『幽幻道士』とそのシリーズ４作品を制作したのは､キンコウ･フィルム(金格影藝､画像左)という台湾の独立系プロダクションです。
キンコウ･フィルムは､1984年にチェン･チュン･リャン(陳俊良)というファンタジー作品の演出に定評があった台湾のベテラン監督が中心となり設立されました。処女作は､陳俊良､香港でも作品を撮っていたチャイ･ヤンミン(蔡陽明/蔡揚名)と､ジャッキー･チェン(成龍)主演の『ドラゴン特攻隊』(82年､画像中)を発表し､後に『幽幻道士』にも強い影響を与えるヒット作『カンフーキッド』を監督したチュー･イェンピン(朱延平)の３人が共同で手がけたオムニバス映画でした。その後､チャイ･ヤンミンがプロデューサー兼監督としてキンコウ･フィルムに合流。国策映画や文芸映画の制作を経て､翌85年からファミリー向けの娯楽作品の制作を開始します。その第1作として企画されていたのは､Ｓ･スピルバーグの人気作『インディ･ジョーンズ/魔宮の伝説』(画像右)に準主役で抜擢されたベトナム出身の子役ジョナサン･キー(關繼威)を主演に招いてのファンタジー『新桃太郎』でした。しかし､この企画は流れ､台湾を訪れたジョナサン･キーは､別の制作会社が制作した現代モノのアクション･コメディー『ドロボーズ』(86年)に主演。代わって繰り上がる形でキンコウ･フィルムが事実上のファミリー向け路線第1作として発表したのが『幽幻道士』だったのです。
しかし､別トピでもふれているように､『幽幻道士』は台湾での公開の際諸事情から｢12歳以下視聴禁止｣の制限を受け興行的に失敗してしまいます。一方､『新･桃太郎』は､やはり子役出身で当時20歳の女優リン･シャオ･ロウ(林小樓)を抜擢し､『幽幻道士』のキャストをスライドした上であらためて制作され､大ヒットを飛ばしました。この２作については､台湾の大物プロデューサー･ツァイ･ソンリン(蔡松林)が総指揮と監修にあたっています。
さらに『幽幻道士』が日本で大受けしていることを知り､勢いづいたキンコウ･フィルムは､さらなるファミリー向けのファンタジー大作の制作を企画します。
…という訳でこちらのトピでは､キンコウ･フィルム(金格影藝)とその設立にも関わり､後に｢幽幻道士｣シリーズのプロデュースにも深くかかわったふたりの映画監督､チェン･チュン･リャン(陳俊良)とチャイ･ヤンミン(蔡陽明/蔡揚名)の過去のキャリアを遡りながら､同シリーズに至るまでの一端を解いてみようと思います。
ここで､上記のふたり以外にもうひとり欠かせない人物がいます。『幽幻道士』のテレビ放送を手掛け､その後ＴＶ｢来来! キョンシーズ｣の日本側プロデューサーを担当した加藤直三さんです。昨年､惜しくも物故されましたが､追悼の意も込め､あらためて彼がキョンシー･ブームに至るまで果たした役割をもあわせて追想して参ります。
そして､『幽幻道士』や『新･桃太郎』の影響下でキンコウ･フィルムが制作した作品もご紹介して参りましょう。
キンコウ･フィルムは､1984年にチェン･チュン･リャン(陳俊良)というファンタジー作品の演出に定評があった台湾のベテラン監督が中心となり設立されました。処女作は､陳俊良､香港でも作品を撮っていたチャイ･ヤンミン(蔡陽明/蔡揚名)と､ジャッキー･チェン(成龍)主演の『ドラゴン特攻隊』(82年､画像中)を発表し､後に『幽幻道士』にも強い影響を与えるヒット作『カンフーキッド』を監督したチュー･イェンピン(朱延平)の３人が共同で手がけたオムニバス映画でした。その後､チャイ･ヤンミンがプロデューサー兼監督としてキンコウ･フィルムに合流。国策映画や文芸映画の制作を経て､翌85年からファミリー向けの娯楽作品の制作を開始します。その第1作として企画されていたのは､Ｓ･スピルバーグの人気作『インディ･ジョーンズ/魔宮の伝説』(画像右)に準主役で抜擢されたベトナム出身の子役ジョナサン･キー(關繼威)を主演に招いてのファンタジー『新桃太郎』でした。しかし､この企画は流れ､台湾を訪れたジョナサン･キーは､別の制作会社が制作した現代モノのアクション･コメディー『ドロボーズ』(86年)に主演。代わって繰り上がる形でキンコウ･フィルムが事実上のファミリー向け路線第1作として発表したのが『幽幻道士』だったのです。
しかし､別トピでもふれているように､『幽幻道士』は台湾での公開の際諸事情から｢12歳以下視聴禁止｣の制限を受け興行的に失敗してしまいます。一方､『新･桃太郎』は､やはり子役出身で当時20歳の女優リン･シャオ･ロウ(林小樓)を抜擢し､『幽幻道士』のキャストをスライドした上であらためて制作され､大ヒットを飛ばしました。この２作については､台湾の大物プロデューサー･ツァイ･ソンリン(蔡松林)が総指揮と監修にあたっています。
さらに『幽幻道士』が日本で大受けしていることを知り､勢いづいたキンコウ･フィルムは､さらなるファミリー向けのファンタジー大作の制作を企画します。
…という訳でこちらのトピでは､キンコウ･フィルム(金格影藝)とその設立にも関わり､後に｢幽幻道士｣シリーズのプロデュースにも深くかかわったふたりの映画監督､チェン･チュン･リャン(陳俊良)とチャイ･ヤンミン(蔡陽明/蔡揚名)の過去のキャリアを遡りながら､同シリーズに至るまでの一端を解いてみようと思います。
ここで､上記のふたり以外にもうひとり欠かせない人物がいます。『幽幻道士』のテレビ放送を手掛け､その後ＴＶ｢来来! キョンシーズ｣の日本側プロデューサーを担当した加藤直三さんです。昨年､惜しくも物故されましたが､追悼の意も込め､あらためて彼がキョンシー･ブームに至るまで果たした役割をもあわせて追想して参ります。
そして､『幽幻道士』や『新･桃太郎』の影響下でキンコウ･フィルムが制作した作品もご紹介して参りましょう。
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コメント(19)
ムック｢テンテン美少女メモリアル｣(英知出版刊､絶版)内の加藤直三さんへのインタビューから抜粋した『幽幻道士』初放送に至る経緯は下記の内容です。
香港へロケした"カラテシリーズ"などで人気を博し､7年間も続いた人気ＴＶドラマ｢Ｇメン75｣(75〜82年､画像左)のプロデュース補佐や香港ロケのコーディネーターを手掛け､ＴＢＳや香港の映画人と強いパイプをもっていた加藤直三さんが､当時香港最大の映画会社だったショウ･ブラザースの東京支社に勤務していた友人から､｢自分の台湾の知り合いが作った映画があるので見て欲しい｣と個人的に相談を受けて､試写を見たのがきっかけで､周囲の若いスタッフの意見を取り入れてTBSの編成に持込み､たまたま同局の｢月曜ロードショー｣で1987年1月の枠が空いたため､放送に至ったというもの。
勿論この時点で加藤さんは､映画の詳細なスタッフまではわかっていなかったはずです。ただ､既にこの時点でこれまで再三申し上げてきた香港最大の映画会社ショウ･ブラザースというキーワードが登場しています。そして､加藤さんが口にした"ショウ･ブラザースの東京支社に勤務していた友人"というのは､長年香港映画の字幕や日本語吹替版の翻訳を担当した王立山氏ではないかと思われます。さらに王氏と思われる人物の言う"台湾の知り合い"というのは､『幽幻道士』のプロデューサーとしてクレジットされていたツァイ･ソンリン(蔡松林)かチェン･チュン･リャン(陳俊良)のいずれかである可能性が高いです。
この加藤直三さんとショウ･ブラザースとのかかわりを語る上で､どうしても外せない人物がいます。"和製ドラゴン"の異名で､長年香港や台湾のアクション映画に出演を続けてきた俳優･倉田保昭さんです。
彼の著書である｢和製ドラゴン放浪記｣(97年､国際通信社刊。画像中)を見ると､倉田さんは1971年の夏､東映の大部屋俳優時代に当時来日していたショウ･ブラザースの社長ラン･ラン･ショー(邵逸夫)直々によるオーディションを東京･帝国ホテルで受け､合格して香港へ渡り､巨匠チャン･チェ(張徹)監督の『続･拳撃 悪客』(72年､ＤＶＤのみ)に出演する…というのは､別トピでもお伝えいたしました。
｢和製ドラゴン放浪記｣はこの下りを始め､基本的に倉田さんの一人称で語られています。つまり著書のなかではさも倉田さんがひとりで全ての段取りをつけた上で､香港へ乗り込んで行くかのような描写になっているのです。
でも､ちょっと考えてみて下さい。前述したように当時の倉田さんは､一介の大部屋俳優。ＴＶドラマや映画で台詞のある大きなな役が付くこともなく､エキストラ同然の通行人ややられ役がメインでした。そんな人がオーディションに自分ひとりで段取りや交渉を行って､状況をコントロールするなんて芸当は､出来るはずがありません。そもそも俳優は演じることが仕事であり､段取りや交渉はマネジメント側の業務だからです。ですから､ショウ･ブラザースのオーディションについても､それを日本側に持ち込んで､俳優をセレクションし､会場までの段取りをつけ､その後のスケジュールについても香港側や倉田さんと調整したマネージャー的な人物が必ず居たはずなんですね。｢和製ドラゴン放浪記｣には一文字たりとも出てこないこの人物とは一体誰だったのか？ 言うまでもなく､加藤直三さんです。
