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今、鳥人戦隊ジェットマンが熱いコミュの鳥人戦隊ジェットマン? 夢幻の島 第三章 5

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     5

しばらく走った後、禅は軽く息をついて止まった。
振り向いても竜たちはすでに視界にはなく、もう一度小さく息をつく。
それだけで呼吸は完全に元に戻り、禅は軽く腕を組みながら、砂浜をゆっくり歩き始めた。
竜にああは言ったが、禅に凱と合流する気はなかった。
ただ一人になるための方便だったにすぎない。
「………」
腕を組んで歩きながら、禅はやや難しい顔で軽く空を見上げる。
昨日からの自分は、まったく自分らしくなかった。
鷹男たち四人の前ではなんとか取りつくろって、あまり表面に出さないように気をつけていたが、
それでも彼らには幾分かは伝わってしまっただろう。
禅は四人の勘や感覚を馬鹿にしてはいなかった。
そんな自分を彼らに知られるのはいささかみっともないというのもあるが、
それよりリーダーである自分が不安定になると彼らもまた不安になってしまうところが問題であった。
彼ら個人個人も充分に強さを持ってはいるが、やはり年齢的にも経験的にも限界はある。
年齢の点からいえば禅も変わらないが、それでも彼は生い立ちがハードだっただけに、
経験や精神年齢は、そこらの大人の上を行っている。
そこにスカイフォースの訓練やバイラムとの実戦も加わって、
禅はいっぱしの成人以上の存在となっている。
あるいは数百年以上前に生まれていれば、十代で大軍を率い、
赫々たる武勲を樹てる若き天才将軍にすらなっていたかもしれない。
その彼が、自分でも憮然とするくらいに動揺している。本人も気づかなかったが、
禅にとって父親は、思った以上に重い存在だったようなのだ。
それだけに、禅は自分を立て直す時間が欲しかった。
ゆうべからかなりの時間はあったが、それでもいまだに立ち直りきれない自分に禅はイラ立ち、
やや強引に一人になる時間を作ったのである。
だがこの時間が過ぎたとて、完全に立ち直れる自信は、禅にもなかった。

と、次の瞬間、反射的に禅はよけた。
なにをよけたのかも自分ではわからなかったが、顔の脇を一瞬で通り抜けていったそれは、
弾丸のスピードを持っており、もし当たっていれば、
禅であれば死なないまでも、怪我くらいはしていたかもしれない。
バッと振り返ると同時に戦闘態勢に入った禅が見たものは、
大きな岩の上に膝を立てて腰掛け、掌で小石をもてあそんでいる凱だった。
皮肉な笑みを浮かべつつ、凱は手にしているビー玉程度の大きさの小石をピッと指で弾くと、
それは小さなうなりをあげて禅へ飛ぶ。
この小石が禅を襲った「弾丸」の正体だった。
それを今度は余裕をもってかわす禅。怒りに近い色を持つ視線は凱から離さない。
「やっぱりただのガキじゃねえな、お前ら」
手にした小石を放り、同じ笑みを浮かべたまま岩から降りる凱。
砂浜を禅の方へ近づいてくる歩調にも、どこか皮肉と挑戦的ななにかが見て取れる。
それは躊躇なく禅の間合いに入ってきたことからも明らかで、
彼がただ者ではないと確信しながらも、恐れる様子は何一つなかった。
「……」
その凱に、禅は無言だった。ただ強い意志をもってにらみつける。
試されたのはわかるが、そのことに腹を立てているわけではない。
禅も同じような状況で、まったく見知らぬ、しかも次元獣と素手で戦えるようなやつと一緒になれば、
頼もしさより警戒心の方が先に立つ。
そして相手の正体を確かめる役を、自らに課すだろう。
それはリーダーとしての勤めではあるが、
同時に彼の純粋な責任感と仲間の安全を守るための意思である。
それを凱も持っている。そのことを禅は強く感じたのだ。
だから彼は怒りは覚えてはいない。それでもこんな表情をしてしまうのは、
どんな顔をしていいかわからないからだった。
彼だけが、親に対してどのようなスタンスも持っていない。
立ち位置があやふやでは、さしもの禅も対処に困るのである。
だが凱は、そんな禅に気を使うつもりはないようである。
彼の事情がわかってないというのもあるが、
もともとジェットマンの中で「敵」に対して最も容赦がないのが凱なのだ。
ある意味で彼は、竜以上に実戦の中で生きてきている。甘さはなかった。
皮肉な笑みを消すと、代わりに凄みをにじませて、凱は尋ねる。
「てめえら何モンだ」
根底に圧力があり、表面に鋭さがある。凱の「尋問」は、
気の弱い人間だったらそれだけで腰を砕けさせてしまうだろう。
が、禅は気が弱くも、普通の人間でもなかった。
むしろ凱の空気に懐かしさを覚える人生を歩んできた少年である。
その空気に禅は安堵すら覚え、初めて腹を据えて凱に対することができた。
「バイラムですよ」
ぬけぬけと、という態度そのままである。禅は凱が最も疑っている答えを提示した。
その答えは凱の表情に、さらなる鋭さを与えた。
「……そうかよ。それじゃここでぶっ倒しても、文句は言わねえよなあ…」
凱の右拳が、すっとあがる。
と、空気にさらなる闘志と圧力が混ざり、伸びやかな南の島の一部をゆがめる。
「……」
それを受けた禅も心と体の重心を戦闘態勢に移行する。
見た目には動きすらなかったそれを凱は正確に感じ取り、相乗効果で互いの戦気は高まり…
次の刹那、二人同時に右拳を放つ。
と、これも同時に左手が相手の拳を受け流す。
「……」
二人ともしばらくその姿勢のままにらみ合い…すっと戦気を消すと両手を下ろした。
「…ガキ、保留だ」
それだけ言うと凱は、禅に背中を向けて歩き始めた。
保留とはなにについてか。
禅たちの正体や目的についてか。禅とのケンカについてか。
それとももっと違う何かか。
どちらにしても凱は、禅をここで痛めつけるつもりはなかったらしい。
確信が持てないうちに相手を傷つけることは凱には難しい。
自分より弱い相手であればなおさらである。
とはいえ禅は弱くはない。それを凱は、今の拳での会話で実感した。
ではなぜ戦いをやめたのか。それは彼が予想以上に強かったからである。
戦うとなれば本気で、しかも自分も相応のダメージを覚悟しなければならない。
それほどの力だった。それゆえ引いた。
今ここで、相手の正体もはっきりしないうちに、雌雄を決して戦うわけにはいかない。
凱は喧嘩っぱやいが、無謀とは無縁の男だった。
そして理由はもう一つ、受けた禅の拳の質がそれだった。
禅の拳に邪気はなく、そして自分のような無手勝流ではなく、
正統な素性を持つ拳だと感じた。鍛えに鍛え、錬成に錬成を重ねた拳。
まっすぐに修行をしてこなければ得られない力と質。竜の拳によく似ていた。
まさか竜直伝のそれだとまではわからなかったが、
凱にとって、禅たちへの警戒を保留するには充分な理由であった。

