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今、鳥人戦隊ジェットマンが熱いコミュの小説 鳥人戦隊ジェットマン? 第十一章 巣立ち 3 (完)

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「禅くんは本当になんでもできるんですね」
「器用貧乏にならずにすんで本当によかったわ。凱もなにかやるからには一流だったから、そこに似たのかもしれないわね」
上からガラス越しに、禅と大地の組手争いを見ていた香は、
心底感心したように言い、綾は苦笑交じりながらも、どこか自慢げに答えた。
禅は綾の秘蔵っ子だけに、やはりそういう気持ちもあるのだろう。
そのことに内心でくすりと笑いながら、
香は禅の自分に対する想いを綾に話そうかどうか、少し迷っていた。
綾がどうこうというのではなく、禅が自分の想いを、
母代わりの人とはいえ他の人に知られるのは不愉快かもしれないと思ったのだ。
ただ、凱の息子である以上、あまりそういうことにはこだわならいような気もするし、
たとえ話したとしても綾の反応は「そんなところまで父親に似たのね」と
笑うだけで終わる気もするのだが。
そんなことを考えながら、
組手争いに負けてまた内股できれいに投げられた大地を見おろしていた香と、そして綾に声がかけられた。
「あ、いたいた。香、長官」
その声に顔をあげた二人は、歩いてくる三人に、本当に心を開いた笑みを見せた。
「アコ、雷太さん、久しぶり。サツキさんも」
うれしそうに挨拶する香に、アコも元気に応じる。
彼女も香と同じく、あまり年を取った雰囲気はない。
とはいえ30もずいぶん過ぎた一児の母に「元気な」もないかもしれないが、
そういう表現がよく似合う若々しさが彼女にはある。
ナチュラルなワンピース姿だが、どこか華やかさがあるのは、やはり芸能人だからだろうか。
今のアコは、主に二時間ドラマや、
ちょっとしたバラエティ番組、情報番組の司会、そしてエッセイなども手がけ、
明るいながらも堅実な実力のある女優、タレントとして精力的な活動をしている。
「うん、久しぶり。香も元気そうでよかった。といってもあたしたち、基本的には病気知らずだけどね」
笑顔で言うアコで、それはバードニックウェーブの恩恵の一つだろう。
その横から、雷太も挨拶してくる。
「お久しぶりです、香さん」
「雷太さんも、元気そうでよかった。サツキさんも」
雷太もそれなりに年は取ったが、それでも同年代の男に比べれば若々しさが感じられる。
バードニックウェーブの効力かもしれないが、彼自身、菜園経営という、
頭だけでなく体も使う仕事に従事しているためでもあるだろう。
体型は太ったままだが、それも見方を変えれば若い頃から体型が変わっていないともいえる。
雷太の妻であり、大地とこずえの母でもあるサツキも、
すっかり「お母さん」らしくなって、香と綾に頭を下げていた。
二人とも、スーツとツーピース姿で、どこか父兄参観の観がいなめないが、
それが返って大石夫婦らしかった。
香とは互いに数ヶ月ぶりだが、綾とはそれぞれの子供の「スカウト」時に数日前に会っているので、
「久しぶり」という挨拶はない。

挨拶をすませると、アコはすぐにガラスで仕切られた道場を見下ろす。
そこでは禅がまた大地を投げ飛ばしていた。
「あれが凱の子供? へえ〜〜、凱よりカッコいいんじゃない?」
と、話に聞かされていた凱の子供、禅に興味津々の声を挙げ、
アコほど露骨ではないが、雷太も似たような表情に懐かしさをこめ、
自分の息子を投げ飛ばした少年を見下ろす。
「あれが…… 言われてみると凱の面影があるかな」
「えー? 凱よりずっと素直そうよ? 凱よりひねくれたヤツ探す方が大変だけど」
雷太の感慨に、禅から目を離さずアコが楽しげに憎まれ口を叩くが、
それでも「凱の子供」にあたたかな笑みを向けている。
香から連絡が来て聞かされた時は、驚きのあまり、
口をあんぐりと開けて冗談かと思ったくらいだったが、
その驚きが過ぎれば、喜び以外の感情は湧いてこなかった。
凱の血が続いているなど、喜び以外の何物ではないではないか。