倉田さんと加藤直三さんとの密接なつながりを示す1本の映画があります。ショウ･ブラザースが1979年に公開した『少林寺vs.忍者』(画像右)です。中国拳法対日本武道の対決を描いたこのアクション映画で､加藤さんは日本武術界の首領として顔を見せています。
倉田さん含め日本側キャストは当然ながら､プロの俳優(ヒロインに扮した水野ゆかさんはファッションモデル)もしくは武道家を起用してるにもかかわらず､なぜ頭目役に役者でも武道家でもない"素人"の加藤さんをわざわざ起用したのでしょう？ これこそ日本側のキャスティングやコーディネーターとして貢献した加藤さんに対してショウ･ブラザース側からのねぎらいと返礼の意味合いがあったのではないでしょうか。
ちなみに『少林寺vs.忍者』の監督は､『霊幻少林拳』(79年､ＤＶＤのみ)を監督したラウ･カーリョン(劉家良)で､彼は『続･拳撃 悪客』の武術指導=アクション監督でもあり､帝国ホテルでのオーディションにも同行しています。ラン･ラン･ショーに倉田さんを起用するよう進言したのは､ラウ･カーリョンでした。この時点で加藤さんはラウ･カーリョンとも深いつながりが出来ていたのです。
香港へロケした"カラテシリーズ"などで人気を博し､7年間も続いた人気ＴＶドラマ｢Ｇメン75｣(75〜82年､画像左)のプロデュース補佐や香港ロケのコーディネーターを手掛け､ＴＢＳや香港の映画人と強いパイプをもっていた加藤直三さんが､当時香港最大の映画会社だったショウ･ブラザースの東京支社に勤務していた友人から､｢自分の台湾の知り合いが作った映画があるので見て欲しい｣と個人的に相談を受けて､試写を見たのがきっかけで､周囲の若いスタッフの意見を取り入れてTBSの編成に持込み､たまたま同局の｢月曜ロードショー｣で1987年1月の枠が空いたため､放送に至ったというもの。
勿論この時点で加藤さんは､映画の詳細なスタッフまではわかっていなかったはずです。ただ､既にこの時点でこれまで再三申し上げてきた香港最大の映画会社ショウ･ブラザースというキーワードが登場しています。そして､加藤さんが口にした"ショウ･ブラザースの東京支社に勤務していた友人"というのは､長年香港映画の字幕や日本語吹替版の翻訳を担当した王立山氏ではないかと思われます。さらに王氏と思われる人物の言う"台湾の知り合い"というのは､『幽幻道士』のプロデューサーとしてクレジットされていたツァイ･ソンリン(蔡松林)かチェン･チュン･リャン(陳俊良)のいずれかである可能性が高いです。
この加藤直三さんとショウ･ブラザースとのかかわりを語る上で､どうしても外せない人物がいます。"和製ドラゴン"の異名で､長年香港や台湾のアクション映画に出演を続けてきた俳優･倉田保昭さんです。
彼の著書である｢和製ドラゴン放浪記｣(97年､国際通信社刊。画像中)を見ると､倉田さんは1971年の夏､東映の大部屋俳優時代に当時来日していたショウ･ブラザースの社長ラン･ラン･ショー(邵逸夫)直々によるオーディションを東京･帝国ホテルで受け､合格して香港へ渡り､巨匠チャン･チェ(張徹)監督の『続･拳撃 悪客』(72年､ＤＶＤのみ)に出演する…というのは､別トピでもお伝えいたしました。
｢和製ドラゴン放浪記｣はこの下りを始め､基本的に倉田さんの一人称で語られています。つまり著書のなかではさも倉田さんがひとりで全ての段取りをつけた上で､香港へ乗り込んで行くかのような描写になっているのです。
でも､ちょっと考えてみて下さい。前述したように当時の倉田さんは､一介の大部屋俳優。ＴＶドラマや映画で台詞のある大きなな役が付くこともなく､エキストラ同然の通行人ややられ役がメインでした。そんな人がオーディションに自分ひとりで段取りや交渉を行って､状況をコントロールするなんて芸当は､出来るはずがありません。そもそも俳優は演じることが仕事であり､段取りや交渉はマネジメント側の業務だからです。ですから､ショウ･ブラザースのオーディションについても､それを日本側に持ち込んで､俳優をセレクションし､会場までの段取りをつけ､その後のスケジュールについても香港側や倉田さんと調整したマネージャー的な人物が必ず居たはずなんですね。｢和製ドラゴン放浪記｣には一文字たりとも出てこないこの人物とは一体誰だったのか？ 言うまでもなく､加藤直三さんです。
倉田さんと加藤直三さんとの密接なつながりを示す1本の映画があります。ショウ･ブラザースが1979年に公開した『少林寺vs.忍者』(画像右)です。中国拳法対日本武道の対決を描いたこのアクション映画で､加藤さんは日本武術界の首領として顔を見せています。
倉田さん含め日本側キャストは当然ながら､プロの俳優(ヒロインに扮した水野ゆかさんはファッションモデル)もしくは武道家を起用してるにもかかわらず､なぜ頭目役に役者でも武道家でもない"素人"の加藤さんをわざわざ起用したのでしょう？ これこそ日本側のキャスティングやコーディネーターとして貢献した加藤さんに対してショウ･ブラザース側からのねぎらいと返礼の意味合いがあったのではないでしょうか。
ちなみに『少林寺vs.忍者』の監督は､『霊幻少林拳』(79年､ＤＶＤのみ)を監督したラウ･カーリョン(劉家良)で､彼は『続･拳撃 悪客』の武術指導=アクション監督でもあり､帝国ホテルでのオーディションにも同行しています。ラン･ラン･ショーに倉田さんを起用するよう進言したのは､ラウ･カーリョンでした。この時点で加藤さんはラウ･カーリョンとも深いつながりが出来ていたのです。
時の流れをまた､過去に戻しまして…。
倉田保昭さんが香港へ渡って出演したチャン･チェ監督の『続･拳撃 悪客』は､香港でヒットを飛ばし､悪役でシャープなアクションを見せた倉田さんをチャン･チェ監督をいたく気に入り､ショウ･ブラザースは年間契約を薦めますが､倉田さんはコレを断ります。それならばとチャン･チェ監督は自分が出資する２本の独立プロ制作映画への出演を依頼し､倉田さんはこれを受諾します。どちらも主演は実質映画デビューで､後に台湾で大スターとなるリー･フォアマン(孟飛)。そのうち１作が日本でも1974年に公開された時代劇アクション『武道大連合/復讐のドラゴン』(72年､画像左)です。
…という下りまでは､既出の書籍｢和製ドラゴン放浪記｣始め､倉田さん自身の複数のインタビューで明らかになっている事実です。ここでもやはり名前は出て来ませんが､マネージメントについては､加藤直三さんがあたっています。そしてここで､後の｢幽幻道士｣シリーズやTV｢来来! キョンシーズ｣につながる出逢いが生まれています。
『武道大連合/復讐のドラゴン』の監督は､チャイ･ヤンミン(蔡陽明/蔡揚名)。後にキンコウ･フィルムで､｢幽幻道士｣シリーズや｢来来! キョンシーズ｣を台湾側でプロデュースを務めた人物です。ということは加藤直三さんと『復讐のドラゴン』の時点で､既に接点があったんですね。
チャイ･ヤンミンは元々台湾の映画人でしたが､70年代初頭､ティン･シャン･シー(丁善璽､後年ジャッキー･チェンの代表作『プロジェクトＡ』の共同演出を担当)監督の呼びかけでジョセフ･クオ(郭南宏)やリー･ツォー･ナン(李作楠)といった気鋭の監督たちと香港を訪れていました(この時まだ助監督だったチュー･イェンピンも同行しています)。これも倉田さんがインタビューで語っていますが､当時の台湾の娯楽映画のレベルはとても低く､東南アジアを席巻するショウ･ブラザース制作の香港映画の猛威に危機感を頂いたチャイ･ヤンミンを含む前述の台湾映画人たちは､"研修"目的でショウ･ブラザースのスタジオにて映画を撮影したのです。これは彼ら台湾映画人にとっては屈辱的な行動ではありましたが､ショウ･ブラザースで得た成果を下地に､彼らは台湾アクション映画の底上げを図っていきました。そして､この流れに偶然ながら日本から参入する形となったのが､倉田保昭さんでありマネジメント担当の加藤直三さんだったのです。
『武道大連合/復讐のドラゴン』は､香港や台湾ではそこそこの興収でしたが､フィリピンで大ヒットとなり､主演のリー･フォアマンや悪役の倉田さんは現地で一躍スーパースターと脚光を浴びます。そこで香港･台湾というよりフィリピンの観客に向けた続編が､チャイ･ヤンミン監督始め同じスタッフにより今度は台湾ロケで制作されることとなりました。その作品『ドラゴン少林拳』(76年､画像中)は､倉田さんは本編には出ないものの､前作の場面を回想として付け加えた上で"倉田保昭出演作"として公開され､さらにフィリピンの映画会社出資による実質的な第３作『少林寺マスター』(77年)では､倉田さんが『復讐のドラゴン』と異なる日本人の悪役に扮し､当時台湾に滞在していたラウ･カーリョン(劉家良)が武術指導として合流し､地面に立てられた数十本の丸太ん棒の上で凄まじいカンフー･アクションを見せます。この続編２作も監督した時のチャイ･ヤンミンは､ショウ･ブラザースとの契約トラブルを抱えており､オー･ヤン･チュン(歐陽俊)の別名を使っています。
実は『少林寺マスター』には､｢幽幻道士｣シリーズの金おじいさん役でファンにはなじみ深い俳優キン･トー(金塗)が､ヒロインの父親役で出演しています。このヒロインを演じたドリス･ロン(龍君兒)は､アクションから町娘までこなす売れっ子の台湾の美人女優でしたが､この時の髪型やメイク､衣裳が後のテンテンちゃんの造型と非常に似てるんですね。『キョンシー･キッド』のトピックでも軽くふれてますが､管理人の私見ながら当時のドリス･ロンの造型はテンテンちゃんのキャラクターにかなり影響を与えてる気がします。いわば"プロトタイプ"的な存在ですよね。しかも『少林寺マスター』での父親役はキン･トーですし。
