in an armchair smoking a pipe.のように副詞（in an armchair）が割って入ることとなった。そのため現在分詞が動詞から離れて独立した要素である印象を与えるようになり、最終的にはHe sits in an armchair, smoking a pipe.と構造が２分された。これが『分詞構文』である。また、The day being fine, we decided to go swimming.［天気が良かったので、私たちは泳ぎに行くことにした］のような、分詞の主語が文の主語と異なる『分詞構文』（『独立分詞構文』と呼ばれています）は、ラテン語文法の構文を模倣したものであって、分詞の前に主語を補って生まれたものではない》
《英語教師のための英文法 吉田正治 研究社出版（1995）によれば、『分詞構文』の表す意味の80％以上が、典型的には「Aをしながら／でありながら、Bをする／である」というAとB２つの動作・状態が同時に行われる／存在することを表すものだが、「AをしてBをする」という相前後する２つの動作の一方を分詞で表すものもある》
「学校英文法」には『分詞構文』という用語があって、「接続詞で結びつけられた文を現在分詞や過去分詞を使って書き直す」教育がおこなわれています。『分詞構文とは現在分詞または過去分詞で始まる語群が副詞句となって主節を修飾する文である』と定義されています。つまり、「接続詞を使わずに分詞を用いて短い文にしたのが『分詞構文』である」というわけです。
ニュアンスを変えずに文の書き換えができると錯覚させてしまうことが大きな問題ですが、『分詞構文』の中には今では使われなくなった文も多いそうですから、そもそも『分詞構文』と銘打って教える意味がないのかも知れません。しかし何よりも問題なのは、複数の単純な文をつないでひとつの複雑な文をつくることは、「いつを基準にして語っているのか」を示す動詞はひとつの文に１つしか使えないという原則に従って動詞の数を減らすプロセスである、という英文法の本質が見えてこないことです。
『分詞構文』とは、「２つの文がほぼ同時に起きているできごとである場合に限って、文をつなぐ原則を拡張して（２つの文に共通する語を並べて同格の形にするのではなくて）、動詞を現在分詞や過去分詞に換えれば、文をそのまま並べてつなぐことができる」という規則をさらに拡張したものです。すなわち、新たにコンマを導入することによって、２つの文から構成されていることを明確に示した文です。
たとえば、『分詞構文』であるSeeing a policeman, he ran away.［警官を見ると、彼は走り去った］という文は、ほぼ同時のできごとである?He saw a policeman.と?He ran away.を現在分詞seeingと同格のコンマを使ってつないだ文です。
改めて言えば、以下のように、２つの文をひとつにする方法は色々あるので、どれを採用したら良いのかは、文全体の意図や雰囲気で決める必要があると教えるべきでしょう。
He saw a policeman.＋He ran away.
→Seeing a policeman, he ran away.：『分詞構文』
→He, who saw a policeman, ran away.
→When he saw a policeman, he ran away.
→He saw a policeman and ran away.
《英文法のカラクリがわかる 佐久間治 研究社（2005）によれば、現在分詞はもともと形容詞として〔sit smoking〕［タバコを吸いながら座っている］のように、特定の動詞の後に置かれて「〜しながら」という意味で使われていた。初めのうちは『目的語』を取らなかったのだが、次第にHe sits smoking a pipe.のように『目的語』を取るようになり、次にはHe sits in an armchair smoking a pipe.のように副詞（in an armchair）が割って入ることとなった。そのため現在分詞が動詞から離れて独立した要素である印象を与えるようになり、最終的にはHe sits in an armchair, smoking a pipe.と構造が２分された。これが『分詞構文』である。また、The day being fine, we decided to go swimming.［天気が良かったので、私たちは泳ぎに行くことにした］のような、分詞の主語が文の主語と異なる『分詞構文』（『独立分詞構文』と呼ばれています）は、ラテン語文法の構文を模倣したものであって、分詞の前に主語を補って生まれたものではない》
《英語教師のための英文法 吉田正治 研究社出版（1995）によれば、『分詞構文』の表す意味の80％以上が、典型的には「Aをしながら／でありながら、Bをする／である」というAとB２つの動作・状態が同時に行われる／存在することを表すものだが、「AをしてBをする」という相前後する２つの動作の一方を分詞で表すものもある》
5-4『未来完了形』
「学校英文法」には『未来完了形』という用語があって、「〔助動詞will have 過去分詞〕の形で、未来のある時点を基準にしてその時までの状態・動作の完了（結果）・経験・継続を表す」と説明されています。たとえば、I realize the promotion isn’t very successful yet, but by spring it’ll have gained momentum and surpassed expectations.［その販促活動がまだあまりうまくいっていないことは承知しているが、春までには弾みがついて、予想を上回っていることだろう］といった文です。
〔助動詞 have 過去分詞〕の形ですから、これは何も特別ではなくて、単に〔will have gained〕［〜するつもり］［持っている］［獲得した状態で］ということです。ただこの文には、〔by spring〕［春までに］という未来を表す語があるので、助動詞willの意味が「意志」から「推量」や「未来」のニュアンスへと拡張されるだけです。「いつを基準にして語っているのか」の「基準のとき」は「現在」ですが、「語っている内容はいつのことか」の「内容のとき」が〔spring〕「春」という「未来」ですから、〔will have gained〕の意味が［獲得した状態で持っている「つもり」］から、［獲得した状態で持っている「はずだ」］や［獲得した状態で持っている「だろう」］となるわけです。
まとめると、「現在」販促活動がうまくいっていないということをわかっている私は、視点を「春」に移して、その時までにit＝〔the promotion〕［販促活動］が［弾みを獲得した状態になっており、予想を上回った状態になっているだろう］と「現在」思っているわけです。
『未来完了形』などという用語を使うと、「未来は将来のことなのに、なぜ終了したことを表す完了と結びつくのか」といった素朴な疑問に対応できず、無理やり覚え込ませることになるので、そうした用語を使って得になることは何もないでしょう。
