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今、鳥人戦隊ジェットマンが熱いコミュの小説 鳥人戦隊ジェットマン? 第七章 お泊り会 2

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そのようなわけで、食堂で大地がラーメンとチャーハンとギョウザで「軽く」胃をなだめてから、
5人はスカイキャンプを出、帰り道でなにげなく沙羅が
「うちにパエリア用のフライパンがあるんだけど誰も使わなくてねー」と話を振ったところ、
大地が「おれに使わせろ」と食いついてきたのである。
もともと夕食の買い物をしようと思っていたので、これは渡りに船で全員が賛成した。
大地の「局地的名料理人」ぶりは禅以外の全員が知っていて、
気まぐれにしか発動しないそれを利用しない手はなかった。
あるいは沙羅は、最初からそれを狙って話を振った節もある。
もっともこずえだけは、
兄が使った後の台所の「惨状」をよく知っているためやや複雑そうだったが。
ちなみに鷹男は母親が名人のため料理はまったくダメ。
沙羅は「米の研ぎ方は知っている」というレベルである。
「禅さんは? なんか作れるんですか?」
巨大なフライパンからスペイン風シーフード焼きめし(大地命名)が消えてゆく中、
鷹男が食べる合間に尋ねる。
「おれ? おれか。おれも普通の料理はあんまりだなあ。軍事教練でサバイバル食については一通り学んだけど」
「サバイバル料理? どんなの?」
男子三人に比べると多少おとなしめとはいえ、
充分に健啖家である沙羅がスプーンを使いながら興味深そうに訊き、
それを受けて禅は意地悪そうににやりと笑う。
「聞きたいか? せっかくまともな料理食ってるのに食欲なくすかもしれないぜ。ウサギとかヘビとかネズミとかをナイフだけを使って――」
「あーごめん、あたしが悪かった、許して」
自分もだが、こずえがみるみる嫌そうな顔をしはじめたのを見て沙羅はあわててさえぎり、
食べることのみに口を使っている大地は顔だけで、禅と鷹男は声をあげて笑った。


大きなフライパンを空にするのにさほどの時間はかからず、
「まだ足りない」とさえずる三羽のオスのため末鳥が残ったご飯で手早くチャーハンを作り、
それでようやく5人全員が胃に一安を得た。
その後、宣言どおり鷹男はこずえを手伝って「惨地」と化しているキッチンの片づけを始めたが、
いままでほとんどその手のことをやったことがないため手際が悪く、
ありていに言って「邪魔」でしかなかったが、
それでもこずえにとっては鷹男と一緒になにかできること自体がうれしくてたまらないらしく、
使えない「兄」の襟首をつかんでキッチンから引きずり出そうとしていた沙羅は
苦笑しながら男二人がくつろぐリビングへ戻っていった。
「あんたたちまだなにか食べる?」
という質問は大地がいる時には慣用句になっており、
それに大地が「あるなら食う」と答えるのもお約束で、
沙羅は買い置きのスナック菓子などを持ってきた。
「お前は片づけ手伝わないのか?」
ポテトチップス・コンソメ味の袋を開けながら大地は沙羅に尋ねる。
「あんたに言われたかないわよ」
沙羅は憮然としながら大地が開けた袋に手をつっこんで、
ポテトチップスをつまんで口に入れ、
その表情に「邪魔するのも野暮でしょ」と書いてあるのを読み取った禅は小さく笑う。
リビングはテーブルがどけられ、ソファと広い空間のみがあり、
テレビはBGM変わりにつけられ、
めいめいが気楽にくつろげるようにしてある。
大地などはすっかり自宅気分で、絨毯の上に寝転がり、
テレビを観ながらほとんど自動的に口に食べ物を運んでいる。
禅はソファに座って沙羅がいくつか開けたチョコレートやクッキーに時折手を伸ばし、
沙羅は床に座り、禅の座るソファにもたれかかってチョコレートを口に放り込む。
テレビには大地が好きな北海道ローカルでありながら
全国で放送されている超人気バラエティ番組が映っており、腹を抱えて笑っている。
沙羅も好きでよく観ており、禅ははじめてだったが、
それでも大変おもしろく、二人と一緒に笑っていた。
「……不思議なもんだな」
番組が始まって20分以上経ち、二人と一緒に爆笑していた禅がポツリと言った。
「なにが?」
と、モジャモジャ頭のローカルタレントがディレクターとボヤキながらケンカしているのを
涙を流して笑いながら観ていた沙羅が、笑いを残しながら尋ねる。
「こうしていきなりなじんでることがさ。おれ、もうちょっと緊張するかと思ったんだけどなあ」
「当たり前でしょ、あたしら兄妹なんだから」
と、またテレビを観ながら爆笑しつつ沙羅は応じるが、
彼女としても意外な気はしないでもない。
さすがに禅はもう少し「浮く」かと思っており、
そこは自分がフォローしようと考えていたのだが、
あきれるほどここに禅がいることが自然で、沙羅としても拍子抜けの気分があったのだ。
それでも彼女としては「ならいいじゃん」というだけのことで、
その感情、状態をそのまま受け容れることに抵抗はなかった。
このあたり、さすがにアコの娘である。
「それもそうだな」
沙羅のそんな感覚に触れたためか、
禅も苦笑しながら彼ら「弟妹」との時間を受け容れることにした。

