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G.K.チェスタートンコミュの復習 『詩人と狂人たち』 (ネタバレあり御注意)

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ヤスさんの真似をして、短篇集『詩人と狂人たち』
のあらすじをまとめてみようと思い立ちました。

この短篇集は泡坂妻夫の亜愛一郎シリーズに
もっともテイストが近い気がして、わたしは
ブラウン神父ものよりも好きなのです。

題名、文章は創元推理文庫版中村保男訳にしたがいます。
(わたしのもっているテキストは「福田恒存訳」と
なっていますが……)

    ******

「狂人とは理性を失った人ではない。狂人とは理性以外
のあらゆる物を失った人である。」

というのは『正統とは何か』の中にある文章ですが、
『詩人と狂人たち』はこのチェスタトンの考えを小説化
した作品だと思います。
ブラウン神父もののなかでは「イズレイル・ガウの誉れ」
などがそうでしょうか。

もっとも、「理性」というとちょっと印象が
違うかなあ。「論理」といったほうが、しっくり
くるような気がします。

では、論理以外のあらゆるものをうしなった
人たちの物語を、いきます。

コメント(12)

   復習「おかしな二人連れ」

 つぶれそうな宿屋にやって来た際だって対蹠的な二人
連れ。一人は小柄なビジネスマン、ハレル。相棒はのっ
ぽの画家兼詩人ガブリエル・ゲイル。そこに通りがかっ
た地主とその妹のダイアナに、医師のガースはほのめか
した。
「あの二人はどうもうさん臭い。狂人とその世話役とい
う組合せでは?」
 ゲイルと二人で先に屋敷に戻ったダイアナは、夕日の
輝きを背にした突拍子もなく異様なゲイルの姿を眼にす
る。彼は逆立ちをしていたのだ。
「逆さに見ると、あるがままに事物が見えるのです」
 そうゲイルが言った刹那、雷鳴が響きわたり、大粒の
雨が降り始めた。二人が立っている場所と宿屋の間の河
が水嵩を増し、ダイアナは自分が狂人と二人きりになっ
てしまったと悟った。同時に、彼が恐ろしい叫びを放っ
た。
「ぼくは神を売った人間だ。たとえ泳いででも、河を渡
らねば」
 雷鳴と稲妻の中、馬で河を渡るゲイルとダイアナ。ダ
イアナの理性は、この男は今にも自分を八つ裂きにする
かもしれないと告げたが、もっと深いところには、なぜ
か恍惚とした歓びがあった。
 宿屋に戻った彼女は見たのは、看板にぶら下げられた
兄と、その下で踊り狂っているハレルの姿だった。
 地主を助けたゲイルは語る。
「ぼくは狂人が何を夢想するか分かるのです。この哀れ
な狂人は以前ぼくに尽くしてくれたので、それを償うた
め、自分で彼の面倒を見てやろうと考えたのです」
 しかし、ゲイルはダイアナと一緒にいたいため、自分
の部署を放棄してしまったのである。ダイアナは詩人に
手を差しのべ、
「またお会いすることがあれば、いつか話してくれると
約束した物語を聞かせて戴けますわね、きっと」
 世界は何回も逆転したが、結局、頭を上にしてまとも
に立つことになった。
   復習「黄色い鳥」

 自分で作った爆弾でシベリアの刑務所から脱走し、
『自由の心理学』という本を著したロシア人の思想家。
旧家にやってきた彼は、窓という窓を開け放ち、鳥籠か
らカナリヤを解放する。

 その思想にかぶれた旧家の娘ローラは、家は牢獄で、
この辺の丘は自分を閉じ込めている壁だと言い出すしま
つ。娘に思いを寄せるマロウ青年は語る。

「ぼくには生れた所に還ることこそ、すべての旅路の終
着点だと思えるのに」

 しかし、割られた金魚鉢を見て、ゲイルは確信した。
「かの男は狂人なり」

「鳥を自由にしてやるのは、どんな場合でも親切なこと
だろうか? あの鳥は鳥籠の中で自由の身だったのだ。
気ままにさえずることができた。森に入ってしまえば、
死んでしまう。自由とは自分自身であることが出来るこ
とであり、そのこと自体が限定にほかならない。

 ぼくは彼のような奔放な心の旅に出かけることができ、
共感もできます。でも、ぼくは我が家に帰り着けます。
狂人とは、道に迷って帰れなくなってしまう人間のこと
です。あの鳥籠を開けた男は自由を愛していた――愛し
すぎていた。黄色い鳥を外界に送り出すのはちょっとし
た親切の行き過ぎでしょうが、金魚鉢を金魚の牢獄だと
思い込むのは、もう狂乱した破壊と死の踊りというほか
ありません。

 こういう人間にとっては、まん丸い牢獄も存在するの
です。星をちりばめた天空、無限という……」

 そのとき家が爆発した。それは囚人がこの世から脱走
した合図だった。
森下霧街さん
おくればせながら...

「詩人と狂人たち」で来ましたか!
確か読んだのですが、
すっかり忘れてましたです。
亜愛一郎シリーズ、私も好きです。
確かにテイストが似てるみたいですね。
ゲイルのイメージが亜と重なります。
一ヶ月もほったらかしのトピックで、
なさけないです。

ところで、ガブリエル・ゲイルの名前は、
天使ガブリエルから取っているのでしょうか?