《英文法教室＜新装版＞ 伊藤和夫 研究社（2011）によれば、同じ文であってもtomorrow を同伴するHe will have arrived there by tomorrow.［彼は明日までにはそこに着いているだろう］は『未来完了』であるが、nowを同伴するHe will have arrived there by now.［彼はもうそこに着いているだろう］は『現在完了』に推量のwillが付加された形である。（『未来完了』といった用語を使う無意味さがわかります）》
《英文法のカラクリがわかる 佐久間治 研究社（2005）によれば、『過去完了』や『未来完了』などの複雑な時制はラテン語文法の語順をそっくり模倣したものであり、ラテン語文法を英語表現の規範にすべきという17〜18世紀の文法学者や学識者の強い意向により生まれた》
「学校英文法」には『未来完了形』という用語があって、「〔助動詞will have 過去分詞〕の形で、未来のある時点を基準にしてその時までの状態・動作の完了（結果）・経験・継続を表す」と説明されています。たとえば、I realize the promotion isn’t very successful yet, but by spring it’ll have gained momentum and surpassed expectations.［その販促活動がまだあまりうまくいっていないことは承知しているが、春までには弾みがついて、予想を上回っていることだろう］といった文です。
〔助動詞 have 過去分詞〕の形ですから、これは何も特別ではなくて、単に〔will have gained〕［〜するつもり］［持っている］［獲得した状態で］ということです。ただこの文には、〔by spring〕［春までに］という未来を表す語があるので、助動詞willの意味が「意志」から「推量」や「未来」のニュアンスへと拡張されるだけです。「いつを基準にして語っているのか」の「基準のとき」は「現在」ですが、「語っている内容はいつのことか」の「内容のとき」が〔spring〕「春」という「未来」ですから、〔will have gained〕の意味が［獲得した状態で持っている「つもり」］から、［獲得した状態で持っている「はずだ」］や［獲得した状態で持っている「だろう」］となるわけです。
まとめると、「現在」販促活動がうまくいっていないということをわかっている私は、視点を「春」に移して、その時までにit＝〔the promotion〕［販促活動］が［弾みを獲得した状態になっており、予想を上回った状態になっているだろう］と「現在」思っているわけです。
『未来完了形』などという用語を使うと、「未来は将来のことなのに、なぜ終了したことを表す完了と結びつくのか」といった素朴な疑問に対応できず、無理やり覚え込ませることになるので、そうした用語を使って得になることは何もないでしょう。
《英文法教室＜新装版＞ 伊藤和夫 研究社（2011）によれば、同じ文であってもtomorrow を同伴するHe will have arrived there by tomorrow.［彼は明日までにはそこに着いているだろう］は『未来完了』であるが、nowを同伴するHe will have arrived there by now.［彼はもうそこに着いているだろう］は『現在完了』に推量のwillが付加された形である。（『未来完了』といった用語を使う無意味さがわかります）》
《英文法のカラクリがわかる 佐久間治 研究社（2005）によれば、『過去完了』や『未来完了』などの複雑な時制はラテン語文法の語順をそっくり模倣したものであり、ラテン語文法を英語表現の規範にすべきという17〜18世紀の文法学者や学識者の強い意向により生まれた》
5-5『未来形の代わりをする現在時制』
「学校英文法」に「ときや条件を表す『副詞節』では未来形の代わりに現在形を用いるが、『名詞節』や『形容詞節』では未来形を用いる」という規則があり、たとえば以下のような例文をあげています。
(a) We will start when he comes.［彼が来たら出発します］：『副詞節』
(b) I don’t know when he will come.［彼がいつ来るか分からない］：『名詞節』
これは「学校英文法」に典型的な形式的説明であって、実際には『副詞節』か『名詞節』かが問題になるのではなく、単に述べたいことが厳然としてそこに存在しているという現在のイメージに合っていれば現在形を使い、意志や推量や未来のニュアンスを表現したいのであればwillやshallを使うということに過ぎません。文(a)では［彼が来ることはほぼ決まっている］という気持ちなので「現在」で表現し、文(b)では［来るかどうかはっきりしない］と思っているのでwillを使っているだけです。
以下の例も同様です。
(c) I will go out if it is fine tomorrow.［あす天気なら外出します］：『副詞節』
(d) I wonder if it will be fine tomorrow.［あす天気になるかしら］：『名詞節』
文(c)は単なる推量ではなくて、［あすは天気のはずだが、そうならば］という強い確信にも似た条件を述べているので（厳然として存在しているというイメージがあるので）「現在」で表現し、文(d)では天気になるかどうかがわからないので、推量の気持ちを表すためにwillを使っています。
従って、「条件」を表す『副詞節』であっても、単なる推量に近い場合はwillを用います。たとえば、次の文では、彼女がもっと幸福になるかどうかが不明であり推量のニュアンスがあるのでwillを使っています。
If it will make her happier, I’ll give up drinking.［私が禁酒することで彼女が喜ぶなら、飲むのをやめます］
あるいは、「条件」を表す『副詞節』であっても、意志のニュアンスが含まれている場合は、次のようにwillを使います。
I’ll do it if you will help me.［あなたが手伝って下さるなら、私はやります］
「学校英文法」に「ときや条件を表す『副詞節』では未来形の代わりに現在形を用いるが、『名詞節』や『形容詞節』では未来形を用いる」という規則があり、たとえば以下のような例文をあげています。
(a) We will start when he comes.［彼が来たら出発します］：『副詞節』
(b) I don’t know when he will come.［彼がいつ来るか分からない］：『名詞節』
これは「学校英文法」に典型的な形式的説明であって、実際には『副詞節』か『名詞節』かが問題になるのではなく、単に述べたいことが厳然としてそこに存在しているという現在のイメージに合っていれば現在形を使い、意志や推量や未来のニュアンスを表現したいのであればwillやshallを使うということに過ぎません。文(a)では［彼が来ることはほぼ決まっている］という気持ちなので「現在」で表現し、文(b)では［来るかどうかはっきりしない］と思っているのでwillを使っているだけです。
