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日々こぼれ落ちる歌たち(童話)コミュのこんにちは。

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すばらしいお言葉いただきましたので、ご挨拶代わりに貼っていきますね。

ほかで書いたものの再編集したものです。今後ともよろしゅうわーい(嬉しい顔)

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冬の夕日はつるべ落とし。

ましてクリスマスイブともなれば、仕事も早々に、

早く家路に向かわれる方も多いことでしょう。

町のイルミネーションはすべてがクリスマスカラーで埋め尽くされて、

この日ばかりは町の角々の看板もちも、サンタクロースの衣装に身を包み、

家路を急ぐ人に

「メリークリスマス!」

と声をかけています。

街行く人のほとんどがケーキに、シャンペンに、

そしてプレゼントを買っておのおの自宅に帰ってゆきます。

しかし、多くの人が果たしてそれほど裕福なのでしょうか。

街にはさまざまな生活を営む人々が、雑踏の中、今日も一生懸命生きています。

これは、その人々の生活を切り抜いたほんの一コマの出来事なのです。




『天からのプレゼント』


今宵の風はいっそう冷たく吹きずさんでいます

プラタナスの大きな茶色い葉も、もみじの赤く染まった落ち葉も、

黄色くなった公孫樹の葉も今は静かに歩道を赤や黄色に染め、

自然のじゅうたんが人々の足音を静まらせています。


商店街に流れるクリスマスソングは恋人たちに、家族に、

友人や同僚の心の中に自分たちのつながりを見つめるひと時を与えていました。


そんなある街角に靴磨きの子がいました。


「どうです!おじさん、靴を磨いていきませんか?」


大きな声で通行人たちに呼びかけていました。

そこに一人の男の子が現れました。親に連れられてきたのでしょう。

同世代の金持ちの子供が、その子を見て不思議に思い声をかけました。


「今日はクリスマスだよ。みんなプレゼントかってもらうんだよ。

なぜ君は其処で働いているの?」



「プレゼント?私はそのようなものをもらったことは無いんだよ。

こで働いているのは、靴が汚れて困っている人がいるから磨くのさ。

その代わり私は手間賃をもらってパンを買うんだ」



「君は親がいないの?

普通は親が働くんじゃないの?僕はまだ働いたことがないけど」



「私には両親がいないんだよ。だから働くんだ。

だけどただ働くだけならつらいけど、喜ぶ人の顔を見てると、

こっちも楽しくなるんだよ」



「ほんと?働くって楽しいことなの?

