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今、鳥人戦隊ジェットマンが熱いコミュの小説 鳥人戦隊ジェットマン? 第六章 竜の遺品 1

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禅が一人の負傷者と二人の気絶者を連れて
ボロボロになった武蔵野高校を去った頃、ある男が不機嫌の極みにいた。
「この、痴れ者めが!」
手にした特殊素材の鞭(むち)が異形の化け物に打ちつけられる。
それによって発せられる悲鳴すらも男には気に食わなかった。
二度、三度と同じ行為を繰り返す。
「トランザさま」
その場にいた、もう一人の男が静かに言った。その男は正真正銘の人間だった。
年齢は30代半ばの一見紳士風だが左腕がない。
だが肉体の欠損は人格の高低に関係はない。
彼の問題は精神のバランスが健全なそれとはかなり離れた場所にあることだろう。
「なんだ武林。助命を請うか。ならんぞ。私はこやつだけでなく、貴様も殺したい気分なのだからな」
「いえ、そのような試作品、どうなろうと私の知ったことではございません。私の興味はその身体についた傷にあります。あの黒い奴がつけた傷に」
「……なるほど」
トランザは武林と呼ばれた男の淡々とした口調に毒気を抜かれたようにつぶやくと、
折檻(せっかん)する手を止めた。
ワームの身体についた傷を調べれば、
黒い奴――新しいブラックコンドルの力量が量れようというもの。
「よかろう。ただしその調査が終わったら、そのガラクタは廃棄しろ」
「いえトランザさま……」
そう言うと武林はトランザに耳打ちした。
「……ふん、まあよかろう。ではそのようにしろ」
「は」
武林は深々と頭を下げ、「では」と短く断ると踵を返した。
それを見やったトランザは萎縮しているワームへ武林の後をついてゆくように思念を発し、
それを感じ取ったワームは部屋の中の異空間へつながる場所へ武林のあとへ続いて消えた。
一人に戻ったトランザは、消えた人間と虫へ侮蔑の失笑を漏らすと、
手ずから最高級のブランデーに手を伸ばし、グラスに注いだ。
前回の戦いでは人間の社会とかかわることはほとんどなく、
今回もさほど望んだことでもない。
だがこの酒というものにはトランザもほんの少しだが魅せられていた。
琥珀色のそれを薄めもせず生のままで一息に干すと、
トランザは彼がいま暮らしているスウィートルームの大きな窓に歩み寄り、
眼下に広がる光点の群れを皮肉な視線でひと撫でした。

ここは東京。新宿新都心の一角。





あれから二日。
雨も完全にあがり、地面の水たまりもすべて干あがった頃に鷹男はようやく目を覚ました。
そこが自分の部屋であったことから、鷹男はこれまであったことが全部夢だったような錯覚を覚えたが、
起き上がり、二階の自室から階下のリビングへ降りてゆくと、
そこに母だけでなくこずえもいたことから、鷹男はあれらのことがすべて現実で、
同時に自分があの死地から逃れることができたのを知った。
「おはよう、で大丈夫かな?」
「あ、鷹男くん。もう平気なの?」
あらわれたパジャマ姿の鷹男が、どこか照れくさげに挨拶するのを見て、
こずえはソファから弾かれたように立ち上がった。
はじめて見るわけではない鷹男のパジャマ姿に、
どこか恥ずかしさを覚えつつも、当然目を離すこともできない。
しばらく会ってなかったせいもあってか、鷹男が少し男らしくなったように感じられたのだ。
「うん、大丈夫。それよりおれが助かったってことは――」
「ええ、圭子ちゃんも沙羅ちゃんも無事よ。二人ともあなたと同じように、とりあえず家に帰ったわ」
「そうか、よかった……」
香の答えに安堵し、ソファにへたり込むように座る鷹男を見て、
こずえはあらためて深沈する想いを感じた。
鷹男が沙羅の無事も喜んでいることはたしかなのだが、
圭子の無事をより喜んでいることがこずえの目にははっきりと見て取れたから。
「……どうしたの、こずえちゃん?」
「……え? う、ううん、なんでもないよ! そ、そうだ、鷹男くん、お腹すいてない?」
そんな少し鷹男がいぶかしげに尋ねてくるのに弾かれたように顔をあげたこずえは、
あわてながらそう言った。
「うん、そういえば」
「やっぱり。ね、香おばさん、お台所借りてもいいですか?」
「あらこずえちゃん、鷹男に朝ごはん作ってくれるの?」
「ええ、あんまり上手じゃないんですけど」
「でも悪いなあ」
「いいの、わたしが作りたいんだから。ね、香おばさん、いいでしょう?」
「もちろんよ。私も手伝うわね」
そう言うと二人は台所の方へ消えていった。
その二人を見送ると、鷹男はテーブルの上の新聞に手を伸ばし、
その日付を見て自分が丸一日眠っていたことを知った。
「そうか、丸一日ねえ……」
寝起きがいい鷹男にしては、こんなに長時間眠ったのは初めての経験だった。
それだけあの戦闘が激しかったことを物語っているが、
じつは鷹男はあの時ほとんど意識を失っていたので
最後のワームをひるませた攻撃のことを憶えていない。
であるなら、沙羅もワームに歯が立たなかったことを思えば、
自分がなぜ生還できたのか疑問に思うべきなのだが、
いまの鷹男はそれを思うことがなかった。
要するに、まだ起きたばかりで頭が働いていないのだ。

