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今、鳥人戦隊ジェットマンが熱いコミュの小説 鳥人戦隊ジェットマン? 第三章 巣箱にて 2

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鷹男は元Jプロジェクト責任者、天堂竜の息子である。
しかしだからといって、その基地であるスカイキャンプに簡単に出入りできるわけではない。
何度か父親に連れられて来たことはあるが、それでも入ることができた場所は、
一般車輌の格納庫やトレーニングルームなどの機密には直接関係ない場所ばかりだ。
しかし司令室といえば最高機密もいいところという場所だった。
鷹男がなんとなく緊張しながらそこへ向かう通路を歩いたのも無理はなかっただろう。
もうひとつ、鷹男が緊張というか戸惑ってしまったことが短い道中にあった。
すれ違うスカイキャンプ職員が、鷹男と沙羅へ敬礼をしてゆくのだ。
「おい沙羅、いったいなんなんだよ、これ」
前を歩く沙羅へ鷹男は小声で話しかけた。
「なにって挨拶よ。あんまり深い意味はないわ」
「ないわって、おれは敬礼されるような身分じゃないぜ」
「いいのよ、あとで説明してあげるから。とにかくいまは敬礼し返しときなさいって」
言いながら沙羅は、自分より五年以上は年上の女性職員へ鷹揚に敬礼を返しており、
鷹男もあわてて沙羅にならった。

落ち着かない道中も約五分で終わった。司令室へ着いたのだ。
だがドアの前で鷹男は想像してしまった。
「まーたこの中にいる人がいきなり敬礼してくんのかなあ」と。
鷹男はコーヒーと堅苦しい雰囲気が苦手なのだ。
とはいえここまで来て尻込みしてもしかたないので、
あきらめて沙羅の背を見ながら司令室のドアをくぐった。

いくつかのモニターとコンビューター類が壁に埋め込まれ、
大きなテーブルが部屋の中心に置かれている。
その向こう側には司令官用の机と椅子。
それが一目で見た司令室の様子だった。
そしてその大きなテーブルには二人の男女、というより少年少女が座っていた。
少年の方は小柄だが、色黒で活発さと快活さが全身からあふれ出しているような感じで、
椅子の上にあぐらをかいて座っている。
対して少女の方は、深窓の令嬢というほどではないが、
内気さとひかえめさがほどよい感じで全身を満たしているようで、
小さく整った顔のつくりと、肩と腰の間まで伸びた黒髪がその印象をさらに強くしていた。
が、血色の良い健康的な白い肌が、
彼女がただ気弱なだけの少女ではないということを物語ってもいる。
その二人は部屋に入ってきた鷹男を見るなり立ち上がり、
一人はとびきりの笑顔を、そしてもう一人は心配顔を彼に向けてきた。
「鷹男、久しぶりだなあ。大丈夫か?」
「鷹男くん、ケガ大丈夫?」
一瞬、誰だかわからなかった鷹男だったが、二人の顔を思い出すと、
一転して満面の笑みをその顔に浮かべた。
「大地にこずえちゃんじゃないか、なんでこんなところにいるんだ?」
「呼ばれたのさ、小田切のおばさんに」
「ね、そんなことより大丈夫?」
「ん? ああ、全然平気だよ。桃井先生がちょっとオーバーにしただけで、心配ないよ」
そう言って鷹男は三角巾でつられた左腕を上げてみせた。
実際、もう痛みはあまり感じていない。
「そう、よかった……」
鷹男の表情に嘘がないことを見て、こずえは全身で安堵の吐息をついた。

大石大地と大石こずえは、イエローオウル・大石雷太と、
その幼なじみで現在は妻となっているサツキの間に生まれた兄妹だった。
元鳥人戦隊の中で、もっとも幸福な余生(?)を送っているのは雷太かもしれない。
それは万人が認めることではあったが、それだけに意味がないことでもある。
要するに幸福とは本人がそう感じているかどうかに最大の問題があるわけで、
その点で香やアコは自分が不幸だと思ったことは一度もなかった。
ただ、幸福だと「感じやすい」状況というのはたしかに存在するし、
その状況にもっとも近い位置にいるのが雷太であることは間違いなかった。

