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今、鳥人戦隊ジェットマンが熱いコミュの【外伝】小説 鳥人戦隊ジェットマン? 変則ダブルデート 5 (終)

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それから鷹男とこずえはスカイキャンプへ、行きと同じルートで帰ってきた。
が、少々ダイヤの乱れがあったせいで、思ったより時間がかかってしまい、
そのため、スカイキャンプに着いたのは、沙羅や禅と同じタイミングになってしまった。
「あれ? 沙羅ちゃんと禅さんもお出かけ?」
「まあね」
「どこに行ってきたんですか?」
「キャッスルタウン」
「え? おれたちもそこに行ってきたんですよ。偶然ですねえ。それにしちゃ沙羅、なにも持ってないな」
入り口で会い、そのまま並んで歩きながらこずえは尋ねてくることに禅はすまして答え、
鷹男は驚く。
自分たちがつけられたとは微塵も疑っていない様子で、そのことは気にならないが、
彼がいぶかしさを覚えるのは沙羅が手ぶらであることだった。
沙羅は買い物魔というわけではないが、そのケがあることを鷹男は知っている。
「べつに。欲しいもんがなかっただけよ」
軽くそっぽを向いて答える沙羅だったが、鷹男に含むところがあるわけではない。
最後のプレゼントも加えて、今日の鷹男は「合格」と断じていたのだ。
沙羅が手ぶらなのは、今日はこずえのために出かけたのだからと、
最初からなにも買うまいと決めていたためだ。
そうでなければ誘惑に勝ち切れないという自覚が、さすがに沙羅にもあった。
最初からその決心があったからこそ、
ふらふらと服や靴や帽子やアクセサリーに惹かれる程度ですんだのだ。
それでも沙羅が少し不機嫌なのは、
自分で決めたこととはいえ買い物ができなかったのがやはり残念だったのと、
自分はなにも買わなかったのに、禅の方がいつの間にか袋を二つほど持っていたためである。
他のスカイフォース隊員たちとすれちがい、軽く敬礼をしながら沙羅は禅にささやく。
「あんた、いつの間にそんなもん買ったのよ」
「そこはそれ、要領ってもんだ。司令に土産の一つも買っていかないのは孝道に反するからな。お前は別のことで欲求不満の解消ができたからいいだろ?」
うそぶくように答える禅の手にした袋の中には、
彼の言うとおり綾への分も入っているが、当然のごとく香へのプレゼントも入っていた。
孝道のみならず、恋の道もしっかりと歩く禅であるが、
沙羅は「兄」の言うことに不機嫌さを増す。
「あんなの、返って欲求不満になっちゃうわよ!」
という沙羅の言うことは、それほど間違ってもいない。
沙羅はあれでも手加減はしていたが、怒りの度合いが強かったため、
アクセルとブレーキを同時に踏むようなストレスを感じていたのだ。
だとしても、「教育」された4人組には、なんの慰めにもならなかっただろうが。
「そうか、それじゃこれやるからちょっとは機嫌直せ」
と、禅は笑いながら袋の一つを、ポンと沙羅の胸に当てる。
「え…?」
思いがけないことに軽く驚いた沙羅は反射的に袋を受け取り、中をのぞく。
と、そこには、今日沙羅が一番長く見入っていたブーツの箱が入っていた。
「これ……なんで」
「今日はこずえのためにいろいろがんばったからな。『兄貴』としてはご褒美の一つぐらいあげたくなるじゃないか」
手にした袋と自分とを交互に見ながら尋ねてくる沙羅に、禅はしれっと答える。
欲しいのに我慢していた沙羅を見て、禅は「妹」の心情を察していたのだ。
しばらく目を見開いて禅を見ていた沙羅は、そのことを知り、
少しの恥ずかしさとともにかすかに顔を赤くすると視線をそらす。
「……もらったからには返さないわよ」
「もらったからには大事にしろよ」
禅は、そんな沙羅の様子に笑みを深くする。
と、そこにもう一人の少年が声をかけてきた。
鷹男ではなく、今日一人でスカイキャンプに残っていた少年である。
「おー、帰ってきたか」
ひょい、と顔を出したのは大地で、出してきた場所は厨房だった。
着てるのは普通の服だが、エプロンをつけている。
なにかひそひそとした会話をしてた禅と沙羅を、少し不思議そうに見ていたこずえだったが、
その兄を見た途端ピンときて、小走りに兄が顔を出している入り口に向かい、
中をのぞくと顔をしかめて天を仰ぐ。
「もー、お兄ちゃん、お料理する時はわたしに断ってからにしてっていつも言ってるでしょ!」
「だってお前いなかったじゃん」
「いなかったら帰ってくるまで待っててよ! これ片づけるのわたしになるんだから!」
「まあまあ、細かいことを気にするなって。今日はラザニア作ってみたんだ。お前ら食うか?」
料理は得意だが、やたらめったら調理場を散らかしながらという料理方法と、
後片づけは絶対やらないという大地だけに、
その後片づけをいつも押しつけられるこずえとしては文句の一つも言ってやりたくなるのだが、
兄の方はあまり堪えてないらしい。
だが禅としては、そういうこずえがほほ笑ましい。
「食う食う。今日は昼夜イタリア料理だな」
昼食は遅かったが、10代の胃袋はほぼ24時間稼動式である。なんの問題もなかった。
「なんだ、昼もイタリア料理だったのか。ならべつのもんにすりゃよかったかな」
「構わないさ。イタリア人は三食イタリア料理だ」
「そうとも決まってないんじゃないか?」
「禅」
大地と会話しつつ部屋に入ろうとする禅に沙羅が声をかける。
少しためらいがちなそれに、かすかないぶかしさを覚えつつ禅が振り向くと、
そこには表情の選択に困っている沙羅がいて、何度か口を開閉させたあと、
また視線をそらして少し赤くなりながら口を開いた。
「……ありがと」
何事かと思っていた禅だったが、その沙羅に破顔し、ぽんぽんと掌で「妹」の頭を軽く叩く。
その背後では腹を決めて、決めたからには建設的な方向へ持っていこうとするこずえが、
「もう、用意するなら早くしちゃおうよ、お兄ちゃん!」
と、大地を部屋に引きずりこんでおり、それを見た禅は朗笑に苦笑を込めて二人の後につづく。
「……出来すぎよ、あんた」
その禅を見送った沙羅は、叩かれた頭に軽く触れた後、
抱えた袋に赤らんだ顔を半ば埋めながらつぶやく。
そしてその顔を少し振ると、それでもまだわずかに赤いままの顔で、
「兄妹」の後へ続いて入っていった。


