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みんなにやさしい自作小説コミュのジュエルシード〜能力を継ぐ者編〜(1)

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 今年十三になるジェスはこのところ見続ける夢に悩まされていた。
 誰かが自分を探している。いや、求めている?
 夢の中でジェスはマスターと呼ばれている。
 それが何を意味するものなのかは分からない。
 名前だとは思う・・けれどその声には親しみというよりは畏敬の念にあふれており、何かの敬称であるのかも知れないとさえ思えるのだ。
 そして声に宿る想いのひたむきさに応えたいと思うのに夢の中では声を出すことが出来なかった。
 
 ここだ。
 ここにいる。
 もう探さなくてもいい。
 ここにいるんだ!
 
 どんなに思っても伝わらない。
 そんなもどかしい思いで目が覚める。


 寝台がふたつ置かれただけの何も無い部屋。
 父親はすでに起きている時間で、すでに仕事に取り掛かっているころだろう。
 父親のバラシェスは名の知れた細工師だ。
 他の細工師とは群抜く性能を持つ為、依頼も多くかなりの高値が付く。
 いつまでも布団にいても仕方ない。
 起きて部屋をでればそれなりに広い居間が広がる。
 父親の工房を兼ねているから広いのだが、客がくればやはり驚く事が多い。というか信じられないという顔をされることさえある。
 実際ジェスも家を建て直すなり、他に工房を造るなりすればいいのにと思うし、言った事もあるが、
 「ひとりでやるのにそんなに広くてどうする?」
 と言われてしまっては何も言えないというものだ。
 ふたつ置かれたテーブルは食事用と仕事用に分かれている。
 黙々と細かい作業に没頭していた父親はジェスの気配に気づいて振り返った。
 「最近早いな?」
 「うん」
 テーブルにつくと父親は作業に戻る。
 少しの間ぼーっとしているとパチリと薪のはじける音がした。
 竃を見るとそろそろ薪を足したほうがいい頃だった。
 父親が立とうとするのを止めて室内にある薪置き場にいくと一本もなかった。
 取りに行こうと外に出れば、まだまだ寒い。上着を持ってくれば良かったと思うがそんな事をしていれば火が消えてしまう。
 小走りに家の裏に回りこむ、近くに建物らしいものは何もない。
 ちょっと開けた場所にポツンとあるこの家にふたりきりでずっと住んでいた。
 時折、街に買出しに出る以外はこの家にいた。
 街に良い思い出はなかったし、特に不自由したこともない。
 それにここにいれば・・・。
 風が吹いた。
 舞い上がった落ち葉を目で追い、視線を上げると抜けるような青い空に色変え輝く虹の月があった。

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