それでもあることを思い出し、鷹男はパジャマ姿のまま古新聞を取りに行った。
きれい好きな香りは毎日の掃除と整理を欠かさず、
古新聞は階段脇にある中二階の物置に重ねて置いてある。
「あった――」
鷹男は昨日の新聞の片隅に、小さな記事を見つけた。
そこには「深夜の高校でガス爆発」と書かれてあり、
それ以上のことは申し訳程度にしか記されていない。
「なるほど、小田切のおばさんの指示かな」
鷹男は感心してつぶやいた。
事実を曲げてマスコミに発表したのは、綾の指示に違いない。
誤報が世間に流れるのは決して正しいことではないが、
いまの時点でバイラムのことを人々に知られるのはまずい。
そう判断してのことだろう。
それにしても、あれだけの惨状を「事故」としてしまう綾の手腕には鷹男も感心するしかない。
「そうだ、もうひとつ」
そう気づいて、鷹男はもう一度新聞に視線を走らせたが、目的の記事は見つからなかった。
「どうしたの、鷹男くん。リビングでテレビでも見てるかと思ったのに」
振り向くと、エプロン姿のこずえがいる。
たまに香がつけているエプロンだが、
こずえがつけるとまた違う趣があり、鷹男も少しどきりとした。
だがそれがどういう感情からくるものかを理解することはなく、
鷹男は手にした新聞を掲げて見せた。
「うん、ちょっとこいつをね」
「新聞って……、ああ、おとといのこと……」
「そうなんだけど……ね」
鷹男はついでに載っていない記事のことをこずえに尋ねようとしたが、
なんとなく訊きそびれてしまった。

ダイニングルームでは香が三人分の朝食を並べ終わっていた。
メニューはご飯にみそ汁、アジの開きに納豆、
それにほうれん草のあえ物とオーソドックスなものだったが、
質も量もともに充分期待の持てるものだった。
「うわ、すげえな。おれの好物ばっかりだ」
「ほとんどこずえちゃんが作ったのよ。すごいでしょ」
「うん、すごいすごい、びっくりした」
「そんなことないよ、ただ焼いたり混ぜたりしただけだし……それに味の方は自信ないし……」
こずえがはじかみながら言う。
このメニューが鷹男の好物であるというのは、香に訊いたわけではない。もともと知っていたのだ。
が、そのことになにも見いださない鷹男は無邪気に喜ぶだけだった。
「ううん、匂い嗅いだだけでうまそうだもの、食べたらもっとうまいに決まってるよ」
そう鷹男が目を輝かせると、こずえはさらにはにかんで視線をそらせた。
「サツキさんは立派ねえ。きちんとこずえちゃんたちを育てられてるのね」
「たち? 一人だけじゃないの、きちんと育ったのは」
鷹男は茶化すように言ったが、三人は大地のきかなそうな顔を思い出して吹きだした。

三人での食事は楽しかった。
天堂家のダイニングルームには椅子が四脚あるが、
そのうちいつも使われるのは二脚だけで、それはこの五年間変わっていない。
だがやはり食事は少しでも大勢の方が楽しいと鷹男は感じていた。
「うん、うまいうまい」
「本当? 本当においしい?」
「うん、ほんとほんと」
「よかった。あ、おかわりいる?」
「うん、ちょうだい。ありがと」
「はい、ちょっと待っててね」
鷹男はこの二日、なにも食べておらず、空腹の絶頂ではあった。
だがそれを抜きにしてもこずえの料理は美味で、
鷹男としては食べるためだけに口をもう一つほしいくらいであり、
誉める言葉は世辞ではない。
そんな鷹男に心底うれしそうなこずえが茶碗を受け取ってキッチンへ消えると、香は小声で鷹男にいたずらっぽくささやいた。
「ちょっとした新婚さんみたいだよ、鷹男」
言われた鷹男は瞬間赤面して、香より声を落とす。
「なに馬鹿なこと言ってんの。そんなことこずえちゃんに言っちゃ駄目だよ、母さん」
「どうして? いいじゃない」
香は当然、圭子のことを知っていた。
幼稚園時代の鷹男と仲がよかったことも憶えていたし、
高校に入学した時に再会したと鷹男から聞かされたときは、驚き喜んだ。
そして、いまは息子と恋人になっているらしいということも知っている。
鷹男は隠しているつもりらしいが、16歳の未熟者の隠し事など母に通じるはずもない。
息子に恋人がいるというのは、母親としては少し複雑ではあるが、
年頃の男女であれば当たり前のことではあるし、
過去の自分たちのことを思い出せば苦笑して受け容れるしかない話でもある。
だが苦笑ですませられないのは、香はこずえの鷹男に対する気持ちも知っていたのだ。
だからといって圭子よりこずえの方がいい、というわけでもない。
圭子だってとてもいい娘だし、
こればかりは他人どころか本人同士でもどうしようもないところがある。
だから香はどっちつかずを自覚しながらも、
どちらも蔭ながら応援しようという気持ちにもなっている。
いまは鷹男は圭子のものだが、いつかそれが変わる時がくるかもしれない。
これもまた、自分の過去の経験からくる想いであった。

