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今、鳥人戦隊ジェットマンが熱いコミュの小説 鳥人戦隊ジェットマン? 第八章 sleeping beauty & crying girl 3

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沙羅はこずえがスカイキャンプ内で行きそうな場所を一通り探し、
こずえがスカイキャンプから出たかどうかも確認したが、そういうことはなかった。
「とすると、やっぱりあそこか……」
スカイキャンプへは子供の頃から竜おじさんに連れられて何度かしか来たことがなく、
知っている場所も限られている。
だがそんな中で、以前おもしろい場所を見つけたのだ。まずそこだろう。
沙羅は非常口から外壁に沿って作られているむき出しの非常階段へ出る。
そこは眼下は高所恐怖症ならば動けなくなるほどに高い。
が、なんと沙羅は階段の手すりに足を乗せると、そのまま壁の凹凸に指をかけて登りはじめた。
なめらかに見えるスカイキャンプの壁面だが、近くで見れば当然、それなりに凹凸はある。
しかしそれに指をかけて登るなど、一流のフリークライマーか、
沙羅たち「ジェットマンの子供」以外には不可能である。
そしてある程度登って人が一人が歩けるほどの「道」に立ってしばらく進み、
また凹凸に指をかけて登る。
と、ようやく目的地に着き、顔を出した。
「……やっぱりここか」
そこは設計上の死角なのか、六畳ほどの広さと2メートル弱の高さのある「洞穴」で、
子供の頃彼らが見つけた「秘密基地」だった。
こんな場所まで登ってこられる「大人」はまずおらず、
彼らにとっては楽園以外の何物でもない。
こずえはそこで膝に顔をうずめて泣いていた。
「…………」
追ってはきたが、すぐになにか話しかけられる状態ではない。
黙って「洞穴」に入ると、沙羅も床に座り、壁にもたれると、
片足を立て、片足を伸ばす。
こずえの方へ目を向けるのもなんなので、天井を見上げてこずえのすすり泣きを聞いていた。

時間がどのくらい経ったのか。
洞穴ゆえに風もさえぎられて意外とあたたかい「室内」で、
環境的に不快さはなかったが、沙羅の気持ちは快適にはほど遠い。
そばで泣いているこずえのことが第一だが、
さっきの鷹男への態度を少し反省してもいたのだ。
「あそこまでやることはなかったかなあ…」
鷹男にも罪があるわけではない。
こずえの気持ちに気づかないのは罪といえば罪だが、
それだってはっきりと気持ちを伝えていないこずえの方にも非はあるだろう。
「とはいえ腹は立つけど」
というのが沙羅のまとめである。
と、すすり泣きが小さくなったこずえが涙声で「姉」を呼んだ。
「……沙羅ちゃん」
「……ん?」
「死んじゃえなんて言って、鷹男くんに嫌われちゃったかなあ…」
「…………」
沙羅としては軽く壁に後頭部を打ち当てて、
こずえにわからないようにため息をつくしかない。
「ほんとにこの子は一途というか意地らしいというか……」
あれだけひどい目に遭わされておいて、まだこれだけ鷹男のことが好きなのだ。
やっぱり殴っとくべきだった、とあらためて思いなおし、沙羅はやさしく答える。
「大丈夫よ、あいつ、どんなことがあったってこずえのこと嫌いになんてならないって」
「……でも好きになってはくれないよね……」
「……いっそこずえの方が愛想つかしちゃったら?」
とは言えない沙羅である。
自身はまだちゃんと恋をしたこともないが、
こずえを見ていればそんな簡単なものではないことはよくわかる。
そして経験が足りないだけに、あまりいいかげんなことも言えない。
普段であれば冗談にまぎれて相談にも乗るが、
芯の深いところにあるものに触れるようなことは言えない。
そのことが沙羅には負い目にもなっていて、
あまり鷹男に強くは出られないところがあるのだ。
端から見ていると結構きつく見えるが。
「…………」
顔をかかえた膝にうずめたままだが、こずえのすすり泣きは止まり、沈黙は深くなった。

