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ペーター・ホフマン[MIXI出張所]コミュのちょっとおもしろい話[3]いたずら好き

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ペーター・ホフマンによれば、歌手というものはいたずら好きで、おもしろいハプニング、つまり「いろんなへまを、その場の居合わせて体験することこそが、劇場での最高の幸運」「劇場のすばらしい側面のひとつ」だそうです。

最初の専属劇場リューベックで、劇場中が途方もない笑いの渦に包まれた事件です。初めての、ヨハン・シュトラウスの喜歌劇「こうもり」の舞台。銀行家アイゼンシュタイン夫人のロザリンデにぞっこんのテノール歌手アルフレート役です。

銀行家アイゼンシュタインが、公務執行妨害で禁固刑を言い渡され、刑務所に出頭、実はロシア貴族オルロフスキーのパーティにでかけたあと、アルフレートは主人の留守をいいことに、上がり込んでロザリンデをくどいています。

「舞台は、私の願望達成の最終段階に至るところで、私は二重唱の終わりには、ロザリンデの上に沈みこむことになっている、つまり、私たちは寝いすに倒れこんで、私は彼女の上に横になるのだが、その時、刑務所長(Gefaengnisdirektor)のフランク博士が部屋に入ってこなければならない。

 私たちはすでに横たわっている、それなのにだれも来ないのだ。数分間経過。後で舞台監督のノートにあったのを、正確に思い出せば、三分だ。舞台の上で、ただひたすらしのぐほかない場合は、それは永遠だ。

 だれも来ない、というのは別に害がないようにきこえるが、このような場面でどうやったら害がないままでいられるだろうか。結局のところ私はなすべきことを引き延ばさなければならなかったので、私はいつの間にか論理的結末として相手役の襟ぐりにはまり込んでいた。私たちは、はじめは冷や汗をかき、それから、愉快な気分になった。
 
 舞台の上は静かだった、彼女が「そこに、だれか来た?」と尋ねるまでは、とても静かだった。

 私は視線を上げて答えた。「いや....」

 そして、彼女を抱き締めてキスしたり、髪をからませてぐちゃぐちゃにしたり、まるでドン・ファンのように私は彼女を扱っていた、が、しかし、それでもまだだれも来なかった。

 私たちはできる限りの事をやった。だから、全然退屈するはずはなかった。観客には、まだ演出のように見えていた。私たちは男が女を誘惑している様子を見せていた。だが、だんだんとみんなが私たちをからかおうとしているのではないかと思えてきた。どうして幕をおろさせないのだろうか。
 
 事態は困った方向に進みはじめていた。観客は「おや、まあ」とか、「あきれた!」とか叫んだり、口笛を吹いたり、笑ったり、上機嫌だった。

 私が彼女を撫で回した以外のことは何も起こっていなかった。ある時は下から腕を彼女に回したり、ある時は太腿の方向に手探りしていったりとやっていた。しかし、その後、これにも終りが来た。

  さもなければ、この作品もまた違う方向に進むところだったのだ。どんなことがあっても、私たちはそのうちに笑い出す。彼女がささやいた。「幕はまだ開いているの?」私はうなづいた。「まだ開いているよ」

 彼女が突然叫び声を上げる。「物音が聞こえるわ!」私は彼女から我が身を振りほどいて飛び退き、部屋の真ん中に走っていく、しかし何も起こらない、そこで、再び彼女の上に突進。こんなにいつまでも彼女とそこに横になっているのは、ついにいくらなんでもやりすぎという気分になる。

 もしかしたら何もかも間違っているのかもしれない。こんなに長い間誘惑を続けていたら、もはや誘惑の効果などありはしない。もう一度試したら、私は立ち去ろうと決心する。

 この穴の責任をひっかぶるつもりはない。それでなくても、ことによると、まるで私がもうあれから先がわからなくなったように見えるではないか。

 だから、本当なら刑務所長(Gefaengnisdirektor)が登場するはずのドアに突進して、勢いよく開けて、叫ぶのだ。「なんたることか、だれか来るぞ!」それから、ドアをバタンと閉めて、寝いすの後ろに隠れるのだ。

 そして、現実はこうだった。ドアが開いて、ついに、男が現れたのだ。

 ・・・この歌手は、全く最高だった。彼はアメリカ人で、客演歌手として、初めてこの役を歌ったのだが、私たちはリハーサルのときにいつもばかげたことをやっていた。というのは、彼はまだドイツ語が完璧ではなかったのだ。

 だから、そのとき、彼は神経質になる前に、ばかげたいたずらが一体正確には何なのかということが全然わかっていなかった。

 歌手というのは、このようなもので、おもしろいことを見つけ出すのだ。それが全然笑えなくても、いくつかの冗談は一種の文化財のようなものになっている。

 この歌手はやっと登場して、すばらしいアメリカ訛りで大まじめに言うことになる。

 「奥様、驚かないでください、私の名前はフランクで、受胎所長 (Empfaengnisdirektor)です」


"Erschrecken Sie nicht Madame, mein Name ist Frank, ich bin der Empfaengnisdirektor."

こっちが正しい台詞。
"Entschuldigen Sie,Madame, mein Name ist Frank und ich bin Gefaengnisdirektor" 「失礼します、奥様。私の名前はフランクで、刑務所長(Empfaengnisdirektor)です」

 この言い間違いは、練習のとき歌手たちが彼にやったいたずらが原因。「とにかく、こういう風に言えば、すごく美しくて、要するにとてもエレガントなんだよ!」と、教えてあったのでした。

けれども、フランクの遅刻は予定外の出来事でした。彼は、慣れない劇場のせいで、裏舞台の小さな隙間のある扇形のスタビライザーの中に迷いこんでいたのでした。

 舞台の袖にいた人々が一斉に笑い崩れ、客席も大爆笑だったということです。後にも先にも経験しなかったほど、最高の劇場の夜だったそうです。

コメント(3)

間繋ぎのはからづしも長くなっていエロい雰囲気の愛撫シーンもさることながら
「驚かないで下さい。・・・受胎所長 」できっちり落としどころに爆笑です。
フランク刑務所長、劇場中爆笑の理由、理解したのかしら?^.^?

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