抗がん剤をもっと知りたい。コミュの標準治療のトピック【肺癌-非小細胞肺癌-】

■最初に～ミクシィをパソコンで見ていらっしゃる方へ～■

ここでは癌種別の抗がん剤治療について纏めていますが、詳しくお知りになりたい方は「日本臨床腫瘍学会」の教育セミナーを最初に見て頂けるとより理解しやすいと思います。

日本臨床腫瘍学会は、肺癌学会や胃癌学会や乳癌学会などの臓器別のより専門的な学会と違って、広く腫瘍についての学会でありますので、医師以外の方にも解りやすく説明がされています。

肺癌に関しては
http://www2.convention.co.jp/jsmo-seminar/data6/player.html
のＨＰの「第２回コメディカルセミナー」の中の「肺がんについて（大江先生）」
の講演をお勧めします。

その他の内容を見たい方は
http://www2.convention.co.jp/jsmo-seminar/#
のＨＰから選んでいただければよいかと思います。

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肺がんの概略

現在、日本において癌で亡くなる方は年間３２万人を超えます。
そのうちで、肺がんの方は５万９千人で、全体では第１位の死亡者数です。
男性の方が女性に比べて罹患数が高く、３～４倍。
これは、喫煙が原因の一つと言われています。

肺がんにおける化学療法は
○小細胞癌
○非小細胞癌（腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌）
で大きく分けられます。

病態については、こちらのＨＰを参考に見ていただければと思います。
http://www.lnet.info/lung/kind_stage/kinds.html

小細胞癌は肺がん全体の１０～１５％
非小細胞癌のうち、腺癌が５０％、扁平上皮癌が２５～３０％、大細胞癌が数％といわれます。

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●非小細胞肺癌の化学療法

非小細胞肺癌の化学療法の適応は、2005年のガイドライン上（７５歳未満、全身状態良好の患者）では
1B期～３Ａ期までは術後化学療法がグレードＢで
腹水貯留型３Ｂ期および４期はグレードＡで推奨となっています。

肺癌のステージ分類およびステージ別の治療についてはこちらを参考にしてください。
ＮＴＴ東日本　関東病院のＨＰですが、大きくはどの施設でも違いないかと思います。
http://www.ntt-east.co.jp/kmc/senmon/kokyu_02.html

化学療法には大きく
１.進行・再発癌に対する化学療法
２.術後の再発予防としての化学療法
３.手術前の化学療法
の３つに分けることができます。術後の化学療法は完治を目的に、転移や再発での化学療法は延命および症状緩和などが目的になってきます。
ですので、まず術後の化学療法についてまとめたいと思います。

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●術後の再発予防としての化学療法

１Ｂ期
日本において、JLCRGという試験で１期の腺癌で術後のＵＦＴ投与で５年生存率が2.5％改善し、特に１Ｂ期で顕著であった（73.5％対84.9％）という報告があり、１Ｂ期において術後ＵＦＴを使用する事があります。

２～３Ａ期
海外において、非小細胞肺癌の術後化学療法（シスプラチン：ランダ・ブリプラチン使用）を対象として５つの大きな試験（ALPI,ANITA,BLT,IALT,JBR10）があり、これらから術後にシスプラチンを含む抗がん剤の併用療法が検討されるケースがあります。
特に、シスプラチン＋ビノレルビン（ナベルビン）はエビデンスが高いが、投与量や投与スケジュールの違いなどから、実地医療としては十分な検討が必要ともいわれています。

