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今、鳥人戦隊ジェットマンが熱いコミュの小説 鳥人戦隊ジェットマン? 第八章 sleeping beauty & crying girl 2

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「大丈夫じゃよ、わめくな、みっともない」
炎に炙られて真っ赤になった鉄板に水をぶっかけるような口調で桃井は鷹男に答えてやった。
彼の他にも幾人も白衣を着た医師がおり、検査自体は彼らがやっていて、
桃井はそれらを統括している立場にあるようである。
それだけに指示をすべてすませてしまっている今は多少彼の相手をしてやれるようだ。
その桃井に鷹男は食ってかかる。詰め寄って、文字通り食いつかんばかりの距離だ。
「本当ですか!」
「本当じゃ。じゃからちょっと離れろ」
鷹男の心情はわかるので無理はないと考えつつも、少し落ち着かせようと、
わざと邪険に手で彼の顔を押し、
その顔をそのままアイアンクローのように握り、そのまま説明する。
「症状としてはただ寝てるだけじゃ。それ以外でもそれ以上でもない。ただし睡眠には深い浅いがあって、寝ている間にもそれが交互に起こるもんなんじゃが、どうもずーっと深いままで眠っておるんじゃな」
「それって……」
抑えこまれてさすがに少し落ち着いた鷹男は、その桃井の手をひきはがし、
不安からの焦燥が去った後の不安のみが残る表情でさらに尋ねる。
「ああ、たしかに尋常なことじゃない。当然バイラムがなんかしたんじゃろうな」
「なにかってなんですか」
「わからん。これからの研究次第じゃ」
「そんな無責任な!」
「鷹男!」
と、そんな鷹男を叱るように声をかけたのは、
彼に置いていかれてようやく追いついて
メディカルルームに入ってきたばかりの四人のうちの沙羅だった。
突然の横槍に、瞬間的に自分が理不尽な非難をしたことを鷹男は知り、
赤面すると桃井に謝った。
「すいません、先生。先生の責任じゃないのに」
「いや、気持ちはわかるから気にするな」
と、返って鷹男を慰めるようにその肩を軽く叩き、
圭子の状況をいま入ってきた四人に説明している綾を横目に見ながら、
バイラム――トランザの圭子に対する仕掛けの狙いが
目の前の少年を動揺させることだということもわかる桃井だった。

そのことは綾にも痛いほどわかっていて、
その狙いの正しさに戦略家としての綾は賛嘆する想いはあるが、
やはりそれ以上にいまいましさを覚えずにはいられない。
ガラスで仕切られた検査室にあるメディカルベッドに眠る圭子を、
桃井に諭されて表面は落ち着きを取り戻し、
ガラスに両手を押し当て悲痛なほどの視線で凝視する鷹男を見ていればそれも当然である。
その鷹男はしかし激情を抑えかねるのか、
ガラスに押し付けた手を拳にして強く握り、その手が震わせている。
そしてもう一人、その鷹男を見て彼に負けないほどの悲痛さを
その美しい面ににじませているこずえを見ると、その想いはさらに強くなる。
このことはトランザは計算に入っていなかっただろうが、
しかし強力な副産物であり、こちらにとっては大きな痛手である。

沙羅と禅にも同じ気持ちがある。
だが沙羅には、鷹男の苦しさよりこずえのそれの方がよりつらい。
圭子には悪いとは思うが、一度も話したことのない相手より
「妹」の苦しみを厭う心が強くなってしまうのはどうしようもない。
鷹男に対しても同情はするが、こずえのつらさにまったく気づいていないことに
「ぶん殴ってやろうかしら」という気持ちが湧くのも止められないでいた。