今日この場へアコと雷太夫妻が来たのは、禅の見物のためだけではない。
この日を最後に、自分の息子や娘に会うのを制限されるためだ。
五人はこれから、スカイキャンプで寝泊りすることになる。
その期間は、それこそバイラムとの戦いが長期化すれば、何ヶ月、何年となり、
親たちが彼らに会えのは、あるいは年に一度か二度という頻度になるだろう。
今回の「初陣」にも、彼らは綾が断固として参加させなかった。
理由は彼女の「バイラムは父兄同伴で勝てるほど甘い相手?」という一言で済む。
少なくとも戦士であった雷太とアコにはそれだけで充分だった。
サツキも「バイラム戦役」を同時代人として経験してるだけに、夫ほどではないが、
それでもしっかりと理解できた。
本来であれば香も「初陣」に参加させるつもりはなかったのだが、
最初は鷹男を「スカウト」するために彼女を訪ねていた最中にワームが鷹男を襲い、
その連絡が香の目の前で入ってしまったため連れて行かざるをえず、
二度目は鷹男のことでこずえが傷つき、
それを慰めるの彼女の力を借りないわけにはいかなかったため、
仕方なく呼んだ「イレギュラー」の事態だったのだ。
だから香もこの日を最後に、しばらく鷹男と会えなくなる。
元戦士である香も、当然「父兄同伴」でバイラムに勝てるなどと甘いことは考えていなかったから、
この処置は受け容れたが、それでもやはり不安や寂しさは拭えない。
場合によっては、今日が子供に会える最後の日になるかもしれないのだ。
それはアコや雷太も同じで、それでも彼女たちは、実はそれほど深刻に不安がってはいなかった。


アコたちのガラス越しの眼下では、変わらず大地が、
どうすれば有利な組手を取れるか、頭をフル回転させて戦っていた。
右手の動き、左手の動き、足さばき、身体の開き方、目線、
それらすべてのタイミングや組み合わせで、
とにかく禅を「騙す」ことに全精力を注いでいる。
しかし禅はそれらすべての上をゆく。常に「後の先」を取られ、
気がつけば畳に叩きつけられていた。
だが大地の闘志はまったく衰えず、それどころかうれしそうに間髪入れずに立ち上がり、
また立ち向かおうとする。
「大ちゃんものすごく張り切ってるね、雷ちゃん」
「同年代で大地とまともに戦えるのは、鷹男くんや沙羅ちゃんくらいだったからね。新鮮で楽しいんだろう」
上から、これも楽しげに見ているアコが隣りにいる父親に言い、
雷太もほほえましそうな表情で応じる。
同年代以外でも、大地より強いといえば、竜とアコと香と雷太くらいで、
バードニックウェーブBを浴びた今では、当然彼らより強くなっている。
大地にとって自分より強い相手がいるのは不快だが、それでも退屈ではあったのだろう。
投げ飛ばされる悔しさは悔しさとして、いまはそれ以上の喜びに心身を満たしているようだ。
が、禅は、さらに突進してこようとする大地を軽く苦笑しながら制し、
沙羅の方へ顔を向けて手招きする。
どうやら「次はお前だ」とでも言っているらしい。しかし沙羅は、勢いよく手を振ってそれを拒む。
どうせやらなくてはいけないとわかってはいるが、
勝ち目がない組手をやるのが嫌で、駄々をこねているのだ。
「あんのバカ娘……!」
しかしそういう娘を許さない母親は、壁にかけてあるマイクを手にすると、道場内に向けて怒鳴った。
「コラァ沙羅! ゴチャゴチャ言ってないでさっさとやる!」
スピーカー越しに聞こえてくる怒鳴り声に、沙羅だけでなく全員が驚き、
少し左右を見てから、ようやく気づいたように見学席を見上げる。
そこに自分たちの父母を見て、大地は特に顕著な反応は見せなかったが、
沙羅は「げっ、おふくろ!」と口走りながら嫌そうな顔をし、
こずえは少しびっくりした後、鷹男を膝まくらしている自分を見られていることに、
元々赤かった顔をさらに赤くして、あたふたした。
鷹男は当然気絶したままで、禅は香に気がつくと、笑顔で軽く手を振り、
香は困ったような笑顔で小さく振り返す。
その間もアコは娘とガラス越しにやりあっており(沙羅の声はアコには聞こえないが)、
短いやり取りの末、ついに勝利を収めたらしい。
「わかったわよ、やればいいんでしょ、やれば!」という形に沙羅の口が動き、渋々立ち上がる。
それを見てアコも満足げな表情になると、
視界の端に見えていたこずえに顔を向け、少しからかうような顔になった。
「こずえちゃん、そのままそのまま、そのままでいいから。母親公認だから遠慮なくやっちゃってていいからね。ね? 香」
と、当の母親を見ると、香も少しからかうような笑顔で指でOKサインを作っており、
こずえをますます赤面させ、
それでも鷹男の頭を自分の太ももから降ろそうとしない「姪」に、アコと香は顔を見合わせて笑う。
が、彼女の父親は同じ笑いでも、ちょっと苦笑気味だった。
「父親は公認してないんだけど…」
「あら、雷ちゃんは鷹ちゃんじゃダメ? サツキさんはいいわよねえ」
「いやまあ他の男に渡すくらいなら、鷹男くんに渡すのが一番いいんだけどね」
雷太はもちろん鷹男のことが大好きだし、息子のようにすら思っているが、
娘のいる父親としては相手が誰であろうと複雑な気分にはなるものなので、
アコの問いに苦笑のまま答え、サツキは夫に微笑してからアコにうなずく。
そんな大石夫妻に、香はありがたい気持ちになるが、
同時に圭子のことを考え、少し微妙な気持ちになってしまった。
圭子がバイラムの犠牲になっていることも含め、あとで三人に話さなくてはならないだろうが、
ガラス越しに楽しそうに子供たちを見るアコたちに、
いま話すのはやめておいた方がいいと、香は口をつぐんだ。


