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多分、昔のお前がいるよ。コミュの小説版1

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みんなでどんどんストーリーをつなげていって、小説を作りましょ。

コメント(15)

『佐々木と国語問題用紙』


…センター試験初日を終え、つかの間の心ほぐれるひととき。帰り道。京急車内。


『…思い出なんだよ……』


佐々木のこの一言が、昇華していた僕たちの心を再び凝結させ、冷たい冬風当たる窓枠にへばりつけた。


悪ノリでビリビリに引き裂かれ、踏みつけられた佐々木の国語問題用紙。彼だけがこの言葉の真意を知っていた。ほんの二、三時間前の試験中のことだ。

時は入試戦国時代。両親の避妊の失敗の末、佐々木は誕生した。

中絶という人生最大の危機を乗り越えた佐々木には、もはや怖いものはなかった。

・・・その日を迎えるまでは。
その日とは、彼が「ある」から「生きる」という行為を始めた瞬間だ。まさに五回目の細胞分裂をし始めた瞬間だったろう。彼は初めて「知覚」する。それは目で見えたり、耳で聞こえたり、鼻で嗅げるたり、手で触れられたりできない、しかしながら確かにその存在を確かめられる、ありありとした「恐怖」だった。
彼が32細胞期の時に芽生えた一握りの恐怖は少しずつではあるが確実に彼の体を蝕み続け
今も尚、脈々と続く自由の精神のごとく瞼の裏に映し出されているのであった

「始まりの終わり」を告げる鐘が鳴り響いた…
「始まりの終わり」を告げる鐘、つまり佐々木少年誕生の産声が鳴り響いた瞬間、「恐怖」がピタリと鳴り止んだ。

いや、違う。鳴り止んだという表現はもはや適切でない。もう鳴らす必要はなかったのだ。なぜなら今、初めて自らの目で外部の世界を捉えられたから。そして、刹那その一瞬、彼は迷わず目線を自らの下方へ向けた。

(…女は嫌だ、どうか男に生まれていてくれ!)


…そう、彼の恐怖の原因とは息子の有無だったのだ。
・・・あった。俺は男なんだ。


そう確信を抱いた瞬間、目が覚めた。

「なんだ、夢か・・・。また気味の悪い夢だ・・・。」

ここのところ、佐々木は自分が母親の胎内にいる夢をよく見る。夢はその人の深層心理を表すというが、それにしても気味が悪い。
佐々木は汗でびっしょりになった布団に再びもぐった。どさくさにまぎれてオネショもしていたが、そのことからは目を背けることにした。

再びウトウトしてきたとき、一階から母親の呼ぶ声が聞こえた。
「佐々木〜!いつまで寝てるの!?今日はマーク模試があるんでしょ!?」

佐々木家では、家族全員がお互いを「佐々木」と呼ぶのが決まりだ。
眠いまぶたをこすりながら、そして、濡れたパンツもこすりながら、佐々木は一階へと降りていった。


佐々木の人生で最も長い一日が始まろうとしていた・・・。
命とは儚いものだ。

玄関先で飼っていた佐々木のペット、ザリガニのオッチョが昇天していた。期待と不安の入り混じった朝は、一瞬にして悲しみの渦になる。

彼はオッチョの体を持ち上げ、そっとなで上げる。


『トントン、自分に勝つことだよ』
※佐々木はオッチョからトントンと呼ばれている


ふっとそんな言葉が聞こえた。



佐々木は前を向いた。朝日がまぶしい。そうだ、最後に戦う敵となるのは自分だ。自分に勝たなければ、明日を勝ち取ることはできない。

佐々木はオッチョを握りしめ試験会場に向かう。



この時佐々木は気づいていただろうか。彼は具現化系だったのだ。佐々木の背後には具現化されたオッチョが浮かんでいた。



戦いは始まった。
試験に成功するためには、強化系スキルで頭の回転を速くする能力を作ってしまうのが最も効率がよく、手早いだろう。しかし具現化系、…そのオーラ系統に目覚めてしまった者は強化系との相性はとても悪い。また具現化系は操作系、放出系と組み合わせるのが一般的で、修得までには長い年月がかかる。

試験会場はもうすぐだ。それまでに早く自分の能力を考えなければならない。…テストで成功できるような能力を。それともこのままオッチョをパートナーに残りの人生を生きていくのか…

究極の選択が始まった。試験会場まで残り20分。

強化系への変換がよくわからないまま、流れでそのまま具現化されたオッチョと共に試験を受け始めることになった佐々木。



試験開始五分前、佐々木の周囲は騒然となる


「お、おいあいつの頭の上なんか浮いてね?」

「ナニアレ!?…虫?」

「いやあれエビだよ!!信じらんね!」
※オッチョは生前、事故で両ばさみを失っていた。ハサミリカバリータイム半ばにして、命を落とした。


「じゃあ、あのエビの下にいる男の子って一体…」


そこで佐々木は振り返り、群集に向かってこう叫んだ。
「エビの下に俺がいるんじゃねえ!俺の上にエビがいるんだ!
 エビの下に俺がいるんじゃねえ!俺の上にエビがいるんだ!」




なぜ2回言ったのだろうか・・・。周りの人々はみな、息を飲んだ。

そして3回目を言おうとしたその時…


(キーン、コーン、チーン、コーン)

始まりの鐘が鳴り響いた。


試験官「それでは始めてください」



しかし彼にはそんなの関係なかった。



「エビの下に俺がいるんじゃねえ!俺の上にエビがいるんだ!」
「エビの下に俺がいるんじゃねえ!俺の上にエビがいるんだ!」



まさかの4回目キター

そしてもちろん、奇跡はやってきた…






試験官「はい、君ね、ほかの人の迷惑になるから、外出ようか」



「え…、ちょ、ま…」

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