楽しくなるのなら、僕も手伝ってもいい?」



「うん、いいよ!でも君に出来るかしら」



「僕は何でも出来るんだ。学校じゃ先生にほめられてばかりだよ。

だから任せて」


「それじゃ君は私の隣においで」


そして、新しい友達は靴磨きの子からいろいろとやり方を教わりながら、

墨だらけになって働きました。

しかし、始めて少したつと、すぐにお友達はだんだん辛くなってきました。

へたくそでお客さんの靴下に墨をつけてしまったり、

ズボンを汚してしまったりで怒られてばかり。

なかなかお金をもらえなかったからです。


それでも、靴磨きの子は、根気よく手取り足取り金持ちの子に教えました。

しかし、それでもうまくいきません。


そのうち、金持ちの子はぷんすかと、怒り出してしまいました



「僕は君のようにうまくできないし、洋服もこんなに汚してしまった。

神様はずるい。僕は今大変気分がよくないんだ、不公平だ」。



すると、靴磨きの子は言いました



「いいかい、初めから上手くはいかないんだよ、

私もここまでできるようになるのには、多くの時間が必要だったんだよ」



「そんなこといったって、

君は洋服も汚すことがなくきれいに磨いているじゃないか。

僕の着ている服は君の作業着と違って高いんだよ。

どうしてくれるんだい。こんなに汚れてしまったじゃないか。

君は大体僕より貧乏なくせに生意気だよ」



そう言い放ったかと思った瞬間、

彼は靴磨きの道具を車の通る大通りのど真ん中に放り出してしまいました。

それを見た靴磨きの子はたまったものではありません。



「なんてひどいことをしてくれたんだ」



靴磨きの子は立ち上がって言いました。

そして、あわてて大通りの真ん中に拾いに飛び出したのです。


そのときでした。

一台のトラックが大きなブレーキ音と共に滑り込んできたは・・



金持ちの子は

「危ない!」

と叫びました。

しかし、靴磨きの子供にその叫び声が届きませんでした。

彼はすでに大空に舞っていました。


靴磨きの子は其の時すべてがスローモーションのように見えました。

そのわずかな時間は、きっと神様が与えてくれた最後のひと時だったのでしょう。



「お父さんお母さん、私もみんなと楽しく過ごしたかった。

でも、もう無理みたい。

ああ、なんてきれいなネオンだろう。

私はこうしてきらびやかな街にいられたんだね。

それだけでも幸せだったんだね」




靴磨きの子は今まで生まれてから今日までの生活が瞬時に思い返されていました。

それは地面にたたきつけられるほんのわずかな時間のできごとでした。

そして地面に叩きつけられて、

まるで割れたコップのように地面に散ってゆきました。

その後、靴磨きの子は、もう二度と動くことはありませんでした。

それは都会の雑踏が、ほんの一瞬沈黙した瞬間でもありました。

そして、

お金持ちの子はただ青くなってその場に立ちすくんでいました。

やがて大勢の大人が集まってきて、口々に色々なことをしゃべりはじめました。



「おい、大丈夫か?」


「あ〜あ、この忙しい時期に飛び込んで。

トラック壊れちゃったじゃないか」


「だれか、この子を知らない?」


「おい、しっかりしろよ」


「おや、この子はいつもここで靴磨きをしている子じゃないか?」


「だれか、救急車を呼んでくれ」


「おい、胸と口と頭から出血してるぞ」


「だれかこの子の身元を知りませんか?」


「おや、この子は、女の子じゃないか。

大人に混じって。こんな墨だらけになって汚らしい。

こんな身なりだから、てっきり今の今まで男の子だとばっかり思っていたよ」


「その子はここら辺に住む浮浪者で、両親はもういないらしいよ」


「いったい何が起こったんだよ」


「誰かが何かばら撒いたんだよ。車道に」


「そういえば、隣いに誰か同じくらいの子供がいたような」


「それでこの子が急に出てきたんだ」


「もう死んじゃったのか、まったく迷惑な話だ」


「これだから浮浪者は困るんだ」


「まったくこの歳で、親はどう思っているんだ」


「だから孤児なんだって・・・」







その光景を見て、金持ちの子供は呆然と立ちすくんでいました。

自分のやった行いにすっかり震えていたのです。

其の時、金持ちの子の両親が大きなお店からあわてて出てきて、



「見てはいけませんよ。あなたとあの子は世界が違うんだから、

哀れんじゃだめよ。さあ行きましょう」



と、蔑む言葉を戸惑う我が子に言いました。



お金持ちの子供は心の中で思いました

(あいつが悪いんだ、あいつが下手だったら、死ななかったんだ)

あの子のせいで自尊心を傷つけられた男の子は、

心の中で自分にそう、言い聞かせました。



彼は両親に促されると、雑踏の中に消えてゆきました。





それからどのくらい時がたったのでしょう。

結局救急車が来ることはありませんでした。



靴磨きの子はいつの間にか自分の亡骸を縁石に座りながら見ていました。



(大人たちが足蹴に私の体を転がしている。あの人の靴も、

この人の靴もどれもこれも私が前に磨いた靴だ。

その靴に転がされるなんて悲しいな)

