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今、鳥人戦隊ジェットマンが熱いコミュの【外伝】小説 鳥人戦隊ジェットマン? 変則ダブルデート 1

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スカイキャンプは郊外にあり、外部から通う隊員や職員のために地下鉄の駅も併設されている。
それなりにあたたかい日の朝、天堂鷹男は地下にあるその駅の改札口近くに立っていた。
休日ではあるが、出かける人も多いのか、それなりに人はいる。
鷹男は基本的におしゃれとは縁の薄い生活を送っており、
普段だったらジーンズに安物のシャツだが、
今日はベージュのスラックスにライトブラウンのシャツ、それにワインレッドのネクタイと、
それなりにいい格好をしている。
「…………」
腕時計を見てみる。
最近は時間を知るのに携帯電話の時計を見る人も多いが、鷹男はアナログの腕時計派だった。
午前10時。待ち合わせの時間ちょうど。
「ご、ごめんね鷹男くん、待った!?」
と、名を呼ばれて顔を上げると、そこには大石こずえがいた。
全力で走ってきたのか、軽く息があがっている。
「ううん、そんなでもないよ。それに今がちょうど待ち合わせの時間だからね。今日はありがと、つきあってくれて。かわいいカッコだね、こずえちゃん」
「え? あ、ありがとう……」
にっこり笑って鷹男は、言うべきことを、ごく自然に全部言ってのけ、
それに対しこずえは、赤面しつつ最後の誉め言葉にしか反応できなかった。
それが遅刻寸前になってしまった理由で、最も言ってほしかった言葉だったからだ。
目立たないがセンスよくかわいらしいデザインがほどこされている白系統のワンピースで、
あれでもない、これでもないと前日から今朝まで悩みつづけた結果選んだものである。
その甲斐があったというものだ。
「それじゃ行こうか」
「う、うん」
穏やかな笑顔の鷹男にうながされ、赤面したままのこずえは、
彼のあとについて改札を抜け、プラットホームへ向かった。

「……よし、とりあえず合格。その調子でいきなさいよ、鷹男」
と、少し離れた場所に隠れて二人を監視していた鷹男の「妹」でこずえの「姉」は、
「兄」の「妹」への受け答えにグッと拳を握った。
ボートネックのTシャツにシンプルな白系統のパーカ、ストレートジーンズと、
普段からシンプルだがセンスのいい服を好んで着る彼女だったが、
今日はその中でも地味めのものを着ている。
目立たないようにするためだ。
その少女――早坂沙羅のすぐ後ろに隠れていた、
スラックスにシャツ、麻のジャケット姿の「長兄」、羽生禅は、
ややあきれたように彼女を見おろす。
「……なあ、やっぱり行くのか?」
「当たり前でしょ。あの朴念仁じゃ、こずえになに言い出すかわかったもんじゃないんだから」
「でもさあ、あんまりいい趣味じゃないぜ、これ」
「なに言ってんの、べつにのぞきで行こうってんじゃないんだから構わないのよ。ほら行くわよ」
実際、沙羅にそのつもりはなく、純粋にこずえが心配であるゆえの尾行だった。
それだけに、なんの迷いもなく二人を追って物影から飛び出し、
それを知るからこそ、禅もため息をつきつつ彼女について行く。
「鷹男がなんか余計なことしたって、隠れてる限り、おれたちになにかできるわけでもなかろうになあ…」と、ぼやきながら。





彼らが新しいジェットマンとなり、トランザ率いる新生バイラムと戦うようになって、
すでに二ヶ月が過ぎていた。
その間に戦闘は三回。すべて最終的には完勝だったが、それぞれヒヤッとする場面もあった。
トランザにしてみれば、現行の次元獣で新ジェットマンを倒せないとわかっており、
これらの結果は想定内である。
それでも戦いを挑むのは、ジェットマンの能力や性格などのデータを集めるためや、
新型次元獣用のパーツのテストのためもある。
それらの目的は戦闘のたびに少しずつ果たされているが、
負けは負けであり、そのこと自体がトランザの鬱屈を深めさせる。
さらに、前回の戦闘で見つけたはずのジェットマンの弱点も、
次の戦いの時には修正されていることがほとんどで、
彼らの成長のスピードも予想通りかそれ以上であり、そのこともまた彼をいらつかせていた。
そんなトランザに武林も神経を使う日々を送っており、
もし彼がいなければトランザは暴発していたかもしれず、
トランザはまったく気づいていなかったが、
彼の存在は新生バイラムにとって必要不可欠なものとなっていた。