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●進行癌に対する化学療法

進行した非小細胞肺癌に対して化学療法を行うことで、１年生存率を１０％改善、生存期間中央値を６～８週間延長するとされ、症状の改善やＱＯＬの向上をもたらす事が示されています。
ガイドライン上では、シスプラチンと新規抗がん剤の併用、主に
・シスプラチン＋パクリタキセル
・シスプラチン＋ドセタキセル
・シスプラチン＋ゲムシタビン
・シスプラチン＋ビノレルビン
が中心になります。
また、カルボプラチン＋パクリタキセルも外来でよく用いられています。
２００４年にASCOで報告されたFACS studyではこれらの化学療法には差が無いとされています。
ただ、シスプラチン＋パクリタキセルとカルボプラチン＋パクリタキセルを直接比較した臨床試験の中にはシスプラチンのレジメンが生存期間を延長できたという報告もあります。
いずれも奏効率は20～30％で、生存期間中央値は１２ヶ月ほどで残念ながら予後は悪いと言えます。
主な副作用をまとめてみました。（添付）

また、再発した2nd lineの化学療法では、プラチナ製剤治療例にはドセタキセルの投与が推奨されています。（TAX317,TAX320）
ペメトレキセド（アリムタ）もドセタキセル単剤と同等である事が確認されましたが日本では非小細胞肺癌には未承認です。

その他、分子標的薬のゲフィチニブ（イレッサ）も、日本人の女性、腺癌、非喫煙者、に対して高い効果があります。
使用の際は急性肺障害・間質性肺炎に注意が必要です。

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【主な治療薬】
【一般名】　　　　　　　　　　　【商品名】
シスプラチン　　　　　　　　　ランダ・ブリプラチン
カルボプラチン　　　　　　　　パラプラチン
イリノテカン　　　　　　　　　カンプト・トポテシン
アムルビシン　　　　　　　　　カルセド
マイトマイシンＣ　　　　　　　マイトマイシン

ビノレルビン　　　　　　　　　ナベルビン
ビンデシン　　　　　　　　　　フィルデシン
パクリタキセル　　　　　　　　タキソール
ドセタキセル　　　　　　　　　タキソテール
ゲムシタビン　　　　　　　　　ジェムザール
テガフールギメラシル
オテラシルカリウム　　　　　　　ティーエスワン

ゲフィチニブ　　　　　　　　　イレッサ
（他、後発品使用の場合は商品名が違う場合があります。）

コメント(16)

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[2] mixiユーザー 08月04日 22:40

速報、アジア人肺がん対象イレッサのフェーズ3が成功

http://cancernavi.nikkeibp.co.jp/news/3_31.html

[3] mixiユーザー 08月08日 23:59

＞ともさん
イレッサの臨床データみました。

アジア人、女性、非喫煙歴、EGFR変異あり、腺がん

に有効だったかな？？

優位性を取れたのは凄いとは思いますが、この条件にあてはまる患者はどのくらいいるんでしょうかねぇ。アリムタで結構いいデータが取られているようですが（非アジア）。

[4] mixiユーザー 08月10日 02:30

これまでの常識だったプラチナベースの化学療法に勝つというのは、やはり画期的なことです。

公式発表
http://www.astrazeneca.co.jp/activity/press/2008/08_08_01b.html

今回の優位性は
アジア人、非喫煙歴、腺癌という場合で示されたんですよね。
だとしたら、それなりに対象患者はいると思います。

ただ、今のところPFSしか出ていないので、OSまで出てみないとなんとも言えないですが。

でも、日本においては他の国と違って、すでに1st-lineに保険適応があるということから、これから対象患者には1stで使う先生も増えてくるかもですね。2nd-lineでの成績を考えても、今後は対象患者に対してはイレッサをなるべく早く使う方がbetterなのかもしれません。

[5] mixiユーザー 08月10日 13:46

今回のIPASS試験の対象になっている患者は日本の肺癌患者全体の中では２割前後になります。

まだ速報しか出ていないので臨床でどう受け止められるかは今後の発表（秋頃）が待たれますが、対象症例であれば1st lineのイレッサも十分考えられます。

[6] mixiユーザー 08月10日 21:52

グレードにもよりけりですが、手術できない肺がん患者であれば薬価が高いイレッサを1stで選ばない可能性も高いかと。

公式発表を見ましたが、非盲検無作為化並行群間比較試験で未治療（ケモ）さらにPFSということだったんですね・・・これを見てしまうと、むりくり差をつけたととらえられても

