１９７５年 夏
今年もまた夏がかけ足でやって来る。今までいろいろな夏があった。青い夏や蒼い夏や淡い夏。
でもあの夏は２日間で燃焼してしまった、僕にとって忘れられない大きな夏だった。
１７歳まで４カ月以上もあった８月１日、僕は同じフォーク研究部のイシワタ君と東京駅から鈍行で掛川へと向かった。一体何時間かけていったのだろう、ただ一つの同じ目的と重いモノラルのラジカセと９０分テープを６本、何個かの乾電池を持ってその大きなイベントの前日の午後に着いた。そして、流れのままに僕たちは列に並んで、その列のまま野宿、というよりか、ただそのまま寝転がっていただけ。その夜、何回も見た流れ星のことが今だに忘れられない。
８月２日、暑くて、長い一日のはじまり。さすがに予定時刻よりかなり前に開場、全力疾走で確実に拓郎の顔が見えるだろうあたりをキープ。開演まであと９時間もある。完璧に脱水症状。今の体力だと死んでしまうだろう。どうやって時間を潰したのか思い出せない。一つだけ思い出せるのがＴシャツを買ったこと。拓郎とかぐや姫がバスに乗っていて、山本コータローがバスに乗れずに外にいて笑っているイラストのＴシャツ。今はもう捨ててしまって存在しないのが非常に残念。
夕方５時。まだ太陽が元気だ。バックバンドとなるトランザムがおもむろにインストゥルメンタルを始める。いよいよ始まりか？と思ってから２０分ぐらいが過ぎた。ラジカセの録音ボタンを何度も押し直し、でももう押したままにしようと思った瞬間、突然ドラムが主張を始め、ギターの石間秀樹がソロをとる。
どこかで聴いたメロディ、そうその春の新番組「俺たちの勲章」のテーマ。拓郎が登場する雰囲気ではなかった、が大歓声。左袖から白いパンツ、白いベスト、バンダナらしきものを頭に巻いて、登場した。
その瞬間僕の瞼から涙があふれでたことは一生忘れないだろう。１曲目が終わり、拓郎が「朝までやるよ！朝までやるよー！」。その夏のフォーク研究部の合宿の飲み会は毎日その言葉を叫び続けていたことは言うまでもない。すべてが知ってる曲、１０年後に行われた、つま恋では知らない曲が何曲もあったのが寂しかった。
あっと言う間の９０分で１９曲目の「イメージの詩」が終わる。次の拓郎のステージは松任谷グループ。スチールギターの響きがのどかに進んでいく。でも「結婚しようよ」の時、拓郎は意外な驚きを一瞬見せた。恐かったのだろう、あの曲でかつて帰れコールを浴びせられ、今回はこの７万人が暴動を起こしたらすべてが終わってしまうということに。
でも大歓声のうちに第２部が終わろうとしている。
そして、２部最後の曲、まさかと思った弾き語り、７万人を前にしてマーチンＤ３５にバーカスベリーというピックアップを装着して過去最高の「されど私の人生」を唄い、僕は今なら死んでもいいと思った。
かぐや姫、ウィークエンド、風、パンダ、高節のステージが続き、その頃はイシワタ君は熟睡していた。そして、拓郎のラストステージが始まるよ！と起こしはじめた。
ラストステージはライブ７３の構成で多分高中正義はいなかったと思う。ただ、バックコーラスにハイファイセットと吉田美奈子。すごすぎる。当時僕のロック系の友人たちはハードロックを卒業して、シュガーベイブやクリエーションやチャーを聞き始めていた。そのシュガーベイブの吉田美奈子がバックコーラスとして参加とは贅沢だ。
最後のステージは「こうき心７３」で始まった。３曲目の「たどりついたらいつも雨降り」になると、もう声がでていない。限界かもしれない。
「新しい朝」「君が好き」ときて、胸の痛む１９７３年を思いだし、新曲の「となりの町のお嬢さん」。もうすでに全員立ちっぱなし、そして、待望の「僕の唄はサヨナラだけ」。僕らは失神寸前だった。
でもまだ失神するわけにはいかない。
あの１曲を一緒に唄い叫ぶまでは。そして「恋の唄」が終わり、いよいよあの１曲のイントロが始まった。
全員が祭りのあとを味わいたくない気持ちで絶唱していたと思う。
僕も唄い踊り叫び、ラジカセに外部マイクをつけて録音していたけど、それが途中で外れていたことも気づかずに。
アンコールなしでステージが終わり、そこにいたみんなが呆然としていた。帰る体力さえ残っていない。ふらふらと駅まで行き、奮発した新幹線も座れず、イシワタ君とは一言も口をきかずにお互いが家路へと急いでいた。帰ってからもしばらく呆然としていたと思う。
そんな１９７５年の夏は重すぎて忘れることができない。
そして、１９９７年の夏がもうじきやって来る。拓郎を嫌いな妻と８歳と４歳の娘と８歳になるシェトランドシープドッグと１歳の文鳥とマーチンＤ３５とギブソンＪ４５とで過ごす夏が。
今年もまた夏がかけ足でやって来る。今までいろいろな夏があった。青い夏や蒼い夏や淡い夏。
でもあの夏は２日間で燃焼してしまった、僕にとって忘れられない大きな夏だった。
１７歳まで４カ月以上もあった８月１日、僕は同じフォーク研究部のイシワタ君と東京駅から鈍行で掛川へと向かった。一体何時間かけていったのだろう、ただ一つの同じ目的と重いモノラルのラジカセと９０分テープを６本、何個かの乾電池を持ってその大きなイベントの前日の午後に着いた。そして、流れのままに僕たちは列に並んで、その列のまま野宿、というよりか、ただそのまま寝転がっていただけ。その夜、何回も見た流れ星のことが今だに忘れられない。
