キョンシー･ホラーコミュの新･幽幻道士立体奇兵

原題：立體奇兵(The 3-D Army)
台湾　キンコウ･フィルム･カンパニー作品　89年　95分　カラー　日本劇場未公開(DVD→TV→特集上映)

製作総指揮：ヤン･タンクェイ／ウー･ウーフー　製作：チャイ･ヤン･ミン　監督：チェン･チュン･リャン　脚本：ヤオ･チン･カン　撮影：リャオ･チンソン　武術指導：スー･ユン･フォン

出演：(３点リーダー以降の人名は日本語吹替版ビデオのキャスト)
リー･イージェン(李宜娟)=テンテン…高田由美
キン･トー(金塗)=金おじいさん…宮内幸平
チェン･ツー･チャン(陳子強)=チビクロ…坂本千夏
チェン･トンズン(鄭同村)=トンボ…伊倉一恵
アン･アン(安安)=安安(アンアン)…真柴摩利
ホン･イー･ユエン(洪竟原)=ベビーキョンシー…あきやまるな
ツァイ･ミージェ(蔡宓潔)=ミミ…神代知恵
ホァン･ヂョンユィ(黄仲裕)=安道士…谷口節
パン･サン(胖三)=デブ隊長…内海賢二
リン･グァンロン(林光榮)=長三道士…緒方賢一
スン･ユンチー(孫榮吉)=フウ先生…大木民夫
チェン･ソンヨン(陳松勇)=番頭
ワン･チャン(汪強)/ロン･シージャー(龍世家)=風魔

―解説―
日本でも大ヒットした台湾製キョンシー映画｢幽幻道士｣シリーズの第５作。1989年に製作されるも長らく未公開だった幻の作品だ。美少女道士テンテンと３人の少年たちが､謎の道士に連れ去られた狐の妖精とベビーキョンシーを助けるため､魔界へ乗り込んでいく。テンテン役は『幽幻道士４』(88年､テレビ放送)でデビューしたリー･イージェン(李宜娟)が担当。共演は『緑の大地』(89年､テレビ放送)などのキン･トー(金塗)､『新･桃太郎』(87年)などのチェン･ツー･チャン(陳子強)､『霊幻少女』(92年､テレビ放送)などのチェン･トンズン(鄭同村)ほか。チェン･チュン･リャン(陳俊良)監督､89年作。

―物語―
ある夜､テンテン(李宜娟)､チビクロ(陳子強)､トンボ(鄭同村)は捕らえられたキツネを助けたことから､妖精ミミとその友ベビーキョンシーと仲良くなった。しかし彼らが外出したスキに儀荘に保管されていた凶暴なキョンシー風魔が盗まれてしまう。風魔は次々に殺戮を繰り返し､責任を問われた金おじいさん(金塗)はデブ隊長に逮捕され投獄されてしまった。その頃安道士は師匠であるフウ先生に､ミミとベビーキョンシーがテンテンたちといることを知らせる。フウ先生は風魔を利用し､ミミとベビーキョンシーを生け贄にして魔界の支配を企んでいた。彼らを救うため､テンテンたちは魔界へ乗り込んでいくが…。

コメント(4)