「はーい、みんな、お紅茶とコーヒー淹れたからねー。お砂糖やミルクは自分で入れてねー」
と、そこへ、あぶなっかしい手つきで5つのカップを載せた盆を持った鷹男を従えて、
こずえがやってきた。
二人ともエプロン姿で、そういう状況がうれしいのか、こずえはにこにこしている。
生死にかかわる選択を迫られていることも今だけは忘れられているようで、
そのことに「兄」たちや「姉」は安堵した。
その「兄」の一人の鷹男は、カタカタとカップとソーサーが揺れる音をさせながら、
そろりそろりと歩き、会話に加わる余裕もなさそうだ。
「ちょっと大丈夫? こぼさないでよ」
「……大丈夫。キッチンじゃあんま役に立たなかったから、このくらいはさ……」
不安げに尋ねる沙羅に、目線をそちらに向けるゆとりもなく、
まるで綱渡りでもしているようである。
さすがに片づけで自分がほとんど役に立たなかったことは自覚していたようで、
「このくらいはさせてよ」とこずえに申し出たのは殊勝だが、
やはりここでも足を引っ張っていることに気づかないあたりが抜けている。
こずえなどは、いつでも盆を支えられるように重心と目線を常に鷹男の方へやっており、
それに気づいた沙羅は苦笑しながらため息をつく。
「わかったわよ、それじゃゆっくりね」
「……まかせとけ」
ワームと戦うときより慎重に鷹男はそろそろと歩き、
そのあぶなっかしさは盆が床の上にゆっくりと置かれた時に
全員が大きく安堵の息をつくほどだった。

「ほら見ろ、どうだ」
「自慢するほどのことか。茶、冷めてないだろうな。おれ紅茶ね」
「禅、あんたはコーヒーよね?」
「ああ、ありがとう。べつに紅茶でもいいけど」
「あ、ごめんなさい。禅さんスカイキャンプでもコーヒーだったから… 淹れなおしてきましょうか?」
「ほらあ、真に受ける人がいるんだから、余計なことは言わないの」
「ああすまん。コーヒーで大丈夫だよ、こずえ」
「そうですか、よかった。沙羅ちゃんもコーヒーでよかった? みんなテレビ観てて楽しそうだったから声かけて訊くの悪いと思って…」
「うん、コーヒーでよかったよ、ありがと。そんなに気を使わないで声かけてくれればよかったのに」
「いやいや、だめだめ。大爆笑の腰を折るような感じで声かけられたら許せんわ」
「お前飲むな、大地」
「うるさいなレッドホーク。ミルクちまちま入れながら言うな。もうちょっと豪放な感じで言うセリフだろ、それは」
「そっちこそうるさいなイエローオウル。このあたりの微妙な量でずいぶん変わっちゃうんだよ、味」
「鷹男くん、香おばさんの影響で、その辺り細かいよね」
「……字面だけ見ると『あきれたように』って表現が似合う言葉だけど、好意的に言われると違う内容に聞こえるわね、禅」
「人徳とか人柄ってもんだろうな。同じ親から生まれてこうも違うもんか」
「ふん、お前みたいなサディストに言われても、くやしかないもんね」
「昼間の訓練のことか? なに言ってる、サディストの本領を発揮するのはこれからさ。あんなのまだまだ」
「自分がサディストだってのは認めるんだな?」
「……禅さんの揚げ足取って勝ち誇ったつもりみたいだけどな、大地。どっちにしても訓練厳しくなるだけだぞ」
「……ごめんなさい、おやさしい禅さま。許してください」
「よしよし、素直な男におれは寛大だ。その証拠に明日の訓練は五割増しで勘弁してやろう」
「どこが寛大だって!?」
「なにを言う、予定じゃ三倍くらいの質量にするつもりだったんだ。それを一・五倍にまけてやろうっていうんだぞ? これを寛大と言わずなんと言う」
「……あたしたちは何も言ってないわよねー、こずえ。関係ないない」
「う、うん…」
「お、おれもそっちに……」
「あー、卑怯モン! せめて鷹男、お前こっち来い! 男だろ!」
「好きで男に生まれたわけじゃないわい」
「うるさい! いいからこっちへ……」
「わっ! 足持つな! 引っ張るな!」
「お兄ちゃんお茶こぼれる、こぼれる!」
「ほらあんたら、いいかげんに――!」


