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みんなにやさしい自作小説コミュの徒然物語�◆疎莉住余蓮�

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アストレアの戦闘に乱入するより少し前


こちらは操り人形と化したソルトを正眼で見据えながら体内魔力を活性化させていた

「さてと、おいバカ野郎。俺に頼りになるところ見せるんじゃなかったのか?頼りになるどころかこれじゃ迷惑千万だこの野郎」

軽口を叩きながら全身の感覚をさらに研ぎ澄ませていく

自身を弓の如く力を引き絞り続ける

「……嫌いじゃなかったぜ…苦手ではあったがな」

ソルトを諦めるしかない

甚(=はなは)だ不本意ではあるが

現状あれもこれもと欲をかける状況ではないのだ

助けるすべすら見当たらないこいつに手間取りアストレアへの救援が遅れれば最悪両方失うことになる

そんなこと許せるはずがない

俺はあいつに命を救われたとき誓ったんだ

『アストレア』を救いたい、と

その障害となってしまうと言うのなら…

アストレイは静かに覚悟を決める

「…すまないな…弱くて…」

自分の無力さをひしひしと噛み締めながら双剣に魔力を通していく

鈍色に輝き応える愛剣



俺は、『』を殺す



傭兵として非情な選択を冷酷に実行する




「あれ?どうしたんだ、僕は?」




複雑な心境をあっさりと打ち砕く声が聞こえたのはそんなタイミングであった

「お前!?正気に戻ったのか?」

「っぅ…頭が痛い…いったいなにがどうなって…」

「いいから質問に答えろ。お前は今正気か?」

幻惑から解かれたばかりで困惑しているようだが付き合ってはいられない

さっさと答えるようせかす

「くぅ〜、何を突然偉そうに!僕を誰だと思っている!城塞都市マグヌスにその人ありと吟(=うた)われた傭兵ソルト・S・ラハイアだぞ!!」

ふらつく体を支えながらそれでも威張るその虚勢

言っている内容の意味がいまいちわからないが、どうやら残念さ加減からみて元通りのようだ

知らずほっと息をついていた自分に気がつき舌打ちする

「たしか怪しい火の玉を切ったとこまでは記憶にあるんだが…」

「今度から霊亀の防御力を過信した戦い方はやめるんだな。それよりあっちの戦闘がまだ続いてる、さっさと援護に行くぞ」

「あ、ああ。わかっ、て?」
「どうし―――」

おかしな気配に胸騒ぎがして、直後に体が反射的に身を屈めていた

それまで頭があった位置を何かがぶった切っていく

「何すんだ、バカ野郎!?」

「あ、あれ?体が勝手に動くぞ!?」

宝剣をゆっくりとこちらに向け直すソルト

殺されかけた事に驚き罵声を浴びせたが、当の本人はそれ以上に狼狽えていた

顔だけ慌てているが体の方は正確にこちらを捉えている

そのちぐはぐさが余計に異様さを際立たせていた



意識は解かれたが体の自由はまだ解けてないっていうのか?



意識を残したまま操られるとか先程より厄介な状況に辟易(=へきえき)する

「本当に面倒臭い奴だなお前は!!」

冷静に双剣で迎撃しているとソルトの泣きそうな声が耳に届く

「どうなってるんだ!?僕を早く止めてくれーっ!!」

声とは裏腹に鋭利に繰り出される斬撃をいなし、かわし、受け止める

本人の意思が反映されていないからか普段より数段鈍い動きの間隙(=かんげき)に、後ろへ回り込み側頭部へ回し蹴りを見舞う

カン、と不可視の障壁に舌打ちしながら休む暇(=いとま)を与えずアロンダイトを肩口へ振り下ろす

ギィン、と再び宝盾霊亀のオートシェルが阻む



ちぃっ!本当に手間がかかる!