「だっておれには――、そんなことよりさ、母さん、ちょっと訊きたいことがあるんだけど…」
「なに?」
はぐらかした息子に追い討ちをかけようとした香だったが、
鷹男の表情が真剣なのを見てやめた。
「あのとき化け物、ワームっていってたっけ。あいつに殺されちゃったあの若い男の人、どうなったの?」
「ああ、あの人……」
少し逡巡してから、香りはその件も事故ということで収めたことを話した。
ガス爆発事故の「死亡1」というのがそれだ。
「そんな……」
「そうね、ひどいことだわ。でもね、いまはまだ仕方がないのよ。わかるわね」
鷹男は渋々ながらうなずいた。
バイラムの存在を明かさぬこと。これは現時点では重要なのだ。世の中をパニックに落とさないために。
トランザが自分でバイラムの存在を明かしてしまえばそれも意味をなさず、
それどころかさらなるパニックを生むかもしれないが、綾はそれはまずないと踏んでいた。
そうであるのなら、とっくにそうしているであろうし、
そうせずにまずこちらにちょっかいを出してきたのは、
こちらを殲滅してからという気持ちがあるのだろう。
あるいは自分たちの存在を明かすことによって、
パニックではなく世論が団結する可能性を恐れているのかもしれない。
なんだかんだ言いながら、トランザは一度負けている。
そのことが彼を慎重にさせている可能性は充分にあるだろう。
「私たちを完全に叩き潰して、真の帝王として世に姿を現わし、君臨する。そういう演出を考えてるんじゃないかしら」
トランザがこちらを知っているように、こちらもトランザを知っている。
20年の年月を経て、お互い多少の変化はあっても、根本が変わることはそうはないはず。
そのことをかんがみての綾の判断である。
情報戦という剣戟は、見えない場所ですでに激しく交わされている。
香はそのあたりの説明も鷹男にしてやった。
「……いつかきっと仇を討ってあげますから」
それを聞いて納得した鷹男は、見ず知らずの青年の霊にそう誓う。
いまの彼にはそれが精いっぱいだった。
「はい、おまたせ」
ちょうどこずえがご飯を山盛りにして持ってきた。
「へえ、大地はいつもこんなに食うの?」
茶碗を受け取った鷹男は感心してそう訊き、
ついいつも兄の茶碗によそうのと同じ感覚で盛ってしまったこずえは、サッと頬を赤らめた。
「あ、ごめんね、多かった?」
「ううん、おれもいつもこんなもの。ではあらためて、いただきまあす!」
不安げなこずえに笑ってみせると、
鷹男は山盛りのご飯と残ったおかずを胃袋へ流し込みはじめた。

その間に二人から、一昨日あったことを細かく聞く。
その中で特に鷹男が驚いたことは二つあった。
ひとつは当然ながら禅の正体について。
そしてもう一つは自分自身の能力について。
「おれ、ほんとにそんなことしたの?」
「うん、すごかった。ね、香おばさん」
「あなた本当に憶えてないの?」
「うん、ほとんど…… そういえばブリンガーソードをあいつに叩き込んだような気がしないでもないんだけど――」
鷹男は箸を置いた。二日分の朝食は食べたような気がする。
あとは二日分の昼食と夕食を摂るだけだ。
成長期の吸収力と消費力を舐めてはいけない。
「ところでね、鷹男。今日この後スカイキャンプへ行きなさい」
「うん、わかった。いろいろ小田切のおばさんに聞かなきゃいけないことも、こっちが話さなきゃいけないこともあるだろうからね」
「それもあるけど、もう一つ大事なことがあるから」
「なにそれ?」
「こずえちゃんも一緒にね」
「はい」
香は鷹男には答えずに、こずえに言った。

コメント(5)

えー、最初にお詫びしておきますが、
ぼくは伏線を張っておきながら回収しないこともあるタイプでして、
そんなことになったらごめんなさい(苦笑い)。
 新章に入りましたね。これだけ食べて、スカイキャンプに赴くとは・・・。
 二世たちと長官との展開も楽しみです。わーい(嬉しい顔)
>masaさん
いやー、ありがとうございます。
一個も感想なかったらさびしいなー、と思っていたもので(照)。

とりあえずこいつらは食います(笑)。
結構モノを飲み食いするシーンを書くのは好きなもので(笑)。
二世たちは長官にしてみると「甥」や「姪」の感覚になるのかなあ。
>サユリンさん
ありがとうございます!
感想もらえるとものすっごくうれしく、
書くモチベーションも、ぐんと上がるのです!
も一度、本当にありがとうございます!

やっぱり凱は人気があるなあ、とつくづく思っております(笑)。
禅もがんばらさないとなあ…

時折長期休載とかなってしまうこともありますが(汗)、
できるだけがんばりますので、見捨てないでやって下さいね(礼)。

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