大地が闘志を持て余しながら道場の端へ行き、入れ替わって沙羅が入る。
沙羅は道着は着ていないが、本人も禅も気にした様子はない。
その沙羅は、禅から5メートルほど離れた場所に立つと、軽く上に跳ね始めた。
トーン、トーン、と準備体操のように跳ねる姿は、それだけで彼女の身軽さを感じさせる。
「…………ッ!」
軽く跳ねていた沙羅が、なんの予備動作もなく、いきなり前へ跳んだ。
しかし直接禅へ向かうのではなく、その周りをバッタのように目にも止まらぬスピードで跳ねまわる。
スピードだけで言えば、沙羅、ブルースワローは五人の中で随一なのだ。
自分の周囲を沙羅が跳びまわる中で禅は、ただ立っていた。
泰然自若と言っていい風情で、隙だらけのように見える。
沙羅もそう見たのか、禅の背後へ着地した刹那、そのまま禅の背中めがけて弾丸のように跳ぶ。
が、禅はスッと体を横にずらして沙羅の攻撃をかわす。
それと同時に足を伸ばし、「妹」の足を引っかけた。
当然沙羅は、もんどりうって畳に顔面を叩きつけ、
そのまま壁まで転がると、激突してようやく止まる。
「あたたたたたたたッ!」
畳に擦って赤くなった顔面をこするように抑えつつ、沙羅はおしとやかとは程遠い悲鳴をあげる。
赤くなる程度で済んだのは、皮膚もバードニックウェーブで強化されていたからだ。
そうでなければ顔の皮がすべてむけていたかもしれない。

沙羅の惨状に、上から見ていた香も苦笑する。
「容赦ないわねえ、禅くん」
「さすが凱の息子ってとこかしら。雷ちゃんも文句言っちゃ駄目よ」
「わかってるよ」
アコも苦笑して評するが、娘を女の子扱いしない禅に含むところがあるわけではない。
訓練とはこうでないといけないというのを経験から知っているのがアコで、
自分の娘も同じように扱われるであろう雷太にも、それはわかっていた。
その禅が、憮然とした表情で自分を見る沙羅に向かってなにか言っている。
「察するに『動きが単調で直線的すぎる。それに攻撃の瞬間、踏み込みが強くなってわかりやすい。速いだけじゃ通用しない、もっと悟られないように動く必要がある』ってとこかしら」
その禅の様子を見ていたアコが、いやに的確に解説し、香が怪訝そうに聞き返した。
「そうなの?」
「あたしも竜に同じこと言われたから」
あっけらかんと笑うアコだったが、すぐにその笑いをおかしそうなものに変える。
「なに?」
「いや、あたしたちも最初の頃、竜にずいぶん鍛えられたけど、今度はあの凱の子があたしたちの子供を鍛えてるかと思うと、ちょっとおかしくて」
「言われてみればそうね」
「たしかに」
と、香や雷太も同じように笑い、そしてその笑いを収めると、穏やかな表情になる。
元ジェットマン「同窓生」三人の邪魔をしないように気を遣って、
少し離れた場所には、綾とサツキが並んで、同じく穏やかな表情でいる。
その眼下には、憮然としたままながら、すっかりやる気になって立ち上がり、
さっきと同じように軽く跳ねて禅に対している沙羅がいて、
その沙羅を不敵に、しかしどこかあたたかさのこもった目で見ながら対峙している禅がいて、
「さっさと替われ」という風情で、あぐらをかいて腕を組み、
貧乏ゆすりをしながら道場内の「兄妹」を見ている大地がいて、
相変わらず赤面してうつむきながら、
恥ずかしそうに自分の膝に頭を乗せている鷹男を見るこずえがいて、
新しい目標を得て、どこか満足そうに、こずえの膝の上で眠る鷹男がいる。
そしてすべてのジェットマンがそろっている今、
もしかしたら、鷹男と禅の「父親」たちも、すぐ近くまで降りてきているかもしれない。
そんな気がしたのか、香とアコと雷太は、少し上を見上げた。