戦うたびにジェットマンの弱点が無くなっていくのは、もちろん自然とそうなるわけではない。
戦闘後に自分たちの戦いを検証し、そこから導き出された弱点を補正していくからだ。
補正と言っても頭で理解しただけで成せるわけではない。
それ専用の訓練はもちろん、普段の訓練も熾烈を極め、
それらのしごきは、バードニックウェーブを受け継ぎ、
バードニックウェーブBで強化された彼らをして毎回必ずぶっ倒れるほどすさまじいものだった。
「う〜〜、あのサディストめ〜〜」
「サディストの和訳ってさ〜、『羽生禅』〜だったっけ〜?」
「さあ〜、そうだったかも〜」
ぶっ倒れたまま、ぼやきとうめきと悪口とを交わすのは、たいてい沙羅と大石大地だ。
場所は道場であったり、トレーニングルームであったり、
屋外のトラックであったり、クロスカントリーの山道であったりと様々だったが、
その悪口の内容は毎回ほとんど変わらなかった。
沙羅と大地のように口にはしないが、
側で倒れている鷹男とこずえも似たようなことを考えていたかもしれない。

禅は相変わらず彼らを鍛える立場にある。
それだけの実力差があるからで、また座学で知識をつけさせることや、
技術的なこと、体力的なことを指導するだけならまだしも、
バードニックウェーブBを浴びた彼らに、
主に格闘技の組手などを直接おこなえる者は禅しかいない。
であるのなら、他の教官に任せられる分野は任せてしまえばいいものだが、
禅はそうせずにすべてを受け持っている。
五人の結束をできるだけ早く強くするためにも、
一緒にいる時間を長くし、同じことを体験しておきたいという、
リーダーとしての考えからである。
また四人がどれだけのことをできるのかを可能な限り細かく、可能な限り総体的に、
頭だけでなく体で知っておきたいという考えもあった。
それらの指導だけでなく、禅はデータ処理専門の隊員がおこなう、
前述した戦闘の検証にも参加している。
そこから訓練のカリキュラムを考えるのだ。
また四人の「弟妹」の訓練の指導が終わった後は、自分のための訓練も欠かしていない。
それは「弟妹」に対するより厳しいもので、
しかも指導といっても、彼ら専用の訓練を、彼らと一緒にこなした後での話である。
本来であればその「兄専用」の訓練にも加わりたいと思っている「弟妹」だったが、
自分たち用の訓練が終わった後は動くこともできずにいた。
それだけに、口ではなんのかんの言いながらも、鷹男たちは禅に尊敬と畏敬の念とを持っており、
いずれ超克すべき存在としての念も持っている。
中でも鷹男と大地はその想いが顕著で、最近は自分たちの訓練を終えた後なんとか復活し、
禅個人の訓練にも参戦できるようになってきた。
もちろん、まだまだほとんどついてゆけず、途中でリタイアする毎日だが、
それでも禅はそんな彼らを、ニヤリと横目に笑いながら見ている。
それだけでも彼らの力が上がっている証拠であり、高い向上心の現われだからである。
実は沙羅も、そろそろ参加できそうなくらい力をつけてきたのだが、
こずえにその力がつくまで待つことにしていた。
一人だけ遅れたこずえが焦ったり自己嫌悪に陥ったり、
また寂しい想いをするかもしれないとおもんぱかってのことで、
このあたり、やはり「末っ子」には甘くなってしまう「兄姉」だった。


そんなある日、訓練が終わってシャワーを浴びた後、
女性用シャワールームから出て来たこずえに鷹男が声をかけてきた。
「こずえちゃん」
「え、なに、鷹男くん?」
こずえは髪もきちんと乾かして、ブラウスにスカートというごく普通の服を着ているが、
鷹男はTシャツにジャージ姿、タオルで髪をわしゃわしゃと拭きながらというざっくばらんな姿で、
ある意味男らしいといえるその様子に、こずえは少しドキリとしながら返事をする。
「うん、実はちょっと頼みがあるんだけどさ。明日久しぶりに休みだろ? それでよかったらちょっとつきあってほしいんだけど…」
「え!?」
そんなこずえに気づくこともなく、髪を拭く手はそのままに鷹男は頼んできて、
その内容にこずえは風呂上りでもともと赤らんでいた顔をさらに赤くした。
「つきあって」というのが「交際して」という意味ではなく
「一緒に出かけたい」ということだというくらいはわかる。
だがそれが「デート」とほとんど同義だと感じてしまうのは、
こずえにとっては無理からぬことだった。