『少林寺マスター』TV放送時の日本語吹替版動画↓
ちなみに『ドラゴン少林拳』と『少林寺マスター』は日本未公開作ですが､ジャッキーや少林寺映画がブームとなった80年代なかば､『復讐のドラゴン』と共にテレビ東京で何度かテレビで放送されました。『少林寺マスター』は｢少林寺必殺舞扇拳｣の邦題でビデオ化されています(画像右)。
倉田保昭さんが香港へ渡って出演したチャン･チェ監督の『続･拳撃 悪客』は､香港でヒットを飛ばし､悪役でシャープなアクションを見せた倉田さんをチャン･チェ監督をいたく気に入り､ショウ･ブラザースは年間契約を薦めますが､倉田さんはコレを断ります。それならばとチャン･チェ監督は自分が出資する２本の独立プロ制作映画への出演を依頼し､倉田さんはこれを受諾します。どちらも主演は実質映画デビューで､後に台湾で大スターとなるリー･フォアマン(孟飛)。そのうち１作が日本でも1974年に公開された時代劇アクション『武道大連合/復讐のドラゴン』(72年､画像左)です。
…という下りまでは､既出の書籍｢和製ドラゴン放浪記｣始め､倉田さん自身の複数のインタビューで明らかになっている事実です。ここでもやはり名前は出て来ませんが､マネージメントについては､加藤直三さんがあたっています。そしてここで､後の｢幽幻道士｣シリーズやTV｢来来! キョンシーズ｣につながる出逢いが生まれています。
『武道大連合/復讐のドラゴン』の監督は､チャイ･ヤンミン(蔡陽明/蔡揚名)。後にキンコウ･フィルムで､｢幽幻道士｣シリーズや｢来来! キョンシーズ｣を台湾側でプロデュースを務めた人物です。ということは加藤直三さんと『復讐のドラゴン』の時点で､既に接点があったんですね。
チャイ･ヤンミンは元々台湾の映画人でしたが､70年代初頭､ティン･シャン･シー(丁善璽､後年ジャッキー･チェンの代表作『プロジェクトＡ』の共同演出を担当)監督の呼びかけでジョセフ･クオ(郭南宏)やリー･ツォー･ナン(李作楠)といった気鋭の監督たちと香港を訪れていました(この時まだ助監督だったチュー･イェンピンも同行しています)。これも倉田さんがインタビューで語っていますが､当時の台湾の娯楽映画のレベルはとても低く､東南アジアを席巻するショウ･ブラザース制作の香港映画の猛威に危機感を頂いたチャイ･ヤンミンを含む前述の台湾映画人たちは､"研修"目的でショウ･ブラザースのスタジオにて映画を撮影したのです。これは彼ら台湾映画人にとっては屈辱的な行動ではありましたが､ショウ･ブラザースで得た成果を下地に､彼らは台湾アクション映画の底上げを図っていきました。そして､この流れに偶然ながら日本から参入する形となったのが､倉田保昭さんでありマネジメント担当の加藤直三さんだったのです。
『武道大連合/復讐のドラゴン』は､香港や台湾ではそこそこの興収でしたが､フィリピンで大ヒットとなり､主演のリー･フォアマンや悪役の倉田さんは現地で一躍スーパースターと脚光を浴びます。そこで香港･台湾というよりフィリピンの観客に向けた続編が､チャイ･ヤンミン監督始め同じスタッフにより今度は台湾ロケで制作されることとなりました。その作品『ドラゴン少林拳』(76年､画像中)は､倉田さんは本編には出ないものの､前作の場面を回想として付け加えた上で"倉田保昭出演作"として公開され､さらにフィリピンの映画会社出資による実質的な第３作『少林寺マスター』(77年)では､倉田さんが『復讐のドラゴン』と異なる日本人の悪役に扮し､当時台湾に滞在していたラウ･カーリョン(劉家良)が武術指導として合流し､地面に立てられた数十本の丸太ん棒の上で凄まじいカンフー･アクションを見せます。この続編２作も監督した時のチャイ･ヤンミンは､ショウ･ブラザースとの契約トラブルを抱えており､オー･ヤン･チュン(歐陽俊)の別名を使っています。
実は『少林寺マスター』には､｢幽幻道士｣シリーズの金おじいさん役でファンにはなじみ深い俳優キン･トー(金塗)が､ヒロインの父親役で出演しています。このヒロインを演じたドリス･ロン(龍君兒)は､アクションから町娘までこなす売れっ子の台湾の美人女優でしたが､この時の髪型やメイク､衣裳が後のテンテンちゃんの造型と非常に似てるんですね。『キョンシー･キッド』のトピックでも軽くふれてますが､管理人の私見ながら当時のドリス･ロンの造型はテンテンちゃんのキャラクターにかなり影響を与えてる気がします。いわば"プロトタイプ"的な存在ですよね。しかも『少林寺マスター』での父親役はキン･トーですし。
『少林寺マスター』TV放送時の日本語吹替版動画↓
ちなみに『ドラゴン少林拳』と『少林寺マスター』は日本未公開作ですが､ジャッキーや少林寺映画がブームとなった80年代なかば､『復讐のドラゴン』と共にテレビ東京で何度かテレビで放送されました。『少林寺マスター』は｢少林寺必殺舞扇拳｣の邦題でビデオ化されています(画像右)。
『武道大連合/復讐のドラゴン』(72年)に始まるリー･フォアマン(孟飛)主演の｢方世玉(劇中の主人公の名前)｣シリーズ３本を撮り終えたチャイ･ヤンミン(蔡陽明/蔡揚名)は､78年に映画制作会社を設立します。この時､共同で設立にあたったのが､70年代前半からチャイ･ヤンミンの助監督に就いていたチェン･チュン･リャン(陳俊良)だったのです。この会社こそ､今回のトピックのテーマとして取り上げているキンコウ･フィルム(金格影藝)の母体といっても過言ではないのです。
この会社では､前述の｢方世玉｣シリーズに続きリー･フォアマン主演で『糊塗三俠客/Three Shaolin Musketeers』(78年､日本未公開。画像左)を制作。チャイ･ヤンミンと共同という形ながら陳俊良はこの映画で監督デビューを果たします。その内容ですが､コメディー色の強い時代劇ファンタジー。つまりは後年の｢新桃太郎｣シリーズや｢幽幻道士｣シリーズにつながるフォーマットが既にこの作品で出来上がっていたのです。しかもこの作品は台湾で観客だけでなく評論家筋からも好評を得ます。それに乗じ陳俊良は別の映画会社で､『糊塗三俠客』の登場人物を女性に変えた姉妹編ともいえる同系統作品『糊塗俠女三個半/Kung Fu Girls』(78年､日本未公開。画像中)を撮影します(チャイ･ヤンミンはプロデュースのみ)。
『糊塗三俠客/Three Shaolin Musketeers』のアクション場面を抜粋した動画。主人公が３人でドタバタを交えながら演武するカットは､『幽幻道士』の元ネタのひとつである『カンフーキッド』を想起させます↓
『糊塗三俠客/Three Shaolin Musketeers』には､前コメントで紹介したドリス･ロン(龍君兒)のほか､『ミラクル･ファイター』(82年､映画祭のみ)や『バカ拳』(85年､ビデオのみ)､そして『精霊道士』(86年､ビデオのみ)など｢幽幻道士｣シリーズのルーツといえる作品群に出演していたレオン･カーヤン(梁家仁)らも顔を見せています。リー･フォアマンの明朗で颯爽とした二枚目半的なヒーロー像は､｢新桃太郎｣シリーズの主人公にも受け継がれていきます。一方『糊塗俠女三個半/Kung Fu Girls』には､キン･トー(金塗)が出演。年老いた師匠をコミカルに演じており､後の｢幽幻道士｣シリーズや『新桃太郎』を彷彿とさせます。
そして､今回紹介した２作品両方に大役で出演している台湾で国民的な人気を誇ったスター女優ヤン･ホイサン(楊惠珊､画像右)の造型もまた､後のテンテンちゃんのキャラに大きな影響を与えているように思われます。
ちなみにこの２作の脚本を手掛けたのは､劉正謙。｢幽幻道士｣のテンテンちゃんことシャドウ･リュウ(劉致��)の伯父にあたる人物で､後に『幽幻道士３』(88年)や『霊幻少女』(92年)の脚本も手掛けることになります。
そして…『糊塗三俠客/Three Shaolin Musketeers』と『糊塗俠女三個半/Kung Fu Girls』で映画監督としての地位を確立した陳俊良は､日本でも有名な中国の代表的ファンタジー小説の映画化にチャレンジすることになるのです。
※ヤン･ホイサンの画像は､『糊塗三俠客/Three Shaolin Musketeers』『糊塗俠女三個半/Kung Fu Girls』との関連はありません。
この会社では､前述の｢方世玉｣シリーズに続きリー･フォアマン主演で『糊塗三俠客/Three Shaolin Musketeers』(78年､日本未公開。画像左)を制作。チャイ･ヤンミンと共同という形ながら陳俊良はこの映画で監督デビューを果たします。その内容ですが､コメディー色の強い時代劇ファンタジー。つまりは後年の｢新桃太郎｣シリーズや｢幽幻道士｣シリーズにつながるフォーマットが既にこの作品で出来上がっていたのです。しかもこの作品は台湾で観客だけでなく評論家筋からも好評を得ます。それに乗じ陳俊良は別の映画会社で､『糊塗三俠客』の登場人物を女性に変えた姉妹編ともいえる同系統作品『糊塗俠女三個半/Kung Fu Girls』(78年､日本未公開。画像中)を撮影します(チャイ･ヤンミンはプロデュースのみ)。