彼ら「五人」は知っていた。自分たち一人一人は本当に弱かったことを。
そしてもう一つ知っていた。自分たちが五人そろった時は、何者にも負けなかったことを。
雛鳥から若鳥となり、自分たちの元から巣立った彼らも、きっとそれは同じだろう。
死せる親鳥にも、生きている親鳥にも、もう彼らを助けることはできない。
だがそのことを知る親鳥たちに不安はない。
彼らは彼らの戦いをする。
そしてその戦いが勝利で終わることを、親鳥たちは疑っていなかった。

五人から五人へ、受け継がれた戦いが始まる。



                                          おわり



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コメント(7)

>桂 真枝さん
こちらの方で書かせていただいて、本当にありがとうございます。
完結してしまいました。ぼくとしてはヘロヘロになりながらフルマラソンを走りきった気分です。

言われて思い出しました、最終章の推奨BGMが「こころはタマゴ」だったことを(笑)。
でもこちらが振らなくても脳内で流れてくれたというのは、すごくうれしいです。
あの最終回には及ばないと自覚はしてるんですけどね(照)。

トランザも、ある意味パワーアップしてますし、こっからどれだけ強くなるかが勝負でしょう。
がんばって戦い抜いてほしいと思っています。

本当にありがとうございました。
 ついにジェットマン?、完結ですね。本当に長い間お疲れ様でした。<m(__)m>
 竜と凱が対であったように、鷹男と禅も一対になっていますね。

 力自慢の大地もきっと、親譲りの「岩石落とし」や「つっぱり」を見せてくれることでしょう。
 こずえと沙羅もまた、同じ女性戦士として支えあい、敵を倒していくと思います。

 個人的にはテトラボーイがいつ出るかとも思っていましたので、宜しければ続編として?が読みたいところですあせあせ

 トランザの真の最期も知りたいですしね。
 あー、読み手サイドって我侭ですねぇあせあせ
>masaさん
長いこと、いつも感想ありがとうございました。
本当にモチベーションにつながって…

鷹男と禅は、やっぱり一対にしたいなというのはありまして。
父親たちとはずいぶん違うけど(笑)。

岩石落としは、ほんとはワームとの戦いでもやりたかったんですよねー(笑)。
沙羅とこずえの「姉妹」は、
姉が妹を守りつつ、どこか妹の方がしっかりしている感じが出せたらいいかなーと。

マシンは出そうとすると、とんでもなく話が広がってしまって収拾がつかなくなりそうだったので、
あえて全部抜いてしまいました、すいません。

トランザは実は書いてて楽しかったりして(笑)。
相当好き勝手できるもので(笑)。

もっと読みたいと言ってもらえるのはすごくうれしいです。
でも続き書きますと約束できないのは申し訳ないんですが…(汗)
>涼さん
最後まで感想、本当にありがとうございます。

そうでしたか、そんなに何度も読み直してくださいましたか。
しかも本編の方を見直した後に…ありがとうございます。
ちゃんとBGMも流れてくれたとすると、とてもうれしいです。

本当にいろいろ想像していただけてうれしいです。
ぼくにとっておもしろい作品っていうのは、
「まったく続きを想像できないほど圧倒的なもの」と
「続きをいくらでも想像できる伸び伸びしたもの」
という持論みたいなのがあるので、そんな風に想像をしてもらえると非常にありがたいです。
でもどれもおもしろいですねー(笑)。
鷹男のハイパーモードは、ほんと、もっと活かさないといけなかったかな、
と考えてたりします(照)。

もう一つのジェットマンと言ってもらえると、本当に書いた甲斐があるってもので、
とてもありがたいです。こちらこそ本当にありがとうございました。

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