禅は鷹男とこずえの「弟妹」どちらにも同じような同情心があり、圭子へも人並に憂いがある。
だが同時に「専門家」として、トランザが圭子に植えつけた「仕掛け」への懸念が強い。
「ただ眠るだけなのか。あるいはこの『眠り』の他になにか仕掛けてあるのか。眠るだけとしてどのくらい眠り続けるのか。起こすにはどうすればいいのか。あるいは『眠り』だけとして、これを基にさらになにか揺さぶりをかけてくるのか」
それらの疑問はこれからの研究で明らかになるものもあるだろうし対策も考えうるかもしれない。
だが場合によっては圭子を隔離しなくてはならないかもしれない。
戦士としての冷徹な思考が、その可能性を考えさせざるをえず、それは綾も考えているだろう。
最終的な判断は綾に任せるとしても、自分も考えを整理しておく必要があると禅は感じた。

そして大地の心は彼らほどに偏ってはおらず、こずえの鷹男への想いは別に、
ただ単純に、それだけに純粋に鷹男と圭子への同情と、バイラムへの怒りに直結している。
綾から事情を聞き、少し離れた場所に立つ彼は、
ぐっと奥歯を噛みしめると鷹男に歩み寄り、後ろから肩に手をかける。
「おら鷹男。そんなとこで突っ立ってたってしょうがねえだろ。お前にはいまバイラムに勝つためにやることがあんだろが」
「………?」
「お前今日なにしにきたんだ」
いぶかしげに振り向く鷹男に大地は強い目で言い、言われた鷹男もようやく思い出した。
今日鷹男はバードニックウェーブBを浴びに来たのだ。
ゆうべはそれほど眠ってないといえばいえるが、心身はまったく問題なく活性化している。
「そうだった! サンキュー大地!」
礼を言うほどのことではないかもしれないが、
なにもできずにいた鷹男にとっては指針ができただけでもありがたく、
しかもそれがバイラムと直接対峙し、圭子を救うために最も有効なことであるとなれば、
荒れ狂う激情は方向性を得て、奔流のようにそちらへ流れ出してしまう。
「待ってろよ、圭子。すぐに助けてやるからな」
ガラスの向こうの恋人に、全身を意志にして、低い声でそうつぶやくと、
鷹男は禅に詰め寄る。
「どこですか、その新しいバードニックウェーブは!」
「……こっちだ、ついてこい」
鷹男の表情は圧力すら感じるほどだったが、禅はやや重い表情でそれを平然と受け止めると、
鷹男をうながしてメディカルルームを出ようとする。
それを全身から激情を漏らしつつ無言で追おうとする鷹男は、
ふと思い出したようにこずえへ歩み寄る。
「え………?」
自分以外の女のためにあらゆる感情をみなぎらせる鷹男から、
目を離したくても離せなかったこずえ。
その表情はどんなに平素を装おうとも、
鋭い痛みと深い苦しみが浮いていることは誰にでもわかるが、
煮えたぎった自分の感情に、目と頭にフィルターがかかった鷹男には見えない。
その激しく熱い想いのまま、鷹男はこずえの両腕を強くつかむ。
「こずえちゃん、頼む」
「え……」
「一緒に行こう。それで浴びてくれ。BBと書き換え。頼む」
「…………」
強い意志に裏打ちされた強い願い。それが自分に向かってヒリヒリと浴びせられる。
強く握られた腕の痛みも、痛みがあっても鷹男に触れられているという喜びも、その意志と願い、
そしてその基になっている圭子への彼の想いを全身に浴びせられて、
こずえはうつむいて唇を噛む。
必死に、ただ必死に叫びだして泣き出してしまいたい気持ちを抑えこむ。
だが鷹男はそんなこずえには構わず、つかんだ腕をゆさぶる。
「こずえちゃん、頼む、頼むよ。これからおれと一緒に……」
そこにはこずえの命の危険への懸念は一切無い。ただただ愛する人への想いのみ。
それは残酷ではあっても純粋で、非道ではあっても美しかった。
そしてそれが自分に対するものであったら、どれほどに幸せか。
だが、違う。
そう思った瞬間、こずえは限界を越えた。
「嫌………」
「こずえちゃん……」
かすかに漏れるこずえの声は、あらゆる激情に彩られていたが、
鷹男はそれを聞くことができない。
自分の拒絶の言葉に、失望と悲しみだけでなく、
自分へのかすかな非難すら感じて、こずえはついに叫んだ。
「嫌! 絶対に嫌! 馬鹿! 鷹男くんなんか大っ嫌い! 死んじゃえ!」
叫ぶと同時に鷹男を突き飛ばすと、そのまま身をひるがえしてメディカルルームを飛び出してゆく。
「こずえちゃん!」
常人ならこずえに思い切り突き飛ばされれば吹っ飛んで壁に叩きつけられるところだが、
鷹男は踏ん張ると、そのままこずえを追おうとする。
が、それはできなかった。誰かにすさまじい力で襟首をつかまれて、
力いっぱい引きずり倒されたのだ。
「っ! なにすんだ沙羅!」
床に背中から叩きつけられた鷹男は、加害者の少女を見上げて怒鳴る。
その鷹男の顔にはこずえの叫びの悲痛さも、叫びが涙に濡れていたことも、
それが彼女の爆発するような自分への想いゆえであるということにも、
まったく気づいた様子はない。
それを見た沙羅は鷹男を殴りつけてやりたい衝動にかられたが、
それを必死に抑えると、その想いを現わすような声を絞り出す。
「……いいからあんたはここにいなさい」
「なに言ってんだ、こずえちゃんを説得しないと……」
「いいからここにいろ!」
沙羅は激しい烈気をこめて鷹男を怒鳴りつけ、
その怒りのすさまじさにさすがに鷹男も声を飲む。
それを見た沙羅は大きく深呼吸して、もう一度自分を落ち着けた。
「説得はあたしがするから、あんたはここにいるの。いいわね? 絶対来ちゃダメよ!」
念を押すように言い置くと、沙羅は鷹男を強くにらんでから、
こずえを追ってメディカルルームを走り出た。
本当であれば鷹男に追わせるのが一番いい。
だけどいまの鷹男では
こずえの心の傷にナイフを突き立ててえぐるような結果にしかならないだろう。
奥歯を強く噛みしめて、自分が「妹」のために耐え、力になるしかなかった。