『糊塗三俠客/Three Shaolin Musketeers』のアクション場面を抜粋した動画。主人公が３人でドタバタを交えながら演武するカットは､『幽幻道士』の元ネタのひとつである『カンフーキッド』を想起させます↓
『糊塗三俠客/Three Shaolin Musketeers』には､前コメントで紹介したドリス･ロン(龍君兒)のほか､『ミラクル･ファイター』(82年､映画祭のみ)や『バカ拳』(85年､ビデオのみ)､そして『精霊道士』(86年､ビデオのみ)など｢幽幻道士｣シリーズのルーツといえる作品群に出演していたレオン･カーヤン(梁家仁)らも顔を見せています。リー･フォアマンの明朗で颯爽とした二枚目半的なヒーロー像は､｢新桃太郎｣シリーズの主人公にも受け継がれていきます。一方『糊塗俠女三個半/Kung Fu Girls』には､キン･トー(金塗)が出演。年老いた師匠をコミカルに演じており､後の｢幽幻道士｣シリーズや『新桃太郎』を彷彿とさせます。
そして､今回紹介した２作品両方に大役で出演している台湾で国民的な人気を誇ったスター女優ヤン･ホイサン(楊惠珊､画像右)の造型もまた､後のテンテンちゃんのキャラに大きな影響を与えているように思われます。
ちなみにこの２作の脚本を手掛けたのは､劉正謙。｢幽幻道士｣のテンテンちゃんことシャドウ･リュウ(劉致��)の伯父にあたる人物で､後に『幽幻道士３』(88年)や『霊幻少女』(92年)の脚本も手掛けることになります。
そして…『糊塗三俠客/Three Shaolin Musketeers』と『糊塗俠女三個半/Kung Fu Girls』で映画監督としての地位を確立した陳俊良は､日本でも有名な中国の代表的ファンタジー小説の映画化にチャレンジすることになるのです。
※ヤン･ホイサンの画像は､『糊塗三俠客/Three Shaolin Musketeers』『糊塗俠女三個半/Kung Fu Girls』との関連はありません。
｢西遊記｣といえば､日本でも何度も映画やＴＶドラマ化された､アジア全域に知られる中国の代表的なＳＦファンタジー小説です。当然香港や台湾､中国大陸では数え切れないほど映像化されており､近年もチャウ･シンチー(周星馳)監督の『西遊記〜はじまりのはじまり〜』(2013年)や､ドニー･イェン(甄子丹)主演の『モンキー･マジック 孫悟空誕生』(2014年)など､キョンシー･ホラーとも縁が深い香港の映画人たちによって映画化され､題材として依然高い人気を誇っています。
1982年､陳俊良は｢西遊記｣を題材にしたＳＦファンタジー映画を制作します。タイトルは『新西遊記/New Pilgrims to the West』(未公開､画像左)､主役である孫悟空を演じるのは､劉尚謙(画像中)という70年代半ばから活躍していた二枚目俳優です。じ･つ･は!! 彼こそ｢幽幻道士｣シリーズなどキョンシー･ホラー映画の象徴的ヒロインであるテンテンちゃんことシャドウ･リュウ(劉致��)の実のお父様なんですね(画像右参照)。ということは彼女の実兄であるスイカ頭ことジョニー･リュウ(劉致翰)のお父様でもある訳ですがｗ 成長しイケメン俳優となった劉致翰は､大柄な体躯と顔立ちがお父様とよく似ています。テンテンちゃんのお父様が実は"孫悟空"だったというのも驚きですが､人気脚本家でもある劉正謙も含め､テンテン＆スイカ頭の兄妹は､芸能一家の血を継いでいたのですね。
そしてタイトルの『新西遊記』にもご注目下さい。後年金格影藝で制作されるご存じ『新桃太郎』(87年)や『新アリババ 魔法大冒険』(88年)､そして『ドラゴン７ボール(新七龍珠)』(91年)に至る陳俊良十八番の"新〜"で始まるファンタジー伝記映画路線。コレはその文字通り第１弾であったんですね。猪八戒は勿論皆様期待通り､この人以外考えられないデブ隊長ことパン･サン(胖三)が扮するなど､この時点で『幽幻道士』や『新桃太郎』でおなじみのキャストが登場しています。
1982年､陳俊良は｢西遊記｣を題材にしたＳＦファンタジー映画を制作します。タイトルは『新西遊記/New Pilgrims to the West』(未公開､画像左)､主役である孫悟空を演じるのは､劉尚謙(画像中)という70年代半ばから活躍していた二枚目俳優です。じ･つ･は!! 彼こそ｢幽幻道士｣シリーズなどキョンシー･ホラー映画の象徴的ヒロインであるテンテンちゃんことシャドウ･リュウ(劉致��)の実のお父様なんですね(画像右参照)。ということは彼女の実兄であるスイカ頭ことジョニー･リュウ(劉致翰)のお父様でもある訳ですがｗ 成長しイケメン俳優となった劉致翰は､大柄な体躯と顔立ちがお父様とよく似ています。テンテンちゃんのお父様が実は"孫悟空"だったというのも驚きですが､人気脚本家でもある劉正謙も含め､テンテン＆スイカ頭の兄妹は､芸能一家の血を継いでいたのですね。
そしてタイトルの『新西遊記』にもご注目下さい。後年金格影藝で制作されるご存じ『新桃太郎』(87年)や『新アリババ 魔法大冒険』(88年)､そして『ドラゴン７ボール(新七龍珠)』(91年)に至る陳俊良十八番の"新〜"で始まるファンタジー伝記映画路線。コレはその文字通り第１弾であったんですね。猪八戒は勿論皆様期待通り､この人以外考えられないデブ隊長ことパン･サン(胖三)が扮するなど､この時点で『幽幻道士』や『新桃太郎』でおなじみのキャストが登場しています。
陳俊良が監督した『新西遊記/New Pilgrims to the West』は好評を博し､同じ年に『孫悟空大戰飛人國/Monkey War』(画像左)という続編が作られました。画像のロビーカードをご覧頂ければ､後年の｢新桃太郎｣シリーズに通じる雰囲気がご理解頂けるかと思います。
その後､陳俊良監督と劉尚謙ら｢新西遊記｣シリーズのキャストにプラスアルファのメンバーを加えて､オールスター大作として撮影されたのが別項でも紹介している『悪漢笑撃隊』(83年)です。日本では白人俳優のシーンを追加撮影した"再編集版"がビデオリリースされたこの作品､台湾では劉尚謙と相手役としてハリウッドから招いたセクシー女優ミスティ･ロウ(画像中)とのスキャンダルが持ち上がりましたが､コレは宣伝目的の話題作りだったようです。
同じ頃､オー･ヤン･チュン(歐陽俊)の別名を使い続けていたチャイ･ヤンミン(蔡陽明/蔡揚名)は､前項でも紹介したヤン･ホイサン(楊惠珊)を中心に､ブリジット･リン(林青霞)､ルー･シャオフェン(陸小芬)といったトップクラスの人気女優を起用して､娯楽アクションから文芸色の強いドラマ作まで､幅広いジャンルの映画を撮っていました。
当時の彼の代表作というべき1作が､後年『精霊夢童子 キョンシー･チャイルド』(86年､テレビ放送)を撮るヤン･リークオ(楊立國)を制作担当に迎え､日本でもビデオが発売された『女帝軍団アマゾネス･ウォリアーズ』(81年)です。邦題やジャケからも察せられるようにかなり奇抜な設定の冒険活劇です。
その後､陳俊良監督と劉尚謙ら｢新西遊記｣シリーズのキャストにプラスアルファのメンバーを加えて､オールスター大作として撮影されたのが別項でも紹介している『悪漢笑撃隊』(83年)です。日本では白人俳優のシーンを追加撮影した"再編集版"がビデオリリースされたこの作品､台湾では劉尚謙と相手役としてハリウッドから招いたセクシー女優ミスティ･ロウ(画像中)とのスキャンダルが持ち上がりましたが､コレは宣伝目的の話題作りだったようです。
同じ頃､オー･ヤン･チュン(歐陽俊)の別名を使い続けていたチャイ･ヤンミン(蔡陽明/蔡揚名)は､前項でも紹介したヤン･ホイサン(楊惠珊)を中心に､ブリジット･リン(林青霞)､ルー･シャオフェン(陸小芬)といったトップクラスの人気女優を起用して､娯楽アクションから文芸色の強いドラマ作まで､幅広いジャンルの映画を撮っていました。
当時の彼の代表作というべき1作が､後年『精霊夢童子 キョンシー･チャイルド』(86年､テレビ放送)を撮るヤン･リークオ(楊立國)を制作担当に迎え､日本でもビデオが発売された『女帝軍団アマゾネス･ウォリアーズ』(81年)です。邦題やジャケからも察せられるようにかなり奇抜な設定の冒険活劇です。
『幽幻道士(キョンシーズ)』(86年)と『幽幻道士２』(87年)の間､つまり『新桃太郎』(87年)と同時期に､前後してキンコウ･フィルム(金格影藝)で撮られたのが『緑の大地』(87年､画像左)という映画です。厳密にはキンコウ･フィルムと台湾政府寄りの映画会社との共同制作なのですが､当時の台湾映画界では､様々な政策を宣伝し啓蒙を促すため､政府寄りの映画会社と民間の独立系制作プロダクションが共同で映画を作る潮流が作られつつありました。『緑の大地』もそうした流れで制作された１本で､当時台湾政府が進めていた転作農業政策のプロバガンダ的な企画でした。日本では､後述する主演女優の人気もあり､ラブ･ロマンス作品としてビデオ化され､ローカル局やＣＳ局等で放送されたのですが､実際には台湾のローカル色が強い内容で､日本に住む我々には伝わりづらい部分もあります。