そう思いました。



やがて大人たちは、彼女の死を確認すると、

その場から十字を切って一人、また一人と去ってゆきました。


でも、その中でただ一人、

ベージュ色のエナメルの靴を履いた紳士だけは

靴磨きの子のなきがらに優しく声をかけてくれていました。



「今まで、有難う」



そういって、やさしく顔をなでて目を閉じてくれたのです。




その言葉を聴いた瞬間、彼女の体が光を放って輝きはじめました。



靴磨きの子は、今までの苦労のすべてがこの言葉で報われたことをしりました。



其の時です。何処からか、あの懐かしい声が聞こえてきました。


お父さんとお母さんの優しい声です。



「坊や、よかったわね、あなたはこれでみんなと一緒に過ごせるの」



振り向くと、其処には懐かしい両親の姿がありました。


「うん、私、生まれてきてよかったんだね」


「おまえは立派に生きたんだ。お帰り」と父が言いました


「いままで、自分を偽って生きてきたかわいそうな子。

さあ、私達のもとへおいで。今まで一人にしてごめんね」と母もいいました。



靴磨きの子は、

その磨き覚えの有るベージュのエナメルの靴の人の手にキスをすると、

精一杯感謝の心をこめて、元気よく手を振りました。


その紳士は一瞬、

暖かいものが自分の手に触れたことをしっかりと感じていました。

彼はそのことを生涯忘れることはありませんでした。


そして父と子と母の3人は、光の差す方向に。仲良く天に召されてゆきました。



同じ時。

金持ちの子も、やはり罪悪感が拭い切れず、泣いていました。

でも、その涙でかすむ目で、

自分の目の前を何かがよぎるのをしっかり見たのです。

それは、

星空を行く十頭立てのトナカイをしつらえた橇が天を駆けてゆく姿でした。

あ、あの子の家族が迎えに来られたんだ。

彼は直感してそう思いました。

そのあと

(ごめんね。あんなひどいことをしてごめんね)

男の子は心でそうつぶやいていました。



するとどこからか声がしました

それは、あの子のお母様からの声でした。


「あの子は、あなたのことを恨んではいませんよ。だから、

これからは精一杯自分が正しいと思うことを信じて生きていってください。

これはあの子から、あなたへのプレゼントですよ」と



男の子は、おそらくこの世界で何よりも優しく、寛大な、

そして暖かいプレゼントを受け取ったのです。




男の子はうなづくと、自分に欠けているものが何かを悟り、

生まれたときは同じはずなのにとつぶやきながら涙ぐんで空を見上げました。



街のネオンサインも、静かに流れる曲も今は彼にとって幻影としか映らなくなっていた。

それは都会の雑踏が見せた幻想。




でも、




















空にはいつもと同じ満天の星空が、ただ静かに明滅していただけでした。

コメント(4)

奈月 さんこんにちは

またまた立派な感想、ありがとうございますあせあせ

どうも自分の書くものは、皆さん同じ感想を言われるようで、ある意味、クセがあるんでしょうね。

ここは童話ということなので、もうひとつ童話と銘打って書いたものがありますので、いずれ貼らせていただきます。わーい(嬉しい顔)

それも長文なのですが、おそらく一気に読み終わっちゃうと思います。

あのように見事に分析いただきありがとうございます

人の本質って、決して経済や物質じゃないところにあると思います

そりゃ、素敵なものならみんなあこがれるでしょうけど、その素敵なものが与えてくれるものは、自尊心、虚栄心などじゃないかな

人の心がおろそかになった今、改めて自分自身も見直そうと思います。

コメントありがとうございました。m(__)m




TAM−1さん はじめまして。
作品読ませていただきました。絵もすごくかわいらしくて素敵ですね。
たくさん創作の才能があって、うらやましいです目がハート

小川未明の童話の読後感と同じようなものを感じましたぴかぴか(新しい)
タイトルや文章中の選ばれた言葉や、登場人物達の印象はとてもメルヘンちっくで「陽」のようなのに、内容を読むと作者が伝えたい社会の「陰」の部分がしっかりと描かれている・・・。
表裏をしっかりと伝える力を持っておられるのだなあと思いました。
まだまだたくさんの引き出しをお持ちのような・・・楽しみが増えました。
どうぞよろしくお願い致します。

ミイラママさん、初めまして。

お絵かきお褒め頂、照れましたw

実物は、熊並みだったりw

ここは正体がばれないから好き勝手に出来まして・・・ハハあせあせ

小川未明さん。小学校以来ですっかり忘れてしまい、仕事が終わってから、古本屋さんにあったことを思い出しまして、いま、買って読んでいます。

言葉使いがいいですね。

このような偉大な方と同じだといわれると、恥ずかしいやら、なんやらでw

相当照れ屋です

そもそも、怪我したときに、こんなこと書くしかやることが無かった時期がありまして、当時のアップしたものをリライトしてます。

もともと、ただのサラリーマンですので、文才はありませんw

なので、似たような傾向のものもあれば、違うものもあります。

見直したら、また載せましょう。

コメントありがとうございました

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