「ぎゃーっ!?わぁーっ!?こ、殺す気か貴様!?」

「うるさいバカ野郎!御自慢の『伝説』様が邪魔してくれて思うようにいかねーんだよ!!文句言うならちったぁその盾の弱点なり攻略法なり教えやがれ!」

「この宝盾霊亀に死角はない!!」

「威張るな!…だったらこれも仕方ないよな?」

チャキリ、と本気で殺気を双剣に込めるとさすがのソルトも表情をみるみる青くした

「わ、わかった!わかったから落ち着け…あまり他人に言いたくないが、お前がどうしてもと言うなら仕方ない」

「いいからさっさと言え」

「ひっ!?」

袈裟懸けに迫る斬撃を双剣で挟むように受け止め、鍔迫り合いながらも視線だけは鋭くソルトへ注いでおく

「ほ、宝盾霊亀が鉄壁なのは知ってるよな?かつて初代様はこの霊亀を自在に扱い百戦しようと怪我一つ負わなかった伝説が残ってるいる…つまりこの霊亀は使いようによっては軍勢の攻撃すらたった一人で防ぎきるほどの無敵の盾なんだ」

「…で?」

「くぅ〜、鈍い奴だな!そんな破格の宝具が簡単に使いこなせるものじゃないと言ってるんだ!!」

「…ん?つまりお前は初代のように使いこなせていない、と言いたいのか?」

「ふふん!その通りだ!」

「情けないことを偉そうに言うな!つまり未熟なお前だとまだ完璧には防ぎきれないんだな?」

「一定のダメージまでは吸収・反射させられるが僕の魔力の処理速度が追い付かなくなるような大ダメージや広範囲攻撃は加護が追いつかなくなるんだ」

自分の未熟さを認めるのはよほど悔しいことだったのか視線を合わせようとしないソルト

霊亀本体の強固さやオートシェルという高い利便性で見落としがちであったが

どうやら、担い手としてはまだまだ修行中の身らしい

そうとわかればたしかにいろいろ頷ける部分がある

あの時ギルドで受付嬢のフライパンがクリーンヒットしたのもここなのだろう

警戒中であれば常にオートシェルを意識した魔力運用をしているだろうが、ああいった日常的なシーンでは咄嗟に張っておけるほどの技量がまだなかったのだ

こいつの性格からして他人にこの欠点を知られないようにしているのは

弱点云々よりも単純に自分が未熟であるという証拠が露見するのが嫌なだけなのだろうが…

さて

そうとわかれば話は簡単だ
「くぅ、他の奴には絶対口外するなよ?こんな屈辱的なこと、誰かに知られでもしたら僕は―――」

話している最中のソルトを無視して鈍色の閃光がその顔面に襲いかかる

盛大な音と衝撃に思わず息を呑むソルト

その表情は実に小気味良いもので、これまでの溜飲が少しだけ下がる気がした

「い、い、い、いきなり何するんだ!?」

「何って手っ取り早くその呪縛から解放してやろうとしただけだろ。自分で言っただろ『一定のダメージまでは吸収出来るが大ダメージは加護が追いつかない』てな」

「だからって今の下手すれば死んでたぞ!?」

「大丈夫だろ?オートシェルが限界までは防いでくれるから?」

「僕に聞くな!?確証もないじゃないか!」

「ああもう、ぐだぐだ言うな!こっちは急いでんだ。気絶が嫌ならその首全力ではねるぞ?」

「くぅっ…しかたない…だがこれだけは言わせてくれ」

「なんだ?」

「…優しくしてくれ…初めてなんだ」

いろいろ怪しい発言となってしまっているが、つまり一度も気絶したことがないととらえればいいのか?