しかしながら､本編には｢幽幻道士(キョンシーズ)｣シリーズや『新桃太郎』のキャストやスタッフが大挙して参加しています。残念ながら皆様がイチバン期待するであろうテンテンちゃん(シャドウ･リュウ)やチビクロこと陳子強は出演していませんが､金おじいさんことキン･トー(金塗､画像中左側)､『幽幻道士３』(88年)のマーボおばさん(尤美芳)や盗賊サモハン(金帝)､『幽幻道士(キョンシーズ)』の悪徳興行主ゼンさん＆『新桃太郎』の北海道士(陳松勇)､そして間下このみ主演の日本版｢キョンシーズ｣(87年)にも顔を出していた李敏郎といったベテラン勢のほかに…何と!｢幽幻道士(キョンシーズ)｣シリーズでも人気の高いキャラクターであるベビー･キョンシーに扮していたホン･ジンユェン(洪竟原､画像右)君が､子役として出演。台詞もちゃんとあり､生まれたまんまの姿で走り回ったり､ワーワー泣いたり､TV｢来来! キョンシーズ｣(88年)でファンが赤面したアノ場面の元ネタをやってのけたり…と､自然なお芝居をたっぷり披露してくれます。加えて『幽幻道士４』や『新･幽幻道士/立体奇兵』にも出演していたミイミイちゃんことツァイ･ミージェ(蔡宓潔)が､お姉ちゃん役でベビー･キョンシーと子役同士で共演しています。
脚本を､香港や台湾の名匠たちの作品を多数手掛けてきたウー･ニエンジェン(吳念眞)が担当。物語自体は普遍的な青春群像劇やホームドラマとして展開する為､プロバガンダや台湾のローカル色は強いものの退屈はしません。オールロケーションを敢行した台湾中部の雲林県林内郷に広がる､どこか懐かしい雰囲気の田園風景も見どころです。キンコウ･フィルムを主宰し監督としてのキャリアも長いチャイ･ヤン･ミン(蔡揚名)が手掛けただけあって､文芸映画としても非常に手堅い作りになっており､台湾のアカデミー賞と呼ばれるゴールデン･ホース賞で村長を演じたシー･イン(石英)が最優秀男優賞､吳念眞が最優秀脚本賞にノミネートされるなど､高い評価をも獲得しました。その割には､現在インターネット上では作品の資料が非常に少ない１作でもあります。
しかしながら､本編には｢幽幻道士(キョンシーズ)｣シリーズや『新桃太郎』のキャストやスタッフが大挙して参加しています。残念ながら皆様がイチバン期待するであろうテンテンちゃん(シャドウ･リュウ)やチビクロこと陳子強は出演していませんが､金おじいさんことキン･トー(金塗､画像中左側)､『幽幻道士３』(88年)のマーボおばさん(尤美芳)や盗賊サモハン(金帝)､『幽幻道士(キョンシーズ)』の悪徳興行主ゼンさん＆『新桃太郎』の北海道士(陳松勇)､そして間下このみ主演の日本版｢キョンシーズ｣(87年)にも顔を出していた李敏郎といったベテラン勢のほかに…何と!｢幽幻道士(キョンシーズ)｣シリーズでも人気の高いキャラクターであるベビー･キョンシーに扮していたホン･ジンユェン(洪竟原､画像右)君が､子役として出演。台詞もちゃんとあり､生まれたまんまの姿で走り回ったり､ワーワー泣いたり､TV｢来来! キョンシーズ｣(88年)でファンが赤面したアノ場面の元ネタをやってのけたり…と､自然なお芝居をたっぷり披露してくれます。加えて『幽幻道士４』や『新･幽幻道士/立体奇兵』にも出演していたミイミイちゃんことツァイ･ミージェ(蔡宓潔)が､お姉ちゃん役でベビー･キョンシーと子役同士で共演しています。
脚本を､香港や台湾の名匠たちの作品を多数手掛けてきたウー･ニエンジェン(吳念眞)が担当。物語自体は普遍的な青春群像劇やホームドラマとして展開する為､プロバガンダや台湾のローカル色は強いものの退屈はしません。オールロケーションを敢行した台湾中部の雲林県林内郷に広がる､どこか懐かしい雰囲気の田園風景も見どころです。キンコウ･フィルムを主宰し監督としてのキャリアも長いチャイ･ヤン･ミン(蔡揚名)が手掛けただけあって､文芸映画としても非常に手堅い作りになっており､台湾のアカデミー賞と呼ばれるゴールデン･ホース賞で村長を演じたシー･イン(石英)が最優秀男優賞､吳念眞が最優秀脚本賞にノミネートされるなど､高い評価をも獲得しました。その割には､現在インターネット上では作品の資料が非常に少ない１作でもあります。
『緑の大地』(87年)には､当時香港と台湾の映画界を股にかけ､上り調子にあった人気女優ジョイ･ウォン(王祖賢､画像左)が主役として起用されています。彼女の代表作と言えば､妖艶な女幽霊を熱演した｢チャイニーズ･ゴースト･ストーリー｣３部作(87〜91年)ですが､日本では"キョンシー･ブーム"が落着いた直後の89年正月第２弾映画として公開され､折からのレンタル･ビデオ･ブームで彼女の未公開作品が日本でも大量にビデオ化され､人気を博しました。そして､ブルース･リー(李小龍)映画のヒロインだったノラ･ミャオ(苗可秀)以降空席状態だったポピュラーな香港映画女優として認知度を高め､日本の映画やＴＶドラマでも主演を務めたほか､ＣＭ出演も果たします。テンテンちゃんことシャドウ･リュウ(劉致��)含め日本で人気を得た香港･台湾の女性タレントはたくさんいますが､あくまで香港･台湾映画界に拠点を置きながらこれだけ日本で引っ張りだこだったのは､おそらくジョイ･ウォンのみでしょう。
前述の通り､代表作がゴースト物であったためか､映画でのジョイ･ウォンといえば､幽霊や妖精など現実離れした役柄が多かったほか､現代劇では当時大流行していた男性的な"香港ノワール"映画での添え物的な扱いばかりが目立っていました。しかし『緑の大地』ではキャリア(大卒)組の農学者というリアリティのある設定で､研究一辺倒で現場経験が少なく､派遣された農村でよそ者扱いを受けながらも､信念をもって行動し成長していく女性を熱演しています。学者としてはまだキャリアも浅く心の弱さを垣間見せたり､場面によっては喫煙シーンも見せる人間臭さなど､ちょっと他の作品で見られない印象的な役どころです。
前項でもお伝えしたように､チャイ･ヤン･ミン(蔡揚名)監督を始め､キン･トー(金塗)やベビー･キョンシーら｢幽幻道士｣シリーズのチームと共演を果たしたことなど(画像中参照)､彼女のフィルモグラフィー中でも異色の作品ではあるのですが､現地のマスコミ､そして何よりジョイ･ウォン自身にとって､この『緑の大地』はその後の彼女の半生に決定的な影響を及ぼした因縁深い１本となりました。
『緑の大地』でジョイ･ウォンの相手役となったのは､当時台湾の新進歌手だったジャイ･チン(齊秦､画像右の右側)でした。オールロケの撮影期間中に親密の度合いを深めたふたりは恋愛関係となり､公の場にも堂々とツーショットで登場するようになります。
齊秦とジョイ･ウォンがデュエットした主題歌が流れる『緑の大地』ED動画↓
その後ジョイ･ウォンは前述の通り香港映画界へ進出して大成功を収め､齊秦も台湾で着々と人気シンガーの地位を固めていきました。当然ふたりの間にはすれ違いが生まれ､心無いゴシップやスキャンダルの数々が､主にジョイの方へ降りかかります。そうした状況下で冷却期間と復縁を繰返しながら､ふたりは結婚への道を歩み始めます。そして齊秦が台湾のトップシンガーとして盤石の立ち位置を獲得し､ジョイも香港映画での活動が一段落した2000年､ふたりはチベットへ渡り､現地で結婚式を挙げる準備に入りました。ところが…好事魔多しの言葉通り､直後ジョイの前に齊秦が交際していた女性との間に"隠し子"が発覚。この1件が決定打となり､ジョイは８年ぶりの香港映画出演となった『華の愛 遊園驚夢』(2001年)の記者会見にて､芸能界からの引退と海外留学を表明。翌年彼女はカナダへ渡って30代半ばにして実質的な隠遁生活に入り､齊秦との15年に渡る愛情関係にも終止符を打ったのです。
その後齊秦は､台湾で人気歌手の地位を保ちつつ､2010年に別の女性と結婚､２児を儲け今風に言うところの"イクメン"パパとしても知られています。一方のジョイ･ウォンは現在に至るまでカナダに滞在し､近年はSNSをオープン。応援を続けるファンへの感謝の言葉を贈ると共に再三の復帰オファーに対し､その意思がないことを明確に示し続けています。
前述の通り､代表作がゴースト物であったためか､映画でのジョイ･ウォンといえば､幽霊や妖精など現実離れした役柄が多かったほか､現代劇では当時大流行していた男性的な"香港ノワール"映画での添え物的な扱いばかりが目立っていました。しかし『緑の大地』ではキャリア(大卒)組の農学者というリアリティのある設定で､研究一辺倒で現場経験が少なく､派遣された農村でよそ者扱いを受けながらも､信念をもって行動し成長していく女性を熱演しています。学者としてはまだキャリアも浅く心の弱さを垣間見せたり､場面によっては喫煙シーンも見せる人間臭さなど､ちょっと他の作品で見られない印象的な役どころです。
前項でもお伝えしたように､チャイ･ヤン･ミン(蔡揚名)監督を始め､キン･トー(金塗)やベビー･キョンシーら｢幽幻道士｣シリーズのチームと共演を果たしたことなど(画像中参照)､彼女のフィルモグラフィー中でも異色の作品ではあるのですが､現地のマスコミ､そして何よりジョイ･ウォン自身にとって､この『緑の大地』はその後の彼女の半生に決定的な影響を及ぼした因縁深い１本となりました。
『緑の大地』でジョイ･ウォンの相手役となったのは､当時台湾の新進歌手だったジャイ･チン(齊秦､画像右の右側)でした。オールロケの撮影期間中に親密の度合いを深めたふたりは恋愛関係となり､公の場にも堂々とツーショットで登場するようになります。