ジェットマンになってから、彼らはほとんど無休で過ごしている。
素人状態から、ほとんど突貫で一流の戦士にならなければならず、
そのための訓練や座学の時間はいくらあっても足りない。
ましてバイラムはいつ襲ってくるかわからない。
交代要員もいない以上、24時間態勢を解くわけにもいかないのだ。
だがそれでも、まったく息の抜けない状態が続いては、
精神的にパンクをしてしまうのもまた自明で、
不定期ではあるが、ちょくちょく休日は与えられていた。
もちろんそういう時でもバイラムの襲撃があれば出動せざるをえず、
その日ばかりは「お願いバイラムさん、今日だけは襲って来ないで」と神に祈りたくなる彼らだが、
一度だけ休日に襲撃があり、憤激した五人は次元獣をコテンパンにし、
それまでで一番の圧勝劇を演じた。
それ以来綾には「今度からバイラムに、いつが休日か教えた方がいいかしら」と
冗談まじりに笑われている。

そんな貴重な休日だったが、こずえはさほどやりたいことがあるわけではなかった。
「一日くらいじゃなにもできやしない!」と嘆く沙羅と違い、
こずえはもともとインドア派で、一日部屋で本を読んだり、
音楽を聴いたりして過ごすことに苦痛を覚えることはない。
出無精で、沙羅が誘ってくれないとなかなか出かけることもせず、
そういうところは少し直さないといけないと自分でも感じているが、
それでもいつも、なんとなく同じような、のんびりとした休日を過ごしてしまう。
明日もきっと同じように過ごすだろうと考えていたのだが、
ここで急転直下の状況になってきた。
「もしかして用事があった? それだったら無理にお願いはしないけど…」
あまりに驚いたこずえが絶句している理由を誤解した鷹男は、
すまなそうに頼みを引っこめようとするが、
その鷹男に我に返ったこずえは、あわてて返事をする。
「そ、そんなことないよ、大丈夫。うん、全然平気。その……うん、行く、一緒に」
最後の「行く、一緒に」は恥ずかしさから少しうつむいて声が小さくなるこずえだったが、
その言葉に鷹男はほっとした。
「そう、よかった、ありがとう。ほら、あのさ、もうすぐ圭……ぐえっ」
と、そこで鷹男はぐいっと襟首を引っ張られる。
軽く息と声が詰まり、反射的に後ろを振り向くと、
そこには彼のもう一人の「妹」がいた。
彼女もちょうどシャワーから出て来たところのようで、
鷹男と同じくジャージ姿だが、「兄」よりセンスはいい。
「なんだよ沙羅、痛いだろ」
「……いいからちょっと来なさい」
鷹男は非難がましく沙羅に抗議するが、彼女の表情と口調の方が低く、思わず文句が引っこみ、
こずえを残して角を曲がった先に引きずられていってしまう。
このあたり、「兄」とはいえ、なかなか情けない。
こずえから充分離れた廊下でようやく「兄」の襟首から手を放した沙羅は、
「なんだよ、いったい」と文句を言う鷹男を軽くにらみあげる。
「あんた、なんでこずえを誘ったの」
「なんでって……」
さらに文句を言い募ろうとした鷹男だったが、
沙羅の迫力に少しひるんでしまう。やはり情けない。
「一緒に遊びに行こうっていうだけ? それともなんか理由があんの?」
「ええと……一応理由はあります、はい」
「どんな?」
「ええと……実は今度の水曜日に圭子が他の病院に移るからプレゼントを贈りたいと思いまして… おれ、あんまり女の子の好みとかわからないから、こずえちゃんにアドバイスをもらえたらと思いまして…」
沙羅の迫力に押されるまま、正直に答える鷹男で、その回答に沙羅は大きくため息をつく。