以下の例も同様です。
(c) I will go out if it is fine tomorrow.［あす天気なら外出します］：『副詞節』
(d) I wonder if it will be fine tomorrow.［あす天気になるかしら］：『名詞節』
文(c)は単なる推量ではなくて、［あすは天気のはずだが、そうならば］という強い確信にも似た条件を述べているので（厳然として存在しているというイメージがあるので）「現在」で表現し、文(d)では天気になるかどうかがわからないので、推量の気持ちを表すためにwillを使っています。
従って、「条件」を表す『副詞節』であっても、単なる推量に近い場合はwillを用います。たとえば、次の文では、彼女がもっと幸福になるかどうかが不明であり推量のニュアンスがあるのでwillを使っています。
If it will make her happier, I’ll give up drinking.［私が禁酒することで彼女が喜ぶなら、飲むのをやめます］
あるいは、「条件」を表す『副詞節』であっても、意志のニュアンスが含まれている場合は、次のようにwillを使います。
I’ll do it if you will help me.［あなたが手伝って下さるなら、私はやります］
5-6『theの用法』
「学校英文法」には『theの用法』という項目があって、theは『?前に出た名詞につく、?その場の状況から何をさしているか明らかな名詞につく、?ただ１つしかないと考えられているものの名詞につく、?形容詞の最上級やonly、first、last、sameなどで限定されている名詞につく、?句や節で限定されている名詞につく、?国民全体を表す名詞につく、?種類全体を表す、?the＋形容詞（分詞）、?by the＋名詞、?the＋普通名詞、?人・動物などの身体の一部をさす、?慣用表現』のように分類して説明しています。
見ているだけで気が遠くなりますが、最後に?慣用表現という項目が出てくるので、要はすべて覚えろと言っていることがわかり、ついて行けないという気分になってしまいます。
具体的に、たとえば『?句や節で限定されている名詞につく』という項目を見ると、例文にThe principal of our school is an American.［私たちの学校の校長先生はアメリカ人です］があり、『句や節で限定されている名詞であるがaがつく場合』としてHe is a teacher at our school.［彼は私たちの学校の先生です］や、This is a piece that Chopin composed.［これはショパンの作曲した曲です］が紹介されています。
?の例文は、『?ただ１つしかないと考えられているものの名詞につく』についての例文でもありますし、『句や節で限定されている名詞であるがaがつく場合』の例文は、その例外と言うよりもむしろ別の文でしょう。結局、学習者は「学校英文法」を読んでも、何のことかよくわからないということになります。
改めて説明すると、たとえばPenalties are stiffer than before, but the thing that really works on a nationwide level is further education.［罰則は以前に比べて厳しくなっていますが、全国レベルで本当に効果があるのは更なる啓発活動でしょう］で、会話が［罰則は以前に比べて厳しくなっています、しかし〔the thing〕］というところまで進んだ時に、これを聞いている相手は「えっ、私も知っている（想像できる）あのthingだって？」と身構えます。すると、話が［that（それというのは）本当に働いています、全国レベルで］と進んだので、なるほど「そういうあのthingね」とtheに納得するわけです。
あるいは、I hope you at least were in the habit of reading books during your adolescence.［あなたは思春期のころ、読書をする習慣ぐらいはあったのでしょう］では、話が［私は、あなたに望んでいます、あなたは少なくともあった、〔the habit〕の中に］まで進んで来た時、相手は「私も知っている（想像できる）あのhabitだって？」と反応します。すると、［habitは、of（切っても切れない関係で）、本を読む、思春期の頃］だったので、「そういうあのhabitね」とtheに納得します。
同様に、You might also want to tell her about products like the electronics stress-monitoring device that provides ongoing feedback on the stress in your body.［体内のストレスの度合いを継続的に知らせてくれるストレスチェック用の電子機器などについても、彼女に教えてあげるといいかもしれませんね］では、話が［あなたはまた彼女に話したいかもしれませんね、製品について、ような、the electronics stress-monitoring device］まで進んだ時、聞いている相手は「私も知っている（想像できる）あのelectronics stress-monitoring deviceだって？」と思います。すると、［that（それというのは）体内のストレスの度合いを継続的に知らせてくれる］と話が進んだので、そうか「そういうあのelectronics stress-monitoring deviceね」とtheに納得します。
ですから、たとえばI’m not saying that reading online is a total waste of time.［私はネットで何かを読むことがまったく時間の無駄だと言っているのではありません］では、［私は言い続けている状態にありません、それというのは、ネットで読むのはa（どれでも良いがそのうちひとつの）まったくの時間の無駄です］ということなので、聞いている相手は「まったくの時間の無駄ということにはいろいろあるけれど、という前提で話をしているな」と話し手の意図を理解することができます。
「学校英文法」には『theの用法』という項目があって、theは『?前に出た名詞につく、?その場の状況から何をさしているか明らかな名詞につく、?ただ１つしかないと考えられているものの名詞につく、?形容詞の最上級やonly、first、last、sameなどで限定されている名詞につく、?句や節で限定されている名詞につく、?国民全体を表す名詞につく、?種類全体を表す、?the＋形容詞（分詞）、?by the＋名詞、?the＋普通名詞、?人・動物などの身体の一部をさす、?慣用表現』のように分類して説明しています。
