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夏の日の物語 (オリジナル小説)コミュの彼女−言葉=笑顔

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とある街の海岸。
僕はいつものように、お世辞でも綺麗とは言えない海を見に来ていた。
プカプカ漂う空き缶、汚い海藻、海月のようなビニール袋、そして濁った海水・・・。
しかし、こんな汚い海でも波だけは好きだった。こんなに腐った環境でも穏やかに生き続ける波が。
しばらく1人で波を見ていると、後ろの方から女の人が近寄って来た。


「q@w-.:*,/_¥m?」


・・・は?と一瞬思った。明らかに英語や中国、ヨーロッパとかそういった部類では無い。



「t-&/#.,m・・・」


彼女は何か伝えたいようだったが分からなかった。
ただ1つ伝わったのは笑顔という視覚からの情報。
彼女がどこの国の人だっていい。精神障害者だったとしてもいい。
僕は彼女のその純粋な笑顔に引き込まれていった。


それからというもの、彼女とはこの海岸でよく会うようになった。
言葉こそ通じないものの、彼女は何か不思議な魅力があった。他の人には無い魅力が・・・。
彼女にいつの間にか惚れていた事を知った僕は、交際を経て遂に結婚までしてしまった。
しかし、夫婦という環境になっても、彼女が何を言っているのかはサッパリ分からなかった。


「g"@$*@;]/.'=!!」


時々、彼女とは行動が食い違う事もあったが、何とか幸せに暮らした。
2人の子供にも恵まれた。子供は当初の予想と反して心配なく、普通に育ってくれた。
それから、あっという間に長い長い年月が流れ僕は老人となった。
もうすぐお迎えが来るであろう僕だが、結局の所、彼女の言葉は理解できぬまま歳をとってしまった。
しかしながら僕は幸せだった。言葉こそ通じ無かった彼女だったが、幸せな家庭を築けて本当に幸せだった・・・。
そう思いながら、僕が最後に息を引き取ろうとした。その時―――。


「h#-=^|\”:*!!!」


何十年も共に生活してきたおかげか、僕は、最後の最後で彼女の言葉が理解出来た。
しかしそれは、余りにも酷い暴言だった。僕を罵り、欺き、傷つける言葉だった。


それなのに彼女は笑顔だった。


だからそれは彼女の本当の言葉では無く、もしかしたら死に際の僕が作り出した幻聴なのかもしれない。
いや、そもそも最初から、彼女は普通で、僕自身の精神に問題があったのかもしれない。
いや、そもそも僕たちの間には愛があったのか。
愛とは何なのか。
だが、今正に、天国へと向かう僕にはもはや確認の術は無いだろう。

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