８月２日、暑くて、長い一日のはじまり。さすがに予定時刻よりかなり前に開場、全力疾走で確実に拓郎の顔が見えるだろうあたりをキープ。開演まであと９時間もある。完璧に脱水症状。今の体力だと死んでしまうだろう。どうやって時間を潰したのか思い出せない。一つだけ思い出せるのがＴシャツを買ったこと。拓郎とかぐや姫がバスに乗っていて、山本コータローがバスに乗れずに外にいて笑っているイラストのＴシャツ。今はもう捨ててしまって存在しないのが非常に残念。
夕方５時。まだ太陽が元気だ。バックバンドとなるトランザムがおもむろにインストゥルメンタルを始める。いよいよ始まりか？と思ってから２０分ぐらいが過ぎた。ラジカセの録音ボタンを何度も押し直し、でももう押したままにしようと思った瞬間、突然ドラムが主張を始め、ギターの石間秀樹がソロをとる。
どこかで聴いたメロディ、そうその春の新番組「俺たちの勲章」のテーマ。拓郎が登場する雰囲気ではなかった、が大歓声。左袖から白いパンツ、白いベスト、バンダナらしきものを頭に巻いて、登場した。
その瞬間僕の瞼から涙があふれでたことは一生忘れないだろう。１曲目が終わり、拓郎が「朝までやるよ！朝までやるよー！」。その夏のフォーク研究部の合宿の飲み会は毎日その言葉を叫び続けていたことは言うまでもない。すべてが知ってる曲、１０年後に行われた、つま恋では知らない曲が何曲もあったのが寂しかった。
あっと言う間の９０分で１９曲目の「イメージの詩」が終わる。次の拓郎のステージは松任谷グループ。スチールギターの響きがのどかに進んでいく。でも「結婚しようよ」の時、拓郎は意外な驚きを一瞬見せた。恐かったのだろう、あの曲でかつて帰れコールを浴びせられ、今回はこの７万人が暴動を起こしたらすべてが終わってしまうということに。
でも大歓声のうちに第２部が終わろうとしている。
そして、２部最後の曲、まさかと思った弾き語り、７万人を前にしてマーチンＤ３５にバーカスベリーというピックアップを装着して過去最高の「されど私の人生」を唄い、僕は今なら死んでもいいと思った。
かぐや姫、ウィークエンド、風、パンダ、高節のステージが続き、その頃はイシワタ君は熟睡していた。そして、拓郎のラストステージが始まるよ！と起こしはじめた。
ラストステージはライブ７３の構成で多分高中正義はいなかったと思う。ただ、バックコーラスにハイファイセットと吉田美奈子。すごすぎる。当時僕のロック系の友人たちはハードロックを卒業して、シュガーベイブやクリエーションやチャーを聞き始めていた。そのシュガーベイブの吉田美奈子がバックコーラスとして参加とは贅沢だ。
最後のステージは「こうき心７３」で始まった。３曲目の「たどりついたらいつも雨降り」になると、もう声がでていない。限界かもしれない。
「新しい朝」「君が好き」ときて、胸の痛む１９７３年を思いだし、新曲の「となりの町のお嬢さん」。もうすでに全員立ちっぱなし、そして、待望の「僕の唄はサヨナラだけ」。僕らは失神寸前だった。
でもまだ失神するわけにはいかない。
あの１曲を一緒に唄い叫ぶまでは。そして「恋の唄」が終わり、いよいよあの１曲のイントロが始まった。
全員が祭りのあとを味わいたくない気持ちで絶唱していたと思う。
僕も唄い踊り叫び、ラジカセに外部マイクをつけて録音していたけど、それが途中で外れていたことも気づかずに。
アンコールなしでステージが終わり、そこにいたみんなが呆然としていた。帰る体力さえ残っていない。ふらふらと駅まで行き、奮発した新幹線も座れず、イシワタ君とは一言も口をきかずにお互いが家路へと急いでいた。帰ってからもしばらく呆然としていたと思う。
そんな１９７５年の夏は重すぎて忘れることができない。
そして、１９９７年の夏がもうじきやって来る。拓郎を嫌いな妻と８歳と４歳の娘と８歳になるシェトランドシープドッグと１歳の文鳥とマーチンＤ３５とギブソンＪ４５とで過ごす夏が。
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コメント(8)
＞なるさん
よくご存知でしたね。マニアックすぎます（笑）
「２００４年 夏」はファイルが探せ次第立ち上げます。
＞mixi
あの時代のソニーのテープはタフです。まだ弛まずに聴けます。第３部はノリすぎてマイクに拍手の音がうるさくて聞きづらいです。しかも人間なんては興奮のあまりマイクが外れ録音されていないです（笑）
でも終わってからの周りの女の子たちが人間なんてを唄っている音が残っており、リアル感があります。昨年の５月に青山のクラブで「よしだたくろう爆音パーティー」で公開しました。
またどこかで行うと思いますので是非！
http://blogs.yahoo.co.jp/takeshi_y12/8202246.html?p=2&pm=l
よくご存知でしたね。マニアックすぎます（笑）
「２００４年 夏」はファイルが探せ次第立ち上げます。
＞mixi
あの時代のソニーのテープはタフです。まだ弛まずに聴けます。第３部はノリすぎてマイクに拍手の音がうるさくて聞きづらいです。しかも人間なんては興奮のあまりマイクが外れ録音されていないです（笑）
でも終わってからの周りの女の子たちが人間なんてを唄っている音が残っており、リアル感があります。昨年の５月に青山のクラブで「よしだたくろう爆音パーティー」で公開しました。
またどこかで行うと思いますので是非！
http://blogs.yahoo.co.jp/takeshi_y12/8202246.html?p=2&pm=l
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