見ているだけで気が遠くなりますが、最後に?慣用表現という項目が出てくるので、要はすべて覚えろと言っていることがわかり、ついて行けないという気分になってしまいます。
具体的に、たとえば『?句や節で限定されている名詞につく』という項目を見ると、例文にThe principal of our school is an American.［私たちの学校の校長先生はアメリカ人です］があり、『句や節で限定されている名詞であるがaがつく場合』としてHe is a teacher at our school.［彼は私たちの学校の先生です］や、This is a piece that Chopin composed.［これはショパンの作曲した曲です］が紹介されています。
?の例文は、『?ただ１つしかないと考えられているものの名詞につく』についての例文でもありますし、『句や節で限定されている名詞であるがaがつく場合』の例文は、その例外と言うよりもむしろ別の文でしょう。結局、学習者は「学校英文法」を読んでも、何のことかよくわからないということになります。
改めて説明すると、たとえばPenalties are stiffer than before, but the thing that really works on a nationwide level is further education.［罰則は以前に比べて厳しくなっていますが、全国レベルで本当に効果があるのは更なる啓発活動でしょう］で、会話が［罰則は以前に比べて厳しくなっています、しかし〔the thing〕］というところまで進んだ時に、これを聞いている相手は「えっ、私も知っている（想像できる）あのthingだって？」と身構えます。すると、話が［that（それというのは）本当に働いています、全国レベルで］と進んだので、なるほど「そういうあのthingね」とtheに納得するわけです。
あるいは、I hope you at least were in the habit of reading books during your adolescence.［あなたは思春期のころ、読書をする習慣ぐらいはあったのでしょう］では、話が［私は、あなたに望んでいます、あなたは少なくともあった、〔the habit〕の中に］まで進んで来た時、相手は「私も知っている（想像できる）あのhabitだって？」と反応します。すると、［habitは、of（切っても切れない関係で）、本を読む、思春期の頃］だったので、「そういうあのhabitね」とtheに納得します。
同様に、You might also want to tell her about products like the electronics stress-monitoring device that provides ongoing feedback on the stress in your body.［体内のストレスの度合いを継続的に知らせてくれるストレスチェック用の電子機器などについても、彼女に教えてあげるといいかもしれませんね］では、話が［あなたはまた彼女に話したいかもしれませんね、製品について、ような、the electronics stress-monitoring device］まで進んだ時、聞いている相手は「私も知っている（想像できる）あのelectronics stress-monitoring deviceだって？」と思います。すると、［that（それというのは）体内のストレスの度合いを継続的に知らせてくれる］と話が進んだので、そうか「そういうあのelectronics stress-monitoring deviceね」とtheに納得します。
ですから、たとえばI’m not saying that reading online is a total waste of time.［私はネットで何かを読むことがまったく時間の無駄だと言っているのではありません］では、［私は言い続けている状態にありません、それというのは、ネットで読むのはa（どれでも良いがそのうちひとつの）まったくの時間の無駄です］ということなので、聞いている相手は「まったくの時間の無駄ということにはいろいろあるけれど、という前提で話をしているな」と話し手の意図を理解することができます。
あるいは、An article I read the other day cited data showing that seven in 10 consumers now shop at discount stores, compared with five in 10 three years ago.［私が先日読んだ記事には、ディスカウントストアで買い物をする消費者は、３年前には10人に5人の割合だったのに対し、現在では10人に7人の割合だというデータが出ていました］では、話し手が聞いている相手はデータについて知らないだろうなと思っているので、〔An article〕と話を始めています。
また、I think it reflects the basic human need to be in the loop and to be accepted by your peers. People have a basic need to feel connected, and text-messaging is just the latest manifestation of that age-old need.［事情に通じていたい、仲間に受け入れられたい、という人間の基本的な欲求を反映しているのでしょうね。人には、人とのつながりを感じていたいという基本的な欲求があり、携帯メールは昔からあるその欲求を最も新しい形で表しているだけのことですね］では、聞いている相手が「私も知っている（想像できる）あの基本的な人間の欲求だって？」と思っていると、［事情に通じていたい、仲間に受け入れられたい］と話が進んだので、そうか「そういったthe basic human needね」とtheに納得するわけですが、ここで〔your peers〕［仲間］と言っていることが重要です。ここにyouがあるために、theであることの必然性が生まれます。
次に、「人々は持っています。どれでも良いがそのうちひとつの基本的な欲求」と言うので「まぁね、人間はいろんな基本的な欲求を持っているから」と思いつつ聞いていると「つながれた状態で感じる」というので、「いくつもある中のどれでも良いがそのひとつである人とつながりを感じていたいというa basic needについて話をしているんだ」と理解することになります。
