ＳＯＮＧＳコミュの第320回(11/15)　中森明菜

語り:小田切千アナウンサー＞1982年、歌謡界の歴史を塗り替える一人の歌姫が
デビューしました。中森明菜。
80年代を駆け抜けた彼女は30年以上経った今も人々の心をとらえています。
今年オリジナルとカバー、２つのベストアルバムを同時に発売し25万枚を突破。
再び明菜旋風を巻き起こしています。その魅力は一瞬で切なさ伝える高い歌唱力。
そして自分で考えていたと言う歌世界を舞い踊る振り付け。さらに本人のアイデア
をモチーフにして作られた斬新な意匠。それら全てが明菜の歌に特別な輝きを与え
ていたのです。
「SONGS」今夜はなぜ中森明菜が時代を超えて愛されているのかその秘密に迫ります。

高校1年でオーディション番組に合格した彼女はデビュー曲のレコーディングでロサン
ゼルスを訪れます。そこにいたのは期待と不安に揺れる少女の明菜。
16歳で「スローモーション」を歌いデビュー。
この時はまだ歌唱力よりあどけなさが印象に残るアイドルでした。

スローモーション

しかし２曲めの「少女A」で突如変貌をとげます。ほほえみは封印。陰りを帯びた表情と
不良っぽい歌詞で度肝を抜きます。

少女Ａ

清純で一途なイメージ。そしてそれとは真逆の不良性。対照的な世界観を交互に見せる
巧みな戦略によって明菜はスターへの階段を駆け上っていきます。

セカンドラブ

1/2の神話

デビュー2年目の「北ウィング」から明菜は自分でタイトルを決め作曲家も指名するなど
セルフプロデュースの道を歩み始めます。

北ウィング

明菜さんＡ＞若い頃ってすぐにパンとインスピレーションでつかんだらすぐにすごいパワー
が湧いてきて、それをグワァと実現できるというか作る、あれが凄いスピードでできてた
んですけど。

「少女Ａ」や「1/2の神話」を描いた作詞家売野雅勇は当時の明菜をこう表現しています。
中森明菜は僕の創り上げた詞の主人公を見事に演じ、脚本以上の映像をつくってしまう。
素晴らしきシンガー・アクトレスだ。

十戒

そして明菜が出会ったのが井上陽水。
鋭い感性で時代をとらえた作品を次々と生み出していました。それまでのどの曲とも
異なる刺激的なこの歌で明菜はアイドルから1人のアーティストへと変貌を遂げるのです。

飾りじゃないのよ涙は

破格の表現力を評価された明菜はデビュー4年目二十歳でついに歌謡界の頂点に立ちます。
「ミ・アモーレ」で初のレコード大賞受賞。

ミ・アモーレ

翌年「DESIRE」でレコード大賞を連続受賞。
自ら考案したジャパネスクなビジュアルがセンセーションを巻き起こし明菜は時代の歌姫
として揺るぎない存在となります。

DESIRE

しかしトップであり続ける事は次第に大きなプレッシャーとなって彼女にのしかかり
ます。頂点で感じていた苦悩とは。

Ａ＞喜んでもらえるようにやんなくちゃってどんどん自分にプレッシャーかけましますし、
生のステージとなるとこういう衣装で喜んでくれるか、こういう感じでいいのか、この歌
のセレクトでみんな満足かな。もっとこっち歌って欲しかったんじゃないのかとか。
でもキリないわけですよね。
でも一人でも多くの方に、来てもらった人が一人でも「え～違う。私こうだと思ったから
来たのに」って思う人がいないように、一人でも多くの人が「あ～良かった。来てよかった」
と思ってもらえるようにと思って、楽しくないんですよ。必死で・・必死すぎちゃって。
楽しくないって言うのは違うんですけど、楽しんではいられないんですよ。

そんな苦悩と戦い続けたからこそたどり着いた境地がありました。
22歳ですごみさえ感じさせる表現を見つけた明菜。そこに共鳴したのはシンガーソング
ライター加藤登紀子でした。自らの作品「難破船」を明菜に提供。
描かれていたのは命枯れるような絶望でした。恋に破れ悲しみに沈む主人公と人生の全て
を歌に捧げてきた明菜の姿が重なり深い歌の世界が生まれました。

難破船

「難破船」を歌ってから20年余。明菜はアメリカでカバーアルバムのレコーディングを
行っていました。1994年に発表したからカバーアルバム「歌姫」が好評を博し、その後も
次々と作品を発表。現在のカバーブームの先駆けとなったのです。

Ａ＞オリジナルは基本的にもう入ってますから昔に聞いていますのでなるたけ聴かないよう
にしています。でないとたあでさえすごくその思い出も深いし、オリジナルを歌ってらっし
ゃる歌手の皆様も印象も凄くちゃんと明白に残ってしまっているので、新たにまた何度も
聴いてしまうとコピーではないですけど、心まで伝わってしまってその新しい息吹ではなく
てものまねのようになってしまってはいけないので。

明菜は日本のスタンダードナンバーと言える名曲に次々と挑戦していきます。
♪悪女
♪ダンスはうまく踊れない

20代で歌だけで深い愛の世界を表現することにたどりついていた明菜。そんな彼女が40代を
迎え向かい合おう決意した1曲が尾崎豊の「I LOVE YOU」

Ａ＞彼の場合は、そういう言葉と言葉の間(ま)がすごく彼らしさが出てる気がするんで、
そういうのがどうしても歌ってて、パーッと来ちゃいそうな気がするので、それを払うのが
いっぱい、いっぱいのような気がしますけどね。

(映像 )音入れ
A＞いやこれ違う。。違う違うだめこの歌。駄目。。
涙が出てきちゃってもうこれ。これきついな。

32年前、自分の歌を探し始めた明菜。若さに任せて突っ走った時期もありました。
栄光も苦悩も知りもがきながら手にしたのは声だけで人生を表現する深い歌の世界。
歌姫・中森明菜は歌を演じ歌に生きています。最後にお聴きください。

I LOVE YOU