……こうして5人での初めての夜は更けていった。





その夜は全員がリビングで雑魚寝した。
特にそうしようと思ってしたわけではなく、
深夜までテレビを観たり話し込んだりしているうちに、
一人、また一人と撃沈していったわけである。
年頃の男女が一つの部屋に、というのは道徳上問題があるかもしれないが、
もともと兄妹のように育った鷹男たち四人はもちろん、最近「長兄」になった禅にしても、
互いに対するそういう感覚が驚くほどない。
むしろこずえの鷹男への感情の方が異質であるかのようだった。いまのところは。

そんな風に全員が寝静まっている中、一つの影がむくりと起き上がった。
5人のうちで二番目に小柄なその影は――本人が聞いたら「三番目だ!」と抗弁するだろう――、
他の四人を起こさないように静かにリビングを出ると、
同じように静かに玄関のドアを開けて出て行った。
「――どこ行くんだ、こんな時間に」
影が起きあがったところで目を覚ましていた最も大柄な影――禅は、
いぶかしげにつぶやくと、自分も静かに起き上がった。

禅は影を追って夜の町へ出た。
町といっても住宅街で人通りはほとんど無く、それだけに返って危ないが、
禅にしてみれば二十人の暴漢が襲い掛かって来ても返り討ちにする自信がある。
禅は影を見失ったが、しばらく町中を探すとすぐに見つけた。
あるいは彼らの中にあるバードニックウェーブが
知らず知らずのうちに呼応していたのかもしれない。
そこは、そこそこの大きさの児童公園だった。
鉄棒があり、ブランコがあり、ジャングルジムがあり、
中に入って遊べるオブジェがあり、そして走り回れる広場がある。
影――大地はその広場で身体を動かしていた。
常夜灯の小さくはあってもそれなりに強い青白い光の下、
ひとつひとつの動作を確認しながら反復練習をくり返している。
「あれは……」
大地からずいぶん離れた樹木の影から禅はそれを見ていたが、
いま大地がやっているのが今日自分が彼に教えた体さばきの基本であることがわかった。
沙羅は要領が良いのかコツをつかむのが早く、難なくこなしていたのだが、
大地はやや覚えが悪く何度か失敗し、動きもぎこちなかった。
「それで夜中に一人で特訓か……」
禅は驚き、感心していた。
まだつきあいが短いこともあり、大地にこういうところがあるとは知らなかった。
「……お前らは知ってたよな、当然」
しばらく大地の動きを見ていた禅は、振り向かずに背後の二人に尋ねる。
「ありゃ、わかっちゃった?」
とは沙羅である。鷹男も一緒だった。
禅にしてみれば素人同然の人間が背後に忍び寄ってくる気配を察知するなど
造作もないことである。
彼ら二人も禅と同じ樹に隠れるようにして大地を見る。
「今日の訓練見てたらやるんじゃないかなー、と思って」
「やるだけなら構わないんだけど、禅さんも出て行ったからちょっと気になっちゃって」
「なんだ、心配だったのはおれか」
禅は苦笑する。
「だって大地に変にアドバイスしようとして声でもかけたら、あいつ絶対練習やめちゃうし」
「そういうとこあんのよ、あいつ」
「なるほど、たしかにそういうところありそうだな、あいつ」
鷹男と沙羅は大地の秘密の特訓を邪魔しないように小声で話し、
禅もうなずいてくり返す。
「そんなわけで釘を刺しにきたんだけど、必要なかったみたいね」
「まあな」
禅としても大地がなにをしに行くのかが気になっただけで、
それ以上の干渉をするつもりはなかった。