「……おら立て鷹男。BBんとこ行くぞ」
沙羅がこずえを追って飛び出してゆくのを、やや呆然と見やっていた鷹男を禅がうながす。
その声に我に返った鷹男は勢いよく跳ね起きる。
それを見た禅は鷹男をうながす。
「おら行くぞ。ついて来い」
「でも……」
「こずえのことは沙羅に任せとけばいい。どちらにしても浴びないわけにはいかないしな」
それがいまの彼らの、というより地球の抜きがたい現状だった。
生き残りたければBBを浴びて書き換えをおこない。新しいジェットマンにならざるをえない。
こずえの気持ちを大切にしたくともできない今の状況は、本当に悲惨なものだった。
「おら行くぞ」
そのことをあらためて感じつつ、禅はもう一度鷹男をうながすと、
彼をつれてメディカルルームを出て行った。


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コメント(4)

>桂 眞枝さん
感想ありがとうございます!
さすがにこういうのは入れておかないと、と(笑)。
自分が書いたものから本編を想像してもらえるのは、
二次創作を書いている以上うまいこと行ってるという証拠なので、
そう思ってもらえると気分的に非常に助かります。

脳内キャストはお任せで(笑)。
全員特にモデルがあるってわけではないので(笑)。
 私の脳内キャストでは、鷹男のイメージって「ケンちゃんシリーズ」ノケンちゃんがそのまま成長した感じなんですよね(例えがアラサー&アラフォーしか分からないあせあせ

 いよいよ浴びる時がきましたか。その後すぐに出動となるのかどうか、また今作品も「ポストめ戦うトレンディドラマ」の展開を期待しています。指でOK
>masaさん
いつも感想ありがとうございます!
ケンちゃんシリーズはまた懐かしい(笑)。
あんまり見てなかったんだけど(汗)。
あのシリーズも長かった。

「戦うトレンディドラマ」、
やれる力量が書き手にあるかどうかが最大の問題でして(爆)。
でも微力ながらがんばってみます(汗)。

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