そんな中で大地は鷹男と同じ年に、こずえはその二年後に、
長野県の雷太の経営する菜園のそばの病院で産声をあげた。
二人の命名は雷太が自分でおこなった。
「大地はすべての植物の源。そしてこずえはそれが成長した木々の先端だ。じつに雷太らいしじゃないか」
雷太とサツキの二人目の子供の名前を聞いたとき、竜はそう言って心の底から好意的に笑った。
ちなみにアコの娘の名前を聞いたときも竜は「アコらしいや」と笑ったものだが、
多少苦笑の要素が入っていたのは仕方がないというところである。
アコが「沙羅双樹」が仏教の聖樹であると知って命名したとは思えず、
多分に「サラ」という「音」から選んだことがわかったからだが、
のちに沙羅自身がその話を聞いたとき「聖樹なんてあたしにピッタリの名前ね」
と胸を張ったのには「やっぱり沙羅ちゃんはアコの娘だな」と、これも好意的に微苦笑するしかなかった。

そして彼らが生まれて何ヶ月かした頃、竜と香はアコと雷太から安堵と納得の報告を受けた。
彼らの子供たちが誠吾二ヶ月前後で立ち上がったというのだ。
竜たちの息子だけではなかったのだ、バードニックウェーブの後継者は。


雷太は「気はやさしくて力持ち」だったが、大地は「根はやさしくて力持ち」だった。
父親とはにてもにつかぬワンパクだったのである。
あるいはおとなしくていい子だった父親の「こういう子供でありたかった」という、
本人がどこかで感じていたひそかな願望が影響したのかもしれない。
大地は、バードニックウェーブという絶好の相棒を双子として生まれ、
その力を思う存分使ってのイタズラを日常として数年を過ごした。
その間、雷太とサツキは怒鳴ったり叱ったりのし通しで、
綾に「バイラムと戦ってたときより苦労してるんじゃない?」
と皮肉でもなく言われたほどである。
だが息子が弱い者いじめをしないことだけは両親も評価しており、
それでも子供ゆえに深く考えず人の倫にはずれた行為を大地がしたときには、
普段からの叱り方とは比べ物にならないほどの烈気で怒り、
そのときだけは大地もただ泣きじゃくって許しを請うだけだった。
そんな幼年期を過ごした大地は、人としての基礎はきちんとできたが、
基本的にワンパクのまま十六歳になっている。
ただ身長は163センチの沙羅と会うたびに背比べをして
「おれの方が高い!」「どこをどう見たらそうなるのよ、あたしよ!」
と言い合うほどにしか伸びておらず、結構気にしている。

こずえは、バードニックウェーブの力がもっとも似合わない少女だった。
ワンパクと言われる種類の元気さを、
兄が全部持って生まれてしまったのではないかと思われるほど内気な性格をしており、
幼少の頃は常に大地の後ろをくっついて走っているような子だった。
もっとも、全力疾走する大地のあとをついて走れるだけで、
彼女の力が尋常でないことはわかる。
彼女のその性格は、大地と違って父親母親双方から素直に受け継いだようで、
成長するにつれ女の子らしくなり、大地と一緒に遊ぶことは少なくなり、家の中で遊び、
母親を手伝って奥向きのことも進んでするようになってきた。
バードニックウェーブのことを知っている両親ですら、
娘がそんな特殊な力を持っているなどと忘れかかるほど、彼女はおとなしやかな少女に育った。
あるいはワンパクな兄を見て、自分までがこうなっては両親がパンクしてしまう、
と自分を抑えていた部分もあったのかもしれない。
だとすれば、やはりそれはそれで彼女のやさしさがあふれた行為ではあった。