「ああ任せろ。きっちり『オーバーキル』してやる!!」

「それを言うなら『オーバーダメージ』!!本当にオートシェル剥がして気絶させるだけなんだよな!?そうなんだよな!?」

「…」

「何とか言えーーーっ!!」

憐れな操り人形の叫びを剣撃の残響音で欠き消し遥か彼方まで消し飛ばす勢いでラッシュをかける

双剣の斬撃線が鈍色の閃光を残し、視界を埋め尽くす域に達したとき

ソルトの霊亀は悲鳴をあげるように打ち震えていた

「ひ、ひぃぃぃぃっ!?」

実際に聞こえていた悲鳴は当然の如く無視

宝盾がフル稼働しているソルトを全方位から圧殺するように攻め立て続けるアストレイ

まるで屋根を穿つ豪雨のような連斬

銀の閃光の二つ名の由縁銀の閃雨―――シルバーレイン―――が一分の隙間なく降り注ぎ、ついに鉄壁だった霊亀の不可視障壁を音を立てて崩していった

「っつあ!?」

オートシェルが無理矢理破られたことで魔力の逆流が起こったのか、ソルトがカクンと白目をむいて気絶し前のめりに倒れ込んでいく

予想とは少し違う形で気絶させることに成功した

が

「逃がすかっ!?」

念には念をいれて

獰猛な笑みを浮かべたまま崩れゆくソルトの顎を正確にアッパーカット

それまでのフラストレーションを解き放ったような威力になったそれは、ソルトをまさしく人形のように宙を舞わせ遠く離れた藪へ頭から突っ込ませた

―――戦場に言い様のない空気だけが残る―――

遠くで傍観していた傭兵達から「ひ、ひでぇ」「鬼だ、鬼がいる」などと失礼な囁きが漏れ聞こえていたりしたが、すっきりした今なら寛大にもそれを黙殺してやろう

そんなことよりレアだ

見れば幻炎を喰らったのかワイバーンが暴れている

あれも止めなくてはならないが、それより旅狐がレアを圧倒し始めている

遠からず決着がつくのは目に見えていた

アストレアが殺されるという結末で…

「させるかよ!」

駆け出しそうになる体を抑え込み、冷静に気配を殺して距離を縮めていく

ようやく届くかどうかの距離にまで近付けたときには、すでに旅狐もその爪を振り上げていた

出来ることなら気づかれる前にそのまま仕留めたかったのだがしかたない

相手の注意を引き付けるように消していた殺気を全開で旅狐に浴びせる

「悪いが、一対一とは誰も言っていないからな」

「!?」

気づいた旅狐が振り向き様に払ってきた爪をさらに近づくことで威力を殺しカウンター気味に肘を脇腹に突き刺す、流れるように足払いで地面へ転ばせ関節を決めるように押し倒す

…俺達にはこいつ=旅狐を殺さなくてはならない理由がない

恐らくだが、こいつの言動・状況から推測するに非は完全にこちら=人間にあるだろう

確認は出来ないがこれはほぼ間違いない

心情的には旅狐に同調してやれる部分もあるし、可能であればその復讐を協力してやりたいとすら思う

だが



俺達は敵として出逢ってしまった



アンヘルの糞野郎は大嫌いだが今はまだ雇い主だ

報酬を貰わなければ今回の依頼が全て無駄になるどころか、逆に依頼放棄とみなされギルドから相当なペナルティーが課せられる可能性すらある

忌々しい話だが、アンヘルの連中はそのあたりの謀略に長けた集団

この事実は決して無視することはできない

つまり、これは傭兵として生きていくうえでは選べる未来が最初から決まっていた結末だったのだ

「命を捨ててくる奴は絶対止められない。お前がどんなに助けたいと思おうとな、俺達にしてやれることはその怨みごとその命を終わらせることだけだ…」

こちらを見つめるレアの瞳は不安気に揺れている

…本当は誰に向けた言葉だったのか…

少女が旅狐を救いたい、力になりたいと考えているのは手に取るようにわかる

人間に翻弄されてしまった境遇が自身と重なり共感しているのかもしれない

それでも

今の『傭兵』アストレイには認めることはできなかった

冷酷に見えるだろうが損得で考えると、この選択肢こそ『正解』だからだ

絶望と憎悪

これらに囚(=とら)われてしまった者を救うのは決して容易な事ではない

ましてや相手は『敵』として現れたのだ。そこまでしてやる義務も義理もない

可哀想だが、一思いに殺してやることこそ俺達からしてやれる唯一の復讐からの解放だ

俺の真剣な表情から意を汲んだのか、レアが首を振って嫌がっている

かまわない…

例え今理解できなくとも、この残酷なほど分かりやすい世界では

生きるために何が重要なのかいずれわかるだろうから

地面に押さえ込んだ旅狐の狂気の視線が交錯する

憎悪にまみれた狂おしいまでの悲哀

そんな感情を抱かせてしまった相手を今度はこっちの都合で殺そうとしている

本当におぞましい存在は、生きるために他者を虐げ陥(=おとしい)れている俺たち人間だな…

自覚していながらこの生き方を変えられない自分のあさましさに反吐が出そうだ

「…恨むなとは言わん…」

知らず漏れていた呟きが聞こえたのか、一瞬だけ旅狐の瞳から憎しみ以外の光が宿ったような気がした

「………」

旅狐が何か口を動かしたような気がしたが

既に愛剣は振り下ろした後だった

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