また、I think it reflects the basic human need to be in the loop and to be accepted by your peers. People have a basic need to feel connected, and text-messaging is just the latest manifestation of that age-old need.［事情に通じていたい、仲間に受け入れられたい、という人間の基本的な欲求を反映しているのでしょうね。人には、人とのつながりを感じていたいという基本的な欲求があり、携帯メールは昔からあるその欲求を最も新しい形で表しているだけのことですね］では、聞いている相手が「私も知っている（想像できる）あの基本的な人間の欲求だって？」と思っていると、［事情に通じていたい、仲間に受け入れられたい］と話が進んだので、そうか「そういったthe basic human needね」とtheに納得するわけですが、ここで〔your peers〕［仲間］と言っていることが重要です。ここにyouがあるために、theであることの必然性が生まれます。
次に、「人々は持っています。どれでも良いがそのうちひとつの基本的な欲求」と言うので「まぁね、人間はいろんな基本的な欲求を持っているから」と思いつつ聞いていると「つながれた状態で感じる」というので、「いくつもある中のどれでも良いがそのひとつである人とつながりを感じていたいというa basic needについて話をしているんだ」と理解することになります。
5-7『倒置』による主語と動詞（助動詞）の逆転
副詞を文頭に出す際、名詞(主語)と動詞（助動詞がある時は動詞ではなくて助動詞）の位置関係が逆転することから、「学校英文法」ではこれを『倒置』と呼んでいますが、副詞を文頭に出しても、必ずしも『倒置』が起きるわけではないため、その解説はとても複雑なものになっています。
たとえば、そのひとつに『文全体を否定する副詞が前方に出る時には「倒置」が起きるが、肯定的な副詞が前に出る場合には「倒置」が起きない』という説明があります。
『倒置』文であるOnly in Hawaii do these flowers grow.［ハワイでだけこの花は咲きます（他の地域では咲きません）］は、否定的なニュアンスなので『倒置』されていると説明されます。ところが、同じ『倒置』文のIt is not enough to be busy; so are the ants.［忙しいだけでは十分ではない。アリだって忙しい］やWith freedom comes an awful lot of responsibility.［自由には、ものすごくたくさんの責任が伴うのですね］あるいはAll things in moderation, say I.［何事もほどほどに、ということでしょう］などは、『倒置』されているのですから、いずれも否定的な文意だということになりますが、はたしてそうでしょうか。
このように、ある条件下でのみ成立する規定をひとつひとつ挙げていく限り、際限のない説明の羅列に終わらずを得ず、学習者はいつまでたってもすっきりしません。
ですから、?強調するためにある語を文頭に出す際、それと強く関連した語を引き連れることがあるのは、単語を相手に伝えたい（強調したい、重要な）順に並べるという大原則に沿った現象である、?否定はもともと一種の強調なので、否定的な副詞を文頭に出してさらに強調すると、必ず関連した動詞（助動詞）がつられて前に出る、?強調の程度に応じて、関連した単語の引きつけ・同伴が起きる場合と起きない場合がある、?肯定的な要素を文頭に出すような弱い強調では、関連した単語の引きつけ・同伴が起きない、?『倒置』の形を採用するか否かは、作者の文体上の好みの問題でもある、のように体系的に理解することが解決の道でしょう。
たとえば、以下の文(a)、(b)、(c)は、いずれも［まだパリに行ったことがない］という意味ですが、否定語neverの文中での位置が違うのでニュアンスが異なり、文(c)では『倒置』が起きています。
(a) I have never been to Paris.［私は持っている、これまで一度もいたことがない、パリに向き合って］
(b) I never have been to Paris.［私はこれまで一度も持っていない、いた状態で、パリに向き合って］
(c) Never have I been to Paris.［これまで一度も持っていない、私は、いた状態で、パリに向き合って］
《英語のしくみと訳しかた 真野泰 研究社（2010）によれば、文には基本的な構造であるX depends on Y.と典型的な『倒置文』であるOn Y depends X.そして広い意味の『倒置文』であるOn Y X depends.の３通りの書き方がある。（そうであるならば、そのうちのどれを採用するのかは、?論理展開の原則「旧情報から新情報へという叙述の順、具体的には、先行箇所とのつながりを早く提示した方がわかりやすく、それを受ける文頭の語は短い方がわかりやすい」、?文脈「文中での語の意味や文章中での文と文の続きぐあい」、?文体「いかにもその作者らしい文章表現上の特色、作者の思想や個性が文章表現の仕方ににじみ出ている全体的な特色」によって決まることになります）》
副詞を文頭に出す際、名詞(主語)と動詞（助動詞がある時は動詞ではなくて助動詞）の位置関係が逆転することから、「学校英文法」ではこれを『倒置』と呼んでいますが、副詞を文頭に出しても、必ずしも『倒置』が起きるわけではないため、その解説はとても複雑なものになっています。
たとえば、そのひとつに『文全体を否定する副詞が前方に出る時には「倒置」が起きるが、肯定的な副詞が前に出る場合には「倒置」が起きない』という説明があります。
『倒置』文であるOnly in Hawaii do these flowers grow.［ハワイでだけこの花は咲きます（他の地域では咲きません）］は、否定的なニュアンスなので『倒置』されていると説明されます。ところが、同じ『倒置』文のIt is not enough to be busy; so are the ants.［忙しいだけでは十分ではない。アリだって忙しい］やWith freedom comes an awful lot of responsibility.［自由には、ものすごくたくさんの責任が伴うのですね］あるいはAll things in moderation, say I.［何事もほどほどに、ということでしょう］などは、『倒置』されているのですから、いずれも否定的な文意だということになりますが、はたしてそうでしょうか。
このように、ある条件下でのみ成立する規定をひとつひとつ挙げていく限り、際限のない説明の羅列に終わらずを得ず、学習者はいつまでたってもすっきりしません。
ですから、?強調するためにある語を文頭に出す際、それと強く関連した語を引き連れることがあるのは、単語を相手に伝えたい（強調したい、重要な）順に並べるという大原則に沿った現象である、?否定はもともと一種の強調なので、否定的な副詞を文頭に出してさらに強調すると、必ず関連した動詞（助動詞）がつられて前に出る、?強調の程度に応じて、関連した単語の引きつけ・同伴が起きる場合と起きない場合がある、?肯定的な要素を文頭に出すような弱い強調では、関連した単語の引きつけ・同伴が起きない、?『倒置』の形を採用するか否かは、作者の文体上の好みの問題でもある、のように体系的に理解することが解決の道でしょう。