鷹男、大地、沙羅、こずえは、血ではなくバードニックウェーブでつながった、言ってみれば「兄妹」である。
小さい頃、夏休みなどには雷太の家に全員で泊まりこんで遊んだりもした。
鷹男と同じく沙羅たちも、大地には苦労したが、
きちんと判断力がつくまでは力を封印するようしつけられたため、
それは共通の力を持った、心も力もすべて解放して過ごせる「唯四無二」の兄妹たちとの、
本当に大切な時間でもあった。
彼らはこのときだけは普通の子供に戻れ、
木々の間を飛び移ったり、子供では流されるような急流をさかのぼって泳いだり、
大人でも登れないような大木の頂上まで登り、太い枝に四人で並んで座ってそこからの眺めを楽しんだり、
時には思い切りケンカをしたりもした。
そんな中でよく見られた、
大地がこずえをいじめ、沙羅が大地をはたいて叱り、泣くこずえを鷹男が慰めるシーン。
それが四人の関係を象徴しているようでもあった。


その後、鷹男はその能力をみずから封印したが、
大地と沙羅はそれを使って、神童の名をほしいままにしていた。
当然ながら、様々なスポーツ関係者から誘われたが、
二人ともそんな話には耳を貸さず、マイペースでいろいろなスポーツを楽しんでいた。
そして現在、大地は柔道、沙羅は新体操に、より魅力を感じている。
これも当然ながら、二人とも所属クラブのエースである。
そしてこずえはというと、小さい頃は大地にくっついていろいろ挑戦し、
これまた多大な成果をあげていたが、ある時期を境に人前で全力を出すことをやめてしまった。
その時期とは、大地が小学校でのはじめての運動会で、
全種目一位という快挙を成し遂げた頃、鷹男が自分でその力を封印した頃に前後する。
そして中学生になった鷹男が自分の家へ遊びに来ることが減ったことを、
誰よりも寂しがっていたのもまた彼女だった。


「それにしてもすげえ相手だったなあ、さっきのヤツ」
「なんだ、知ってんのか大地」
「さっきここのモニターでリアルタイムで見てたからな」
そう言って大地は壁に埋め込まれているモニターを指差した。
この部屋にある通信システムは人工衛星と連結しており、
地上のあらゆる状況を見ることができる。
「なんだ、そんなら助けに来てくれりゃよかったのに」
「行こうと思ったさ。だけどおれたちにゃ無理だからやめろって」
不服そうに言う大地だが、納得をしてもいた。
手に汗を握り、脂汗を浮かべながら鷹男のピンチを見ていたのだ。
自分とほぼ同じ力を持つ鷹男が遊ばれるような相手では、自分がかなうはずもない。
血気と戦意にあふれる少年ではあるが、
彼我の力量の差を無視して突進するような馬鹿ではない。
モニターに映し出される戦況は、同じ部屋にいたこずえは見ていない。見ていられなかったのだ。
「やめろって、小田切のおばさんが?」
言いながら鷹男はようやく気づいたが、ここに綾はいない。
あるいは違う部署で働いているのかもしれないが、それでも自分たちが、
それも勢ぞろいしてるとなれば、顔を出さないのは少しおかしい。
「ううん、あの人が」
尋ねながらそんなことを考えていたこずえが、視線を向けて教えてくれ、
鷹男もそちらへ目を向けた。

壁に背をあずけ、一人の男がたたずんでいる。男というよりは、まだ少年といってよいが、
身長は鷹男より10センチ近く高いし、年齢も鷹男たちよりは上のようだ。
顔つきはどちらかといえば「ニヒル」や「きつい」という形容が似合い、
それでも「ハンサム」という表現が一番よく似合う顔つきであるのも確かだった。
しかし一番の特徴は「あの男と逆だな」と鷹男が思ったように、
顔立ちの鋭さとは裏腹な目のやさしさだった。
「あの……」
「はじめまして」
鷹男がなにか言うより早く、その少年は鷹男へ手を差し伸べてきた。
「天堂竜さんの息子さんだね。うん、よく似てる」
「あの、あなたは……」
差し伸べられた手を握り返しながら鷹男が訊くと、少年は礼を失したことを謝った。
「ああ悪かったね。ぼくの名前は羽生禅(はにゅう ぜん)。君より二歳年上の高校三年生だ」
「小田切のおばさんの秘蔵っ子なのよ」
沙羅が置いてあったコーヒーをカップに注ぎ、口に運びながら補足したが、
鷹男はそれを聞き間違えた。
「隠し子?」
「馬鹿、秘蔵っ子よ、ひぞっこ。それから禅、あんたもその気持ち悪いしゃべり方、やめなさいよ。鷹男も戸惑ってるでしょ」
「そうか? 一応カッコつけといた方がいいかと思ったんだがな。天堂さんの息子だというし」
そういうと禅はニヤリと笑って鷹男に向きなおった。
その笑顔はとても人懐っこいといった感じではなかったが、不思議な魅力にあふれていた。
「じゃ、あらためて。羽生禅だ。よろしくな」
あらためて握り返されたその手は、大きくあたたかく、
そして達人の鷹男に「できるな」と思わせる力強さがあった。
そして鷹男は初めて会ったと思った。
父から聞かされていたバードニックウェーブを受け継いだ自分より強い「常人」を。