齊秦とジョイ･ウォンがデュエットした主題歌が流れる『緑の大地』ED動画↓
その後ジョイ･ウォンは前述の通り香港映画界へ進出して大成功を収め､齊秦も台湾で着々と人気シンガーの地位を固めていきました。当然ふたりの間にはすれ違いが生まれ､心無いゴシップやスキャンダルの数々が､主にジョイの方へ降りかかります。そうした状況下で冷却期間と復縁を繰返しながら､ふたりは結婚への道を歩み始めます。そして齊秦が台湾のトップシンガーとして盤石の立ち位置を獲得し､ジョイも香港映画での活動が一段落した2000年､ふたりはチベットへ渡り､現地で結婚式を挙げる準備に入りました。ところが…好事魔多しの言葉通り､直後ジョイの前に齊秦が交際していた女性との間に"隠し子"が発覚。この1件が決定打となり､ジョイは８年ぶりの香港映画出演となった『華の愛 遊園驚夢』(2001年)の記者会見にて､芸能界からの引退と海外留学を表明。翌年彼女はカナダへ渡って30代半ばにして実質的な隠遁生活に入り､齊秦との15年に渡る愛情関係にも終止符を打ったのです。
その後齊秦は､台湾で人気歌手の地位を保ちつつ､2010年に別の女性と結婚､２児を儲け今風に言うところの"イクメン"パパとしても知られています。一方のジョイ･ウォンは現在に至るまでカナダに滞在し､近年はSNSをオープン。応援を続けるファンへの感謝の言葉を贈ると共に再三の復帰オファーに対し､その意思がないことを明確に示し続けています。
台湾のアカデミー賞と呼ばれるゴールデン･ホース賞授賞など高い評価を得た『緑の大地』に続いて､キンコウ･フィルムは本来推進していたファミリー向けＳＦファンタジー路線の集大成といえる映画の制作に乗出します。タイトルは『新アリババ 魔法大冒険』(88年､画像左)。邦題通り世界的に有名なおとぎ話｢アラビアン･ナイト｣の｢アリババと40人の盗賊｣と｢アラジンと魔法のランプ｣をモチーフにした物語です。キンコウ･フィルムを主宰するチャイ･ヤン･ミン(蔡揚名)とチェン･チュン･リャン(陳俊良)が､プロデュースも兼ねて共同で監督を務めています。
『緑の大地』で主演ジョイ･ウォン(王祖賢)の相手役となったた新進歌手のジャイ･チン(齊秦)が満を持して映画主演デビュー。ヒロインには国際的にも評価の高いホウ･シャオシエン(侯孝賢)監督作『ナイルの娘』(87年､画像中)に主演した台湾のアイドル歌手ヤン･リン(楊林)が起用されました。香港から人気俳優のエリック･ツァン(曾志偉)も出演。そして｢幽幻道士(キョンシーズ)｣シリーズからは､悪役のホァン･ヂョンユィ(黄仲裕)を始めにキン･トー(金塗)､パン･サン(胖三)､子役としてアン･アン(安安)が参加しました。
台湾の娯楽映画､いや当時の中華圏映画としては前代未聞の中東ヨルダン王国へ大規模なロケを敢行し､88年の旧正月映画として鳴り物入りで公開された『新アリババ 魔法大冒険』でしたが､ジャッキー･チェン(成龍)主演の『サイクロンＺ』(画像右)始め『新桃太郎２』(誤解されがちですが､このパート２はキンコウ･フィルム制作ではありません)など､香港･台湾両国のオールスター超大作がひしめき合い､結果的にヒットとはなりませんでした。日本でも小規模で劇場公開された後ソフト化されましたが､｢幽幻道士(キョンシーズ)｣シリーズや『新桃太郎』とは無関係な形での紹介でしたしね。
こうして『新西遊記/New Pilgrims to the West』に始まり､キンコウ･フィルムに舞台を移しての陳俊良監督による"新〜"タイトルのファンタジー伝記映画路線は､一旦終了となりました。その後キンコウ･フィルムは日本からの出資を受けた『幽幻道士４』(88年)と『新･幽幻道士 立体奇兵』(89年)の制作に専念することになります。
しかし､実際には"新〜"タイトルのファンタジー伝記映画路線､コレで終わりではなかったんですね。ただそれはもう"キョンシー･ホラー"ブームから後のお話です。それについてはまた後刻､ご案内して参ります。
『緑の大地』で主演ジョイ･ウォン(王祖賢)の相手役となったた新進歌手のジャイ･チン(齊秦)が満を持して映画主演デビュー。ヒロインには国際的にも評価の高いホウ･シャオシエン(侯孝賢)監督作『ナイルの娘』(87年､画像中)に主演した台湾のアイドル歌手ヤン･リン(楊林)が起用されました。香港から人気俳優のエリック･ツァン(曾志偉)も出演。そして｢幽幻道士(キョンシーズ)｣シリーズからは､悪役のホァン･ヂョンユィ(黄仲裕)を始めにキン･トー(金塗)､パン･サン(胖三)､子役としてアン･アン(安安)が参加しました。
台湾の娯楽映画､いや当時の中華圏映画としては前代未聞の中東ヨルダン王国へ大規模なロケを敢行し､88年の旧正月映画として鳴り物入りで公開された『新アリババ 魔法大冒険』でしたが､ジャッキー･チェン(成龍)主演の『サイクロンＺ』(画像右)始め『新桃太郎２』(誤解されがちですが､このパート２はキンコウ･フィルム制作ではありません)など､香港･台湾両国のオールスター超大作がひしめき合い､結果的にヒットとはなりませんでした。日本でも小規模で劇場公開された後ソフト化されましたが､｢幽幻道士(キョンシーズ)｣シリーズや『新桃太郎』とは無関係な形での紹介でしたしね。
こうして『新西遊記/New Pilgrims to the West』に始まり､キンコウ･フィルムに舞台を移しての陳俊良監督による"新〜"タイトルのファンタジー伝記映画路線は､一旦終了となりました。その後キンコウ･フィルムは日本からの出資を受けた『幽幻道士４』(88年)と『新･幽幻道士 立体奇兵』(89年)の制作に専念することになります。
しかし､実際には"新〜"タイトルのファンタジー伝記映画路線､コレで終わりではなかったんですね。ただそれはもう"キョンシー･ホラー"ブームから後のお話です。それについてはまた後刻､ご案内して参ります。
長期間続けて参りました｢幽幻道士(キョンシーズ)｣シリーズのルーツをたどるこのトピック､一応のピリオドとなります。しかしながらココで今一度､日本に『幽幻道士(キョンシーズ)１』を紹介し､ＴＶ｢来来! キョンシーズ｣の日本側プロデューサーとして活躍した加藤直三さんのお話をしたためておきたいと思います。
日本での香港映画普及にかんして､加藤直三さんが遺した功績は主に３つあります。ひとつは､言うまでもなく｢幽幻道士(キョンシーズ)｣シリーズを中心とした"キョンシー･ブーム"の仕掛人的存在であること。ふたつめは､前項でお伝えした通り一介の大部屋俳優だった倉田保昭さんを香港映画界へ送り出し､現地でスターにし､日本へ凱旋するまでのマネジメントを担当したこと。そして今回お伝えするのは､３つめの功績に関してです。
『幽幻道士(キョンシーズ)１』がＴＢＳの｢月曜ロードショー｣で放送される４年前､1983年の３月下旬。日曜日のゴールデンタイムに突如１本の香港映画が放送されました。タイトルは『ジャッキー･チェンの秘竜拳』(76年)。今や国際的スター､当時は主演したカンフー･アクションが次々劇場公開され､ＴＶ放送されれば高視聴率を獲る人気上昇中のアイドル的存在だったジャッキー･チェン(成龍)の映画です。しかも劇場未公開､ＴＶで初公開と銘打たれていました。管理人含めファンはワクワクしながら本編に見入りましたが､残念ながらジャッキー"主演"ではありませんでした。ガッカリする間もなく､翌４月始めにはまたもやゴールデンタイムにＴＶ初公開というジャッキー映画がＴＢＳで放送されました。タイトルは『ジャッキー･チェンの必殺鉄指拳』(78年)､今度は確かにジャッキー主演のようですが､『秘竜拳』同様､ジャッキーの顔がまぶたを整形前の若々しい姿で､かと思えば後半突然『酔拳』の演武シーンが挿入されたり､最後は明らかに別人の"ソックリさん"が敵と闘ったりと､どうにも奇妙でいかがわしい展開です。今まで見たことのないジャッキー出演作が見れたことはウレシかったですが､いくら何でもこの内容では…ということで､ＴＢＳには少なからぬ非難の声が寄せられたと聴きます。実はＴＢＳの指示でこの２本の"ジャッキー映画"を香港から買付けて来たのが､加藤直三さんだったのです。
この２本の放送前後から､日本では"レンタル･ビデオ･ブーム"が急速に盛り上がって行きました。ジャッキーの映画も次々にビデオ化されるなか､前述の２本も"珍品"として早々にリリースされ､特に『必殺鉄指拳』はメーカーや邦題を変えつつ､執拗に再発売されました。
86年に入ると『秘竜拳』の評価が一変します。"キョンシー･ホラー"の元祖である『霊幻道士』(85年)の公開直後､銃撃戦と重厚なドラマをメインとした新しいタイプの香港映画『男たちの挽歌』(86年)が封切られて評判が広まるなか､監督ジョン･ウー(吳宇森)のフィルモグラフィーに『秘竜拳』のタイトルがあったのです。実はゴールデン･ハーベストで若きジョン･ウーがジャッキーと組み韓国で撮影した第３作目であったこの作品は､｢ジャッキーが主演ではないが､後のジョン･ウー作品に通じる面白さがある｣と再度着目されることとなります。
一方､ＴＶ放送されるまで存在を知られずにいた『必殺鉄指拳』も｢石丸博也さんを始めとする豪華声優陣の吹替が面白い｣とファンの間で語り継がれ､21世紀に入りパブリックドメインとなった素材に吹替版を収録したＤＶＤが意外な好評を得たことで､再評価が固まりました。