たとえば、以下の文(a)、(b)、(c)は、いずれも［まだパリに行ったことがない］という意味ですが、否定語neverの文中での位置が違うのでニュアンスが異なり、文(c)では『倒置』が起きています。
(a) I have never been to Paris.［私は持っている、これまで一度もいたことがない、パリに向き合って］
(b) I never have been to Paris.［私はこれまで一度も持っていない、いた状態で、パリに向き合って］
(c) Never have I been to Paris.［これまで一度も持っていない、私は、いた状態で、パリに向き合って］
《英語のしくみと訳しかた 真野泰 研究社（2010）によれば、文には基本的な構造であるX depends on Y.と典型的な『倒置文』であるOn Y depends X.そして広い意味の『倒置文』であるOn Y X depends.の３通りの書き方がある。（そうであるならば、そのうちのどれを採用するのかは、?論理展開の原則「旧情報から新情報へという叙述の順、具体的には、先行箇所とのつながりを早く提示した方がわかりやすく、それを受ける文頭の語は短い方がわかりやすい」、?文脈「文中での語の意味や文章中での文と文の続きぐあい」、?文体「いかにもその作者らしい文章表現上の特色、作者の思想や個性が文章表現の仕方ににじみ出ている全体的な特色」によって決まることになります）》
5-8『関係代名詞のasとthanとbut』
「学校英文法」には『関係代名詞のasとthanとbut』という項目があり、たとえばThis is the same story as I heard long ago.［これは私がずいぶん前に聞いたのと同じ話だ］、We had more customers than we had expected.［期待したより多くの客が来た］、There is no rule but has some exceptions.［例外のない規則はない］といった例文が紹介されています。ふつうの『関係代名詞』と区別して『擬似関係代名詞』と呼ばれることもあります。こうした項目においても、なぜ『関係代名詞』なのかという説明は一切なく、接続詞だと思っていたのだが『関係代名詞』になってしまったという感じがして、非常にとまどいます。
もともと『関係代名詞』は『指示代名詞』や疑問詞から生まれたのですから、単語の基本的なイメージを重視する〈学び直しの英文法〉の立場からは使わないで済ませたい用語です。そのため、asもthanもbutも『関係代名詞』ではなく本来の接続詞として理解します。
これらの語に共通するのは「比較」のイメージであって、asは［「２つの関連する出来事がほぼ同時に生じたものとして」２つを対等に並べてみる］という意味であり、thanは［「同じ物の２つの性質を比較して」というよりはむしろ］、butは［「対象を比較してみて」しかし］という意味です。「比較」のニュアンスを表現したければ、これらの接続詞を使って２つの文をつなぎますが、その際に重複感があればその重複した語を取り去ります。
具体的には、This is the same story as I heard long ago.は、This is the same story.とI heard it long ago.をas［「２つの関連する出来事がほぼ同時に生じたものとして」２つを対等に並べてみる］でつないでから、重複感のある語itを削除した文です。We had more customers than we had expected.は、We had more customers.とwe had expected them.をthan［「同じ物の２つの性質を比較して」というよりはむしろ］でつなぎ、重複感のある語themを削除した文です。また、There is no rule but has some exceptions.は、There is no rule.とIt (No rule) has some exceptions.をbut［「対象を比較してみて」しかし］でつなぎ、重複感のある語It (No rule)を削除した文です。
このように、asもthanもbutもわざわざ『関係代名詞』と定義する必要はなく、接続詞と考えた方が文構造も文意も容易に理解することができます。
たとえば、It never rains but it pours.［降れば必ず土砂降り］のbutは、『関係代名詞』ではなく接続詞であると解説している英文法書もありますが、古い言い回し（ことわざ）なので重複感のある語It (No rain)を削除していないだけでしょう。
ところで、同じような構造の文ですが、「学校英文法」には『「前置詞」butがその「目的語」として「原形不定詞」を取る』という解説もあります。たとえば、I did nothing but play tennis all day.［私は一日中テニスばかりしていた］やYou do nothing but laugh.［君は笑ってばかりいるね］といった文です。
こうした文でもbutは『前置詞』ではなく、接続詞であると考えた方が文意を容易に理解できます。たとえば、I did nothing but play tennis all day.は、I did nothing.とI played tennis all day.を接続詞butでつないで、重複している語Iを削除した後、playedを原形のplayにした文です。
原形は、現実性の薄いことや不確定なことを表すために使われ、現在でも過去でもなく、実際に現実化していることではなくてその観念の表現であるとされています。この文の場合、［私は何もしなかった］［しかし］［一日中テニスをした］のですから、現実にはあり得ない矛盾した表現です。そのためplayedを原形のplayに置き換えたわけです。こうすると［一日中テニスをした］とは［一日中テニスをしているような感じであった］となり、結局「私は何もせずに一日中テニスをしている感じであった」というニュアンスになります。原形のplayがこうした気分を表しているわけです。
《英語文法批判 宮下眞二 日本翻訳家養成センター（1982）によれば、asは抽象的静的属性を表す抽象静詞、butとthanは接続詞です》
「学校英文法」には『関係代名詞のasとthanとbut』という項目があり、たとえばThis is the same story as I heard long ago.［これは私がずいぶん前に聞いたのと同じ話だ］、We had more customers than we had expected.［期待したより多くの客が来た］、There is no rule but has some exceptions.［例外のない規則はない］といった例文が紹介されています。ふつうの『関係代名詞』と区別して『擬似関係代名詞』と呼ばれることもあります。こうした項目においても、なぜ『関係代名詞』なのかという説明は一切なく、接続詞だと思っていたのだが『関係代名詞』になってしまったという感じがして、非常にとまどいます。