コメント(6)

 凱はいない、竜と香が結婚となれば、どうやってメンバーを揃えるのかと思いましたが・・・上手い!面白い!指でOK少なくとも私は絶賛です。
 そして謎の男・羽生禅の身辺も、今後の活躍と共に楽しみにしています。わーい(嬉しい顔)
さっそくの投稿ありがとうございます。

いやーまた予想を裏切られました。

ともあれこれで五人がそろったわけですね。はたして今後は彼らがどういう闘いをみせるのか楽しみです!
執筆 お疲れ様です。
今回も 楽しく拝見させていただきました。

ついに 5人そろったんですね!
私も どのように5人のメンバーをそろえるのか気になっていましたが……。
ジェットマンの設定(人物や世界観)を踏まえ、それでいてオリジナリティに富んでいて、本当に「お見事」の言葉に尽きます。
私としては、鷹男君たち4人の幼少期のエピソードが、「鳥人戦隊ジェットマン」という作品の中に 文叔さんオリジナルの登場人物が生きてる感じがして 良かったと思いました。

また いつか、続きがアップされるのを 楽しみにさせていただこうと思います。 m(_ _)m
綾さんに隠し子…いやいや秘蔵っ子でしたねわーい(嬉しい顔)ワラ


まさかまさかの展開ですな…

気になる晴れ気になる晴れ気になる〜ハートワラ

楽しみにしてますね☆
どうもありがとうございます!
いきなりこんなに感想もらえるとは思ってなかったので、
本人驚き喜んでおります(照)。

しかし「誠吾二ヶ月」って…誰だ(爆)。
もちろん「生後二ヶ月」です。
推敲はもちろんするんですけど、どうしてもこういう読み落としはある…注意力が足りない…(爆)

>masaさん
ありがとうございます。
とりあえず五人はそろえないといけないな、と思ってたんで、
どうやって集めるかを考えついてから書き始めました。
羽生くんについては今後で(笑)。こいつ高校生かって書きながらすら思ってしまうような男ですが(爆)。

>びとーさん
こちらこそありがとうございます。
兄弟が一組くらいあってもいいだろうし、とすれば雷太かな、と(笑)。
予想を裏切るのは好きなんですが、予想を越えられるかどうかが問題で、
それができてるかどうかは読んでくださる方におまかせです(汗)。

>えとり太郎さん
どうもありがとうございます。
5人いきなり出てしまって、もしかしたら期待はずれかな、と心配しております(照)。
あんまり劇的なのは好きじゃなくて…
きちんとジェットマンの世界とつながっているとわかってホッとしています。
二次創作はそこが肝要なとこではありますから。

>ウィンスペクターさん
いっそ隠し子だったほうがおもしろかったかも、といまさら考えています(笑)。
ご期待に添えるかわかりませんが、また投稿させてもらいますんで、
そのときはよろしくお願いします。

>桂 眞枝さん
次回どうなるか、それはワタシは知っている(当たり前(笑))。
しかしそれがおもしろいかどうかは、読んでくれる人しかわからない(ドキドキ(汗))。
そんなわけでよろしくお願いします。

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