そしてまた時間は過ぎ、
沙羅は次にどうしようかと考えつつもなにもできず、なにも言えずにいて、
動くことすら気まずい空気が流れる「洞穴」に突然変化が起こった。
「洞穴」へ顔を出しきた人物がいたのだ。
「あ、やっぱりここだった」
しかしそれは「ジェットマンの子供たち」の誰かではなく、
女性で「ジェットマン本人」だった。
「香おばさん!?」
「え?」
と、驚く沙羅の声に、こずえも泣きはらした顔を上げる。
そこには「よいしょ」っと「洞穴」に登って入ってくる笑顔の香がいた。
「おばさん、どうしてここに…」
「ちょっと長官に呼ばれてね。座っていい?」
と、断って床に座る香を綾が呼んだのは事実である。
綾は鷹男がBBを浴びるのに付き添わなければならないし、
かといってこずえを放っておくわけにもいかない。
沙羅だけでなんとかできればいいが、問題が微妙すぎるために、
いくら年齢のわりにしっかりしている彼女でも手に余ることかもしれない。
かといってスカイフォースの中には、
こんなデリケートな問題に踏み込めるほどこずえたちと仲の良い隊員はまだいない。
そのようなわけで綾は香に助けを求め、香もそれを快く引き受けたのだ。
なんといってもこずえや沙羅は、彼女にとって「姪」といっていい存在なのだから。

「でもおばさん、よくここがわかったね」
「そりゃあわたしも昔はよく来たもの。まさか親子二代で利用してるとは思わなかったけど、もし沙羅ちゃんたち知ってるなら、こういう時はここかなって」
「あ……」
つまり本家のジェットマンたちも、ちょくちょくここを使っていたのだ。
この秘密の隠れ家の使用権は、
バードニックウェーブを浴びた者だけに与えられる特権なのかもしれない。

「それはそうと……ごめんね、こずえちゃん。鷹男が迷惑かけたみたいで…」
「いえそんな……わたしが勝手に……鷹男くん、全然悪くないです…」
香に自分の鷹男への気持ちは薄々感じ取られているだろうと察していたこずえは、
そのことには驚かず、泣いた跡も痛々しい顔をうつむけた。
「…………」
それを見た香は、壁に背をあずけて少し間をおくと、少し笑みを見せておもむろに口を開いた。
「わたしとおんなじかな」
「え……」
「わたしと竜おじさんが出会った頃ね、竜おじさんは恋人を亡くしたばかりだったの」
「え?」
事実とは少し違うが、それを話しても意味はないことで、
香は事情を四捨五入した昔話を彼女たちにし始め、
思わぬことを聞かされたこずえは顔をあげ、沙羅も意外そうな表情で香を見た。
「わたしはそのことを知らなくて竜おじさんのことを好きになって… でも竜おじさんはその人のことがずっと好きで、わたしがどんなに好きだって気持ちを伝えても受け容れてはくれなかったわ」
「でもそれじゃどうして…」
沙羅の当然の疑問には答えず、香は話を続ける。
「それだけじゃないのよ、沙羅ちゃん。そうやって竜おじさんに相手にされなくて落ち込んでたわたしのことを好きになってくれた人がいて、わたしはその人とつきあうことにしてね…」
充分ありえる話ではあるが、
「伯母」に近い間柄の香の思いもかけない恋愛話に大きく驚き、
また女の子らしく強く興味を惹かれた。
「へえ〜〜……ね、その人ってどんな人だったの?」
沙羅はもちろん、こずえも自分の悩みは悩みとして、
竜と香と、もう一人の誰かの恋愛話には津々の興味が湧き、目をその色に輝かせている。
それでもあまり細かく訊くのは申し訳ないとこずえなどは感じたが、
沙羅はその興味に素直に尋ねた。
それに香は微笑とともに答える。
「とても純粋な人だったわ。誰よりもわたしを愛してくれた。本当に、心から誰よりもね。わたしが竜おじさんのことを愛してると知っていても、その気持ちのなにもかもでわたしを愛してくれた」