もともと『関係代名詞』は『指示代名詞』や疑問詞から生まれたのですから、単語の基本的なイメージを重視する〈学び直しの英文法〉の立場からは使わないで済ませたい用語です。そのため、asもthanもbutも『関係代名詞』ではなく本来の接続詞として理解します。
これらの語に共通するのは「比較」のイメージであって、asは［「２つの関連する出来事がほぼ同時に生じたものとして」２つを対等に並べてみる］という意味であり、thanは［「同じ物の２つの性質を比較して」というよりはむしろ］、butは［「対象を比較してみて」しかし］という意味です。「比較」のニュアンスを表現したければ、これらの接続詞を使って２つの文をつなぎますが、その際に重複感があればその重複した語を取り去ります。
具体的には、This is the same story as I heard long ago.は、This is the same story.とI heard it long ago.をas［「２つの関連する出来事がほぼ同時に生じたものとして」２つを対等に並べてみる］でつないでから、重複感のある語itを削除した文です。We had more customers than we had expected.は、We had more customers.とwe had expected them.をthan［「同じ物の２つの性質を比較して」というよりはむしろ］でつなぎ、重複感のある語themを削除した文です。また、There is no rule but has some exceptions.は、There is no rule.とIt (No rule) has some exceptions.をbut［「対象を比較してみて」しかし］でつなぎ、重複感のある語It (No rule)を削除した文です。
このように、asもthanもbutもわざわざ『関係代名詞』と定義する必要はなく、接続詞と考えた方が文構造も文意も容易に理解することができます。
たとえば、It never rains but it pours.［降れば必ず土砂降り］のbutは、『関係代名詞』ではなく接続詞であると解説している英文法書もありますが、古い言い回し（ことわざ）なので重複感のある語It (No rain)を削除していないだけでしょう。
ところで、同じような構造の文ですが、「学校英文法」には『「前置詞」butがその「目的語」として「原形不定詞」を取る』という解説もあります。たとえば、I did nothing but play tennis all day.［私は一日中テニスばかりしていた］やYou do nothing but laugh.［君は笑ってばかりいるね］といった文です。
こうした文でもbutは『前置詞』ではなく、接続詞であると考えた方が文意を容易に理解できます。たとえば、I did nothing but play tennis all day.は、I did nothing.とI played tennis all day.を接続詞butでつないで、重複している語Iを削除した後、playedを原形のplayにした文です。
原形は、現実性の薄いことや不確定なことを表すために使われ、現在でも過去でもなく、実際に現実化していることではなくてその観念の表現であるとされています。この文の場合、［私は何もしなかった］［しかし］［一日中テニスをした］のですから、現実にはあり得ない矛盾した表現です。そのためplayedを原形のplayに置き換えたわけです。こうすると［一日中テニスをした］とは［一日中テニスをしているような感じであった］となり、結局「私は何もせずに一日中テニスをしている感じであった」というニュアンスになります。原形のplayがこうした気分を表しているわけです。
《英語文法批判 宮下眞二 日本翻訳家養成センター（1982）によれば、asは抽象的静的属性を表す抽象静詞、butとthanは接続詞です》
5-9『文末焦点〔End Focus〕』
「既知情報（旧情報）は先、新情報は後」、すなわち「文は聞き手や読み手がすでに知っていて話題となっていることから始めて、新しい情報は文の終わりの方に置く」※という原則（英文法研究者の中には、この原則を『文末焦点』〔End Focus〕あるいは『情報構造』と呼ぶ人もいます）に、「新情報は重要な情報である」という仮定を無意識に結合することによって、「英語は『重要な情報を文末に置く言語』である」と主張する英語研究者がいます。※※
なかには、『英文で最も重要な位置は文末であって、ある語句を強調しようとする時は文末に置く。言いたい重要な情報はできるだけ文尾の方に持っていく』という「英文法」を導き出している文法書もあり、さらには『文末に続いて英文で２番目に重要な位置が文頭である』と主張する文法書すらあります。
0-4-1節で紹介したように、「既知情報（旧情報）は先、新情報は後」という原則は、英語だけではなく、日本語を含むあらゆる言語に共通するコミュニケーションを容易にするための方法であって、「文法」（文章構成の法則）ではありません。
たとえば、三段論法を「Ａ＝Ｂ、Ｂ＝ＣならばＡ＝Ｃ」であるとすれば、これを書き換えて「Ａ＝Ｂ、Ｃ＝ＢならばＡ＝Ｃ」とすることはできないということ、つまり単に「新情報であるＣは、旧情報であるＢより前に置かない」ということを述べているに過ぎず、これと情報の重要性とは無関係です。このように、コミュニケーションあるいは論理展開の原則を「文法」であるかのように思い込む誤解は、新情報（新出語）とは「相手に伝えたい（重要な、強調したい）語」であるという錯覚から生まれたものでしょう。
その結果、『文末焦点〔End Focus〕は主要な論点を最後まで言わずにおくことで、聞き手や読み手の期待感を高めるために使われる』と解説する文法書さえありますが、これなどはまったく逆であり、コミュニケーションあるいは論理展開の原則に従うことによって、結果的にそうした期待感を高めることもできるということに過ぎません。
ある語を強調するために文頭に出したことによって通常とは異なる語順、たとえば〔動詞 名詞(主語)〕の語順になった文では、読み進んでもすぐには名詞(主語)が現れて来ないことへの緊張感から、名詞(主語)が現れた瞬間に［意外にも（驚いたことには）〜だった］といったニュアンスを表現することができます。こうした効果を狙って、わざわざ〔動詞 名詞(主語)〕という語順を採用することがあります。
同じことがtheの用法にも当てはまります。通常は文中で〔a 名詞〕が〔the 名詞〕よりも前に来ますが、小説の題名や冒頭の部分でしばしばtheが用いられるのも、theが持っている「すでに注目の対象であるために具体的で鮮明な輪郭が与えられて、生彩のある表現となる」効果をねらったものであり、読者は最初からすでに進行中のできごとに関係しているかのような印象を持つことになります。
