恋しい小説コミュのアフターヴァレンタイン　...〆(゜゜)~(゜゜)〜short short story

２月１４日。
ヴァレンタインデー。
朝。
私の手には、チョコレートはなかった。

「持ってきたー？チョコレート」
「持ってきた持ってきたー」

オンナのコたちは…
携帯電話をチョコレートに変えて、大事に大切に持ってる。

オトコのコたちは…
そわそわして、変に固まってる。

朝から最上級のハイテンション。
見えそうなぐらいのドキドキ。
そんな今日が、はじまった。

「あー、やっぱりだよなー」
「チョコなんてキライだー」
極端な二分化現象のはじまりでもある。

どんどん積み上げられる机と、まっ平らなままの机。
たくさんにご満悦なコと、たったひとつに喜ぶコ…と手持ち無沙汰で開き直ってるコ。

彼は…
私のすきなヒト。

さっきから、行列が途切れない。
どんどん積み上げられて、顔が見えないよー。

やっぱり、買わなくて正解。


お昼休み。
更に増え続けるチョコレート。
この時間は、先輩方と後輩からでまたどっさり。
私のすきなんてとっくに埋もれてるよ。

…やっぱり、買わなくて正解。


夕方。
ポツンと教室の隅。
考えてた。
買わなかったチョコレートのこと。

１年に一度だけ。
甘いチョコレートに恋心を乗せることの出来る、たった一度の日。

「渡せないし…」
独り言が声になって消えた。

寒い寒い帰り道。
真っ白い吐息。
手袋を忘れたことに気付く。
「ぅー、寒い。雪、降りそう…中華まん、食べようかなぁ」

言い訳がましい言葉が私の精一杯。
コンビニエンスストアに近づく毎にドキドキしてたから。

「いらっしゃいませー」
！！！入っちゃったー。

昨日までのディスプレーが、半ば崩れてるように見える。
明らかに＜買い手がなくなった＞状態のチョコレートたち。
かさついてきた手がいきそうでいかず…
ハートじゃなくて、まるいビターチョコ。
彼にはコレがいいように思えたから。
これは言い訳じゃなくて、インスピレーション。

「ありがとうございましたー」
買っちゃったのはいいけど、どうするの？
小さなビニル袋に入ったチョコ。
今は荷物が増えただけ。


夜。
もしも私が超能力者なら、穴が開いてたと思う。
それぐらい見てた。
そして願う。
もしも私が超能力者なら、これは彼のところに届いてる。
届け、チョコ！
…なんてね。
なんか呪文でも、いるかなぁ。
ショッコラリ〜チョッコリ〜…とか。
あったらいいなぁ。


次の日の朝。
決めた！

朝連より早い時間。
校門の前で待つ。
誰よりも早く来て、頑張ってるのを知ってるから。
私の手には、チョコレート。

「あれ？…おはよう」
「おっ…おは、おはよぅ」

想像通りの展開が早く来た。
ぅわぅわぅわっ！
目なんか合わせられないから、チラッとだけ。
今日は…
誰よりも早くこの笑顔を独り占めだぁ。

「どうしたの？こんな早くに」
「あのっ、あの…あのねッッ」
ぅわー、ダメダメ！
今日は、１５日。
味方がいない。
言えない。何も言えない。言えるわけがないよー。
帰りたい！

「…スーゥ、ハーァ。はい、一緒に」
「えっ？」
「深呼吸」
「なっなんで？」
「キモチいいよ」
「あっ、うん」

『スーゥ、ハーァ。スーゥ、ハーァ』

「落ち着いた？」
「うん」
ハッピースマイルが目の前。
チラッ、じゃなくてど真ん中。
落ち着くはずがないんだけど、落ち着いた感じがするから不思議。
１５日にも、奇跡は起こるのかもしれない。

「コレ…受け取って、ください」
昨日買った、いつでも売ってるようなチョコレート。
どんな顔で、どんな声かなんて覚えてないけど、
差し出した。
昨日山ほど貰った彼に。

「ありがとう」
「えぇっ？」
こういう時って、どうしてヒトは素直になれないんだろう。
天邪鬼。
あー、なんでー。
「今日、１５日だよ？」
そして、余計な正論を言う。
わけ、わかんない。
「ハハ。変なの。１５日に、チョコレートを貰っちゃいけない？」
「ううん」
「オレのいない時や弁当食ってる時、友達と話してる時に黙って置いていかれるより嬉しい。しかもこれ、ビターチョコレート。簡易包装でエコだし」
簡易…包装？
ウソ！
コンビニのお兄さん…ひどーい！
「ありがとう」
一瞬の一驚が、いつもの笑顔に変わる。
私の大すきな笑顔に。

「オレ、たまに買うんだ。コレ」
「よかったぁ。美味しいんだね」
「マズいとか、思ってた？」
「えっ？そっそんなこと…」
「ハハ。冗談」

ヴァレンタインの女神様…
コレって、どうなんでしょう？
遅刻した罰、ですか？

「食べる？美味しいよ」
手のひらにひとつ、ハートのチョコレート。
「あっ、ハート！願いが叶うハートチョコ！ウソ！！マジでー」
知らない彼がそこにいた。
何万分の一のハートに、大騒ぎ。

よくある製菓会社のイタズラ。
『願いが叶うハートのチョコレート』。
初めての一つ目。
しかも、ヴァレンタインに買ったチョコ。
これって、すごい！

「願い…叶うかなぁ」
「叶うよ。信じてれば」
「じゃぁ、信じる」

「すき」は伝えなかったけど、
まぁ、いいよね？
そんなの吹っ飛ぶほど、シアワセだから。

ヴァレンタインの女神様…
さっきの訂正。
ありがとうございます。
『どうか彼の願いが叶いますように』。


アフターヴァレンタイン。
きっと、どこかの国はまだ１４日。

　　　　　　　　　　　　　　　Ｆｉｎ．



　≫Un afterword

こんばんは。ユイセイカです。

昨日のヴァレンタインデー、いかがでしたでしょうか？
私は…貰いました。いつのまにか、貰うヒトになっています。
トモチョコもかなり浸透してますね。

あげるのは…メーカー思いじゃぁないのでしません。
あげたい時にあげる派です。

来月、＜その後＞を書けたらいいなぁと思ってます。


皆様にも、ふたりのようなシアワセが訪れますように.:♪*

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　如月一五日　セイカ拝