トランザの秘術で「眠れる少女」にされてしまった鷹男の幼なじみ兼恋人の星川圭子は、
まだスカイキャンプにいる。
鷹男は彼女に一日一回は会いに行っているが、
当然会話などはなく、眠る彼女をじっと見おろすだけしかできない。
それは鷹男にとって苦しい時間だが、同時にやさしい時間でもある。
この日課を鷹男はべつに隠すでもなかった。
だから当然こずえも沙羅も知っていて、
「妹」の胸中を思えば沙羅としては鷹男に、二言三言なにか言った後、
一発くらいぶん殴ってやりたいという気持ちがある。
そうしないのは、鷹男の圭子への想いも知っているからだ。
その圭子がスカイキャンプを離れて設備の整った病院へ、
トランザたちにばれないよう秘密裡に移されることが決定したと
一週間ほど前に綾から聞かされた時は、
さすがに沙羅も鷹男に同情し、思わず彼の方を見た。
そこには覚悟をしていたのか、やや白っぽいながら普段どおりに見える「兄」の顔があった。
それでも「兄妹」であればわかる。その表情の下に、亀裂が走った心を隠していることが。
こずえもそんな鷹男を見ており、彼女の心を思えば沙羅も複雑だが、
その後も心の亀裂を隠したまま普段どおりに訓練をこなす「兄」を見、
贈ったところで理解もされないであろう別れのプレゼントまで渡そうという話を聞いては、
責めることもできない。
それでもどうにも、悪気はなくても結果的にこずえに対して酷なことをしてしまうあたりが、
沙羅にため息をつかせるのだ。

沙羅は二人の会話を特に立ち聞きしていたわけではなく、
シャワールームから出ようとしたところで偶然聞いただけだ。
鷹男がこずえを誘っていること自体は沙羅も喜んだのだが、
会話の流れから瞬間的に「兄」の不用意さを感じ取り、
その刹那、右手が彼の襟首をつかんでいたのである。
母譲りの恐るべき勘と反射神経といえよう。
「……あたしが代わりにつきあったげる。こずえにはあたしから言っておくから。いいわね?」
ため息をついた後、沙羅は数秒考えたのち、鷹男をねめつけながら言う。
どう考えてもこずえには残酷すぎる所業で、沙羅としては行かせるわけにはいかない。
だがそんな「妹たち」の心裏がわからない鷹男は、少しきょとんとして応じる。
「……なんで?」
「なんでもよ。女の子の意見が必要なら、べつにあたしでもいいでしょうが」
「えー、でもどっちかっていうとお前よりこずえちゃんの方が圭子の好みやセンスと似てるような気が――」
「い、い、わ、ねッ!」
「……はい」
渋る鷹男だったが、沙羅の迫力に完敗した。


しかしその十数分後、鷹男の次の日の予定はまた変転する。
鷹男たちはスカイキャンプ内に、それぞれ個室を与えられている。
ちょっとしたワンルームマンション程度の内装だが、
独身(という呼び方も違和感のある年齢だが)の男女が一人で住むには充分すぎるほどである。
ベッドや机などの基本的な家具は備えつけられており、
デザインなどが気に入らなければ変えることもできる。
部屋の模様替えなどは住んでいる人間に一任されていて、
沙羅やこずえはおのおのの個性にあわせた女の子らしい部屋にしているが、
大地はそのあたりのセンスや意欲がいちじるしく欠けているのか、ほとんどいじることなく、
殺風景なままの室内だが、それでも充分満足していた。
意外と本を読むのが好きな鷹男の部屋には本棚があり、
大地に比べればまだしもだが、それでも沙羅あたりから見れば五十歩百歩である。
二人とも掃除もほとんどやらないくらいだったが、
これはこずえが頼み込んで、自主的にやらせてもらっていた。
当然、本来なら鷹男の部屋だけをやりたいと思っているのだが、
スカイキャンプ内の他の人に変に勘ぐられるのも嫌なので、
「兄の部屋を掃除するついでに」という名目で鷹男の部屋の掃除をしている。
当然というべきか、鷹男自身はその言葉をまったく疑うことなく真に受けており、
「ごめんねこずえちゃん。大変だったらおれの部屋は無しにして、大地の部屋だけでいいからさ」
と、的はずれでありながら、真実のいたわりをこめた言葉をしばしば「妹」にかけ、
こずえに小さな喜びと落胆を、沙羅に中途半端ないら立ちを与えていた。
沙羅のいら立ちが噴火するところまでいかないのは、
それでもこずえが鷹男の部屋を幸せそうに掃除している姿を見ているからである。
ちなみに禅の部屋は、黒を基調とした家具などでセンスよく統一されており、
掃除もまめにおこなうため、他の男二人とはまったく違う雰囲気をかもし出している。