10


そんな中、鷹男は静かに、いつの間にかその場を離れ、別の部屋に向かっていた。
その部屋の前まで来ると、鷹男は小さく深呼吸してドアを開ける。
そこは清潔で、生活感はほとんどないが、
それでも人の精気が漂っているという不思議な部屋だった。
圭子の病室である。
毎日やって来る部屋で、常に変らない光景。
鷹男にとってはその変化のなさに、安心と落胆とを覚える場所である。
今日もなんの変化もない。
テーブルや椅子、クローゼットなどの必要最低限の家具と、部屋の主の眠るベッドがある。
それを見た鷹男は落胆を消すとベッドに歩み寄り、眠る圭子を見おろすと、
手にした袋からプレゼント用に包装された箱を取り出して、圭子の胸の上に置く。
大きいものではない。長さ20cm程度の長方形の箱である。
「……もうすぐ一時的にお別れだからな。ちょっとしたプレゼントだよ。気に入ってくれるといいけど…」
と、一度置いた箱をもう一度手に取ると、包装紙を開き、中身を取り出す。
腕時計だった。時間はあわせてあり、秒針を刻んでいる。
「デザインは、おれよりセンスのいい子に選んでもらったから、気に入ってもらえると思うよ」
言いながら、もう一度それを彼女の胸の上に置く。
そしてまた、しばらく彼女を見おろす。
どのデザインにするかはこずえが選んだが、
服や靴ではなく腕時計にするということは鷹男が選んだ。
そういうのはやっぱりよくわからないというのがあったのも確かだが、もう一つの想いが強かった。
「お前は寝ちまってるけど、お前の時間は動いているよ。おれと一緒にね」
その想いの象徴がこの時計である。
動く秒針を見ながら、動かない圭子を見おろし、
鷹男は様々な想いを覚え……そして最後はいつもの想いにたどり着いた。
その想いを、身体をかがめ、圭子の頬を撫でながら眠る彼女に告げる。
「……必ず助けてやるからな。もうちょっと待っててくれ……好きだよ」
そしてこれもいつものように、やさしく唇を重ねた。
これだけは圭子が起きている時とかわらない感触で、鷹男を安心させる。
その安堵のまま唇を離し、少し近くで圭子の顔を見続けていると、部屋の内線電話が鳴った。
軽い夢から覚めたような表情で顔を起こすと、鷹男は受話器を取る。
「はい」
「なんだ、やっぱりそこにいたか」
出たのは大地だった。
「ここにいるのよくわかったな。それでなんだ」
「みんながそこだろうって言ってたからな。メシ作ったんだけど、お前も食うか? ラザニア」
「お、食う食う、三人分は食うからちょっと待ってろ」
「半人前のくせに、食欲だけは三人前かよ」
「人のことが言えるか、五人前。とにかく待ってろよ」
「三分以内に来なかったら半人前しか残さん」
「一分で行ってやるから四人前用意しとけ」
そう言うと鷹男は受話器を勢いよく置き、その勢いのまま部屋を出ようとする。
と、そこで立ち止まり、背後を振り向くと、やさしげな表情でもう一度圭子を見、
そして一分以内に大地たちのいる食堂へたどり着くために走り始めた。

