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今、鳥人戦隊ジェットマンが熱いコミュの鳥人戦隊ジェットマン? 夢幻の島 第一章 3

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「ん……」
こずえは目を覚ました。
最初に感じたのは陽光と潮の香り、そして波の音だった。
外。昼間。いや太陽の位置からすると午後遅く、夕方まであと少しというところだろうか。
ゆっくりと体を起こす。まだ少しぼうっとしているが、
いま自分のいる場所が砂浜だということはすぐにわかった。
見ると他の四人も砂の上に意識を失って倒れている。
「ここが仮想世界…?」
こずえがぼうっとつぶやくのも無理はない。
見た目だけでなく体中の感覚すべてが、今いる世界を現実そのものと伝えてくるのだ。
あらかじめ聞かされていなかったら仮想世界だと言われても信じられないかもしれない。
頬を撫で、そこにいつも通りの自分の肌だけでなく、
さっきまで倒れていた時に着いた砂のざらついた感触も感じて、ますますその思いを強くする。
と、その砂に、こずえは我に返った。
「え? あ、やだ……」
見ると顔だけでなく、服にまで砂が着いている。
砂浜に寝ていたのだから当然だが、これはあまりうれしくない。
ポニーテールにしていたのが幸いしたか、
長い髪にはほとんど付いておらずそれはラッキーだったが、
今日は特に「日常に即した状況で」というコンセプトなので、
訓練服ではなく私服を着ているのだ。
こずえは急いで立ち上がると、これも急いで服をはたいて砂を落としてゆく。
日常に即すといってもさすがにスカートではと思い、
普段より活動的なパンツルックである。
そもそも仮想世界であって私服とはいっても本物ではないのだから
汚れたままでもいいではないか、とは考えられないこずえであった。
「よかった、鷹男くんが先に起きなくて…」
上半身をはたき、ホワイトデニムに包まれた小さめの尻もはたきながら、
そんな風にも安堵する。
鷹男に砂だらけの自分を見られるなど、恥ずかしくてたまらない。


しばらく懸命に砂をはたき、全身をくまなくチェックして、
なんとか見られるようになったと安心すると、
こずえはようやく他の四人を起こそうとする。
これが現実の状況なら、さすがに外見も気にせず、まず彼らを起こすだろうが、
訓練であるだけについ私情を優先させてしまったのだ。
そして起こす順番にも私情が差し挟まれて鷹男に駆け寄るが、
そこで自分以外にもう一人女の子がいたことを思い出した。
「あ、沙羅ちゃんが先だ」
自分と違ってこの中に好きな人がいるわけではないが、
おしゃれについては自分以上にこだわりのある沙羅なだけに、
砂だらけの姿を他の人たちに見られるのはやはり嫌だろう。
「沙羅ちゃん、沙羅ちゃん。起きて」
方向転換をして「姉」に駆け寄ると、砂に膝をついて彼女の肩をやさしく揺する。
と、すぐに反応があった。
「ん……」
自分と同じく、もともと眠りは浅かったのだろう。
わずかに顔をしかめただけで、沙羅は薄っすらと目を開けた。
「ん…… こずえ…」
と、「妹」の顔を見上げ、名をつぶやきながら体を起こし、
ややぼーっとしたまま周囲を見渡す。
「ここ……バーチャル…?」
「うん、そうみたい。でもそれより沙羅ちゃん。ほら、砂落とさないと」
沙羅に答えると、こずえは彼女の腕をつかんで立たせた。
「え…? あ、なによこれ。うっわー、ちょっと待ってよぉ〜」
一瞬なにを言われているかわからなかった沙羅だが、
砂だらけの自分の体を見て一気に目を覚ます。
彼女もパンツルックではあるが、だからといって汚れていいわけではない。
思い切り顔をしかめて誰にとはなく文句を言う。
「ほら、手伝ってあげるから早く。みんな起きちゃうよ」
「え? あ、うん、ありがと」
こずえはそんな「姉」を急かしながらしゃがみ、
沙羅の下半身の砂をはたいて落としはじめ、
沙羅自身は「妹」に砂がかからないよう注意しながら、上半身をはたきはじめた。


そんなこんなで五人全員が目を覚ましたのは、それから三分後だった。
「はぁ〜、なんかすげえなあ、ほんと。これが全部ウソモンだって信じらんねえわぁ」
片手をかざして陽をさえぎりつつ、左から右へ海を眺めながら、大地は感嘆した。
砂の落とし方は女子二人と比べるといい加減である。
「まったくだなあ。夕方近くみたいけど陽射しも普通に痛いわ。夏だな、こりゃ」
大地の隣りで同じく海を見ていた鷹男も感心し、目を細めて上を見上げる。
そこにあるのは直視を避けないといけないほど強烈な陽射しを持つ、
本物そっくりの太陽であった。
鷹男は大地よりはしっかりと砂を落としているが、服をはたいている時、
こずえが手伝いたそうな顔をしていたのには気づいていない。
「南の島って設定なのかな。実在する島なのかわかんないけど」
そんな鷹男にとりあえずはなにも言わず、沙羅は背後にも目をやった。
砂浜の後ろはすぐに森になっていて、樹木も南国の物のように見える。
まだ少し見回しただけなので島かどうかはわからないが、なんとなくそんな気がするのだ。
「なんか映画とかドラマに出てきそうな場所だよね。あと推理小説とか」
沙羅の隣りでめずらしそうに海や森を見ていたこずえも
少し浮き立つ様子でそんなことを言ってきて、それを聞いた鷹男が補足する。
「クローズド・サークルってやつだね。吹雪の山荘とか、外界との唯一のつながりであるつり橋が落ちた山小屋とか」
「なーるほど、でっけえ密室での連続殺人事件かあ。よし、探偵役はおれね。お前犯人な、鷹男」
「黙れ、うっかり巡査役。……ところで禅さん、どうかしたんですか?」
やいのやいのと初めての仮想現実世界を楽しんでいた四人だったが、
一人だけ例外がいた。
禅はずっと黙りこくって、なにやら考え込んでいたのだ。
「いや……」
「……?」
その表情が妙に深刻だったので、他の四人もおしゃべりをやめて、彼を見る。