頭にタオルをのせたまま部屋に帰ってきた鷹男は、そのタオルを椅子に放り、
わずかなプライベートタイムを楽しもうとベッドに置いてある本に手を伸ばす。
普段から部屋に帰ってきて、30分から1時間ほどのんびり過ごした後、そのまま眠ってしまう。
就寝時間は、たいてい午後11時くらいで、一般の高校生と比べると驚くほど早いが、
このくらいの時間に眠って体力を完全に回復しておかないと、
次の日の訓練に大いに差しさわるのだ。
明日は休みなのだから、少々の夜更かしは構わないかもしれないが、
変に寝る時間をずらすと返って疲れが残り、
明後日からの訓練に、やはり差しさわりがある。
このあたりの意識の高さはプロスポーツ選手並であり、
未熟ではあっても彼らはすでに立派な戦士だった。
Tシャツにジャージ姿でベッドにあお向けになり、しおりを挟んであるページを開く。
最近の鷹男は短編小説を読むことが多い。
本当は長編推理小説が好みなのだが、そういうものは途中で読むのをやめるのが難しく、
下手に読み始めれば徹夜の危険性があり、
無理にページを閉じても続きが気になって、なかなか眠れなくなってしまう。
それを避けるためのチョイスで、
細かいことだが、このあたりもまた鷹男の戦士としての自覚のあらわれだった。
と、ここで内線の電話が入る。
「はい」
読み始めて興に乗り始めたところだったので少々不快を覚えたが、
それを電話口で出すほど鷹男も子供ではない。
ベッドに横になったまま手を伸ばし、受話器を取ってごく普通の声音で応じたが、
彼の耳に聞こえてきた声は、思い切り不機嫌そうだった。
「……あたし」
「なんだ沙羅か。どうした」
「…あのさ、明日やっぱりこずえが行くから。いいわね」
「いいわねって……なんで」
「なんでもよ。いいわね」
「まあおれは最初からそのつもりだったから全然構わないけど…」
「ん。それじゃ明日朝10時、駅の改札で待ち合わせね。きちんとおしゃれして行くのよ」
それだけ一方的に言うと、沙羅は少々乱暴に電話を切った。
「……なんなんだ」
少し唖然としながら手にした受話器を見ていた鷹男だったが、
それ以上気にすることもなくそれを戻すと、また本を読み始め、
しばらくしてから沙羅が不機嫌になる大元の理由からくるセリフをつぶやいた。
「おしゃれって、べつにデートじゃないんだから…」


一度交代したデート相手が再度こずえに戻ったのには、当然理由がある。
鷹男と別れた後、不機嫌そうに自分の部屋に帰ってきた沙羅だったが、
すぐにドアがノックされ、また扉を開ける。
と、そこには測らずも、さっき廊下に置き去りにしてしまった彼女の「妹」がいた。
「こずえ……どうしたの? でもちょうどよかった。ええとね、明日のことなんだけど…」
「あの……沙羅ちゃん。明日、わたしが行くから」
「え?」
少し硬い表情をしていたこずえが、その硬さをわずかにゆるめ、もう一度言う。
「明日、鷹男くんがなんでわたしを誘ったのか、わたし知ってるから。だから大丈夫。心配しないで」
「こずえ……」
そう言われて、こずえが自分と、自分に引きずられた鷹男の後をつけ、
話を聞いていたとようやく気づいた。
それはとがめられることではない。だが確かめずにはいられなかった。
「だって……つらいよ、こずえ?」
沙羅の言葉に一瞬、泣きそうな顔をするこずえだったが、すぐに笑顔になって「姉」に言う。
「うん……でも鷹男くんと二人きりでお出かけなんて、そんなに機会ないから」
それを見て、沙羅は涙ぐみそうになった。
たとえ圭子のためであっても、こずえには鷹男と二人きりでいられることがうれしいのだ。
そのいじらしさに「妹」を抱きしめたくなる沙羅だったが、
そんなことをすれば、きっとこずえの笑顔は崩れ、泣き出してしまうだろう。
彼女だけでなく自分も。
それでは明日の「デート」が悲しいものになってしまう。
だから沙羅も笑顔を作って笑いかけた。
「そっか、わかった。それじゃ早く部屋に帰って寝なね。寝不足じゃせっかくのデートも楽しめないからさ。鷹男にはあたしから連絡入れとくから」
「うん、ありがと沙羅ちゃん。それじゃね、おやすみ」
「うん、おやすみ」
互いに笑顔だった。ただ笑顔だった。