最初
全て
最新の40件

[1] mixiユーザー 08月21日 02:42

映画自体の内容やキャラクターにふれる前に､まずは本作の上映方式についてお伝えしておきたいと思います。
原題で気付かれた方もいると思いますが､本作は元々｢立体映画｣として制作された作品です。とはいえ､『アバター』(2009年)で注目され定着した現状のデジタル技術による3D上映とは当然異なります。
簡単に言うと､左右色の違うレンズ(通常赤と青のセロハンを張った紙製メガネが頒布された)をかけて鑑賞すると画面が飛び出すように見えるとのこと。で､この旧来の立体映画についても相応に発展進化の歴史があってこの場ではそこに言及はしませんけども､本作が制作された時期を鑑みると､80年代に日本でも公開された『13日の金曜日 PART3D』(82年)や『ジョーズ３』(83年､画像左)などと同様の偏光フィルター方式が採用されているようです。この場合､立体撮影の演出効果を高める為カメラへ物が向かってくる演出が多用されているのが特徴です。本作でもチビクロが武器を画面に向って突出したり､魔界のクリーチャーが画面に迫ってきたりしてますよね？ああいう演出です。
実は偏光フィルター方式の立体映画は､70年代後半台湾で数本制作され､一部は日本でも公開されています。その代表的な1本が77年3月に日本公開された『空飛ぶ十字剣』(画像中)です。ハリウッドから技術スタッフを招き､奇想天外な武器の数々が画面から飛び出すかのような斬新な演出とふんだんに盛り込まれた残酷描写は大きな注目を集めて､日本以外にも香港･韓国･タイなどで上映され､カンヌ国際映画祭といった世界の大舞台にも出品され､多くの映画賞を獲得しました。
『空飛ぶ十字剣』の後､台湾で制作された偏光フィルター方式の立体映画が､若きジャッキー･チェン(成龍)の主演作『飛龍神拳』(78年､画像右)です。

『飛龍神拳』のオリジナル予告編動画。随所に登場する｢立体映画｣の演出にご注目を↓

こちらも多額の製作費を継ぎ込んだものの､『空飛ぶ十字剣』とは対照的に､香港と台湾では大コケしてしまい､日本でもジャッキー単独の主演作ではないことと､技術的な面から劇場公開は見送られ､84年に｢神拳･ヤングボディガード｣の邦題にてテレビ東京で放送後､立体メガネ付のビデオが発売されました。テレ東でも当初は立体映画方式を予定していたそうですが､やはり技術面から通常画面でのOAとなりました。
80年代に入ってからも､前述の通り散発的ながらハリウッドでも｢立体映画｣が制作され､日本の技術協力により中国本土で撮影された『侠女十三妹』(86年､映画祭のみ)などが発表されていました。そんななか､台湾で久々に撮影された｢立体映画｣が本作だったのです。日本で｢幽幻道士(キョンシーズ)｣と｢来来! キョンシーズ｣を成功させ余禄がまだ豊富だったキンコウ･フィルム(金格影業)が､『空飛ぶ十字剣』以来の成功と当時沈滞していた台湾映画界に活気を戻そうと撮影を開始したのですが､想像以上に予算や技術面で苦心を重ね､興行的な成果を上げることもかないませんでした。以降台湾映画ではデジタル3Dが登場するまで｢立体映画｣は作られなかったと言われています。
実に謎の多い本作ですが､実は台湾映画史的に重要な1本だったのかもしれないですね。

参照：雪花新聞｢華語3D電影發展史，瞭解一下：第一部3D電影是哪一年出現的？｣(2018/5/26)
https://www.xuehua.us/a/5eb7cc7686ec4d0bd8dcafbe?lang=zh-tw

[2] mixiユーザー 04月24日 13:05

さて…､この作品は"絶対的ヒロイン"と称された美少女道士テンテンちゃんことシャドウ･リュウ(劉致妤)が完全降板した後に制作された｢幽幻道士(キョンシーズ)｣シリーズ作品です。別項でもふれていますが､シャドウ･リュウが降板した後『幽幻道士４』(88年)のメインメンバーで新シリーズを作るという情報が､本作制作前から日本のテレビ雑誌や映画雑誌に流れていたんですね。まさにその第1弾となったのが本作というワケです。
そして本作でヒロイン役を担ったのが､『幽幻道士４』でデビューしたリー･イージェン(李宜娟)扮する"３代目テンテン"(初代はシャドウ･リュウ､２代目は大人テンテンことリン･シャオ･ロウ=林小樓)です。入会者の皆様もご存知のように､オリジナルの役名は『幽幻道士４』と同じく｢チェンチェン(娟娟)｣なんですよね。ただ金おじいさんの孫という設定などを引継いでいることから､日本語吹替制作時にはテンテンという役名に替り声優も引続き高田由美さんが担当することになりました。