大地はバードニックウェーブの恩恵もあってスポーツは万能以上の力があったが、
それも普通の人間と比べてのことであり、
彼の「兄妹」、特に鷹男と沙羅に対しては、
強くはないがコンプレックスのようなものがあった。
沙羅は要領が良く、習ったことをすぐに自分の物にしてしまう器用さがある。
それは今日の訓練中、体さばき以外でも散見でき、禅も感じていた。
鷹男は沙羅ほどに器用ではなく、またここ数年はスポーツそのものをやってこなかったが、
潜在能力は四人の中で随一だと大地は感じていた。
それは二人のジェットマンの血を引いていればこそかもしれないが、
「鷹男が本気になったらどうなるか」とは大地が常に考えていることだった。
もちろん「兄弟」である以上、彼に抜かれたからといって、
ひがんだり不仲になったりする自分ではないと大地は知っている。それだけは自信がある。
だからといって抜かれっぱなしでいいと思ったことは一瞬だってない。
それだけに大地はこれまで四人の中で最も努力してきた。
いまは主に学校の部活で所属している柔道についてだったが、
彼の「仮想敵」は全国の猛者たちではなく、常に「本気になった鷹男」だった。
あるいは鷹男は一生この方面で本気になることはないかもしれない。
そう考えないでもなかったが、彼は竜から伝授された格闘技の修行はおこたっておらず、
「いつか本気になる」という確信に近い想いは常に大地の中にあり、それが彼を発奮させてきた。
そしてバイラムの存在が明らかになり、
鷹男が「本気」になることが確定となった時、それ以上の存在、禅が現れた。

これは大地にとって衝撃的だった。
この世で自分と対等に競える相手は
沙羅と鷹男だけだと思っていたのに(こずえは性格的に論外)、
それ以上の男がいたのだ。
しかも自分と同じバードニックウェーブを受け継いだ存在として。
つまり禅と自分は生まれたときは同じスタートラインに立っていたのだ。
だのにこれほどに差がついているということは、
生き方において自分が禅より甘かったということに他ならない。
実は大地は、沙羅や鷹男に対しては、実力はともかく日々の努力のこともあり、
生き方そのものについては自分の方が厳しいと自負していたのだ。
しかし禅にはその部分でも完敗している。衝撃を受けずにはいられなかった。
「……死んでも追いつく。そんで追い抜く」
今日の訓練を受けながら、絶対おもてには出さないが、大地は固く誓った。
今夜の秘密特訓もその決意の発露の一つである。
コンプレックスに押し潰されず、それを自分の成長の原動力とする。
表面的な明るさからは感じられない大地のその繊細さと雄雄しい力強さ。
幼い頃から大地を見てきて、そのことを本人よりよく知っている香やアコは、
彼のことをこう評していた。
「さすが雷ちゃんの息子ね」と。


「……ところでこずえは?」
しばらく大地の自主練を見ていた禅は、その成果が徐々に現れはじめているのを見て取って、
彼の新しい師匠として安心すると、ふと思い出したように彼の「弟妹」へ尋ねた。
「よく眠ってます。起こすこともないと思ってそのままです」
「楽しかったんじゃない。久しぶりにみんなそろって。新しい面子もいたし」
そういう自分も楽しそうに沙羅は言う。
こずえのことを話す時の鷹男と沙羅の口調は自然とやわらかくなる。
「末の妹」という意識が強いのだろう。
実はその感覚は禅の中にもあった。
彼女にはどこか、「守ってやりたい」と思わせるなにかがあるらしい。
それだけに自分たちの中で誰よりも過酷なものを背負わされてしまった彼女が
不憫(ふびん)でならなかった。
そしてそれに対して、なにもしてやれない自分たちへの深い怒りと無力感もやるせない。
だからこそ、せめていまだけは彼女をゆっくりさせてやりたかった。
「……帰るか」
しばらくの沈黙の後、禅は二人の「弟妹」に告げると公園の出口へ向かって歩きはじめ、
鷹男と沙羅もそれに従った。
残されたのは、大地の体さばきによって起こる地面の砂がこすれる音だけだった。


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コメント(2)

 最初は大地は『清涼剤的キャラ』と思っていましたが、沙羅たちに自分の訓練を見られてもなお、追いつこうとするあたり、やはり雷太の子供ですねぇ。

 父・雷太が母・サツキの心を惹かせるために努力したあの時の場面が、思わず頭をよぎりました。

 やはりバードニックの二世、やる時はやりますね。
>masaさん
毎回感想ありがとうございます。
感想がないと結構本気で寂しいもので(照)。

大地は清涼剤キャラっていうのはぼくも考えてましたが、
それだけだとおもしろくないなー、とも考えていたので、
今回ちょっと書いてみました。
やる時にやれるかどうかは、まだこれからですね。
なにしろまだこいつとこずえはワームたちと戦ってないし(苦笑い)。

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