禅の方も似たような感覚をおぼえた。が、それは凱が感じたそれと、まったく逆であった。
「昔のおれの拳に似ている…」
不良少年だった時代。自己流で身につけた戦いの中で培ったパンチ。
それと同じ質を凱の拳は持っていた。
だがそれは似て非なるものだとも禅は感じていた。
凱の拳には荒々しい肉食獣のような暴力性が込められていたが、決して野卑ではなかった。
それどころか、まるで群れることを嫌う狼のような誇り高さがあった。
あの頃の自分の拳に、それはない。
ひねくれた絶望と、卑しさがこびりついていただけである。
それを感じた禅は、突発的に湧いた感情に、凱の背中へ叫んだ。
「ガキじゃない。羽生禅という名前がある」
「そうかよ、ガキ」
だが軽く振り向いた凱は、足を止めることもなく鼻で笑い、
そのまま森の中へ消えていった。
「………」
その凱を見送りながら、禅はぐっと奥歯を噛みしめ、強く拳を握った。
そしてたった今自分の中に湧いた感情が、敗北感から来る悔しさだと知り、
さらに強く、爪が食い込むほど拳を握りしめた。 


作品一覧
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=65631933&comm_id=2123162


もう失踪したと思われてるんじゃないかと…(苦笑い)
いや、ちょこちょこ書いてはいるんですよ。
でも推敲ってのが苦手な性質でして…(苦笑い)
それでついつい先に伸びてしまいました。
とりあえず忘れてないよということで、久しぶりに投稿させてもらいますね(照)。

コメント(4)

>>[1]
どうもありがとうございます(照)。
一応ラストシーンまで思いついてはいるので
最後まで行こうと思いますが、手が遅い上に内容も寄り道ばかりするもので…(汗)

この親子は書いてて難しいところはあるんですが、おもしろくもあります。

今年もよろしくお願いします。
>>[3]
あけましておめでとうございます。
そう言っていただけるととてもありがたいです(照)。
こちらこそ、今年もよろしくお願いします。

映像浮かんでくれましたか、よかったです。
とにかく本家ジェットマン、特に凱は、イメージ壊してないかいつも心配なもので(照)。
安心しました、ありがとうございます。

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