しかしあらためて映像を見ると…､トーゼンながら一目瞭然ですね。なぜシャドウ･リュウが"絶対的ヒロイン"と呼ばれるのかをまざまざと思い知らされます。誤解しないで欲しいのですが､容姿の美醜を言ってる訳ではありません。リー･イージェンも愛らしい表情や仕草を見せますが､あくまで"フツーの女の子"なんですよね。その範囲であれば美少女でしょうけども､そうした範疇を超えて当時のシャドウ･リュウがまとっていたオーラとしかいいようのない"圧倒的な何か"を持ち合わせていなかったのは､どうしようもない事実です。
ですので､蝶よ花よとお姫様扱いだったシャドウ･リュウの時と違って､陳子強のチビクロや鄭同村のトンボとの関係性は完全に並列化してます。チビクロに｢お前｣呼ばわりされてますし。ですからリー･イージェンは､冒頭の国民大運動会シーンでも男の子に混ざってアスレチックや一輪車にチャレンジしています。コレがシャドウ･リュウであれば､法術を使ってテンテン一人勝ちという流れになったでしょうし､一緒に一輪車にも乗ってはいなかったでしょう。ちょっとビックリしましたけど､逆に新鮮でもありましたね。
圧倒的な魅力の美少女ヒロインだったテンテンちゃんが､パート４ではリン･シャオ･ロウの熱演で無敵の"超人"と化し､本作で"フツーの女の子"になったことで､シリーズの大きな魅力であった"少年少女たちの群像劇＋冒険活劇"が､本作で完成された印象を受けます。リー･イージェンも映画出演２作目で主役を懸命に演じ切り､次の出演作へとステップアップします。本作の後に出演したその映画は､現在では欧米のアニメファンや映画マニアから｢カルト･ムービー｣として語り継がれています(後ほど別のトピックでご案内いたします)。
しかしやはり芸能界の水が合わなかったのか､その作品を最後に表舞台へ現れることは二度とありませんでした。

そういえば､21世紀になって間もなく､リー･イージェンが中国の首都北京で女優をしているという情報がファンの間に流れました。その当事者の画像も出たのですが､年齢的にも近く確かに彼女が大人になって女優さんやってたらこんな感じかな～という容貌だったんです。しかし皆さまご存知のように彼女は本作のリー･イージェンとは別人でした。何せ10億人以上の人口を擁する中国です。同姓同名の別人など､珍しいことではないでしょうからね。

[3] mixiユーザー 08月11日 00:03

テンテンや3人の少年たちと仲良くなる狐の妖精ミミに扮したのは､『幽幻道士４』でリー･イージェンと共演していたツァイ･ミージェ(蔡宓潔､画像左)です。彼女は｢幽幻道士(キョンシーズ)｣シリーズの台湾側プロデューサーだったチャイ･ヤンミン(蔡陽明)氏の娘で､別項でご紹介している"華流ドラマ"のトップクリエイター兼俳優であるツァイ･ユエシュン(蔡岳勳)の妹さんです。実父の監督作『緑の大地』(87年)で子役としてデビュー､この作品では本作に先駆けベビーキョンシーことホン･ジンユエン(洪竟原､画像中の左側)君とも共演を果たしています。そして『幽幻道士４』を経て､本作では物語のカギを握る大役を担うことになりました。本作に出演後は日本との仕事で富を得た裕福な映画監督一家のお嬢様として育てられ､実兄が演出した台湾ドラマ｢ザ･ホスピタル｣(2006年)にて､成長した大人の女優としてゲスト出演しています。
その後のツァイ･ミージェ(画像右)は､父や兄の後を追って監督業に転身。2017年に手掛けた配信用ドラマ｢HIStory｣が台湾発のBL(ボーイズラブ)ドラマとして､タイや日本でも大きな話題を集めました。現在第３シーズンまで制作されており､彼女自身も父や兄を超える才能の新進女流監督として注目されています。

2020年のツァイ･ミージェへのインタビュー動画(日本語字幕無)