「でも、それがどうして竜おじさんと…? それにその人とはどうして…?」
当然の疑問をこずえは口にして、香はそれに少し懐かしそうに応じた。
「まあそのあたりはいろいろあってね。竜おじさんの恋人が亡くなっちゃったり、わたしがそれを慰めていたりしてね。その人と竜おじさんが親友だったっていうのもあって… それにその人、ちょっと結婚とかには向いてないタイプだったかもしれないしね…」
物事がかなり前後しているし、実情とずいぶん違うところもあるかもしれないが、
あまりくわしく話しても彼女たちにとっては意味のないことだろう。
それにくわしく話すとすると、自分の元恋人が禅の父親ということも知られてしまう。
いま五人の様子を見ていると、禅も含めてそのことは全員知らない様子で、
それは綾が考えがあって話さずにいるのだろうから、自分が勝手に話すのは慎んだほうがいい。
それに男子に比べて精神年齢が高い女子である彼女たちならまだしも、
自分の息子が父母のなかなかハードな恋愛話にショックを受ける可能性がかなり高い。
「あの調子だもんね…」
と圭子のことで取り乱す、未熟な息子の姿を思い出して苦笑する香だった。
「あの頃のことを思い出すと、わからない未来のことを考えるのがいかに意味のないことかってよくわかるわ。もちろん未来や将来のことを考えないわけにはいかないけど、考えたとおりにはならないし、考えたのと違う道筋でも、たどり着こうとしていた場所にたどり着いたりすることもある。竜おじさんをはじめて好きになったとき、まさかこんな道筋を通っておじさんにたどり着くなんて、全然思ってなかった。一度は本当にあきらめたしね」
「こんな道筋」を思い出して香は小さく笑う。
本当にいろいろあった。いまでは笑えるけど、あの頃は死ぬほど苦しかった。
そしていま、その苦しさを自分たちの子供たちが味わっている。
鷹男の圭子への想い。圭子の鷹男への想い。そしてこずえの鷹男への想い。
その想いがどこへたどり着くか、当然香にもわからない。だけど言えることはたしかにあった。
「こずえちゃん。鷹男はいまは圭子ちゃんのことが好きだわ。でも、これから先どうなるかはわからない。おばさん、それだけははっきり言えるわ。経験上ね。それがこずえちゃんの望む変化かどうかはわからないけど…」
「…………」
言われてこずえはうつむきそうになるが、香の言いたいことをなんとなく察して、ぐっと顔を上げる。
それを見て、香も小さくほほ笑む。
「鷹男のこと、あきらめた方がいいとは言えない。あきらめずにがんばれとも言えない。そんなに簡単で単純なことじゃないからね。でも……こずえちゃんに幸せになってほしい。これは本当に思っている。それと……」
アドバイスになっているかどうかわからないが、香は自分の思っていることをこずえに伝え、
そして最後に最も伝えたかったことを告げた。
「それと、鷹男のこと好きになってくれてありがとう。こずえちゃんみたいな子があの子を好きになってくれて、わたしはすごくうれしいから」
「香おばさん……」
香から母としての真情を伝えられ、目頭が熱くなったこずえは、
くっと喉を鳴らすと、うつむいた。


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コメント(4)

 コメントが遅れてすみません。<m(__)m>
 いやぁ、こうきましたか。香の半生を知っているものの1人としては、まさに「ギリギリの経験トーク」!

 これからのストーリーをドラクエ風に例えるとすれば、?の「そして伝説へ・・・」でしょうかあせあせ
 大地の対応も大人だなぁ、と感心です。わーい(嬉しい顔)
>masaさん
いやもう数日後でも数十年後でも
コメントいただけるだけで充分うれしいですので(笑)。
いつもありがとうございます。

親父やお袋たちの恋愛話は結構ハードでしたからねえ。
少し違うのは早坂さん家の娘さんがお母さんより絡んでくることと、
ブラックさんが恋愛にイマイチ乗りが悪いことでしょうか(苦笑い)。
禅も絡ませようかなー、と思いつつ、
人生のハードさが他の四人と段違いなんで、
こいつにとっては弟妹が子供に見えてしょうがないんですよねえ(苦笑い)。
大地はガキ過ぎて返って大人の対応になってるのかもしれないけど、
意外と父ちゃんと同じで、わかってるけど入っていかないって感じかもしれない。
>サユリンさん
いつも感想ありがとうございます!
考えてみると女子人気では香よりアコの方が人気あったのかなあ。
香がいないとジェットマンが成り立たなかったっていうのはありますが(笑)。

こずえもあんまり男運がなさそうだなーという気はしないでもないというか(苦笑い)。
禅に惚れたら惚れたで相手にされそうにないし…(泣)
というわけで、とりあえずがんばれということで(笑)。

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