                                つづく

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お久しぶりでございます。
すでに忘れられてるかもしれませんが(笑)、
ちょっと話を思いついたので、軽い気持ちで書いてしまいました。
外伝なんてカッコつけて書いておりますが、ラクガキ程度のもので、
気楽に読んでやってもらえるとありがたいです。
本編で言えば七章の「お泊り会」みたいな雰囲気になると思います。
そんなわけでバトルなどの派手なシーンはなくて申し訳ないです(汗)。
それと本編の続きというのは、相変わらずまったく考えてないので、
万が一、期待してくださった方がいらっしゃったら本当にすいません(汗)。

軽いお話なんで、ボチボチ書いていくつもりですので、
よかったらちょっとだけおつきあいくださいね。

コメント(10)

足跡があったのでのぞいてみましたら新作が!

ありがとうございますぴかぴか(新しい)また定期的にのぞかせて頂きます!楽しみにしておりますっわーい(嬉しい顔)
>サユリンさん
こちらこそコメント、マジうれしいっす、ありがとうございます!
なかなかコメントつかないから、やっぱいまさらだったかなあ、内容つまんなかったかなあ、
と軽くへこんでたものですから(照)。

プレッシャーには弱いタイプですが(笑)、
書けるものしか書けないと開き直ってもいるので、がんばらさせていただきます(笑)。

>MAXさん
コメントありがとうございます!
これでまたモチベーション上がりました。
いやー、そのつもりはなかったんですが、足跡つけてみるもんですね(笑)。
宣伝がてらいろんな人のところに行ってみようかなあ(笑)。
続きができましたら、また読んでやってくださいね。
>涼さん
お久しぶりです、今回も感想ありがとうございます。
そうでしたか、気づいてくれてましたか、ありがとうございます。

アニメなんかでも、本編からはずれるサイドストーリー的な話が好きなもので(照)。
そういうのがキャラクターや作品の深みや広がりを作ってくれる気がするもので。

武さんについてもありがとうございます(笑)。
やつは楽しんで神経使ってるかと思われます(笑)。
>桂 真枝さん
お久しぶりです、またも感想ありがとうございます!
アプリにはまったく手を出しておらず、相変わらずこちらにお世話になっております(笑)。

圭子はずっと寝っぱなしで、
読んでくださる方にキャラクターが伝わりにくいだろうなと心配しております(苦笑い)。

今回はコミカルな感じも出せたらなー、と思ってもいるので、
そういうイメージが湧いてくださったのはうれしいです。
ぼくはそのあと、倒れた次元獣を全員でストンピングでボコボコにするシーンが浮かびました(笑)。

またしばらく、よろしくお願いしますね。
 キタキタキタキタキターーーーーーーーーーーッexclamation ×2
 いや〜、待っていましたよ、小説ジェットマン?わーい(嬉しい顔)忘れるものですか!
(^_^)v

 『お泊り会のような感じ』と謳いながらも、その後の戦いぶりが描かれていますし、嬉しいですね。

 一度だけ休日に襲撃があり、憤激した五人は次元獣をコテンパン〜>この辺りを読んだ時には、小田切長官がヒルドリルを倒した部分を回想させられましたが、二世たちもそんな感じだったのでしょうか?あせあせ

 こずえは圭子のことを分かっていながらも、鷹男のために一緒に付き合う・・・だんだん大人の女性っぽくなってきましたね。鷹男〜、そろそろ父親譲りの鈍感さを卒業しようよ〜(^m^)

 ところで大地の恋愛ストーリーも、機会があれば読みたいですね。せめて一生に4回はデートしましょうw
>masaさん
いつもありがとうございます。
憶えてくださってる方がたくさんいらっしゃるようで、安心しております(笑)。

それなりに戦況が進んでないとおかしいのはおかしいんで、
少し考えたところ、あんな感じになりました。
一番苦労しているのは武林、一番うれしそうなのは武林。そんな感じです(笑)。

ですねえ、たぶんあんな感じです(笑)。
私憤に任せてコテンパン(笑)。ある意味師弟がしっかりつながっている(笑)。

こずえはどうなんですかねえ、いろいろ困っています。
困ってはいるけど心の軸はぶれないだけに、返って痛々しいかも…

こずえの兄ちゃんの方も考えてないわけじゃないんですが、
発表できるかどうかは微妙です(苦笑い)。
母親の血も入っているから意外とかわいい顔をしてるし、スポーツも万能だし、
学校の女子にもひそかに人気はある、らしいんですが(笑)。

これからもよろしくお願いします。

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