[4] mixiユーザー 11月24日 09:40

さて…この映画でテンテンたち少年少女の最大の敵として立ち塞がるのが､金おじいさんや安道士(ホァン･ヂョンユィ=黄仲裕)の師匠であり､魔界支配というとんでもない野望を抱く老人フウ先生です。
首吊り状態での登場から強烈なインパクトを残すフウ先生を怪演しているのは､台湾をメインに俳優兼武術指導として活躍したスン･ユンチー(孫榮吉､画像左)です。前述のホァン･ヂョンユィ､第1作からのリン･グァンロン(林光榮)､｢来来! キョンシーズ｣でのコウモリ道士ことズゥー･クヨン(朱克榮)､仙人ジジ助役のスー･ユン･フォン(蘇源峯)など､｢幽幻道士(キョンシーズ)｣シリーズには台湾で武術指導もこなす優れたアクション俳優たちが数多く出演してきました。スン･ユンチーもまた､彼ら同様幼少時から京劇を学んで武術やアクロバットを会得し､1970年代前半から台湾のアクション映画でスタントマンやからみ役として出演作を重ね､やがて香港最大の映画会社ショウ･ブラザースのトップ監督であるチャン･チェ(張徹)が台湾ロケをした大作に参加。その現場で武術指導を手掛け､後年監督作『霊幻少林拳』(79年､DVDのみ)を発表するラウ･カーリョン(劉家良)の薫陶を受け､台湾で監督兼主演作を撮り続けていた往年の大スター､ジミー･ウォング(王羽)にも重用され『片腕カンフー対空とぶギロチン』(76年)などに出演。70年代後半からは武術指導も手掛けるようになると､やはり後に『ラスト･キョンシー』(88年､テレビ放送)を発表する当時の台湾映画界のヒットメーカー､リー･ツォー･ナン(李作楠)監督と組むことが多くなり､そうした活動のなかで多くのスター俳優と知遇を得ることになります。日本でも83年に東京12チャンネル(現･テレビ東京)で放送された『真説･モンキーカンフー』(79年､画像中の左側)や､ビデオ発売された『復讐!少林蝴蝶拳』(79年)､リー･ツォー･ナン監督作『レディ･ニンジャ/セクシー武芸帳』(81年､ビデオのみ)といった出演作がリリースされました。

スン･ユンチーが悪役で出演した『復讐!少林蝴蝶拳』のオリジナル國語(北京語)版･日本語字幕付(!)動画。本編の内容に興味のない方は1時間22分ごろからご覧ください。『立体奇兵』では見られなかったスン･ユンチーのキレッキレなカンフー･アクションを堪能できます↓

個性的なルックスから敵役や老人などの脇役がほとんどでしたが､ジャッキー･チェン(成龍)のコミカルなカンフー映画が流行った頃､未公開ながら『復讐!少林蝴蝶拳』でも共演したセイモア･リー(李藝民)やデブ隊長ことパン･サン(胖三)と組んでカンフー･アクションを披露する主演作も撮っています。また武術指導家としては当コミュでもご紹介済の『精霊夢童子キョンシー･チャイルド (リトル･マスターキョンシー･キッドの冒険)』(86年､テレビ放送)を担当しています。
本作『立体奇兵』を最後に映画界を離れたスン･ユンチーは､孫榮輝と芸名を替え80年代なかばから参画していた台湾の伝統大衆芸能､｢歌仔戯(かざいぎ)｣の武術指導､演出､そして出演に活動の軸足を移していきます。歌仔戯は20世紀の初め頃から台湾北東部に位置する宜蘭で発祥し､独自の発展を遂げてきた台湾ローカルの大衆芸能(戯劇)で､現在も舞台をメインに台湾のテレビやラジオに流れ､多くの大衆に視聴され親しまれています。
前述にてスン･ユンチーのルックスを｢個性的｣と申し上げましたが､近年の歌仔戯の再評価が高まり､テレビやネットの記事に登場するスン･ユンチーを見ると､非常に若々しくダンディな現況を確認することが出来ます(画像右)。

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