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今、鳥人戦隊ジェットマンが熱いコミュの鳥人戦隊ジェットマン? 夢幻の島 第三章 2

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「よし、行くか」
「は、はい」
竜に笑顔で言われて、鷹男は少し緊張しながら返事をした。彼ら二人は海へ魚を獲りにゆく係である。
ちゃんとした釣り竿などはないが、竜がしなる枝を探し、それを竿代わりにして釣ることにした。
餌は貝などを探して現地調達である。
「いざとなれば潜って手づかみでもいいしな」
砂浜から岩場へ移り、釣り場として絶好の場所を探す竜の言うことは、冗談ではなく本気である。
バードニックウエーブを浴びた身には、その程度のことは朝飯前なのだ。ただ海から上がった後、
シャワーを浴びることができないのが文明人としてキツいという話である。潮
でベタついた体のまま過ごすのは、あまりうれしくはない。
そんな竜の後ろを、鷹男は黙ったままついてゆく。機嫌が悪いわけではもちろんない。
ただ竜の背中を見ながら歩いているだけで、様々な想いで心が満たされ、くすぐったさと共にざわつくのである。
「父さん……の、背中だなあ…」
鷹男が見る竜の背中は、彼の記憶にある物とほとんど同一だった。
目の前にいる竜が現役のジェットマンだとすれば、年齢は二十六のはずである。
鷹男が生まれたのはその四年後で、物心ついた頃の竜はすでに三十代も半ばに近い。
またその後、鷹男が十三歳の時に亡くなる竜は四十歳を過ぎていた。
が、それでも竜の背中は同じだった。
それは年齢に関係なく培ってきた、竜の本質を表すものであり、
その本質を正確に感じ取ることができるのは、おそらく息子の鷹男だけなのだろう。
そのような自覚は鷹男にはなかったが、
それでも久しぶりに見る――というより感じる――父の背中は、彼の頬を上気させた。
「この父さん、やっぱりもしかしたら本物なのかな…」
ややぼうっとしたまま歩く鷹男は、いささか混乱した語をつぶやく。
目の前の若い竜が本物であるか否か、重要な問題ではあるが、
真偽の明確な線は鷹男の中でも引けなかった。

と、歩みは止めず、突然竜が振り向く。
「そういえば」
「ひゃ、ひゃい!」
いきなりだったので鷹男は突き飛ばされたように我に返り、その拍子に返事が裏返ってしまった。
そんな鷹男に、竜は笑いながら質す。
「なんだ、どうしたんだ。なにか考えごとでもしてたのか?」
「い、いえ… ところでその、なんですか…?」
赤面しながら鷹男は応じ、今度は父の顔を見る。
実はいろいろあった前日から今朝まで、こうして竜と二人きりになる機会もなかったせいか、
鷹男は父の顔を正面からちゃんと見ていなかった。
あらためて視界に収めた父の顔は、自分の記憶にあるより若く、しかしやはり同じだった。
「いや、たいしたことじゃないんだが、君ら、昨日自己紹介してくれた時、名前しか言わなかっただろう? なにか理由でもあるのかなと思ってさ」
「あ、いや、そんな大した理由があるわけじゃ…」
竜に尋ねられて鷹男は少し曖昧に笑った。
夕べ、互いに自己紹介をした時、旧ジェットマンの方はフルネームを教えたのだが、
鷹男たちは名前しか名乗らなかったのだ。
禅から名字は名乗らないよう、ひそかに指示されていたためである。
それはそうで、禅以外全員が彼らと同じ名字なのだ。怪しまれる恐れは充分ある。
とはいえとっさに偽名を考えられるような回転の速い頭を持っているのは禅と沙羅くらいのものである。
他の三人も馬鹿ではないが、どちらかといえば臨機応変さには欠けるところがある。
それだけに禅はそのような指示を四人に与えたのだが、
その後、現状の確認と方針の相談に集中しすぎたため、このことについては、つい失念してしまっていた。
それは禅だけでなく他の四人も同じで、鷹男も今の今まで忘れていた。
それだけに返事がまた曖昧になってしまったのだ。
が、そんな鷹男を竜はあまり気にしていない風である。
「そうか。それじゃよかったらフルネームも教えてもらっていいか? なんてことはないが、まあ聞いておきたいってことで」
軽く重ねて尋ねる竜に、鷹男はやや困惑する。
ここで名乗るのを拒めば、それこそいぶかしがられる可能性が高く、
理においても情においても、竜が自分に対してそういう感情を持つのはうれしくない。
が、やや焦りを覚えていたせいか、ごく無難な偽名しか思いつかなかった。
「た、田中です。田中鷹男」
「そうか、田中くんか。そっちで呼んだ方がいいかな」
「い、いえ、名前の方で平気です。よ、呼び捨てでも構いません」
「そうか? じゃあおれも名前でいいよ。よろしくな、鷹男」
竜は自然に彼の名を呼び、久しぶりに、しかも急に父に名を呼ばれた鷹男は心臓を跳ねさせた。
「よ、よろしくお願いします。竜…さん」
やや言い慣れない父の名を口にした、鷹男は心の中で「よろしく、父さん」とひそかに言い直した。
心身が自然と満たされた。



作品一覧
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=65631933&comm_id=2123162

コメント(2)

>>[1]
お返事遅くなりました、すいません(汗)。
いつも感想ありがとうございます。

知られると子供の方もいろいろ困るというか困惑するというか、そういう感じですから(笑)。
どういう展開になるか、勝手にふくらむところがあるので自分でもわからないんですが(照)、
ゴールは決まっているので、そこを目指して進んでいきます。
かなり先になるので全然ゴールは見えないんですが…(汗)

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