これは文章にも当てはまります。「文は相手に伝えたい（重要な、強調したい）順に単語を並べる」という原則を文章に拡張した「文章は最も相手に伝えたい文、すなわち結論となる文を段落（paragraph）の最初に置く」ことが原則になっていますが、小説や随筆のような人の気持ちを表現する文章では逆に、結論となる文を段落の最後に持って行くことがあります。そうすることにより、読む人に緊迫した感情的なインパクトを与えることができるからです。
「既知情報（旧情報）は先、新情報は後」、すなわち「文は聞き手や読み手がすでに知っていて話題となっていることから始めて、新しい情報は文の終わりの方に置く」※という原則（英文法研究者の中には、この原則を『文末焦点』〔End Focus〕あるいは『情報構造』と呼ぶ人もいます）に、「新情報は重要な情報である」という仮定を無意識に結合することによって、「英語は『重要な情報を文末に置く言語』である」と主張する英語研究者がいます。※※
なかには、『英文で最も重要な位置は文末であって、ある語句を強調しようとする時は文末に置く。言いたい重要な情報はできるだけ文尾の方に持っていく』という「英文法」を導き出している文法書もあり、さらには『文末に続いて英文で２番目に重要な位置が文頭である』と主張する文法書すらあります。
0-4-1節で紹介したように、「既知情報（旧情報）は先、新情報は後」という原則は、英語だけではなく、日本語を含むあらゆる言語に共通するコミュニケーションを容易にするための方法であって、「文法」（文章構成の法則）ではありません。
たとえば、三段論法を「Ａ＝Ｂ、Ｂ＝ＣならばＡ＝Ｃ」であるとすれば、これを書き換えて「Ａ＝Ｂ、Ｃ＝ＢならばＡ＝Ｃ」とすることはできないということ、つまり単に「新情報であるＣは、旧情報であるＢより前に置かない」ということを述べているに過ぎず、これと情報の重要性とは無関係です。このように、コミュニケーションあるいは論理展開の原則を「文法」であるかのように思い込む誤解は、新情報（新出語）とは「相手に伝えたい（重要な、強調したい）語」であるという錯覚から生まれたものでしょう。
その結果、『文末焦点〔End Focus〕は主要な論点を最後まで言わずにおくことで、聞き手や読み手の期待感を高めるために使われる』と解説する文法書さえありますが、これなどはまったく逆であり、コミュニケーションあるいは論理展開の原則に従うことによって、結果的にそうした期待感を高めることもできるということに過ぎません。
ある語を強調するために文頭に出したことによって通常とは異なる語順、たとえば〔動詞 名詞(主語)〕の語順になった文では、読み進んでもすぐには名詞(主語)が現れて来ないことへの緊張感から、名詞(主語)が現れた瞬間に［意外にも（驚いたことには）〜だった］といったニュアンスを表現することができます。こうした効果を狙って、わざわざ〔動詞 名詞(主語)〕という語順を採用することがあります。
同じことがtheの用法にも当てはまります。通常は文中で〔a 名詞〕が〔the 名詞〕よりも前に来ますが、小説の題名や冒頭の部分でしばしばtheが用いられるのも、theが持っている「すでに注目の対象であるために具体的で鮮明な輪郭が与えられて、生彩のある表現となる」効果をねらったものであり、読者は最初からすでに進行中のできごとに関係しているかのような印象を持つことになります。
これは文章にも当てはまります。「文は相手に伝えたい（重要な、強調したい）順に単語を並べる」という原則を文章に拡張した「文章は最も相手に伝えたい文、すなわち結論となる文を段落（paragraph）の最初に置く」ことが原則になっていますが、小説や随筆のような人の気持ちを表現する文章では逆に、結論となる文を段落の最後に持って行くことがあります。そうすることにより、読む人に緊迫した感情的なインパクトを与えることができるからです。
※「文は聞き手や読み手がすでに知っていて話題となっていることから始め、新しい情報は文の終わりの方に置く」というコミュニケーションあるいは論理展開の原則は、文意を理解するための手掛かりになることがあります。たとえば、AsやSinceで始まる文はふつう文頭に来ますが、それは聞き手がすでにその理由を知っている場合に使われるからであり、becauseで始まる文はふつう文頭に来ませんが、それは聞き手がその理由を知らない場合に使われるからだそうです。
※※同様な誤解に、英語の特徴は「全体を述べてから部分を細かく述べる」ことであるという主張がありますが、これは論理展開の方法である演繹法の説明であって、決して英語だけの特徴ではありません。
《日本語と時間−＜時の文法＞をたどる 藤井貞和 岩波新書（2010）によれば、「論理上」ということと「文法上」ということとの差異は、たいへん重要なことであって、端的に言うとこの両者の混同から、いろいろに言語学者たちのあいだでの言い争いが絶えなかった》
《英語構文を探求する 大庭幸男 開拓社（2011）によれば、文の焦点になり聞き手に注意を引く表現を「優勢的な名詞句」と呼び、それには次のような「優勢性の階層性」がある。（Erteschik-Shir 1979）不定冠詞付き名詞句＞定冠詞付き名詞句＞固有名詞＞代名詞、つまり不定冠詞付き名詞句が、話者がその表現を使用することによって聞き手に最も多くの注意を向けさせる表現である。従って、これがさらなる会話の話題に一番なりやすい。但し、代名詞の中でもitは特別であって、焦点にも次の文の話題にもならない。「優勢性」と「情報の新旧」とは必ずしも一致しないが、概して不定冠詞付き名詞句は新情報を担い、その他は旧情報を担う》
※※同様な誤解に、英語の特徴は「全体を述べてから部分を細かく述べる」ことであるという主張がありますが、これは論理展開の方法である演繹法の説明であって、決して英語だけの特徴ではありません。
《日本語と時間−＜時の文法＞をたどる 藤井貞和 岩波新書（2010）によれば、「論理上」ということと「文法上」ということとの差異は、たいへん重要なことであって、端的に言うとこの両者の混同から、いろいろに言語学者たちのあいだでの言い争いが絶えなかった》
《英語構文を探求する 大庭幸男 開拓社（2011）によれば、文の焦点になり聞き手に注意を引く表現を「優勢的な名詞句」と呼び、それには次のような「優勢性の階層性」がある。（Erteschik-Shir 1979）不定冠詞付き名詞句＞定冠詞付き名詞句＞固有名詞＞代名詞、つまり不定冠詞付き名詞句が、話者がその表現を使用することによって聞き手に最も多くの注意を向けさせる表現である。従って、これがさらなる会話の話題に一番なりやすい。但し、代名詞の中でもitは特別であって、焦点にも次の文の話題にもならない。「優勢性」と「情報の新旧」とは必ずしも一致しないが、概して不定冠詞付き名詞句は新情報を担い、その他は旧情報を担う》
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