そして現在。『秘竜拳』は『秘龍拳/少林門』(画像左)とマイナーチェンジした邦題で､ビデオ再リリース時に何度もタイトルが変わった『必殺鉄指拳』(画像中)は当初のまま､デジタルリマスター版がブルーレイ化されてファンに親しまれ､また新たなファンをも増やし続けています。
放送当初はブーイングを受けたとはいえ､この２作品を加藤直三さんがあのタイミングで買付けて来なければ､このような形で陽の目を見ることもなかったでしょうし､結果として日本のファンにジャッキー映画の見方を提示することにも繋がったのです。
そして…実は加藤さんが買付けて来たのはこの２作のみではありませんでした。映画の買付は通常目的の作品以外に数作品加えるのが通常で､"キョンシー･ホラー"の生みの親サモ･ハン(洪金寶)の初監督作『少林寺怒りの鉄拳』(77年､画像右)や､ジャッキーが現在の芸名である"成龍"に改名しての第１作『新･怒りの鉄拳』(76年)といった香港映画史の重要な作品も含まれていました。これらはいずれも80年代末〜90年に深夜ローカル枠で放送されましたが､その後ソフト化され現在も多くのファンの支持を集めています。
日本での香港映画普及にかんして､加藤直三さんが遺した功績は主に３つあります。ひとつは､言うまでもなく｢幽幻道士(キョンシーズ)｣シリーズを中心とした"キョンシー･ブーム"の仕掛人的存在であること。ふたつめは､前項でお伝えした通り一介の大部屋俳優だった倉田保昭さんを香港映画界へ送り出し､現地でスターにし､日本へ凱旋するまでのマネジメントを担当したこと。そして今回お伝えするのは､３つめの功績に関してです。
『幽幻道士(キョンシーズ)１』がＴＢＳの｢月曜ロードショー｣で放送される４年前､1983年の３月下旬。日曜日のゴールデンタイムに突如１本の香港映画が放送されました。タイトルは『ジャッキー･チェンの秘竜拳』(76年)。今や国際的スター､当時は主演したカンフー･アクションが次々劇場公開され､ＴＶ放送されれば高視聴率を獲る人気上昇中のアイドル的存在だったジャッキー･チェン(成龍)の映画です。しかも劇場未公開､ＴＶで初公開と銘打たれていました。管理人含めファンはワクワクしながら本編に見入りましたが､残念ながらジャッキー"主演"ではありませんでした。ガッカリする間もなく､翌４月始めにはまたもやゴールデンタイムにＴＶ初公開というジャッキー映画がＴＢＳで放送されました。タイトルは『ジャッキー･チェンの必殺鉄指拳』(78年)､今度は確かにジャッキー主演のようですが､『秘竜拳』同様､ジャッキーの顔がまぶたを整形前の若々しい姿で､かと思えば後半突然『酔拳』の演武シーンが挿入されたり､最後は明らかに別人の"ソックリさん"が敵と闘ったりと､どうにも奇妙でいかがわしい展開です。今まで見たことのないジャッキー出演作が見れたことはウレシかったですが､いくら何でもこの内容では…ということで､ＴＢＳには少なからぬ非難の声が寄せられたと聴きます。実はＴＢＳの指示でこの２本の"ジャッキー映画"を香港から買付けて来たのが､加藤直三さんだったのです。
この２本の放送前後から､日本では"レンタル･ビデオ･ブーム"が急速に盛り上がって行きました。ジャッキーの映画も次々にビデオ化されるなか､前述の２本も"珍品"として早々にリリースされ､特に『必殺鉄指拳』はメーカーや邦題を変えつつ､執拗に再発売されました。
86年に入ると『秘竜拳』の評価が一変します。"キョンシー･ホラー"の元祖である『霊幻道士』(85年)の公開直後､銃撃戦と重厚なドラマをメインとした新しいタイプの香港映画『男たちの挽歌』(86年)が封切られて評判が広まるなか､監督ジョン･ウー(吳宇森)のフィルモグラフィーに『秘竜拳』のタイトルがあったのです。実はゴールデン･ハーベストで若きジョン･ウーがジャッキーと組み韓国で撮影した第３作目であったこの作品は､｢ジャッキーが主演ではないが､後のジョン･ウー作品に通じる面白さがある｣と再度着目されることとなります。
一方､ＴＶ放送されるまで存在を知られずにいた『必殺鉄指拳』も｢石丸博也さんを始めとする豪華声優陣の吹替が面白い｣とファンの間で語り継がれ､21世紀に入りパブリックドメインとなった素材に吹替版を収録したＤＶＤが意外な好評を得たことで､再評価が固まりました。
そして現在。『秘竜拳』は『秘龍拳/少林門』(画像左)とマイナーチェンジした邦題で､ビデオ再リリース時に何度もタイトルが変わった『必殺鉄指拳』(画像中)は当初のまま､デジタルリマスター版がブルーレイ化されてファンに親しまれ､また新たなファンをも増やし続けています。
放送当初はブーイングを受けたとはいえ､この２作品を加藤直三さんがあのタイミングで買付けて来なければ､このような形で陽の目を見ることもなかったでしょうし､結果として日本のファンにジャッキー映画の見方を提示することにも繋がったのです。
そして…実は加藤さんが買付けて来たのはこの２作のみではありませんでした。映画の買付は通常目的の作品以外に数作品加えるのが通常で､"キョンシー･ホラー"の生みの親サモ･ハン(洪金寶)の初監督作『少林寺怒りの鉄拳』(77年､画像右)や､ジャッキーが現在の芸名である"成龍"に改名しての第１作『新･怒りの鉄拳』(76年)といった香港映画史の重要な作品も含まれていました。これらはいずれも80年代末〜90年に深夜ローカル枠で放送されましたが､その後ソフト化され現在も多くのファンの支持を集めています。
不肖管理人です。どこへコメントしようか迷いましたが､こちらに記させて頂きます。
直前の告知で誠に申し訳ございません。
｢幽幻道士(キョンシーズ)｣シリーズの日本での放送やソフト化に尽力され､｢来来! キョンシーズ｣の日本側プロデューサーを務めた故･加藤直三さんのプロデューサーとしての代表作と言えるドラマ｢HOTEL｣第1シリーズが､本日2月1日12:50よりCS･日本映画専門チャンネルにて一挙放送されます。
番組HP：https://www.nihon-eiga.com/program/detail/nh10008865_0001.html
このドラマはキョンシー･ブームが去った後の90年に､前コメントでも言及した｢Gメン'75｣などの人気ドラマを手掛けた近藤照男プロダクションとTBSの共同制作により､放送されました。
加藤直三さんは近藤照男プロダクション側のプロデューサーとして参加､高嶋政伸さんの｢姉さん､事件です!｣の台詞と共に人気を博し､シリーズ化され､スペシャルも制作された作品です。
取りあえず一挙放送は本日のみですが､リピートも有ると思いますので､HPをご確認ください。
直前の告知で誠に申し訳ございません。
｢幽幻道士(キョンシーズ)｣シリーズの日本での放送やソフト化に尽力され､｢来来! キョンシーズ｣の日本側プロデューサーを務めた故･加藤直三さんのプロデューサーとしての代表作と言えるドラマ｢HOTEL｣第1シリーズが､本日2月1日12:50よりCS･日本映画専門チャンネルにて一挙放送されます。
番組HP：https://www.nihon-eiga.com/program/detail/nh10008865_0001.html
このドラマはキョンシー･ブームが去った後の90年に､前コメントでも言及した｢Gメン'75｣などの人気ドラマを手掛けた近藤照男プロダクションとTBSの共同制作により､放送されました。
加藤直三さんは近藤照男プロダクション側のプロデューサーとして参加､高嶋政伸さんの｢姉さん､事件です!｣の台詞と共に人気を博し､シリーズ化され､スペシャルも制作された作品です。
取りあえず一挙放送は本日のみですが､リピートも有ると思いますので､HPをご確認ください。
不肖管理人です。
『幽幻道士２』以降のシリーズ映画とTV｢来来! キョンシーズ｣の日本側プロデューサーとして活躍された故･加藤直三さんが､1975年に手掛けたTBSの連続TVドラマ｢Ｇメン'75｣の隔週刊DVDコレクション(画像左)が､今月18日にデアゴスティーニより創刊されます。足かけ7年分､全355話が初の完全収録ソフト化となります。
販売元HP：https://deagostini.jp/gmd/
大半の入会者の皆様は幼少時にキョンシー･ブームを体感された方が多いと思いますので､70年代に大ヒットしたドラマと言われてもピンとこないと思います。ちなみに管理人は｢Ｇメン'75｣の"直撃世代"です。入会者の皆様がキョンシー映画を愉しんでいた年齢の時､管理人は｢Ｇメン'75｣を夢中になって見ていた､というワケです。
その管理人があえて申し上げたいのは…"｢Ｇメン'75｣のヒットが無ければ『幽幻道士(キョンシーズ)１』の放送はなかっただろう"ということ。つまり､｢Ｇメン'75｣もまた｢幽幻道士(キョンシーズ)｣シリーズの"はじまり"､ある意味ルーツといっても過言ではない1作なのです。