ガブリエルという名前で思い出すのは、
サキの「ガブリエル・アーネスト」なのですが、
この名前には、無垢と残酷、というイメージが
あるのでしょうか?
ちょっとトピとずれますが…「木曜の男」の主人公の詩人もガブリエルです。
ガブリエル・サイム。
対をなす詩人の名はルシアン。
ルシアンはルシファーを意味するのかしらと思います。
>祥さま

なるほど、ガブリエルという名前で、カソリックだと
いうことがわかるのですね。このへんは、日本人には
わかりにくいです。

>トラジラフさま

こちらのガブリエルはすっかり忘れていました。
ルシアンの「グレゴリー」って姓も、なにか意味が
ありそうですね。

ところで、ますますトピとズレますが……
「木曜の男」のヨーロッパ無政府主義中央会議の面々は、
当時、チェスタトンの論敵だった評論家や作家がモデルに
なっていると聞いたことがあります。
それぞれが誰なのか、ご存知ですか?
あるいは、そういう解説書があるのでしょうか。

「木曜日の男」トピの注釈本には書いてあるのかな。
でも英語読めないし。
>森下さん

どうなんでしょうね…。
すいません、「木曜」トピ主ですがはずかしながらわかりません。
注釈書どころかブラウン神父の原書、一ページ目でダウンする英語力ですしね。

それにしても一人一人にモデルが居るなら、チェスタトンには5人は論敵が居たという事ですよね。やるなあ(苦笑)
   復習「鱶(ふか)の影」

 学問と芸術のパトロン、オウエン・クラム卿の邸宅に
芸術家や科学者、宗教家が集まり議論していた。

 科学者のウィルクスはいう。「花は器官がそなわった
生物にすぎず、花にたいする興味は、蛸とたいする興味
と変わりない」
 詩人ゲイルが反撃。「蛸だって花と同様にすばらしい
と、なぜ言わないんだ?」

 南洋帰りのブーン氏が、鱶(ふか)をあがめ、半人半
魚の神を崇拝する民族について語った直後、暗い窓ガラ
スに映った魚の顔が目撃される。

 翌朝、海浜の砂地の真ん中でオウエン卿の死体が見つ
かった。周囲には被害者の足跡しかなく、並はずれて背
が低い卿をさらに下から刺したような傷が死因だった。

 ブーンが逮捕された。蛮族の道具に精通していた彼が、
ブーメランで卿を殺したと思われたのだ。

 しかしゲイルはまったく違った見方をする。
「犯人は自分独特の理論で頭がおかしくなっていた。奴
は外皮こそ、そのものの真なる部分だということが分か
らないのです。衣服をまとってない人間は正気ではない。
むき出しの人間は、もはや人間とは言えません」

 犯行時刻、海水は卿の近くまで満ちていた。犯人は海
側から海面をかきわけてやって来たのだ。

「海浜の珍しい生物を採集していたウィルクスには、ク
ラムさんは海岸にいるありふれた生物に見えたのです。
いなくなればその遺産が博物館におくられる獲物に」

 科学者は手にしていた採集網をクラム老人にかぶせ、
後ろ向きに倒して殺した。また魚の仮面で窓からのぞき、
偶像崇拝と神秘に満ちた騒ぎを利用して、きわめて合理
的な自分の殺人を感づかせまいとしたのだった。
   復習「ガブリエル・ゲイルの犯罪」

 ゲイルがとうとう発狂したと思われる事件が起こった。

 雨男の異名をとっていたソーンダーズ青年がパーティ
ーに来た途端、晴天が嵐になった。ソーンダーズと二人
で窓の側にいたゲイルは、『神様になったような気分だ
ろう』といって、気の弱い青年を睨みつけ、さらに、雨
の中に飛び出した青年を樹に縛って、熊手で首を固定し
てしまったのである。

 それなのに、ソーンダーズは事件後に、「ゲイルのお
蔭で命びろいした」と言う。

 ガース医師が同業のバターウァース博士とゲイルを訊
ねると、詩人は説明した。

「あのひとは、あやうく狂人になるところでした。ぼく
は嵐ではなく、窓ガラスを伝って落ちる二粒の雨しずく
を見ていたのです」

 ソーンダーズも同じものを見て、自分は神だと信じ込
もうとしていると、ゲイルは気づく。自分が天気を一変
させたのだ、どんなものでも変えることができるのだ、
と。

 どちらの雨しずくが早く落ちるかに賭ける場合、賭け
手は勝ったほうの粒が自分が選んだ粒であると、簡単に
自分を納得させることができる。それを確かめようと、
『神様になったような気がするだろう』と言ったが、彼
は耳をかさなかった。彼に現実の限界を思い知らせなく
てはならないと思ったゲイルは、荒療治をしたのだった。

「なぜ自分はあるものを支配できるのに、他のものは支
配できないのだろうと、不思議がったことはないですか
? 全世界が自分の肉体の一部であると想像するのは、
それほど不自然でしょうか。ある意味、万物はみな自分
の心にあるのですから。
 ぼく自身、自分がこの全宇宙を夢想しているのだと想
像したことがありました。でも、ぼくは今、そうでない
ことを知っています。できるなら、今ここに来てもらい
たい人がいるけど、やっぱりそれは不可能だもの」

 やがて、ゲイルはしずかに言った。
「単純明瞭な真理を語っても、世間の人がわかってくれ
ないとき、ぼくは、自分は万能の神なのだと考えるより
なお狂気じみて邪な考えを抱きます――正気な人間はぼ
くだけなのだ、と」
「ガブリエル・ゲイルの犯罪」には「怪奇雨男」という
邦題があります。

 泡坂妻夫の「妖異蛸男」とともに、けっこう気に入って
いる題名です。

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