いざかや　末（すえ）コミュのＴＵＧＵです

「１、２、３、・・・・」

駅前店深夜1時。
私はレジ閉めの作業をすすめていた。

店内にはひと組のお客様。
ラストオーダーは終わっているので、速やかに閉めれるよう準備する。

よし。おっけ。

私はレジシートをホッチキスで止めようと、レジ下の棚を調べる。
イカンセン、駅前店事情にあまり詳しくないので、ホッチキスのありかが
よくわからない。

どこだどこだ。。。

私はレジ下でしゃがみこんで探していた。
レジの下は結構暗い。

なかなか探しきれずにいると、

「ガラガラガラ・・・」
扉の開く音がした。


私は立ち上がり、入口をみた。
すると一人の男性。
2秒くらい目が合ったまま何も言わなかった。
この時間なので、うちに来てくれたお客様が忘れ物してしまって、その問い合わせかな？
と思った。
その間その男性はその場で立っている。そしてちょっとバランスを崩して
後ろに足を引いた。


結構お酒を飲んでらっしゃる、そうな、そんな感じだ。

顔を見る。
目はうつろ。顔はほんの少しピンクだ。

うん間違いない。

男性は片手をあげた。私に向かって。
何の合図かはわからなかったが、私にはなんとなく
「一人ですけど、大丈夫ですか？」と
言われているような感じがしたので、

「ごめんなさい。ラストオーダー終わってしまったんです」
と申し上げた。

すると男性は私に向かって何も言わなかったが、また片手を上げてくれた。

私は「すいません」と言った。

男性の片手は、謝る私にいいんだよ。またくるね。と言ってくれているような気がした。

私はしゃがみこみ、また、ホッチキス探しの旅にでた。

「あ、あったあった」
しかも目の前に。

その瞬間、


「ねえ！！！！」


ふと顔を上げると先ほど手を上げた男性、結構呑んで、うつろな目の男性が
カウンターの下でしゃがむ私を見下げる形で覗き込んでいる。
しかも、さっきあんなにうつろだったのにきちんと目を開けて！！！
出て行ったはずの人。しかも結構時間が経っているように感じたので
完全にノーマークだった。

その「ねえ！！」は大したボリュームじゃなかったはずですが、
顔が近すぎてマキシマムに感じだ。




ぎゃーーーーー！！

とは、叫ばなかったが

私はその方の「ねえ！！」という問いかけに


「びっっっっっくりしたーーーーーー！！！」と答えた。
だって、ほんとにびっくりした。

びっくりしすぎて鳥肌がたった。

あの、超有名恐怖体験をした感じだ。


深夜、道端でとある男性は下半身のない少女を目撃してしまう。
少女も男性に気付き、こちらに近づく少女。
びっくりして逃げ出す男性。
そして振り返ると腕を使って歩腹前進。ものすごい勢いで追いかけてくる少女。

公園の公衆トイレに逃げ込む男性。
しばらくたたずむ。

すると影だけが自分を覆う。

上を見ると。。。。



ぎゃーーーーーーー！！！
覗き込む少女ーーーー！！！


ぎゃーーーーー！！！





みたいな。

おおげさじゃないんです。本当にびっくりしました。
この恐怖伝えたい！！
でも読み直してもぜんっっぜん100分の１も伝わってないと思いますが、
見上げたらすぐ近くに顔の恐怖って、私は今年一番のびっくりでした。

そんで、その男性は私に何を言いに来たのかと言うと、

「君、アルバイト？」

というので、恐怖から覚めない私はその問いにも
「びっくりした！！」
と答え、

「かわいいね」
という返事にも

「びっくりした！！」
で答えました。

そのあとももしかすると私に何か言っていたかもしれませんが
私は「びっくりした！！」と言い続け、男性は帰って行かれました。
(失礼)

というくらい私は正気を失いました。


でも、何十年も年上の大先輩に向かってこんなこというの本当に申し訳ないんですけど

「どうでもいいわ！！」と言いたかった。


その後聖母アイ子が騒動に気付いて私に近寄ってきたので
一部始終を話し、鳥肌を見せた。
そして、びっくりしたと言い続けた。

すると、聖母は

「看板付けてれば入ってくるわよ」

バッサリ。

ほんとだ。我が母ながら目ざとい。

私は物事にはきちんとした原因があると思っている。
今回の事件の原因は私のかわいさが原因と思った。
私のかわいさって罪。

いや。はたまた、お酒のせいで視力が弱っているのか。

どっちだ。


本当はわかっている。
お酒の力は偉大だと。

でも今思えば、ちょっと失礼だったと反省する、かわいげのある私なのでした。




おしまい。