その｢Ｇメン'75｣にも実は原型､ルーツがあります。東映の美術スタッフから転身した近藤照男プロデューサーが手掛けた｢キイハンター｣(68〜73年)です。国際警察特別室の下に集まった様々な素性の"冒険者=キイハンター"が､平和を脅かす悪の組織･陰謀と戦う姿を基本1話完結で描きました。当初は世界的流行を見せていた｢007｣シリーズなどのスパイ･アクションがモチーフでしたが､回を重ねるごとに娯楽映画のあらゆる要素を盛込んだ奇想天外な物語が展開されます。何より黒いハットとスーツでキメたダンディで存在感の大きいボス･丹波哲郎さんを始めに､語学堪能で格闘もこなすスーパー美女野際陽子さん､長身の美男子でヤンチャぶりを発揮した谷隼人さん､小悪魔的な最年少メンバー大川栄子さん､中半から参加の川口浩さん､そして! 超人的アクションを次々見せる千葉真一さんというキャスト陣の魅力は圧倒的でした。特に野際さんが各回で披露する華麗なファッション､千葉真一さんのアクションとスタイリッシュな演技はお茶の間の大きな話題となり､最盛期には30%以上もの視聴率を叩き出していました。
｢キイハンター｣OP抜粋動画↓
５年間続いた｢キイハンター｣は好評のまま終了し､その後小川眞由美さんが主演で丹波さんは脇に回ったコメディー路線の｢アイフル大作戦｣(73〜74年､画像中)､その正統な続編で丹波さんがボスに復帰した｢バーディー大作戦｣(74〜75年､画像右)､そしてシリアスでハードボイルドな路線の｢Ｇメン'75｣へと続きます。さらに続編の｢Ｇメン'82｣(82〜83年)まで､足掛け15年に渡り｢近藤照男プロデュースのTBS土曜午後9時枠の連続ドラマ｣は続きました。
加藤直三さんがどの時点で近藤照男プロデューサーとそのドラマにスタッフとして合流したかは不明ですが､少なくとも｢Ｇメン'75｣以前､マネジメントしていた倉田保昭さんがレギュラー出演する｢バーディー大作戦｣第26話の時点で深く関わっていたのは間違いないでしょう。｢バーディー大作戦｣第35話では加藤ー倉田ラインで『妖術秘伝･鬼打鬼』(80年､テレビ放送)に悪の法術使いとして出演していたチャン･ルン(陳龍)を香港からゲストに招いています。その後加藤直三さんは倉田さんを引続き｢Ｇメン'75｣のレギュラーへ送り出し､近藤プロデューサーの右腕的存在として主に海外ロケのコーディネートに手腕を奮い､特に香港でロケーションを行った倉田さんメインの｢香港カラテシリーズ｣を番組の人気エピソードに押上げます。このシリーズには倉田さんと共演も多く『キョンシーの大逆襲』(88年､ビデオのみ)に監督兼主演したブルース･リャン(梁小龍)や､倉田さんの降板後も『霊幻少林拳』(79年､DVDのみ)に出演したリー･ホイサン(李海生)､『バカ拳』(85年､ビデオのみ)の悪役だったフィリップ･コー(高飛)らがゲスト出演しました。この倉田さん去りし後の｢香港カラテシリーズ｣を支え続けたのも加藤直三さんでした。こうして､TBSとのコネクションと信頼を強固にした加藤さんはTBSでの放送用に香港や台湾の娯楽作品の輸入･買付も担当するようになり､発見してきたのが『幽幻道士(キョンシーズ)１』だったのです。
OPのナレーションや群像劇的な展開など､実はよく見ると｢来来! キョンシーズ｣との共通項も相応に垣間見られます。是非この機会に加藤直三さんの代表作にふれることをオススメしたいです。
『幽幻道士２』以降のシリーズ映画とTV｢来来! キョンシーズ｣の日本側プロデューサーとして活躍された故･加藤直三さんが､1975年に手掛けたTBSの連続TVドラマ｢Ｇメン'75｣の隔週刊DVDコレクション(画像左)が､今月18日にデアゴスティーニより創刊されます。足かけ7年分､全355話が初の完全収録ソフト化となります。
販売元HP：https://deagostini.jp/gmd/
大半の入会者の皆様は幼少時にキョンシー･ブームを体感された方が多いと思いますので､70年代に大ヒットしたドラマと言われてもピンとこないと思います。ちなみに管理人は｢Ｇメン'75｣の"直撃世代"です。入会者の皆様がキョンシー映画を愉しんでいた年齢の時､管理人は｢Ｇメン'75｣を夢中になって見ていた､というワケです。
その管理人があえて申し上げたいのは…"｢Ｇメン'75｣のヒットが無ければ『幽幻道士(キョンシーズ)１』の放送はなかっただろう"ということ。つまり､｢Ｇメン'75｣もまた｢幽幻道士(キョンシーズ)｣シリーズの"はじまり"､ある意味ルーツといっても過言ではない1作なのです。
その｢Ｇメン'75｣にも実は原型､ルーツがあります。東映の美術スタッフから転身した近藤照男プロデューサーが手掛けた｢キイハンター｣(68〜73年)です。国際警察特別室の下に集まった様々な素性の"冒険者=キイハンター"が､平和を脅かす悪の組織･陰謀と戦う姿を基本1話完結で描きました。当初は世界的流行を見せていた｢007｣シリーズなどのスパイ･アクションがモチーフでしたが､回を重ねるごとに娯楽映画のあらゆる要素を盛込んだ奇想天外な物語が展開されます。何より黒いハットとスーツでキメたダンディで存在感の大きいボス･丹波哲郎さんを始めに､語学堪能で格闘もこなすスーパー美女野際陽子さん､長身の美男子でヤンチャぶりを発揮した谷隼人さん､小悪魔的な最年少メンバー大川栄子さん､中半から参加の川口浩さん､そして! 超人的アクションを次々見せる千葉真一さんというキャスト陣の魅力は圧倒的でした。特に野際さんが各回で披露する華麗なファッション､千葉真一さんのアクションとスタイリッシュな演技はお茶の間の大きな話題となり､最盛期には30%以上もの視聴率を叩き出していました。
｢キイハンター｣OP抜粋動画↓
５年間続いた｢キイハンター｣は好評のまま終了し､その後小川眞由美さんが主演で丹波さんは脇に回ったコメディー路線の｢アイフル大作戦｣(73〜74年､画像中)､その正統な続編で丹波さんがボスに復帰した｢バーディー大作戦｣(74〜75年､画像右)､そしてシリアスでハードボイルドな路線の｢Ｇメン'75｣へと続きます。さらに続編の｢Ｇメン'82｣(82〜83年)まで､足掛け15年に渡り｢近藤照男プロデュースのTBS土曜午後9時枠の連続ドラマ｣は続きました。
加藤直三さんがどの時点で近藤照男プロデューサーとそのドラマにスタッフとして合流したかは不明ですが､少なくとも｢Ｇメン'75｣以前､マネジメントしていた倉田保昭さんがレギュラー出演する｢バーディー大作戦｣第26話の時点で深く関わっていたのは間違いないでしょう。｢バーディー大作戦｣第35話では加藤ー倉田ラインで『妖術秘伝･鬼打鬼』(80年､テレビ放送)に悪の法術使いとして出演していたチャン･ルン(陳龍)を香港からゲストに招いています。その後加藤直三さんは倉田さんを引続き｢Ｇメン'75｣のレギュラーへ送り出し､近藤プロデューサーの右腕的存在として主に海外ロケのコーディネートに手腕を奮い､特に香港でロケーションを行った倉田さんメインの｢香港カラテシリーズ｣を番組の人気エピソードに押上げます。このシリーズには倉田さんと共演も多く『キョンシーの大逆襲』(88年､ビデオのみ)に監督兼主演したブルース･リャン(梁小龍)や､倉田さんの降板後も『霊幻少林拳』(79年､DVDのみ)に出演したリー･ホイサン(李海生)､『バカ拳』(85年､ビデオのみ)の悪役だったフィリップ･コー(高飛)らがゲスト出演しました。この倉田さん去りし後の｢香港カラテシリーズ｣を支え続けたのも加藤直三さんでした。こうして､TBSとのコネクションと信頼を強固にした加藤さんはTBSでの放送用に香港や台湾の娯楽作品の輸入･買付も担当するようになり､発見してきたのが『幽幻道士(キョンシーズ)１』だったのです。
OPのナレーションや群像劇的な展開など､実はよく見ると｢来来! キョンシーズ｣との共通項も相応に垣間見られます。是非この機会に加藤直三さんの代表作にふれることをオススメしたいです。
去る11月27日に開催された台湾のアカデミー賞と称される第58回ゴールデン･ホース賞授与式にて､｢幽幻道士(キョンシーズ)｣シリーズの台湾側プロデューサー兼監督であり､キンコウ･フィルム(金格影藝)を主宰していたチャイ･ヤンミン(蔡陽明/蔡揚名､画像左)監督が､｢終身成就獎(終身功労賞)｣を授賞しました。プレゼンターは現在台湾映画界随一のヒットメーカー､チュー･イェンピン(朱延平､画像中の左側)監督です。
チャイ･ヤンミン監督の映画人生を回顧･検証するショートドキュメントと授与式の模様を収録した動画(國語､日本語字幕無)↓
チャイ･ヤンミン監督は元々『カンフーキッド３』(87年､テレビ放送。画像右)などを撮ったリン･フー･ティー(林福地)監督に誘われてスクリプター兼俳優として映画界入りし､100本以上の映画に出演しました。監督としてもこのコラムでご紹介した作品以外にも50本以上の映画を撮っており､動画のなかでもその一端が紹介されています。
チャイ･ヤンミン監督の映画人生を回顧･検証するショートドキュメントと授与式の模様を収録した動画(國語､日本語字幕無)↓
チャイ･ヤンミン監督は元々『カンフーキッド３』(87年､テレビ放送。画像右)などを撮ったリン･フー･ティー(林福地)監督に誘われてスクリプター兼俳優として映画界入りし､100本以上の映画に出演しました。監督としてもこのコラムでご紹介した作品以外にも50本以上の映画を撮っており､動画のなかでもその一端が紹介されています。
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