差が出たことは凄いですが・・・

[7] mixiユーザー 08月10日 22:00

OSで差が出ないと何とも言えないですよね。

どんな形であれ、プラチナダブレットに始めて勝ったというのは凄いことです。

[8] mixiユーザー 08月11日 16:58

>じゅっとくさん

IPASS試験で無増悪生存期間で優越性を証明しましたけど、1st lineの治療は今後大きく変わってくると個人的に思います。

アジア人、非喫煙歴、腺癌・・というよりか、EGFR変異があるかなしかを化学療法を行う前に調べて（保険適応もありますし（2000点））、変異があればイレッサを1stとなるのではないかな、と思います。

EGFR変異のあるなしで奏効率、MSTが大きく違いますからね。

[9] mixiユーザー 08月11日 18:32

EGFR mutationは非常に重要な効果因子ですが、mutationをどうやって調べるかという問題があります。外科手術後の場合、組織も手に入りやすいのですが、最初から手術適応ない方だと、意外にもmutationの有無を調べる検体を手に入れるのが難しいケースもあります。検体の質にも良い悪いが出てきそうですし。最近、報告もありますが、末梢血から調べることが出来たらいいんですけどね。

いずれにせよ、mutationがある方にはイレッサが著効するのは明らかです。ただ、ではそういう人にはイレッサが1stという論理は単純過ぎであり、いつ使うかによってOSに差が生まれるか否かという考察が必要になります。イレッサ1stというのは、逆にプラチナダブレットを使わないということにもつながり、それがOSを下げる可能性もあります。

アリムタも出てきますし、今後は選択肢も多様化してくるんでしょうね。

[10] mixiユーザー 08月12日 01:48

かなり面白そうなディスカッションになってますね。
僕もいれて下さい。

この試験は、
「主要目的が非劣勢であるにもかかわらず、優越性が証明された」
というところにポイントがあるのではないでしょうか？
（ゼネカさん、違いますか？）

優越性試験より非劣勢試験の方が、症例数が少なくても主要目的を証明することが可能であることを鑑みると、
もし、今回の試験が優越性試験としてデザインされていた場合、より多くの症例は必要ですが、
より明確な差を証明できたのではないでしょうか？

統計のご専門の方、もしいらっしゃったら、コメント下さい。

また、ぴろさんがＯＳが出ていない…と仰ってますが、
ＯＳまで出すとすると、さらに症例数が必要かと思います。
ＯＳに差が出ることが良いことは間違いありませんが、
その必要数の患者を臨床試験に登録することが、
倫理的にどうであるのかも、考える必要なところかではないでしょうか。

個人的には、1st.lineなんで、ＯＳで…と言いたい気もします。
難しいところですね。

ＰＦＳかＯＳか…この点についての記事です。
http://www.cancerit.jp/CancerBulletin/diary.cgi?no=250
ＭＢＣですので、ＮＳＣＬＣの1st.lineと同様に考えてはいけないのかもしれませんが、
参考になりましたら、幸いです。

[11] mixiユーザー 08月12日 15:56

こういうディスカッション結構興味あります。
1st lineなのでOSが一番大事と言いたいとこですが、どの順序がいいのかは本当に難しいのでしょうね。
確かに、EGFR変異陽性だから単純にイレッサがファーストがいいとはいいきれない点もありますよね。
もしかしたら順序は後のほうがいいのかも知れません。

OSか、PFSでもいいかという議論もこれまた…。

アリムタも入ってくれば、治療選択が増えていいことですね。
ただ、こんなに高い薬剤ばかり使えるのは、日本の保険制度のおかげだと感じます。

長寿医療制度の問題で、マスコミは叩きますが、多少の負担増は我慢しないと、この医療制度はもたなくなるのでは、と思います。

すいません、的がズレてしまいました。
(標準治療とも無関係です)