と、禅が突然ブレスレットの通信機のスイッチを入れたのを見て鷹男は驚いた。
「禅さん、いきなり司令に連絡ですか!?」
ブレスレットは改良が加えられ、今は鳥型の方に通信機も組み込まれており、
右手にだけ着けるようになっている。
その通信機を使って現実世界にいる綾に連絡を取ろうというのだが、
これは訓練であり、本来はよほどのことがない限り外部との連絡は絶ち、
すべて自力で乗り越えることになっていた。
極端に言えばリタイア以外では連絡するなということであるのだが、
言うまでもなく訓練に音を上げるなど恥であり、
また当然綾たちの方でも外からこちらがどういう状況かは見ているので、
本当に危険な兆候があれば訓練中止の指示を与えてくれるはずである。
そのような処置も稀なことではあるが、
とにかく通信機での外部との連絡など、まずありえないことなのだ。
それを禅がおこなおうとしているので、鷹男は驚いたのである。
ちなみに鷹男たちも今は綾のことを「おばさん」ではなく「司令」と呼ぶようになっている。
公私の混同を戒めているのだ。


が、次の禅の言葉に、鷹男たちは別の意味で驚いた。
「……駄目だ、つながらない」
「え?」
「お前たちもやってみてくれ」
「は、はい」
そう言われて他の四人もあわてて外部と連絡を取ろうとしたが、結果は同じだった。
「どういうことでしょう。これも訓練の一環なんでしょうか…?」
少し不安そうにこずえが禅に尋ねる。
「その可能性もなくもない。だけどこれは言ってみれば命綱や非常ベルみたいなものだから、こうして完全につながらなくなるというのは考えにくいな。それにそれだけじゃないんだ」
「なにが?」
こずえの問いに応じてから、禅は考え込むような口調で付け加え、
沙羅がそれを聞きとがめる。
「おれはこの訓練、これまで何回かやったが、こんな風に意識を失った状態から始まるということはなかった。そういうプログラムを組んだのかもしれないけど、しかしあまり意味があるようには思えない。結局目を覚ますまでは訓練を開始できないんだしね。それになんか今日はいつもと感覚も違うんだ。どこがどう違うかきちんと説明はできない。ただ違和感があるというか、空気に微妙に異分子が混ざってるというか、そういう感覚だ。それから錯覚かもしれないが、仮想空間へ入る時、なにか外部から異物が突入してきたような、そんな感覚もあった気がする。おれの錯覚でないとすれば、あれもやはり今までにないことだ」
内容は曖昧ながら、禅の真剣な口調に、他の四人は返って事態を深刻に感じた。
経験から来る勘というものは馬鹿にできない。まして禅のそれである。
深刻に受け止めざるを得なかった。


「もしかしてどこかシステムが故障したとか?」
沙羅が少し眉を寄せながら尋ねる。
「かもしれない。だけどそのあたりのチェックはしっかりとやっているはずだし、精神へ直接働きかけるシステムの関係上、セーフティはいくつもかけられている。なにかトラブルがあれば、そのどれかがまず確実に作動するはずだ。それもあまり考えられないな」
その禅の説明に、沙羅はさらに眉を寄せる。
「じゃあ誰かが故意に…?」
「その可能性もある」
さっきの「外部からの異物」という彼の言葉に不穏な物を感じた沙羅のつぶやきを、
長兄も否定しない。
そして全員の頭の中に浮かんだ名前を、こずえが口にする。
「バイラム…?」
「誰かの介入だとすれば、それは充分ありえるだろうな」
禅は鼻から深く息を吐き出しつつ目をつぶり、眉間に皺を寄せて腕を組む。
「でもさ、まだそうと決まったわけじゃないだろ? ほんのちょっといつもと違うってだけで」
大地の言ってくることはただの楽観ではなく、現実的な視点でもある。
だから禅も否定はしなかった。
「まあな。ここまで含めての訓練って可能性も当然ある」
「なんかさっきから可能性可能性って、いい加減で曖昧ねえ」
「仕方ないさ、とにかく情報が少なすぎるんだ。そんなわけで訓練にしろなんにしろ、情報収集から始めないとな。まずは周りを調べて……どうした、鷹男?」
沙羅の文句を肩をすくめていなすと、禅はとりあえずの目的を指示した。
それに三人はうなずく。
が、一人は応じなかった。といって禅の意見に反対したわけではない。
他のことに気を取られていたのだ。
森の方に顔を向け、なにかを見ようとしているのか目を細めている。
「どうした?」
その鷹男の様子にただならないものを感じた禅は心を引き締め、
他の三人も同様にする。
が、鷹男はそれには答えず、いきなり森に向かって駆け始めた。
「鷹男!?」
鷹男に遅れること一瞬、禅たちも彼を追って走り始める。


                                     つづく


作品一覧
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=65631933&comm_id=2123162

コメント(2)

>純さん
いつも感想ありがとうございます。

動き出させてみました(笑)。
全員がそれぞれ、いろいろ個性を出せればなと思っています。
がーんとこのままガツガツいってみますね。

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