部屋には、眠る圭子と、彼女の時を刻むような音を立てる腕時計が残った。



                                         おわり


各章一覧
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本家と同じく変身しないお話でした(笑)。
本編の続きというわけではなかったので申し訳なかったですけども、
読んでくださって本当にありがとうございました。
よかったら感想なんかくださると、うれしく思ったりしております。

あと全然関係ないんですが、いまさらながらこの「?」って、
主題歌の「♪と〜きを飛び越え いつも助けてくれるよ」と一応つながってるな、
と気づいたりしました(笑)。

コメント(8)

>涼さん
感想、最後まで本当にどうもありがとうございます!

沙羅は意外と責任感みたいなものは強いと思っていたので(笑)。
禅の男前ぶりはジェットマンファンには
「凱の息子ですから」でオールオッケーになってくれるかなと(笑)。
血がすべてを決するわけではないにしてもね(笑)。

圭子もきちんと救わないとなあ…
本家の位置的にはリエの位置になるわけですが…

本当にどうもありがとうございました。
また気が向いて思いつくようなことがありましたら、よろしくお願いします(笑)。
>桂 真枝さん
圭子ファンがいてくれましたか、なにげにすごくうれしいです(照)。
なんか思いつけば書けると思いますが、思いつかなければダメなので、
確約できなくてすいません(汗)。
ちなみに忘れられてるかもしれませんが、圭子は基本、昔懐かしポニーテールです(笑)。
眠ってる今はおろしてますけどね。
>サユリンさん
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
ドンパチもなかったんで心配だったんですが、
楽しんでもらえたようで安心しております。

小田切長官は年齢的に近いですからね、ぼくらは(笑)。
裏設定的には、というか本編で書くべきなのを忘れてたんですが(汗)、
現在小田切さんはスカイフォース(日本支部?)の一番偉い人(司令)まで出世してます。
だけどバイラムとの戦闘経験を買われて(主張して(笑))現場復帰、
司令職は他の人に任せております。
だから禅は綾のことを「司令」と呼んでいます。
香たちが「長官」と呼ぶのは当時の名残りで、
学生時代の先生をずっと「先生」と呼ぶようなものです。
でもぼくも最初のころは混同してしまっていましたが(爆)。

ポニーテールは今ほとんど見かけませんが、
これ書き始めた頃は結構流行ってたんだよなあ、と(笑)。

ジェットマン以外の作品でよければこっちにまとめてたりします(笑)。
http://mykit.jp/pc/suntu501/
でもジェットマンの続きも、また思いつくことがあったら書くこともあるかもしれませんので、
その時はお願いします。勝手なお願いですいませんですが(汗)。
 いやー、こうまとめたんだなぁ〜。よかった〜わーい(嬉しい顔)
 大地の出演がこうなりましたか(笑)片付けをしないって、そりゃ、こずえもツッこみますねあせあせ

 禅は長官や香だけでなく、沙羅にまでプレゼントを準備していたとはexclamation ×2このあたりは父親譲りの気配りかな?

 個人的には今後のバイラム戦だけでなく、香との恋、長官外伝などで?があれば嬉しいなぁ、と思っております。
 お暇と構想が出来ましたら、また宜しくお願い致します。<m(__)m>
 ?の外伝、面白かったですよ。有難うございましたうれしい顔
>masaさん
感想ありがとうございます。

家ではサツキもツッこみます(笑)。

女に対してはマメなのは父親譲りだと思われます。
禅自身は自覚はないし、そう指摘されても表情の選択に困るでしょうけど。

実は恋愛小説を書くのがムチャクチャ苦手なので、
ジェットマン関係を書く時は結構頭抱えています(笑)。
ですんで簡単には約束できないんですが、
もし機会とモチベーションが重なったら必ず書かせてもらいますね。
恋愛抜きの話だったりしたらすいません(汗)。

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