[12] mixiユーザー 08月12日 18:09

主要評価項目が非劣性だとしても、優越性についての検定ががもともと予定されていたものであればある程度のことは言えるのでしょう。予定されていればその解析ができるように試験がデザインされていますので。
ただ予定されておらず「だいぶ差が開いてるから解析してみよう」という感じであれば後解析に過ぎず、参考程度、といった位置付けになります。その場合は優越性を検証するデザインになっていないからです。

またOSについての議論ですが、予後の長いものについては（例えば乳癌の術後の試験）OSではなくDFSが主要評価項目になります。結果が出るのがだいぶ先になってしまいますし、解析している間にも新しい薬剤が増えてきて生存が延びてしまい差が検出しにくくなりますので。もちろん相当な症例数も必要になります。
かたや、肺癌・胃癌などではOSが主要評価項目になります。奏功率やPFSがOSとリンクしないからということもあります。PFSを優位に延長していてもOSに差がなく毒性が増強しては意味がないという考え方です。少々乱暴な書き方になりますが。

ただ、今回のポイントは、ｲﾚｯｻの方が圧倒的に毒性が少ないこと。OSに差がでないとしても（おそらく短くなることはないでしょう）、PFSの優越性を認めないにしても、同じ期間を少ない毒性で過ごせるのであれば十分意義はあります。あとはお金の問題ですが、高額医療制度を使用すれば少なくとも患者負担は上限８万円です。

ちなみにこの試験でｲﾚｯｻのPD後はﾊﾟｸﾘﾀｷｾﾙ・ｶﾙﾎﾞﾌﾟﾗﾁﾝが投与されています。ｲﾚｯｻの場合は毒性の面であまり患者に負担がかからないのでｾｶﾝﾄﾞﾗｲﾝでもﾌﾟﾗﾁﾅﾀﾞﾌﾞﾚｯﾄは比較的投与しやすいと思われます。

ｱｽﾄﾗｾﾞﾈｶの方がいらっしゃったら試験ﾃﾞｻﾞｲﾝについて詳細を述べてくれると助かるのですが。まだ社員にもｵｰﾌﾟﾝになってないのかな…

[13] mixiユーザー 08月12日 20:14

臨床の関係者や他の情報を知っている人も話す事はできないでしょう…たまにベラベラ喋ってる人もいますが

今、臨床の現場ではEGFR調べてるところ少ないのでは？がん種は違いますがタルセバでやっと義務化しようとしてるくらいだし

[14] mixiユーザー 08月12日 20:48

自分も例えOSで優越性が示せなかったとしても、毒性やQOLを考えると、明らかにイレッサ1stを行う価値は十分にあると思います。その場合、そーさんご指摘のように、2nd以降の治療の選択の幅も確保されるはずです。

今後、非小細胞癌という大きな括りではなく、様々な区分けにより治療法が細分化されていきそうですね。肺扁平上皮癌という括りでもいろいろな臨床試験がはしっているようですし。

[15] mixiユーザー 08月12日 21:08

話を標準治療から逸らしてしまうきっかけを作りまして、申し訳ありません。

まず、１点、訂正をさせて下さい。
優越性試験でも非劣勢試験でも必要な症例数は同じですよね。
ＰＦＳとＯＳのこととゴチャゴチャになりながら、書いてしまいました。
失礼致しました。

このデータはまだプレスリリースだけの発表ですよね。
学会発表を待ってからの判断をすべきでしょうね。

そ～さんの仰っていることと重複しますが、
優越性が後付けなのか、当初から予定されていたのかが興味があります。
あと、バイオマーカーも。
どれだけ細かく見ているのか…

＞そ～さん
非常にわかりやすく書いて頂きまして、ありがとうございます。
勉強になりました。

[16] mixiユーザー 08月13日 06:59

しょうれいすうのもんだいと、でざいんのもんだいっぽいですが、
こうやって、患者側に、よろこばしいでーたをしっかりだしてくるあたり、
なかなかよろしいですね。
しょうれいすうをとるっていうのも、OSのじかんも、かなりのじかんをようするとおもうので、
まずは、一つしっかりとしてせんたくしがふえた、とよろこびます。

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