2007年12月にゼッフィレッりの演出で評判になったスカラ座の「アイーダ」を見た。あの時はアラーニャが逃げだした後の公演で、見たのがパルコの2列目という最低の席だったので、今回は一階の平土間でゼッフィレッりの名舞台を見たいと思ったので出かけた。私がまず驚いたのは、あの熾烈なチケットの争奪、一般の人がインターネットで取るチケットが殆ど出ていなかったにもかかわらず約30名位の沢山の日本人が来ていた事だった。私の話した日本人の方は40年間もアメリカのシカゴに住んでいて大学で計算機を教えていると言っていたが、「私がよくチケットが取れましたね」というとミラノの友人に頼み400ヨーロ払って取ってもらったと言っていた。このチケットの定価は224ヨーロである。私がネットで取ったというとびっくりしていた。そのチケット獲得の様子については前にこのサイトで書いたので読まれた方もいると思うが凄まじいものだった。 この日のアイーダは以下のキャストである。これを見た時正直言って歌の方はあまり期待できなかった。葉役に韓国人歌手が2人、アイーダを歌ったのが日本にも来るMaria Jose Siri、名前を聞いた事がなかったので、後で調べてみたらどうやらウルグアイ出身のソプラノで、各地のコンクールで優勝した人らしい。この人は声量はまあまあだが、歌い方は単調で歌に抒情性とか感情の起伏とかそういう歌に色というか味が全くない。アムネリスのアンナ・スミルノヴァ、おそらく東欧系の人だったと思うが、どぎついまでの女の嫉妬を表現しているとは言えなかった。カーテンコールの時も機嫌が悪いのか、ぶすっとして笑顔も見せなかった。アモナスロのマルコ・ドス、この人は黒人でやっと歌っているというかんじ。ラダメスのワルター・フラッカロ、この人は私のお気に入りのテノールのひとりだが一幕のアラーニャがこけた「きよきアイーダ」を歌ったあとブーがかなり出ていた。私はオペラ評論家でも音楽評論家でもない素人だがこの公演の終了後おざなりの拍手がちょっとあっただけで、凄い熱気や興奮はまったくなかった。1月に「第一回十字軍ロンバルト人たち」をパルマで見た時、翌日の新聞では拍手が10分以上続き、十字軍がパルマを征服とまで書かれた場内の興奮と比較すると比べるべくもない。これだったら前日トリノで見たマルチェロ・アルヴァレス、ミカエラ・カロージ、コルネッティのチレーアの「アドリアーナルクブルール」の方がよっぽど盛り上がっていた。この時期のアイーダは9月のスカラ座日本公演のリハーサルだと思うが、この程度の歌手でチケットS席67000円はちょっと寂しい。バレンボイムの指揮はオーケストラの音が強く、歌手を歌わせるという イタリアオペラの原点から外れていたと思う。2年前に見たシャイーの方がよほど熱気にあふれていた。この日の公演を見る限りスカラ座はすでに終わったと思う。ゼッフィレッリの舞台は最高に豪華だったし、そしてバレエなど優雅でさすがにスカラ座と思ったが、歌手を見る限りスカラ座がその時代の最高の歌手をそろえるという神話はもう過去のものになったと実感したさびしい公演だった。私はスカラ座には1974年のカール・ベーム指揮の「フィデリオ」を見て以来60回目の公演になったと思うが、この日でスカラ座とは惜別する事にした。アディオスカラ座。おそらくステファネ・リスナーがスカラ座総裁を辞めるまでは来ることはないだろうと実感した公演だった。
DirettoreDaniel Barenboim Regia e sceneFranco Zeffirelli
AidaMaria José Siri Amneris Anna Smirnova Radamès Walter Fraccaro Ramfis Giorgio Giuseppini Il Re Carlo Cigni AmonasroMark Doss Messaggero Ki Hyun Kim SacerdotessaSae Kyung Rim